すてきな本を読んだ。
「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」が成立するまでを追った「条例のある街」(ぶどう社)だ。
条例づくりは県民が主役。
公募で選ばれた委員たちで構成する「障害者差別をなくすための研究会」が、条例案を一からつくる。県内各地で開いたタウンミーティングで大勢の人々を巻き込みながら、1年がかりで条例案を練り上げた。
差別をした人を罰するのではなく、理解を深め、味方になってもらうための条例だ。
しかし、自民党が約7割を占める県議会が壁となって立ちはだかった。
激論の末の継続審査。大幅修正。さらには、いったん取り下げも。研究会のメンバーも、県も、ただ条例の灯を消すまいと耐え抜いた。
原案から大きく姿を変えた条例が成立したのは、去年秋のことだ。
だれもが譲歩した。
障害者や家族は社会の冷徹さを学び、会社の経営者や議員たちは、障害者とじかに議論を交わすことで偏見を解いていった。その過程はドラマさながらだ。相手を尊重しながら互いに譲り合い、折り合いをつける。
文章にすればたったこれだけ、という条例であっても、きらきら光る民主主義の結晶だ。
本の著者は毎日新聞社会部副部長の野沢和弘さん。重い障害のある息子の父親として、委員会を引っ張った。
一人の県民として記者として、このような体験を積むことができた野沢さんを、心からうらやましいと思う。
〈川名紀美〉