千葉・ちいき発


やっぱり必要、みんなで作ろう!18

vol.18

Q&A 定義があいまいで何が障害か差別かわからない?

 「条文の表現があいまいで、今議会可決は拙速だ」「何をもって差別とするのかあいまいなまま厳しい罰則を課すのは……」という批判が聞かれます。障害の定義があいまいだというのはある意味ではわかります。しかし、差別の定義については福祉、労働、教育……などの分野ごとに例示してあり、国の人権擁護法案や鳥取県の人権条例などとはかなり違うところです。この点については、鳥取県弁護士会や日本弁護士連合会の障害者問題に詳しい弁護士たちの声明文でも、千葉の条例案が問題ないことはお墨付きを得ています。
 それでも、あいまいだと言われれば、それはその通りです。しかし、そもそも何をもって差別というかどうかは、その時の人間関係や背景の文脈を詳しく見ていかないと何とも言えないものであり、明確な定義ができないというのがこの問題に取り組んできた専門家の間では常識です。だから、差別の定義は指標を示す程度のものにとどめて、「解消委員会」(仮)を設けて、そこでケースバイケースで判断していこうというのです。罰則規定のない「ソフト・ロー」には、このようなあいまいさを担保した方が実効が上がるというのは、法律の専門家からも指摘されています。
 一方、「障害の定義」があいまいだという意見は、ちょっと違います。現在のWHO(世界保健機関)の定義を知ってほしいと思います。国の施策でも障害手帳だけが支援費や自立支援法での福祉サービス提供の根拠になっているのではなく、個々の人の心身の状態や周囲の環境、社会への参加や活動の必要性などの要素を加味したうえで、必要な福祉サービスを提供する仕組みになっています。これはWHOの障害定義をベースにした施策が行われていることを示しているのであり、その定義を千葉の条例では引用しているに過ぎません。それが、単に障害者の問題だけでなく、今の社会で暮らしにくい状況にある人への理解を広げる取り組みへとつなげていけることにもなると思います。

(文責・野沢和弘)

☆応援メッセージ 山田 優・長野県西駒郷地域生活支援センター所長☆

 住みよい地域社会とは、あったらいいねという他人事の世界ではなく、無関心を装わないこと、理解と知る努力をすること、という自立的な行動への一歩から、リアリティのある「ともに生きる地域社会」と、それを「支える仕組み」が見えてきます。千葉から全国に発信される「障害のある人もない人も暮らしやすい千葉県づくり条例」(案)に強く期待しています。

<呼びかけ人> 田上昌宏(千葉県手をつなぐ育成会会長)/竜円香子(同権利擁護委員長)/大屋滋(日本自閉症協会千葉県支部長)/土橋正彦(市川市医師会長)/植野慶也(千葉県聴覚障害者連盟会長)/野内恭雄(千葉県精神障害者家族連合会会長)/成瀬正次(障害者差別をなくすための研究会委員・全国脊髄損傷者連合会副理事長)/佐藤彰一(同・法政大大学院教授)/高梨憲司(同・視覚障害者総合支援センターちばセンター長)/野沢和弘(同・全日本手をつなぐ育成会理事)
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