県議会報告(3月7日、代表質問)
斎藤万祐議員(自由民主党)に対する知事答弁
《質問1》今回条例化することについては、そのスタートはいつだったのか、そして、どのような経緯があり、どういう手続を踏んだのか。
平成16年7月に策定した第三次千葉県障害者計画に、条例の制定を検討することが盛り込まれた。
この点は16年の9月議会でご報告をした。
続いて16年9月から12月にかけて県民から広く「差別に当たると思われる事例」を募集した。17年1月、「障害者差別をなくすための研究会」を設置した。
このことは、17年2月議会の委員会で部長が報告した。
また、17年6月議会の知事あいさつで、障害者が差別を受けている実態を把握して、条例や施策に反映させたいと報告した。
17年8月には、研究会の中間報告書を、委員会の委員に配布して、、9月議会の知事あいさつで報告した。
17年12月には、全議員に報告書及び条例要綱案を配布して、パブリックコメントを実施した。その上で今議会に条例案を提案した。
なお、16年9月議会以来、各議会において各会派からご質問をいただき答弁をさせていただいてきた。
《質問2》なぜ、条例を制定するのか。条例化以外に他の方法はなかったのか。それとも最初に条例ありきだったのか。
千葉県障害者計画の中に「条例の制定を検討する」ことが盛り込まれたので、県民から「差別と思われる事例」を募集したところ、障害者が、日常生活の様々な場面で理不尽な思い、暮らしにくさを感じている実態が明らかになった。
車いすの方、目の不自由な方、耳の不自由な方、精神障害の方などがいろいろ不自由をしている。
障害があってもその人らしく地域で暮らすには、社会の誤解や偏見を解いて、理解を広げ、差別をなくすことが大事。
差別の多くが気付かずに行われているので、単なる広報・啓発では不十分。差別とは何かを県民の目に明らかにして、条例を提案することにした。
障害者への差別をなくしていくためには、この条例だけでなく、県のあらゆる施策の中に、こうした差別をなくす視点を盛りこんでいくことが重要だと考えている。
《質問3》世界40カ国で禁止法が制定され、わが国にも国連の勧告がされているが、今まで禁止法が制定されなかったのはどういう理由によるものと考えるか。
平成16年、国会において障害者基本法が改正された。その内容は、1、基本理念として、障害者に、障害を理由として差別をしてはならない、2、国及び地方自治体の責務として、障害者に対する差別の防止を図る責務が規定された。
提案議員から、この改正が障害者差別禁止法制定に向けた第一歩となると発言があった。
この改正は、我が国の法律で初めて障害者に対する差別の禁止を明示した点で画期的だが、その理念を広く普及させ、機運を高めていく上で、地方自治体の役割は重要。この条例案は、こうした役割を踏まえたもの。
国は、ハートビル法、交通バリアフリー法や地方自治体の条例、国連における障害者権利条約作成の議論等を踏まえて、検討している。
《再質問》平成8年に「福祉のまちづくり条例」を制定しているのに、なぜ別の条例を作る必要があるのか、これで十分ではないか。
福祉のまちづくり条例は、この条例と共通した理念を持っている。
ただ、施設等の整備を中心に規定しており、日常生活や社会生活の生きづらさとか暮らしにくさを解決する仕組みには、なっていない。
この条例は、「なくすべき差別」を明らかにして、個別の事例を解決したり、理解を深める仕組みを盛り込んだところが一つ前進をしたもの。
◎河野俊紀議員(民主党)に対する知事答弁
《質問1》条例の定義では、必要以上に障害者の範囲を拡大してしまうのではないか。
障害者基本法の「障害者」の定義は、@発達障害などが抜けている、A障害は個人の特徴だけでなく社会環境との相互作用から発生するという「社会モデル」に沿っていないこと、といった問題がある。障害者自立支援法でも、「3年以内の見直し」が明記されている。
この条例の「障害」の定義は、「社会モデル」を踏まえ、現行法で抜け落ちている障害者もカバーできる内容にした。@心身の疾病、変調、傷害その他があること、A社会的環境において求められる能力、機能に達していないこと、B日常生活や社会生活で継続的に制限を受ける状態にあること、3つの要件をすべて満たすものを「障害」と定義している。「その他の事情」とは「疾病に‥‥心身の損傷状態」、経済的事情等を含まない、障害者の範囲を必要以上に拡大するものではない。
《質問2》なくすべき差別の規定は、広範囲のことが差別と受け取られ、対立と緊張を生み出すのではないか。
差別の多くが、気づかれずに行われているので、県民に「差別とは何か」を明らかにするもの。これに該当する行為があった場合、罰則でなく、第三者の相談員等が両方の言い分を聞き、意思疎通、問題解決を図る仕組み。
なくすべき差別の内容を明らかにし、第三者が入ることで、当事者同士で解決できなかった問題の解決が図られ、対立と緊張が緩和される。これが、一番大事と言っていいと思う。 基本理念に、差別する側、される側という対立の関係を克服して、すべての人が暮らしやすい社会をつくるとしており、この理念に沿って、条例の運用を図っていきたい。
《質問3》差別をした者の負担が過重な場合は差別行為ではない、とする適用除外条項は、条例の規範性?を損なうものではないか。公正な解決に支障に成るのではないか。
適用除外条項は、障害者のニーズや事業者の規模や経営状況がさまざまで、差別をなくすための負担も多様だから、各条項に該当する行為をすべて「なくすべき差別」と位置づけることは必ずしも適当でないため、規定した。
ハートビル法、交通バリアフリー法など、事業者の負担を考慮し一定規模以下の施設を適用除外している仕組みは数多くあり、条例の規範性を損なうものではないと考える。
実際の適用では、事例ごとにどの程度の負担になるのか、代替策はないかについて、第三者的な相談員とともに十分検討することが必要であり、これによって公正な解決が可能であると考える。
《質問4》差別事案の解決のための手続は、関係法令との整合性や訴訟への対応など、県民相互の権利擁護の観点から、どのように運用していくのか。
解決のための手続きの関係法令との整合性は、法制審査や関係課との協議により十分検討しており、問題ないと考えている。
個別事案の解決は、地域相談員、指定機関、障害差別解消委員会が、双方の言い分を十分聞いて、公正な立場から解決を図っていく。
特に、勧告・公表は、誰が見てもやむを得ない極めて悪質なケースに限定して客観的かつ公正、慎重に運用していく。
このような運用で、県民の利害や権利の公正な調整を図っていく。
《質問5》勧告や公表について、知事に訴訟法による義務付け訴訟が提起され、敗訴の場合は、勧告や公表をしなければならなくなるのではないか。
義務付け訴訟が認められる要件は、2つある。
@処分がされないことで重大な損害のおそれがあることですが、障害者にとって県が勧告・公表しないことにより、重大な損害が生じるケースは想定しにくいと考えている。
A損害を避けるため他に適当な方法がないことですが、障害者の差別の問題は、民事訴訟等で救済ができる等、他の適当な方法があると考えている。
したがって、義務付け訴訟が提起されても訴訟要件を満たさず、県が敗訴することは大変に考えにくく、適用除外や運用上の配慮の規定は、有効に機能するものと考えている。