千葉・ちいき発


やっぱり必要、みんなで作ろう!48

県議、市議も多数参加

 毎日のように県内各地で条例の勉強会が開催されています。千葉市、我孫子市、市川市、松戸市での勉強会では参加者が100人を超え、用意した資料やイスが足りなくなる会場もありました。どこの勉強会でも地元の県会議員、市会議員のみなさんが参加してくれました。20人ほどの小さな勉強会でも県議、市議の先生が参加して熱心に耳を傾け、条例成立へ向けての思いを語ってくれました。
 特に我孫子市での勉強会は福島浩彦市長をはじめ5人の県議が登壇してシンポジウムが開かれました。市川市での勉強会では前自民党衆院議員の八代英太さんが駆けつけ、感動的なお話をしてくれました。

福嶋浩彦・我孫子市長の話

 この条例案は教育の問題(11条)で反対が起きていると聞く。特に市町村の教育委員会が就学指導において、「障害のある本人や親の意思を尊重する」ということが条例案に謳われていることについて、「そんなことを条例で定められたら対等な話し合いができなくなる」と言っていると聞く。ふつうの市民と市民の関係なら、一方だけを尊重するなら対等にはならなくなるだろう。しかし、市町村教委は子どもをどこの学校に入れるかの権限を持っている。就学を許可される側(障害児や親)の意思を条例で尊重することにより、ようやく対等な話し合いになろうというものだ。本人(障害児)の意思を尊重すると現場が混乱するというが、そんな教育現場とはいったい何なんだろうと思う。11条の条文を修正するというが、決して後退させてはならないと私は思う。
 ただ、就学指導は法律で定められた市町村の自治事務。それを県の条例で縛ることができるのかどうかという疑問は残る。国の法律では縛ることができるが、県と市町村の関係は対等であり、市の固有の仕事を県の条例で縛ることはおかしいと私は思う。そのあたりの整理をもう少ししてほしい。
 市町村の学校の先生が県の職員であることも本来は変な話だと思う。本当なら市町村の学校の先生もその市の職員が関われないといけない。学校の先生が県の職員であるというのなら、特別支援教育をしっかりやるためには、そういうことをしっかりできる教員を県が育てて、学校現場に出して欲しい。

八代英太さんの話

 私は自民党千葉県連の政調会長や有力議員に私信を出して、何としても千葉から日本の新しい福祉を発信していただきたいとお願いした。この条例は千葉県にとって大きな財産になる。全国津々浦々の市町村が千葉に学べ、千葉を目指せという動きになっていくと思う。現状は厳しいかもしれないが、県民に理解を深めていくのが何より大事だと思う。
 一つの新しい法律(条例)を出すと、いろんな反応が出てくることはよくある。この障壁を乗り越えて条例を作って欲しい。障害者について日本は理解度が低いのかもしれない。しかし、日本人は無理解なのではない。未理解なのだと思う。理解と無理解の間の「未理解」だ。
 日本人の心の温かさはいろんなところで見受けられる。ジャワ地震でも毎日のように何百万円、何千万円という寄付が寄せられる。アフリカに毛布を送ろうと呼びかけたときに100万枚くらい集まったらいいと思っていたら、200万枚も集まった。心の温かさが日本人にはある。しかし、身近なことには関心がない。投げ銭的な善意を否定するものではないが、身近な中にそうした善意が生きてこないのだと思う。
 私は障害者になりたくてなったわけではない。今、私たちの社会は目まぐるしく動いている。心の病のある人は増えて毎年3万人を超える自殺者がいる。交通事故死は年間8000人を超えるが、生き残って後遺症のある人がいったいどのくらいいるのか。障害者は身近な問題としてとらえないとダメだと思う。
 私も障害者ではないころ、テレビで目の不自由な人や車椅子の人を呼んで、「こういう人に光を…」と訴えていた。そういう活動に自分自身が感動もしていた。しかし、一週間くらい過ぎると忘れてしまう。まさか車椅子に自分がなるとは思っても見なかったからだ。障害の子を持った親は最初から障害児を生みたいと思った人はいないだろう。しかし、地域の中で支えあっていこうという心なくして人の世はありえない。身近な問題になると照れくさくもなるが、それもこれも「未理解」がそうさせている。
 私は車椅子になって33年になる。きょうは私の「誕生日」。33年目の誕生日。1973年6月3日午後1時30分に私は舞台から転落し意識不明になっていた。自分の一生の中では健康で長生きするのがすべての人の願いだが、人間が生涯健康でいられるということはできるわけがない。やがてはみんな寝たきりにもなったりして、長い人生を送る。日本は世界一の長寿の国。100歳以上の人は2万6000人もいるのだ。
 障害をもった人は一人ひとりが自ら障害者やその家族になりたいと思う人はいないだろうが、障害者になったのだから、この限りない人生を楽しく生きるしかない。健康な人の最後は介護保険でそれなりに恵まれた生活ができるようになったが、障害者の問題はまだまだ人々の中には浸透していない。もっと自分が健康な時に障害者に関心を寄せることができなかっただろうか、と今になって思う。不謹慎で無理解な自分をたたきなおすために、私は障害者になった時から人生をやり直そうと思った。
 私だって車椅子のことを最初は知らなかった。健康な時には、目の悪くなった人がメガネをかけるように、体が不自由になった人が車椅子を乗るものだと思っていたが、実際に車椅子の生活になって初めて、車椅子とはこんなに不便なものだと気づいた。改めて恥ずかしい健康時代だったなあ思う。誰しも安心して障害者になれるのが最高の社会だと思う。
 たとえば、わたしは銀座を車椅子で歩いていて、わざとひっくり返る。その時人々がどういう反応を示すかを知りたいからだ。みんなワーッと取り囲んでくれる。「あっ、八代英太が転んだ」と。110番する人、119番する人もいる。しかし、パッと来て車椅子を起こしてくれたのは外国人の観光客だった。日本人はどう車椅子に触ったらいいのか、どう起こしたらいいのかがわからないのだ。心の優しさはあるが理解もっていないと行動に移すことができない。
 私は国会議員になったアンケートを取った。「あなたは車椅子を見たことがありますか」「触ったことがありますか」「乗ったことがありますか」という問いをした。1970年代に聞いたときには「見たことがある」は100%だったが、「触ったことがある」は3〜5%に過ぎなかった。80年代に国際障害者年が始まり、それが20%を超えるようになった。最近は30%くらいになった。それでも7割が触ったことがない。体験しないのだから未理解であるのは当たり前。老若男女、目の見えない人も、車椅子の人も、知的障害の人も、いろんな人たちがいて、初めてノーマルな街だといえる。
 私は障害者になって下半身が不自由になったが、しゃべることは普通にできた。しかし、「よく車椅子でテレビに出ますね」という中傷の投書が届いた。ギャラも半分になった。「下半身不随だから」という理由だった。信じられないことがあった。ずっと根深く残っていた障害者への偏見だと思う。何ができないかじゃなくて、何ができるのかを考えることが大事だ。法律でも欠格条項という障害を理由にいろんな場面から排除する制度が障害者に重くのしかかっていた。私はノーマライゼーションを国政に訴えていった。どんな街にも、たとえイデオロギーが違っていても、人間が住んでいる限り、そこには何パーセントかの障害者が必ずいる。それがノーマルな社会なのだ。人間社会のすばらしさ、美しさ、それぞれの人生があり、それが国の強さにもつながるということを訴えてきた。北朝鮮に行く人に「北朝鮮はどのくらい障害者がいるのか調べてくれ」と頼んだら、その人が帰国してから「北朝鮮はすごいよ。障害者が一人もいない」と言われた。障害者を排除する国がいかにおかしな国であるのかがわかると思う。
 人間は強そうでいて弱い。いつか障害者になったら別の地域に移り住まなければならないということになったら、私は移らなければならなくなる。歩くことができる人のことばかり考えると、歩けなくなったら大変だ。目の見える人のことばかり考えると目が見えなくなった時は大変だ。歩けない人、目の見えない人に視点を置いた方がノーマルな世の中になるというものだ。
 障害基本法をつくるとき、党内には反対があった。その人の本当の心に入っていって、心からの理解がないと作ることができない。障害のことに無理解な人にわかってもらうためには、時間が必要だ。なぜなら私自身がそうであったからだ。千葉県の条例に反対している人がいるが、もしも私が車椅子にならなかったらそういう人たちとあまり違わなかったかもしれない。
 この千葉県の条例が成立したならば、日本の福祉にとって金字塔になる。これからは国が指導する時代じゃない。それぞれの地域が自分たちで福祉をつっていく時代になった。この条例が成立したならば、「千葉はすごい」「千葉に追いつけ、追い越せ」と全国が一斉に千葉の条例の後を追うということを私は予感している。全都道府県が千葉に耳目が集中している。障害者や家族の思いが議会の届くのを期待している。物理的なバリアだけでなく、偏見や心のバリアを取り除かなければならない。そういう意味で条例は道標だ。敵を作るのではなく味方を作っていくという千葉の条例の意味が私にはよくわかる。

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<呼びかけ人> 田上昌宏(千葉県手をつなぐ育成会会長)/竜円香子(同権利擁護委員長)/大屋滋(日本自閉症協会千葉県支部長)/土橋正彦(市川市医師会長)/植野慶也(千葉県聴覚障害者連盟会長)/野内恭雄(千葉県精神障害者家族連合会会長)/成瀬正次(障害者差別をなくすための研究会委員・全国脊髄損傷者連合会副理事長)/佐藤彰一(同・法政大大学院教授)/高梨憲司(同・視覚障害者総合支援センターちばセンター長)/野沢和弘(同・全日本手をつなぐ育成会理事)
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