千葉・ちいき発


やっぱり必要、みんなで作ろう!54

これまでの流れ・これからの方向

 条例案は6月議会でいったん撤回されましたが、9月議会への再提出を目指してさまざまな動きが始まっています。条例案をめぐる状況が二転三転してよく分からないと思われるかもしれませんが、味方を増やしながら前進しているのは間違いありません。改めてこれまでの流れを整理して、今後の進むべき道を考えたいと思います。

@2月議会〜
 2月議会に提出された条例案は継続審査となり、6月議会での成立を目指して閉会中も水面下で議会側と県事務局との折衝が続いておりました。最大会派の自民党は市町村教育委員会などが猛反対していることなどを理由に、原案の修正を要求してきました。県はすぐには要求を呑もうとはしませんでした。研究会が1年以上の時間をかけて作ってきた条例案です。また、かつて男女共同参画条例の際、やはり自民党から修正を求められ、県当局側は悩んだ末に原案を修正したところ、それで成立するどころか否決されてしまった……という事態になったことがあるからです。そのため県側は、この障害者条例では確実に成立するとの見通しが立たない限り修正できないとの姿勢を見せていました。それが、県側の対応が硬直しているとの印象で報道され、自民党の中の反対派の怒りも増幅することになりました。自民党政調会は「修正しない限りは否決する」との方針に傾きました。
 ちょうどこの時期、私たち民間の側は、もっと条例案について障害者や家族や関係者に知ってもらおうと、県内各地で条例勉強会を開催しました。5月〜6月の1カ月間だけで勉強会は計22回に上りました。それぞれの勉強会では県議会各会派の先生や地元の市議たちが駆けつけてくれて、各会場は熱気にあふれていました。

A6月議会〜
 障害者や家族の願いが高まる中で、県側はなんとか6月議会での成立を模索していました。しかし、各紙報道によると、自民党内では反対論が勢いを増し、条例に賛成している議員の間からも「6月議会は見送るべき」との意見が出るようになりました。このため、堂本知事は6月議会の冒頭で「9月議会に修正案を提出する」との意向を表明し、6月議会は継続審査の扱いにしてほしいと求めました。
 ところが、反対派の勢いが増す一方の自民党では「修正することを決めた議案を継続して審議することはできない」などの意見が出て、いったん白紙撤回すべしとの声が強まってきました。一度提出した条例案を取り下げることは極めて異例です。また、白紙撤回してしまったら、再提出できる保証はありません。このため堂本知事はギリギリまで迷った末に、緊急に開かれた研究会で「どんな形にせよ条例の灯を消さないでほしい」との意見が相次いだのを受けて、いったん条例案を取り下げることを決めました。
 6月議会の代表質問や一般質問の際には県内各地から駆けつけてきた障害者や家族らで傍聴席が埋め尽くされました。その中で条例案の撤回が議決されました。知事にとっては断腸の思いだったに違いありません。ただ、超満員の傍聴によって、議員や県庁事務局に、障害者や関係者がいかにこの条例の成立を切望しているのかをわかってもらうことができたと思います。

B現在〜
 その後の健康福祉常任委員会では自民党議員からも「条例案の趣旨には賛成している」「9月議会での成立に向けて努力したい」などの発言がありました。県健康福祉部では5人専従体制で障害者条例のためのプロジェクトチームを設置し、9月議会へ向けて取り組みを強めています。
 また、7月13日には研究会の野沢座長が県議会健康福祉常任委員会協議会に出席を許され、意見を述べる機会をもらいました。前日まで正式な日程が公表されなかったのですが、傍聴席は通常の満席(30〜40席)をはるかに超える47人が埋め尽くしました。

議会での研究会座長の意見発表

 7月13日の健康福祉常任委員会では、その場になってみないとどのくらい意見発表の時間が取れるのかわからない……という状況の中で出席が許されました。民間の研究会が議会に出席して意見を述べる、というのはかなり異例のことではあります。
 午前10時過ぎに始まった協議会は、県側の説明に対して議員からの質問や意見がほとんどなく、午前11時前には常任委員会の委員長が私(野沢)を指名して発言を許されました。協議会は正午までなので、あと1時間はあります。これならば当初の予定通り30分間は話せることになり、少しホッとしました。そこで、私たちがどうしてこの条例案を必要だと思っているのかをじっくり話すことにしました。撤回された条例案についての説明は県の事務局からこれまでにも議会で何度もしてきましたが、当事者の思いや熱意については私たち自身でなければ話せないからです。
 私自身が取材してきた知的障害者の虐待事件のひどさ、虐待されているわが子を救えない親の心情について、呪縛から親を解放するためには日常の差別を解消する以外にないこと、研究会での障害当事者同士の意見のぶつかりあい、ヒアリングやタウンミーティングで厳しい意見を浴びせられたり、感動する場面がたくさんあったこと、それらを通じて「障害種別を越えてお互いに理解しあい、社会のことも理解して折り合いを付けていく」という意味を私たち自身が見出してきたこと……などを訴えました。
 条例案に賛成してくれている公明党、社民党、共産党、市民ネットの議員で条例勉強会に出席してくれた人が何人も委員会にいて、この日も熱心に聴いてくれました。自民党の先生たちも身を乗り出すようにしたり、何度も強くうなづいたり、腕を組んでじっと目を閉じたりして聞いてくれました。これまでの県議会でこの条例案が議論されるときに何度も野次が飛んだり、冷笑が聞こえたりしましたが、この日はまったくありませんでした。
 30分の意見陳述が終わると、各会派の議員からさまざまな質問が出ました。「適用除外の規定は、あいまいではないのか」「県の責務に関する規定が甘いのではないか」「県議会での議論で誤解されていると感じるのはどこか」「ここだけは修正しないでほしいというところを教えてくれ」「野暮な質問だと思われるかもしれないが、親の思いが強すぎて障害者本人のためになっていないこともあるのではないか」……。どれもこれも貴重な質問でした。
 せっかくの機会なので私自身も誠心誠意、答えようと努めましたが、慣れない場所で緊張していて必ずしもうまく答えることができなかったかもしれません。もう少し、説得力のある説明ができたものもあったのですが、少し消化不良で時間切れになってしまいました。ただ、私たち研究会をはじめとする障害者、親、関係者の誠実な思いだけはぶつけられたのではないかと思います。

傍聴者の感想

 急な日程だったにもかかわらず、各地から大勢の人たちが傍聴に来てくれました。関係MLなどに書き込んでぃれた感想を要約してご紹介します。

◆委員会に出られている方がどの会派の方か紹介が無いので良くわかりませんでしたが、野沢さんのお話の後の表情が少し心なしか厳しい顔がゆるんで見えたのは私だけだったでしょうか? 情で物事がうまくいくとは思いませんが少しは障害を持つ親、当事者の気持ちがわかっていただけたのではないでしょうか。また条例案を作り上げた苦労、そこまでの過程をも解っていただけたかと・・・。今日が条例見直し9月県議提出へむけてのスタートになるのですよね。ともあれ条例作成への研究会の思いが欠けることなく良い修正がなされ9月成立を願うのみです。今日は急遽で傍聴されなかった方もありましたが50席?全ては埋め尽くせなかったものの関心度の高さ、多くの目が注目しているとの思いは伝わったと思います。

●少し遅れましたが、11時15分過ぎに入り込むことが出来ました。ちょうど、野沢さんの話が終わったところで、議員からの質問が始まるところでした。内容については、どういう手順で、9月議会に提案されていくのか、ということがやりとりされ、なんどか、9月議会までに、この常任委員会が開催されていくことで、合意されたように思えます。ただ、修正の範囲については、これからせめぎあいになってくるのだろうなと、議員の質問を聞きながら思いました。傍聴者がまず、退席して、なんとなく野沢さんが出てくるのをみんなで待つ気分なり、しばらくして、退席してきた野沢さんに、拍手がでました。だれも、よい感触を掴んでいて、今までの中で、ずっとよい、という印象を受けていました。隣の部屋が空いていたので、係りの人の了解を得て、10分くらいでしたが、静かだけれど、よい雰囲気の集会を持ちました。

■場内は大勢の議員さんが大反対していた案件を議論しているとはとても思えないいい雰囲気に感じました。皆様、今、私はこのような場面に立ち会えた幸せをかみ締めています。昔、「何故私だけこんな目に遭うのか。」と一人嘆いたことがうそのように思えます。でも、まだまだ、一人で苦しむ人も多く、ごく最近、埼玉で父子心中事件が起き、障害のある息子さんが亡くなられました。本当の原因は新聞だけでは判りませんが、周囲に支援する人やそういった環境が整っていなかったからだと察せられます。妻が突然入院したことで、心理的に追い込まれたのだとも言われていますが。この条例が障害者や家族を孤立させない社会になるのにとても有効と思います。あの感動の一言「勝利の女神だね。」と言ってくれる人々が増えるのですから・・・。これからも出来るだけ傍聴していきたいと思っています。

条例の成立を願う会カンパのお願い

●銀行名   千葉銀行  店番号 011(市川支店)
●口座番号  普通  3685907
●口座名義  千葉県手をつなぐ育成会  会長 田上 昌宏

<呼びかけ人> 田上昌宏(千葉県手をつなぐ育成会会長)/竜円香子(同権利擁護委員長)/大屋滋(日本自閉症協会千葉県支部長)/土橋正彦(市川市医師会長)/植野慶也(千葉県聴覚障害者連盟会長)/野内恭雄(千葉県精神障害者家族連合会会長)/成瀬正次(障害者差別をなくすための研究会委員・全国脊髄損傷者連合会副理事長)/佐藤彰一(同・法政大大学院教授)/高梨憲司(同・視覚障害者総合支援センターちばセンター長)/野沢和弘(同・全日本手をつなぐ育成会理事)
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