千葉・ちいき発


やっぱり必要、みんなで作ろう!58

 千葉県議会健康福祉常任委員会が10月5日に開かれ、障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例案が可決されました。それに先立つ自民党の議員総会でも条例案を可決することが決定し、11日の本会での成立が確定的になりました。委員会の部屋は小さかったので20人しか傍聴できませんでしたが、午前2時前に可決した瞬間、傍聴席は感激の空気に包まれました。思わず笑みを漏らす人、顔を紅潮させる人、目を赤くする人……。長い道のりでしたが、ようやく条例が成立しようとしています。傍聴した人の報告と各地から届いているエールを紹介します。

山田晴子さんからの報告

 約20人が健康福祉常任委員会を午前10時から傍聴していました。条例案の議論が始まったのは午後1時半ごろだったでしょうか。それまでの長かったこと・・・。はじめは病院関係の議事だったので県庁関係者も少なかったのですが、11時から山口健康福祉部長や安藤障害福祉課長ほか、健康福祉部の方々がたくさん入ってきました。そして補正予算についての議論になりました。
 午後になって、石橋委員長から「第6号議案 障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例案を審議します」と告げられたときは、会場に緊張感が走ったような気がします。
 委員からは厳しい質問がつづきました。どの質問も条例案を読み込んでよく理解した立場からのものに思われました。それだけに、一時はどうなることかと思いました。でも委員長が「これより討論に入ります」と言い、賛成か反対かを明確にしてその理由を述べる場面になると、全員が賛成の議論をしてくれました。「800の事例からスタートして、当事者の思いに発した条例」「修正されたとは言え、これまでの過程そのものを大切にし、光をあてるべき」「条例が成立すれば、ちがう立場の人たちを認めやすい社会に近づいていく」・・・聞いている私たちも胸が熱くなっていきました。今まで何回も常任委員会を傍聴しましたが、これほど中味のある議論を聞いたのは初めてのような気がします。傍聴席が少なくて、多くの人が聞けなかったことが残念です。
 自民党の委員から「賛成の立場だが付帯決議をつけたい」という意見が出たときも一瞬緊張しました。まず条例案について採決するのが先で、それから付帯決議をするかどうかを話し合うことになり、議論が整理されたのでほっとしました。付帯決議について反対意見もありましたが、賛成多数の形で「可決すべきものと決定」されました。
 条例についての審議が終わったときには午後の3時を過ぎていました。長い一日でした。ここまで来る過程そのものが、立場がちがっても話し合いによって理解しあい、折り合いをつけて解決するという条例の基本精神によって進んできたことを実感しています。
 みなさま、10月11日の本会議の傍聴にご参集下さい。採択されたら、また新しい一歩が始まります。

私(野澤)からの報告

 各会派の質問は厳しいものでした。「どうして障害の定義が変わったのか」「県の指定機関がなくなっては実効性が保てないではないか」「国の動向を見て…というが、国は遅いんだ。せっかく千葉が国に先駆けてよいものを作ろうとしていたのに、なんで後退する必要があるのだ」
 ほんとうにその通りです。聞いているのがつらくなってきました。あんなに優等生だったわが子がぐれてしまい、その非を言い募られているような感じがしてきました。
 しかし、厳しい質問をしている議員自身が悔しかったのだと思います。こんなに応援してきたのに、自分たちが知らないところであちこち修正されたり削除されたりして、すっかり見た目が変わってしまったのですから。
 それでも、みんな賛成してくれました。「800事例を集め、障害者への差別はあるのだという現実を直視するところからスタートした経過がすばらしい」「2年にも及び県民が障害者計画をつくり、研究会で議論し、タウンミーティングを開いて意見を聴いてきた。その精神は最終案にも貫かれている」「すっかり光を失ってしまったように思えるが、条例を成立させ、もう一度みんなで磨いて光らせてほしい」「条例が成立するのがゴールではない。これをスタートにして障害者の差別のない社会を作っていくことが大事」。
 立場を超え、メンツを捨て、障害のある人のために賛成してくれた県会議員のみなさん。ほんとうにありがとうございました。まだ強行に反対している一部の議員はいるようですが、なんとか11日には全会一致で、全国初の条例を誕生させてほしいと思います。

※ 千葉県政記者クラブの各社から取材を受けました。研究会座長としてのコメントをくれと言われたので、次のようなものをファクスしました。

 健康福祉常任委員会で本日、「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」が可決されました。真摯な議論を重ねていただいた各会派のみなさんに感謝申し上げます。
 最終案を見ると、@差別の定義が分野ごとに明記されていることA地域相談員、広域専門指導員、調整委員会などの機関を設置し、具体的な差別事例の解決手続きを定めていることB調査、助言、あっせん、勧告、意見聴取、訴訟の援助などが明記され、実効性を担保していること−−など画期的な内容になっています。
 障害の定義の変更、勧告の削除など、私たち研究会がまとめた原案から後退した印象を受ける部分もありますが、さまざまな価値観を持つ600万県民に幅広く受け入れられるよう、県議会の場で真摯な論議を尽くした結果によるものとして受け止めたいと思います。
 この条例案は、差別している人を見つけ出して白黒つけて罰するのではなく、立場や価値観の違いを互いに認めあい、話し合いによって理解を深めて、折り合いを付けていくことが、基本コンセプトです。
 研究会が立ち上がってから2年近く、議会に提出されてからも8カ月という時間が過ぎましたが、今日に至る過程はまさに条例の基本理念を体現したものだと思います。それぞれの立場や面子や価値観を超えて、障害者のために条例成立に尽力していただいた大勢の方々に改めて感謝したいと思います。11日の本会議では全議員の賛成によって成立することを心より願っています。
千葉県障害者差別をなくす研究会座長  野澤和弘

各地からのエール

 この条例を応援してくれている人は全国各地に大勢います。固唾を呑んで千葉県議会の状況を見守っています。そうした人々から、常任委員会で可決した一報を聞いての乾燥が寄せられています。その一部を紹介します。

●おめでとうございます。苦しみの中から喜びが生まれる・・・という言葉がありますがまさしくご苦労さまでした。結果よければ全てよしですね。皆様のご努力が報われてほんとうにおめでとうございます。

(前自民党衆院議員・八代英太)

●速報、見ました。よかったですね! 本当にひさしぶりの朗報で、ぼくらの胸も少し明るくなれました。ありがとうございます。

(ぶどう社・市毛研一郎)

●すごい前進ですね。とくに、ほんとうはもっと議会の構成の違う東京、神奈川、大阪、京都などが先頭を走っても不思議ではないのですが、条件的に不利なはずの千葉県の奮闘はすごいと思います。11日の朗報をお待ちします。

(日本社会事業大教授・佐藤久夫)

●なかなか議会傍聴する機会がとれず残念でしたが、11日はやっと無理にでも空けられる日に重なりました。議会の中までは入れないと思いますが、外ででも「歴史的な瞬間」に 立ち合わせてください。千葉が&全国が変わる大きな一歩、ですね。

(白梅学園大教授・堀江まゆみ)

●ご報告ありがとうございます!報道でも見ました。(というか、池田直樹弁護士がMLで回してくれました。)よかったですねえ。本当に嬉しいです。他の自治体とも手を組んで、この条例を全国に広めていけるような、活動をできないで しょうか?

(黒岩海映弁護士)

●わが国で初めて成立した(する)条例です。罰則規定は設けることなく、公表はされない(自民党が公表に抵抗した?)とのことですが、いずれにしても、「差別とは何か」について思いをはせる時間を多くの人たちが持ったことこそ意味があるのでしょう。こうした条例によらない地域社会でありたい。そのためにこの条例があり人々が気付くきっかけとしたい・・・・がコンセプトですよね。千葉県発の確固たる思いを発信しつづけてくださるよう期待しています。

(長野・西駒郷の山田優さん)

条例の成立を願う会カンパのお願い

●銀行名   千葉銀行  店番号 011(市川支店)
●口座番号  普通  3685907
●口座名義  千葉県手をつなぐ育成会  会長 田上 昌宏

<呼びかけ人> 田上昌宏(千葉県手をつなぐ育成会会長)/竜円香子(同権利擁護委員長)/大屋滋(日本自閉症協会千葉県支部長)/土橋正彦(市川市医師会長)/植野慶也(千葉県聴覚障害者連盟会長)/野内恭雄(千葉県精神障害者家族連合会会長)/成瀬正次(障害者差別をなくすための研究会委員・全国脊髄損傷者連合会副理事長)/佐藤彰一(同・法政大大学院教授)/高梨憲司(同・視覚障害者総合支援センターちばセンター長)/野沢和弘(同・全日本手をつなぐ育成会理事)
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