注目される「共用品」思想 誰にでも便利、急速に広がる  超高齢社会に不可欠な「共用品」「共用サービス」の思想が注目されています。  だれもが使いやすい「モノ」や「サービス」を表す思想です。  あからさまな「高齢者用」「障害者用」に見えない、さりげなさが身上ですから、使う人の誇りを傷つけることがありません。  共用品の始まりは「共遊玩具」でした。目が見えなかったり、耳が聴こえなかったりする子どもたちが、目や耳に不自由のない友だちと一緒に遊べるオモチャです。玩具メーカーのタカラ・トミーで始まったこの試みは、他のメーカー、さらに、海外にも広がり、世界共通のマークもできました。  目の見えない子と一緒に遊べることが一目で分かる「盲導犬マーク」、耳の聴こえない子が一緒に遊べる、耳の大きな「ウサギマーク」です。  このような考え方に共鳴した人々が出会って、91年にE&Cプロジェクトが誕生しました。Eはエンジョイメント、Cはクリエイションの頭文字。  参加資格は個人ですが、メーカー、教育、行政、サービス業と職種は様々。困りごとに寄り添い、特技を発揮する中から次々と製品やサービスが生まれました。  例えば、目が見えない人が、シャンプーの容器に輪ゴムを巻いてリンスと区別していたのをヒントに、側面にギザギザをつけるアイデアが生まれました。ただ、ギザギザがリンスについているか、シャンプーについているかがメーカーでとにバラバラだったら、消費者は困惑します。そこで業界全体で共通のルールをつくる話がまとまりました。  髪を洗うときは誰でも目をつぶります。見える人にも見えない人にも便利な「共用品」が誕生したのでした。  この思想を広め、製品やサービスが市場に出回ることを目標に99年、財団法人・共用品推進機構が設立されました。企業も関心を寄せるようになり、ソニーは指先の力が弱い人でも操作しやすく、耳が聞こえにくい人にも便利なラジカセを開発しました。TOTOが障害のある人のために開発した温水洗浄便座は、障害がない人にも便利なので、急速に普及してゆきました。  内閣府の障害者政策委員会が昨年暮れにまとめた「意見」にも、日本生まれのこの思想が盛り込まれました。      社会保障制度改革国民会議が、新政権のもとで近く再開されます。 「給付と負担の見直し」のような狭い枠組みにとらわれない、視野の広い改革論議が期待されます。  年齢、障害といった縦割りを超えて制度を共用化し、必要な支援を届けることを「普遍主義」といいます。だれもが実感できる制度になれば、税金が高くても、満足感が得られるのではないでしょうか。 【普遍主義と共用品思想】  日本の消費税5%に対し北欧・西欧では20〜25%と高いが「税金をとられる」という日常語がない。  支払った税金が、一般の家庭に教育や保育や医療や福祉のかたちで戻ってくる「普遍主義」の政策がとられているためと考えられている。利用する人の誇りを大切にするところも、普遍主義と共用品思想は共通している。