メディアと冤罪
|
(2010年9月5日朝日新聞より)
写真は、自宅でインタビューに応じる村木厚子・厚労省元局長=埼玉県内、山本裕之撮影
郵便割引制度をめぐる偽の証明書発行事件で起訴され、無罪を主張している厚生労働省元局長の村木厚子被告(54)が10日の大阪地裁での判決公判を前に、朝日新聞の単独取材に応じた。164日間の逮捕・勾留中に検事とのやり取りを記したノートなどを手にしながら、「(公判では)やれることをすべてやった。真実は強いと思っています」と今の心境を語った。 (板橋洋佳、平賀拓哉)
元局長は昨年6月、自称障害者団体が同制度を利用するための偽の証明書を発行するよう部下に指示したとして、虚偽有印公文書作成・同行使容疑で大阪地検特捜部に逮捕された。元局長と弘中惇一郎・主任弁護人から判決前の記事化について承諾を得た上で、2日に埼玉県内の元局長の自宅で取材。元局長は容疑者自身が取り調べ状況などを記す「被疑者ノート」などの記録をもとに振り返った。
■検事取り調べ
取調室は私、検事、事務官の3人。そこで、検事は特捜部が作った私が知らない事件の「ストーリー」を繰り返しました。途中で「そうかもしれない」と思い、自信を持って否定できなくなる。「魔術」にかけられそうな怖さがありました。
■拘置所164日間
朝晩の点呼の時は自分につけられた「13番」と答えました。昨年6月14日の逮捕の翌日、容疑者が裁判官の勾留質問を受けに行くための専用バスに乗る際、初めて手錠と腰縄をつけられました。腰縄をきつく締められた時、「これが犯罪者の扱いなんだ」と感じました。
■「真実は強い」
やれることは全部やりました。言えることは全部言いました。真実は強いと思っています。静かな、落ち着いた気持ちで判決を待っています。 ◇
〈郵便不正事件〉 障害者団体向けの郵便割引制度を悪用し、実態のない団体名義で企業広告が格安で大量発送された事件。大阪地検特捜部は昨年2月以降、郵便法違反容疑などで強制捜査に着手。自称障害者団体「凛の会」が同制度の適用を受けるための偽の証明書発行に関与したとして、村木厚子元局長や同会の元会長ら4人を虚偽有印公文書作成・同行使罪で昨年7月に起訴した。 |
|