医療費と医療の質の部屋

要望書

2008年2月1日

厚生労働大臣 舛添 要一 殿

全国薬害被害者団体連絡協議会
代表世話人 花井十伍
(構成団体)
財団法人 いしずえ(サリドマイド福祉センター)
イレッサ薬害被害者の会
MMR(新3種混合ワクチン)被害児を救援する会
大阪HIV薬害訴訟原告団
財団法人 京都スモン基金
陣痛促進剤による被害を考える会
スモンの会全国連絡協議会
東京HIV訴訟原告団
薬害肝炎全国原告団
薬害筋短縮症の会
薬害ヤコブ病被害者・弁護団全国連絡会議

 全国薬害被害者団体連絡協議会(略称「薬被連」)は、薬害被害者当事者団体のみで構成される唯一の連絡協議会です。私たちは薬害被害の教訓を生かし、薬害根絶を実現するべくさまざまな活動を行っています。
 私たち薬害被害者は「薬害根絶誓いの碑」が厚生労働省の敷地内に建立された8月24日を「薬害根絶デー」として、毎年、厚生労働大臣に直接要望書を提出し、議論を重ねてきました。
 本日は、ここ数年続けてその要望書の中でお願いしてきた「医療機関窓口でのレセプト並み明細書発行」の件に関わる緊急の課題について下記の通り要望致します。

1、医療費の詳細な明細書を全ての患者に発行してください。

 医療機関の窓口で、薬剤名なども全て記載したレセプト相当の詳しい明細書を、全ての患者に発行することを義務化してください。特に、レセプト請求をオンライン化している医療機関に対しては、即刻義務化をしてください。その他の医療機関についてもできるだけ早期の実現を要望します。現在のように、患者から請求があった場合のみの発行にとどめたり、発行を医療機関の努力義務のままにしておくことは、厚生労働省が推進する医療安全対策や薬害防止対策に大きく矛盾します。

2、医療費の詳細な明細書を無料で発行してください。

 医療機関の窓口で、薬剤名なども全て記載したレセプト相当の詳しい明細書を患者に発行する際には、無料で発行することを義務化してください。特に、レセプト請求をオンライン化している医療機関に対しては、即刻無料での発行を義務化してください。その他の医療機関についてもできるだけ早期の無料化を要望します。2006年の5月に川崎二郎厚生労働大臣(当時)は、国立系の医療機関に対して無料で発行するよう指示したことを明言しています。また、厚労省中医協の検証調査では、一部の医療機関で、1枚の発行に対して5000円の手数料をとるなど、患者の発行依頼に対して法外な要求をしている医療機関が放置されていることが明らかになっています。

3、DPCの場合でも、詳細な内容を明細書に記載してください。

 医療機関の窓口で、レセプト相当の詳しい明細書を患者に発行する際には、医療費が包括払いになっている場合でも、個々の薬剤名などの詳細な内容も必ず付記することを義務化してください。

以 上

補足

○薬害エイズ事件のいわゆる第4ルート問題や、薬害肝炎事件などでは、厚労省がそれらの血液製剤が納入された医療機関名を公表しましたが、カルテやレセプトの保管期間が過ぎてしまっていたために、患者の多くが投与された血液製剤の商品名を知ることができませんでした。また、知らない間に点滴の中に入れられていた陣痛促進剤による産科医療事故が繰り返されている現状もあります。これらの問題は、レセプト相当の詳しい明細書がその都度、患者に渡されていたら防ぐことができる問題です。

○福田康夫首相や舛添要一厚労大臣は、薬害肝炎被害者に対して、今後の薬害防止に努め、同じような被害者の苦労を今後国民の強いることにないように努力する旨の発言をしました。また、そもそも厚生労働省は自ら、「患者と医療者の情報共有、国民と医療機関の情報共有が医療安全のために欠かせない」とする報告書を、医療安全対策検討会議でまとめています。このように薬害・医療被害の防止の観点から、レセプト並みの詳細な明細書を医療機関の窓口で全ての患者に無料発行することは欠かせないと考えます。

○薬害等の医療被害者たちの運動によって、小泉純一郎厚労大臣(当時)が国会で「子どもが病院で死んでいるのに、親にレセプトさえ開示しないというのであれば憤慨に堪えない」という主旨の答弁をし、97年6月に患者に対してレセプトを開示するように通知が出され、98年4月から多くの保険者でレセプト開示の運用が始まりました。それから10年が経ちます。この間、薬害等の医療被害者たちは、保険者によるレセプト開示ではなく、医療機関の窓口で自己負担分を支払う際に、レセプト相当の詳細な明細書を無料で全患者に発行するよう求め続けてきました。

○保険者によるレセプト開示では、実際に医療を受けてからレセプトを入手するまでに数ヶ月かかる上、1ヶ月分まとめて記載されているためにいつのものかわかりませんし、患者はわざわざ、保険者まで出向いて請求する必要があります。一方、医療機関の窓口での発行では、電算化を終えた医療機関は、自己負担分を請求する段階で明細書発行に必要なすべての情報は入力済みですし、現在発行している領収書の様式を少し変更するだけで可能になり、既に、すべての患者に無料で明細書を発行している医療機関では、発行を始めてから、医療費に関する医事課窓口への問い合わせが減ったということが報道等で伝えられています。

○一昨年(2006年)8月24日に薬被連が川崎二郎厚労大臣(当時)に直接手渡した要望書は以下の通りです。
『薬害の被害拡大防止や医療安全確保のために、患者と医療者が情報共有できるよう、医療機関の窓口で薬剤名なども全て記載されたレセプト相当の詳しい明細書を、全ての患者に発行するよう取り組みを始めていただきたい。とくに、診療記録をIT化した医療機関についてはすみやかに明細発行を実現するよう指導してください。』

○昨年(2007年)8月24日に薬被連が柳澤伯夫厚労大臣(当時)に直接手渡した要望書は以下の通りです。
『医療機関の窓口で薬剤名なども全て記載されたレセプト相当の詳しい明細書を、全ての患者に発行することを義務化してください。現在のように努力義務のままにしておくことは、厚生労働省が推進する医療安全確保対策や後発医薬品使用推進による医療費削減政策に大きく矛盾します、できるだけ早期の実現を要望します。』

○にもかかわらず、本年一月に中医協が出した診療報酬改定の骨子案では以下のような記述となっています。
『診療報酬上の算定項目の明細書について、オンライン請求義務化の対象となる病院については発行するための事務処理体制が整っていると考えられることから、実費徴収を認めつつ、患者の求めに応じて、明細書の発行を義務付ける』この骨子案の中の「実費徴収を認めつつ、患者の求めに応じて」とあるところは、「無料ですべての患者に」とすべきです。

○私たち薬被連は、この骨子案に対する意見を添えて、中医協の公聴会での意見発表を申し込み、薬被連を代表して薬害肝炎東京原告団の浅倉美津子さんから、私たちの上記要望に添った意見陳述をしました。しかし、中医協は国民に対して意見募集を行ってはいますが、そもそも患者は、日常の医療において、中医協が決めている医療費の単価の明細を知らされておらず、意見を述べるために必要な情報が与えられていません。また、明細書の発行のあり方については、厚労行政全体のあり方にも関わる問題であり、厚生労働大臣自らの判断をお願いしたく、要望するものです。

 以上、よろしくお願いします。

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