北欧ところかわれば・留学生発


ベクショー便り1(February 02, 2002 2:48 AM)

ようこ@ベクショー大学の寮 my roomです。やっと自分のパソコン(日本語!)が使えるようになりましたので、お知らせします。ほっ。
こちらは、寮の各部屋までLAN回線がひいてあり、手続きすれば無料です。

さて、少し落ち着いてきた所で、こちらの学生生活についてご報告です。
とても私的なことでごめんなさい。お忙しい方は、どうぞ読み飛ばして下さいませ☆

ベクショーはスウェーデン南部のこじんまりしたまちで、人口は73000人程です。
森に囲まれた地域で、中心部から少し離れると比較的さみしい風景。とはいえ、
大学の近くにも湖がいくつかあり、晴れ・雪の日にはとても美しくて感動です。
雨風や雪はありますが、想像した程は寒くありません。噂どおりの暖房完備(暖房しすぎ?)。

私の住む寮は、看護&ソーシャルワーク系の校舎とくっついているので1分で教室に到着!です。部屋は8Fで見晴らしが良好。
今回は、「こちらの寮生活」についていくつかご報告です(^_^)。

1.年代・国籍・身分がごちゃまぜ
・・・高校生、(主に)大学生、たまに働いている人や先生も。私のいるフロアには、スウェーデンの人が3分の2くらいですが、その中にも昔移民してきたユーゴスラビア人姉妹やチリ人がいます。留学生も、私の他にオランダ人とドイツ人がいます。みんなかなり親切ですが、生粋のスウェーデン人でない人の方がより親切というか、とっつきやすい印象。同じ体験をしたからでしょう。留学生に対しては、誰もが当然のように流暢な英語で話してくれます。

2.食生活はきわめてシンプル
・・・朝、昼、夜問わず同じようなものを食べている人が多い。パンにチーズとハムなど、保存食の国だなと思います。リビングに適当に集まって、MTVなど見ながら食べています。音楽ガンガンかけたりしていて、とにかく余り周りのことを気にしない。気ままです。

3.週末にコワレル
・・・平日は特に娯楽もなく暮らすせいか、金曜&土曜の夜はにぎやか。寮にも最上階にパーティールーム的なものがあり、わーわーやっています。学生はまず集まって家で飲んでから、夜11時頃にパブなどへくりだし、帰宅は朝の4時くらい。こちらでは、それが普通とのこと。特に「スウェーデン人は酔うと豹変」という評判です…。寮でできた友達に連れられて、ダンスフロアにも行ったのですが(照れつつも!)なかなか面白かったです。でもまだ恥ずかしいっ。あとは、留学生向けに「学生組織」がイベントを企画しています。

4.Vad kostar det? (= How much it costs?)
・・・授業料はただなので、寮の部屋代のみを大学に支払います。私の場合、4ヶ月半で10426SEK(約15万円)。 水道、暖房、洗濯機、キッチン設備(共有)込みです。後は、もちろん必要な食費・生活費・テキスト代などは自分で。 週2程度のスウェーデン語の授業も、無料で受けられます。ちなみに、私の部屋にはベット・机・洗面所・シャワー・クローゼット・本棚・椅子があります。快適な広さ。

ベクショーにきて10日ですが、私にとっては珍しいことが多く、きょろきょろしながらの毎日です。まだ勉強・研究というよりも、”スウェーデン生活への順応期間”といったところ。まだまだ、これからです。

次回は「老年学」(受講中)についてなど、もう少しまともな内容をお伝えしようと思います。それでは、みなさまお忙しいかと思いますが、お元気で!

P.S.ストックホルムのアーランダ空港で、車椅子をたくさん見ました。二つの写真を、別だて(次のメール)で添付します。
1.待合室に堂々とならぶ、車椅子
2.車椅子を移動する係のおじさん(頼んでとらせてもらいました(^_^)
 


春の陽射しのベクショー便り2(Saturday, May 04, 2002 3:09 PM)

みなさま、お元気でお過ごしでしょうか?sweyoko@ベクショーです。
ご無沙汰ばかりしているうちに・・お許しを・・、
スウェーデンにも春(らしきもの)がやってきてしまいました。
鳥が鳴きはじめ、湖の氷がとけ、と本当にそのような感じです(^_^)。
おまけに、denyokoさんもdenmarkに旅立ってしまいました。
もう4月。ベクショー生活も、2ヶ月をこえました。まさにTime flies!!

さて、気を取り直して近況報告です。
ひとまず、障害者福祉のコースで、まじめに!文献etc.を読んでレポートを書いたり、フィールドワークに出かけたりしています。
今週は授業で、精神医療(精神病etc.)の基礎について習っています。
また、自分のテーマ:高齢者福祉に関係する所を訪問したりしています。
「年金生活者の集まる所に、謎の東洋人少女(?)現る」状態、かも…。

今日は、フィールドワークのご報告をさせて頂きますね。
障害者福祉に関わる所を、3ヶ所訪問しました。どこもオープンで、何でも気軽に見せて下さるので、びっくりでした。
1.グループホーム
2.デイセンター(知的ハンディがあるが体は比較的動く人)
3.デイケアセンター(身体のハンディが重度で、コミュニュケーションが相当難しい プラス、知的ハンディもある人)

私が面白い!と感じたことを、数点ずつご紹介します。
私などより、北欧や障害者福祉に関して既に詳しい方ばかりなので、お恥ずかしいのですが…。初心者のコメント、と思ってお読みくださればと思います。
そして、最後にまとめを少々。長いのですがお許しを。

★グループホーム★…5人が生活、スタッフはほぼ3人。

  • ともかく、「ゆったり」。空間、時間、雰囲気とも。情けない表現力ながら、シンプルに「いい暮らし」だなぁと感じる生活レベル。
  • 各自の「部屋」ではなく、各自の「アパート」。
    今更、外見的な所ばかりに驚くのもどうかと思いつつ。それでもやはり 「キッチン、リビング、寝室、シャワールーム」がそろったモダンなアパートを みると素直に驚きます。北欧は一般的に、住環境に力をそそぐようですが。(一方、日本に比べると"食"は相当質素ですし)
  • 福祉の現場の「テクノロジー」。
    補助器具がとにかく充実。部屋中にはりめぐらされた(体を持ち上げる)リフトのレールや、パソコン、食事用の細ごましたもの、もちろん車椅子も。
  • 自己決定。一例として、身体・知的とも重度の若い男性の部屋の前に貼ってあった「Masseのルール」より一部抜粋します。(&写真添付)こちら風だな、と妙に感心。
    ”部屋に入る前に、必ず僕に確認をとること”
    ”緊急の場合を除いて、僕がいない時は入らないこと”etc.。

★デイセンター★…日本の作業所的な雰囲気で、6-7人程度の利用者。

  • ここも、各自に合わせた補助器具が豊富。それぞれ、袋詰めなど自分にあった作業をする。
  • 昼食は、近くの老人ホームのレストランに毎日みんなで食べに行く。
  • 彼らの余暇について。平日夕方を主として、コミューン主催の「プログラム」があり参加できる。ボーリング、話し合い、料理、ディスコ、旅行など。(一般的に、スウェーデン人はサークル活動好きなので、その影響?)

★デイケアセンター★…当日は3人の利用者(うち1人にはパーソナルアシスタントがずっとついていた)と2人のスタッフ。

  • 時間とスタッフが、たっぷり。
    舌でYes/Noを示すことが限界の人でも、時間をかけて根気よく「ブリステッケン」(絵文字の一種)で会話。このデイケアは、コミュニケーションをとるため、またその練習をしたい利用者が主。
  • パーソナルアシスタント、不思議な黒子(?)。
    目となり、耳となり、手足となり、口にもなる。常に利用者のそばについているパーソナルアシスタントを、初めて実際に見ました。
  • オープンに、障害について話す。
    「自分は出生の時の問題で障害をもっていて、これは生涯よくはならない」と本人とスタッフが話題にするそうです。
    「あー、うー」としか声を出せず、耳もきこえない、車椅子にずっと寝た状態の男性が、実際に簡単ながらも”文章”をつくって、スタッフと”冗談”を交し合っていました。以前は言葉が出せないために、「何も理解できない障害者」と思われていたという人です。今でもベッドに放っておかれたら、”寝たきり”以外の何者でもないはず。色んな資源をつぎこめば、私が今日聞いたように、「僕のアシスタントが病欠だから、あの人に代わりに来て欲しいけど、週40時間労働を超えちゃうから(←北欧らしい*^^*)無理かな」という内容のコミュニケーションを取れる人だったのです。驚きました。

<最後に>
障害者福祉のことを、ほとんど知らずにこちらに来てしまいました。
まさに「素人感覚」で見学しているかも知れません。でもだからこそ、日本からの団体見学者が「ハードをみて感嘆」してしまうのが、分かります。
広くて綺麗なアパート、立派な車椅子…目がくらんでも、仕方ないのかなと。
と同時に、当然ながら「表面だけをみて礼讃」したくはないと肝に銘じております。
「サービスやハードそのもの」のすごさ、これは事実。でもお金さえもっとかければこれはできる。(お金がまわってくる、所にたどり着くのも難しいですけれど)
しかし、なぜそんなハードができたのか?「根本概念」はいったい?
サービスそのものというより、「それだけの時間、お金」を障害をもつ人たちのために使って当然、という社会の合意に私は最も驚いています。
また陳腐な表現のようですが、結局は社会一般の「権利」意識の違い、
障害者福祉については、それが日本とは比較不可能な位に違うのだと思います。
日本でも素晴らしい取り組みは各地にあります。でも一般化しにくいのは、
その違いなのかなぁと考え込みます。
「誰でも障害をもつかもしれないんだから、これは権利」という感覚。
「皆と同じに、アパートに一人暮らしをして、昼間は働く場所がある」という権利。
福祉に関わる運動や、サービス、あらゆることの土台にある「権利」の意識。
これなしには、それこそ”表面”しか変わらないのだと思います。
もちろん、北欧の福祉にも様々な問題はあるという大前提の上で、
それでもベクショーでのフィールドワークに、いい刺激を受けました。
本当は、私は”偶然”に「障害者福祉」コースに入ってしまったのです(^_-)-☆
でも「高齢者」しか見ていなければ、気づかなかったことを最近色々と考えます。
お忙しい所、ここまで読んで頂きありがとうございました。また、ご意見やご指導を
いただけたら嬉しいです。
添付写真は@Masseのルール・A友人の実家の風景です。(脈略ないですが、気分転換用に♪)

4月初旬、日本は慌しい時期かと思いますが、みなさまお体にはお気をつけて! それでは失礼致します。

吉岡洋子@今夜は静かな学生寮、より


若葉とみぞれのベクショー便り3(Friday, May 03, 2002 6:38 AM)

いつもながら、ご無沙汰しております。スウェーデンのようこです。
こちらは突然春が来たと思いきや、また雨の日が続いたりと夜に手袋はかかせません。
数日前はなぜか、みぞれが降りました…。ずぶぬれで自転車をこいで、泣きそうでした。
とはいえ、森には白いwild flowerがじゅうたんのように咲きみだれ、
木々には若葉が芽吹いて、町の色が明るくなってきました。
そして公園では、少年たちがサッカーをはじめました。

さて、今回のご報告内容は、4月にストックホルムで訪問した
スウェーデン初のボランティアセンターに関してです。
またもや少々長いのですが、お暇な時にお読みくださいませ(^_^)。

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<ビリヤン:スウェーデン初のボランティアセンター>
「ビリヤン」とは、the will(意思)という意味。
ストックホルムの中心部にある、非営利組織が運営主体のボランティアセンターです。
ノルウェーの事例を参考に、1993年に開設されました。
10年前まで、”ボランティアセンター”というものがスウェーデンに存在しなかった
というのも、少し驚きではあります。
(違う名称で、似た役割のものはあったに違いありませんが)

活動内容は、「住民による助け合い活動の仲介役」が主です。
例えば「水曜に、誰か病院についてきてほしい」と、誰かから連絡がきます。
すると、職員(二人)が登録メンバーをあたって、その日に都合がいい人を探す、
或いは職員自身がついていったり、という具合です。その他、住民が自由に集まって
コーヒーを飲んだり、バザーを開いたりもします。住民、といってもビリヤンに関わるの
はほとんどが年金生活者です。

「できる時にできるだけ、活動するのがボランティア」というのが大前提。
行政ではないが故の、”気軽さ””他分野””多世代”が持ち味ということで、
話をきいていると、なんてアバウトなんだ*^^*・・・と感じるほどです。
しかし、住民同士、時には住民と行政、住民と他の団体etc.の間に入り、
人との関わりをつなぐ役割を担っているようです。

スウェーデンで、いわゆるボランティア的な活動を見学すると、
必ず次の二点を強調されます。

  1. 行政は「仕事」、わたしたちは「(ボランティア)活動」この違い。
  2. スローガンは「孤独をうちやぶれ!」
    …これは、高齢者が主ですが、移民や障害をもつ人も含めてです。サービス量を増やすのが目的ではなく、「ちょっとした訪問や電話」「さみしい時に立ち寄れる」…そんな精神的支えになるための活動です。

ベクショーの高齢者団体、そして赤十字でも「孤独をうちやぶる」目的で
(高齢者に関わる)活動をはじめたのだ、とききました。親子同居の習慣がない
北欧ならではの理念かも知れません。スウェーデンのボランティアは、
”家族(代行)ボランティア”みたいだな、とふと思いました。

ビリヤンの活動は、日本のボランティアやNPOと余り変わらないようにも見えます。
ただ日本の場合は、「”サービス”を供給する」ボランティア活動がより多く、
スウェーデンでは、「”サービスの一歩手前”までの」活動が主であるようです。
公的サービスや社会背景の相違から生まれる、様々な違いが面白いです。

余談ですが、やはりfrivillig(=自発的)活動に携わる人は、
どこの国でも似ているような(^_^)。
ビリヤン職員の女性は、とにかくおしゃべり好きでにこやかで。
私もついつい、2時間ほど話し込んでしまいました。(ほぼ、聞き役で(^_-)-☆)

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次回は、先日訪問したベクショーの「(高齢者を介護する)家族の会」について
ご報告いたします。5月は、追い込み?であちこち訪問する予定ですので、それもまた。

最後の頃に「スウェーデンのひみつ -北欧の家事って?-」版を、書こうと計画していま す♪

それでは、みなさまよいGWをお過ごしくださいね!

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