ロスキレ便り1(April 16, 2002 11:07 PM)
やっと日本語でメールが打てるようになりました。こちらに来てはや10日あまり、色々なことがありましたので話しが色々に飛ぶかもしれませんがお許し下さい。
まずは私の住んでいるロスキレ(コムーネ:市)について簡単に書きたいと思います。
ロスキレはデンマークの首都コペンハーゲンから電車で約30分ほどのところにある人口約5万3千人のデンマークにしては比較的大きな街です!(デンマークにある275の市のうち、人口が2万人以上の市は52しかありません。)
1000年以上前から市の立つ古い街。同時に毎年6月末にはロスキレフェスティバルというヨーロッパ最大のポップミュージックのお祭りが開かれるモダンな街でもあります。
街の中心部には有名なロスキレ大聖堂があります。12世紀に建てられたもので、デンマーク歴代の国王38人の大理石の棺が納められています。
街の北には湾が広がり、大聖堂から見下ろす眺めは最高です。街から一歩外に出ると、自然が広がっています。
(これはデンマークでは、ほとんどどこもそうだ、という説もありますが・・・)
ロスキレはロスキレ大学をはじめとして学校などが多い町でもあります。
私の現在の状況を報告させていただきたいと思います。
私は大学の学部8、Social Sciencesに所属しています。
幸運なことに、大学では建物の中の一つの部屋に場所を頂いています。
3人部屋で各自に机とコンピューターがあります。簡易のキッチンもあり、昼食時には多くの学生がお弁当を持ってきたり、作ったりして一緒にご飯を食べています。
こちらのお弁当は簡単で、朝ご飯を食べながら5分くらいでつくれるのですが・・・
住んでいるのは大学内の寮で、4人で1つのフラットに住んでいます。
個室ですが、バス、トイレは2人で、キッチンは4人で協同です。
私はイタリアからの女の子2人、ドイツからの女の子1人と一緒です。
一度に長く書きすぎると後が続かなくなりそうですので、今日はこの辺で指?をおきます。
ロスキレ便り2「アクティビティーハウスについて」(2002年6月6日木曜日16:35)
こんにちは。福島@ロスキレです。
最近デンマークはとても暖かくなり、先週末から良い天気が続いています。
ワールドカップが始まりましたが、デンマークはサッカーが好きな人が多く、ここ数日ワールドカップで多いに盛り上がっています。
今回は、大学の学部時代にゼミ論文であつかった「アクティビティーハウス※」について書きたいと思います。またお時間のあるときにでもご一読頂ければ幸いです。
※アクティビティーハウスについては
http://plaza15.mbn.or.jp/~dssa/data/siryo/kizi_pdf/hukusima_2.pdf
に掲載していただいています。でもそれは長いので、概要を少し・・・。
アクティビティーハウスとはOdder市(人口約2万人)にある、おおむね介護を必要としない、生活全般を自分で行えるいわゆる元気な高齢者を対象とした、趣味活動の場所です。(どこの市にもあるというわけではありません)
アクティビティーハウスには手芸、ガラス細工、木工、トランプ、コンピューター、英語など様々なコースがあります。決まった曜日にそれぞれのコースがあり、その市に住んでいる60歳以上、もしくは早期年金をもらっている人が利用できます。
また、finvaerksted(日本語にだと素敵な作業場とでも訳したらよいでしょうか(以下、作業場と略します))というところは1週間ずっと空いていて、好きなことが出来るようになっています。
5月の終わりにOdder市を訪れました。以前アクティビティーハウスに行って以来手紙のやりとりをしている92歳のOdaさんに会うためです。そのときに、「アクティビティーハウスで私が作っているものを見に行かない?」と誘われ、思いがけず再びアクティビティーハウスを訪れることになりました。
アクティビティーハウスでは、職員のリーダーであるLarsさんに会い、アクティビティーハウス内を案内してもらいました。以前より変わったところがいくつかありましたのでそこを中心にご報告したいと思います。
☆素敵なガラスケース
アクティビティーハウスでは、利用者の人たちが木工細工などのコースや、上記の「素敵な仕事場」で作ったものを売っています。これは以前からそうだったのですが、以前は地下にある「作業場」の端の棚に陳列して売っていました。それを、利用者の方達の提案で、1階の入り口を入って直ぐの、インフォメーションの隣の大きなガラスのショーケースに陳列して売ることになったそうです。
そこには、利用者の方の作った色の付いたワイングラス、人形の洋服、ペンダント、クリスマスなどのカード、陶器など様々なものがありました。ガラスケースの写真を撮るのを忘れてしまって、それらの素敵なものをお見せできないのが残念です。私が訪ねたOdaさんの作った壁時計もありました。
これらの売り物は、利用者の方が自分で材料費を払って作り、販売価格は作った人が自分で決めるそうです。そして販売されるときには、制作者が決めた価格に10%プラスして売られます。それが売れるとその収入の10%がアクティビティーハウスの利用者の共同積立金に入れられ、残りを制作者がもらうことになっているということでした。
作品の販売については口コミで広がり、市内や市外からも人が買いに来ているそうです。
☆作業場にキッチンが
以前はなかったのですが、作業場の端にキッチンが作られていました。素敵なキッチンで、ガス台、冷蔵庫、流しのほかにオーブンや電子レンジもありました。これも、利用者の意見によって設置されたそうです。利用者はここでケーキを焼いたり、もってきたパンを温めたり自由に使えると言うことです。
☆「男性の料理コース」
2年前に準備中だった、「男性のみ」が参加出来る「男性の料理コース」というコースができていました。デンマークでも、今の60歳以上世代では、料理をあまりしたことない人が多いそうです。また、特に男性の中には、社会的な交流が苦手という方も多く男性だけのコース、というのは、そういう方にとって入りやすいということでした。
☆コンピュータールーム
コンピュータールームも新しくできていました。部屋には3台のコンピューターがあり、1週間に9つのコースがあるということでした。現在デンマークでは高齢の方にもコンピューターが人気のようで、コンピューターのコースは、アクティビティーハウスでも人気のコースのひとつだということでした。
☆ワゴン車の購入
アクティビティーハウスには利用者対象の1日旅行などがありますが、そのときに使うワゴン車が一台増えていました。これは利用者の共同積立金によって購入されたそうです。
☆利用料の値上げ
アクティビティーハウスを利用するには利用料が必要です。建物自体はほぼ1年中空いているのですが、コースは半期ごとに分かれています。そして半期ごとにアクティビティーハウス利用料と、コースごとにコース参加料がかかります。以前に来たときアクティビティーハウス利用料は半期100クローネだったのですが、今は200クローネ(約3,400円:1クローネ17円とした場合)に値上がりしていました。
以上、様々な変化がこの2年間(私が2000年の夏に調査をしてから)にありました。アクティビティーハウスはどんどん発展しているな、と感じました。また伺ったのが丁度お茶の時間だったのですが、2年前、3年前にお会いした方々がそのときと変わらずお茶の時間を楽しんでおられたのも印象的でした。
☆常に利用者主体のアクティビティーハウス
アクティビティーハウス職員代表のLarsさんは何かを紹介して下さるたび、「これは利用者の意見できまったものです」と言っておられました。以前に伺ったときもそうでしたが、「利用者主体の場」「職員は影のサポート、コーディネート」ということを強く感じました。そして利用者が自分たちの活動の場、社会的な交流の場を自ら楽しくしている、これがまたアクティビティーハウスがアクティブに発展していっているゆえんかな、と思いました。
おつきあい頂きありがとうございました。
では今日はこの辺で、失礼いたします。
福島in Roskilde
追伸:Odaさんは2002年の11月に亡くなられたそうです。もともとピアニストで、私が4年前にご自宅に伺った際にはとても素敵な演奏を披露して下さいました。90歳を過ぎてもいつも活動的でこんな風に年をとれたらと思っていました。ご冥福をお祈り致します。
ロスキレ便り3「ロスキレ大学について」(2002年10月1日火曜日17:03)
長らくご無沙汰しておりますがいかがお過ごしでしょうか。
福島@ロスキレです。
こちらは秋を通り越してすでに冬が来たような感じです。このままどんどん寒くなると思うと少しぞっとしますが、私自身はなんとか元気にやっています。
今回は、私の通っておりますロスキレ大学について、大学の発行している冊子と私の見聞きしたことを元に紹介したいと思います。
詳しくはロスキレ大学のホームページを参照下さい。
ホームページアドレスはhttp://www.ruc.dk/ruc/
英語バージョンはhttp://www.ruc.dk/ruc_en/about/
です。
★ロスキレ大学の位置
大学はロスキレ市の東、ロスキレ駅から電車で約5分のtrekroner(という駅のそばにあります。ちなみにtrekronerとはデンマーク語で3クローネ(クローネはデンマークの通貨の単位で1クローネ約17円です)という意味です。この駅名のせい(?)か駅にはなにもありません・・。おまけに、大学と大学の最寄りの駅の周りには何もありません。お店といえば大学内の食堂兼購買だけです。
★ロスキレ大学とは
ロスキレ大学は1972年に設立されました。現在大学には約8,000人の生徒、約700人の教授、研究者、約250人の技術的な管理スタッフがいます。そして約50の建物に分かれています。近年新しい建物も増え、規模も大きくなっているようです。
★ロスキレ大学での学習課程
大学は10つの学部に分かれ、それぞれに学士(Bachelor)、修士(Master)、ドクター(Ph.D.)コースが設けられています。デンマークでは、標準的には学士は3年、修士は2年、ドクターは3年です。ですので、学士で辞める人はとても少なく、日本でいう修士課程まで行くのが一般的だそうです。
ロスキレ大学では、最初の2年間は一般的な基礎的な事を学びます(Basic study)。分野は人間科学(the humanities)、自然科学(the NaturalSciences)、社会科学(the Social Sciences)の3つに分かれます。そしてその後、それぞれの学部を選択し、プラス1年の学士コース(Bachelor's degrees)、プラス2年で2科目のコンビネーションによる修士(Master's degreescombining two subjects)コース、プラス2年で1科目による修士(Master'sdegrees in a single subject)、プラス6年のドクターコース(Ph.D. degrees)に分かれます。コンビネーションとは、例えばコンピューターサイエンス学科とコミュニケーション学科両方で学ぶことです。
★ロスキレ大学の特徴
≪革新的な大学?≫
ある学生の話では、ロスキレ大学の設立は、そのころの既存の大学に対抗して、革新的な人々が、もっと活発な議論を通して学問を高めていこう、という運動のひとつの現れでもあったそうです。大学のパンフレットにも「ロスキレ大学は多くの分野でデンマークにおける伝統的な教育に対する考え、実践を壊してきた」とあります。
≪世界で最も議論の盛んな大学?≫
ロスキレ大学は、グループワークが盛んな大学として知られています。
例えばコペンハーゲン大学などは(日本でもそうですが)講義形式の授業が多いそうですが、ロスキレ大学はそれに比べて、グループワーク盛んです。例えばプロジェクトと呼ばれる授業の形態があります。プロジェクトとは、学生が平均4〜5人のグループになり、自分たちの興味のあるテーマについて教官の指導の元に論文(レポート)を書いていくというものです。
デンマークは議論が盛んな国です。そのデンマークの大学の中でも特に議論やグループワークを重んじるロスキレ大学は、世界で一番議論やグループワークが盛んな大学ではないか、とある学生は言っていました。私自身は、授業に出ていて、学生は議論になれているし、また議論したことを発表することが上手い、プレゼンテーション能力が高い、と感じました。
≪講義より議論!?…ちゃんと講義もあります≫
また別の学生の話は、少し皮肉って「ここ(ロスキレ大学)では、学生に議論をさせる。授業の予習で100ページ読んでこいと言われて読んでくるが、授業に出たら、先生は講義をしないで『はい、読んできたことについてグループに分かれて議論しなさい』という。それで(先生に)『理論などについてはどうなるのですか』と聞くと、『それは本に書いてある、それを議論して学んでいくんだ』といわれる。」なんて言っていました。もちろんその後で先生は助言、アドバイスをするのですが。もちろん講義形式の授業もあります。
近年は社会に出ても、チームで仕事をすることが多いため、大学でそういう経験が積めるロスキレ大学の評価もあがっているようです(ある学生の話)。
★大学の建物について
大学の建物の作りにも特徴があるようです。大学に来るとほとんどの建物は正方形の低い建物だということに気づきます。各建物は学部ごとに分かれていますが、各学部ひとつというわけではなく、学部の大きさによって複数の建物を有する学科もあります。
各建物はたいてい2階建てで、各階の真ん中に教室があります。そして教室の周りに廊下があり、その周りにプロジェクトの活動拠点となるグループルーム、教官のオフィス、建物の秘書さんのオフィス、論文を書く学生のための部屋、コンピュータールーム(ある建物とない建物がある)、キッチンがあります。お昼になると、キッチンを利用して持ってきた物を温めて食べたり、スパゲッティ等を作ったりする人もいます。
以上、簡単ですがロスキレ大学の紹介でした。
最後までおつきあい頂きありがとうございました。
日本も朝晩涼しくなってきたと思いますが、みなさまくれぐれもご自愛下さい。
それでは、失礼いたします。
福島in Roskilde
追伸:ロスキレ大学の周りは現在開発中で、どんどん新しい建物が建設されています。大学の周りの風景は、5年後には現在のものとはずいぶん違って来ると思います。
ロスキレ便り4「ロスキレ市議会について」(2002年11月8日金曜日19:04)
みなさまこんにちは。
福島@ロスキレです。
ますます寒くなってきています、デンマークです。
こちらでは10月末に一気に紅葉したかと思うとあっという間に葉は落ちてしまいました。
また10月の最終土曜日にサマータイムが終わり、一気に夜が早くなりました。それとともに、お店ではクリスマス用品が売られ、雑誌にはクリスマスの記事が登場し、すでにクリスマス気分が始まりつつあります。
さて、今回のデンマーク便りでは、8月に傍聴に行ったロスキレ議会についてお伝えしたいと思います。
☆ロスキレ議会について
まず、ロスキレ市議会について少し概要をお伝えします。ロスキレ市議会は25人からなっています。現在の議会は2001年11月の選挙で選ばれた議会です。
内訳は以下の通りです。
左党※(Venstre)8(3)*議席
社会民主党(Socialdemokratiet)7(2)議席
保守党(Det Konservative Folkeparti)4(1)議席
社会国民党(Socialistisk Folkeparti)4(1)議席
急進左派(Det Radikale Venstre)1(1)議席
デンマーク国民党(Dansk Folkeparti)1議席
※ 直訳すると左党ですが、左よりというよりは右よりの党です。自由党と訳されたりします。
*( )内の数字は女性議員
ロスキレ市は、伝統的に社会民主党が強い市で、1978年から2001年までは社会民主党が社会国民党と共に議会与党を取っていました。しかし2001年秋に行われた選挙では、2000年に、当時市長であった人が亡くなったり、長く社会民主党から出ていた議員が議員をやめたり、また全国的な流れあったりなど、様々な要因から、社会民主党は最大議席を取ることが出来ませんでした。現在は左党が最大議席を取り、保守国民党と、急進左派が与党を取っています。
デンマークの市長は、公選ではなく市議会によって選出されます。2002年現在のロスキレ市の市長は左党出身です。議会には経済委員会、技術・環境委員会、学校・子ども委員会、文化委員会そして社会福祉委員会があります。
前置きが長くなりました。それでは8月21日の議会の模様と感想をご報告いたします。
☆市議会場について
議会は街の中心、有名なロスキレ大聖堂の向かいにある市役所の2階の市議会ホールで行われました。ホールはそれほど広くなく、議員の席と3方の壁にそった傍聴席だけで一杯でした。
市議会ホールといってもホール内に段差はなく、議席は窓に向かって半円状に並んでいました。市長と副市長が半円の直線の側の中心に座り、市長が議長の役をしていました。議員の席は決まっており、票を得た順番に並んでいるとのことでした。
☆議題
議会では様々なことが話し合われていました。今回の議題は学校に関すること、高齢者分野、0-6歳児分野、学校分野の政治的目標について、ある地区のサッカー場について、現在の街の駐車場について、経済委員会の会議頻度についてなど様々でした。
☆驚きと感想
≪議員さんの服装≫
まず議員さん達の服装に驚きました。市議会での議員さんの服装と言えば、背広、スーツ姿を想像します。もちろんシャツにネクタイ姿の議員さんもいらっしゃいましたが、とてもラフな格好の方が多く、例えばTシャツ+ジーパン姿の人、短パンの人までいました。女性の人では夏らしいワンピースの人もいました。
≪雰囲気≫
また、和やかな雰囲気にも驚きました。私のデンマーク語力不足のため、細かい事側まではわからなかったのですが、時々笑いが起こり、和やかな気がしました。もちろんそれぞれ意見はしっかり言っていましたが。
≪傍聴≫
このときは20〜25人の人が傍聴に来ていました。子ども連れの人もいたので、なぜだろう、子どもに議会はどんなところかを見せようと思ってなのかな、などと思っていましたが、どうも、始の議題が学校関係のことだったので、それに関心のある人々が来られているようでした。学校についての議題が終わると8〜9人の人が帰っていきました。
デンマークは議会選挙の投票率も高く、政治に関心がある人が多いので、傍聴に来る人も多いのかな、と思っていましたが、途中で返る人もいて予想していたより(30人以上は来るのかな、と思っていました)は少ない気がしました。
また帰国したら一度私の住む町の議会を見に行ってみようかな、と思った体験でした。
簡単ですが以上ロスキレ市議会を見学しての感想でした。
福島 in Roskilde
ロスキレ便り5「デンマーク高齢者連盟〜5つの高齢者団体の傘団体〜」(2003年1月28日火曜日13:12)
こんにちは。福島@ロスキレです。
月日が経つのは早いものです。デンマークでは2月から後期の学期が始まるのですが、すこし早く新しいインターナショナルの学生がやってきました。
私の住むフラット(4人用)にも新しく2人のカナダ人が来ました。一番始のデンマーク便りで紹介したときのフラットメイトはイタリアからの人が2人、ドイツからの人がひとりでしたが、3人とも7月はじめには帰国し、8月の終わりからはオ−ストリア、スペイン、カナダからの学生と共に住んでいました。そのうちのひとりが帰国、ひとりが引越をし、現在はオーストラリアからの学生ひとりとカナダからの学生2人と住んでいます。
さて、今回はデンマークで最も大きな高齢者団体のひとつである、デンマーク高齢者連(AEldremobiliseringen、英語名:The Danish Association of Senior Citizens)についてご紹介したいと思います。
デンマークの高齢者団体と言えば、エルドラセイエン(AEldre Sagen、高齢者問題全国連盟)という団体が有名です。デンマーク高齢者連盟はデンマークでもエルドラセイエンに比べるとあまり知られていませんが、会員は約43万人(原則60歳以上)と大きな団体です。60歳以上の人口が約105万人だということを考えるとかなりの割合です。(ちなみにエルドラセイエンの会員も同じく約43万人ですが、両方に所属している人もいます)
★デンマーク高齢者連盟に所属している団体
・Pensionisternes Samvirke (年金受給者協会)
・LO Faglige Senior(全国熟練シニア協会)
・Omsorgsorganisationernes Samraad (ケアに関する組織協議会)
・Sammenslutningen af Pensionistforeninger I Danmark (デンマーク年金受給者協会連合)
・Den fynsk-jyske Sammenslutning af Pensionistforeninger I Danmark(デンマーク、フュン島ユラン島年金受給者協会)
★歴史と全国の支部について
デンマーク高齢者連盟は、1992年に上記の5つの団体の傘団体として設立されました。全国に1040の支部と、15の県委員会があります。
★事務局
デンマーク高齢者連盟の事務局は前述のように1995年に出来ました。現在は5人の専従職員(事務局長、法律家、プロジェクトコーディネーター、会計、秘書)がいます。その他特別な状況の時に、会計補助、ジョブトレーニング、教育実習生、ボランティアの職員がいることもあります。それに加えて「高齢者が高齢者を助ける」プロジェクト(後述参照)に関連して7人のコンサルタントが県委員会にいます。
以下、今回は、デンマーク高齢者連盟が行っている代表的なプロジェクトである「高齢者が高齢者を助ける」プロジェクトとコンピューターカフェについてご報告します。
★「高齢者が高齢者を助ける」プロジェクト
デンマーク高齢者連盟の様々なプロジェクトのひとつとして1996年に始まりました。その名の通り、高齢者自身が高齢者を助けるというものです。各地に支部がありその支部ごとに様々なプロジェクトが行われています。
このプロジェクトの考え方は以下のようであると言います。「私は私が得意な分野であなたを助けます。あなたは自分自身で、私の助けをうけたいかどうか決めて下さい。もしかするとあなたは私が出来ないことを出来るかもしれません。」
このプロジェクトは、社会サービス法第115条※に基づいて、各市から補助金を受けて行われています。
※社会サービス法第115条
1項:市と県は、任意の社会的団体、組織と協働しなければならない
2項:市と県は、任意の社会的活動を補助するための予算を毎年計上する
★「高齢者が高齢者を助ける」プロジェクトの例
≪訪問の友≫
これは他の高齢者団体などでも行われていますが、ひとり暮らしの高齢者などを訪問し、話しをしたり、新聞を読んだり、手紙を代筆したりするものです。「高齢者が高齢者を助ける」プロジェクトはこの訪問の友をコーディネートしたりしています。
例えばあるローカル地域(人数がわかりません、すみません)では、訪問する側の人が24人いて、それぞれが1〜2人の人を訪問しています。そして2ヶ月に一度訪問する側の人が集まり、問題点などを話し合っているそうです。「訪問の友」は好評で、その地域では4〜5人の待機者(訪問をして欲しいという人)がいるそうです。
≪ロスキレ支部の活動の例≫
ロスキレ支部では以下のような活動が行われています。
・公的機関、病院、家庭医のところへ行く際の付き添い
・ホームヘルプの契約をするときに同席する
・訪問の友、散歩の友
・病気の際の細かな買い物の援助
・小さな仕事の手伝い
・規則的なアレンジ(支部が行う小さな催し物とカフェ)
活動はそれぞれの支部によって違います。それゆえそれぞれの支部のパンフレットもまた違います。
★コンピューターカフェ
2001年現在全国にデンマーク高齢者連盟が主催の高齢者向けコンピューターカフェが設置されています。これは1997年に科学技術革新省(Ministry of Socience Technology and innovation)との協働で始まったプロジェクトです。コンピューターカフェでは特別な高齢者向けのIT教育を受けることが出来ます。これもまた前述の「高齢者が高齢者を助ける」プロジェクトにつながっています。なぜならここでコンピューターの使い方を教えるのは同じく高齢の人だからです。そして教える人はボランティア、つまり無償です。
★感想
1995年に始まったプロジェクトが短期間で全国に広まったことに驚きました。全国に、これまでから活動をしていたデンマーク高齢者連盟に所属している高齢者団体のネットワークがあったからだろうか、と思います。
上記のプロジェクトはお互いに支え合うプロジェクトであり、人を助ける社会貢献ですが、同時にいつまでも、すこしでも長く健康でいること、生き甲斐にもつながるのでは、と思いました。
以上、デンマーク高齢者連盟についての紹介でした。読んでいただきありがとうございます。
福島 in Rosikilde
ロスキレ便り6「情報公開の国、デンマーク+図書館システム」(2003年3月8日土曜日16:09)
ご無沙汰しておりますがいかがお過ごしでしょうか。
帰国直前の福島@ロスキレです。
3月9日にこちらを発ち、10日に日本に到着することになりました。
留学中はいろいろおせわになりありがとうございました。
帰国後また大学に顔を出すと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
1年たつのは本当に早いと思います。
帰国前に最後にひとつは、と思い
今回はちょっと違った驚き、情報公開についてご報告致します。
★ロスキレ市の図書館での出来事〜簡単に手に入った議事録の添付書類〜
私の研究テーマである高齢住民委員会について過去の市議会、市の委員会の議事録を調べるために、図書館内にあるロスキレ地域歴史公文書(記録)保管所(以下公文書保管所と略します)(Roskilde Lokalhistoriske Arkiv)に行きました。
勝手に入ることは出来ないので、図書館で「公文書保管所で資料を調べたいのですが」と職員の方にいうと、図書館の地下にある公文書保管所に案内されました。そして公文書保管所の職員の方に「市議会議事録の添付書類を見たいのですが、○月○日の」というと、棚から該当するファイルを取り出し、「ここの中にあるわよ、調べてみて」と言われました。そして他の議事についても見たいというと、「市議会のファイルはこの棚に全部並んでいるから、日付はファイルに書いてあるから探して」と言われました。資料を勝手に棚から取り出してはいけないと思っていた私は少々驚きました。
☆コピーは自分で好きにとる
さらに驚いたのは、「この資料をコピーしたいのですが」というと、コピー機の使い方を教えてくれ、「1枚1クローネで、コピーしたらその枚数を後で教えてね」と、自分でコピーを取るように言われたことです。日本の私の町にある図書館では、コピーは自分でさせてもらえなかったと記憶しています。新聞記事をコピーしたことがあったのですが、新聞のどの部分をコピーしたいか、ということを紙に書かなければいけませんでした。ですので、自分でコピーを勝手に取って良い、しかも、市議会の議事録の添付書類を、というのに驚きました。
☆コピー代はつけで?
一番驚いたのは、コピー代の支払いの時です。閉館時間が来てしまい、したいと思っていたいくつかの新聞記事のコピーが出来ませんでした。ですので、「新聞のコピーはまた今度にします。とりあえず今コピーした枚数分支払います」とコピー代を払おうとしました。そうすると、「また来るでしょう、支払いはその時でいいわよ」と言われたのです。まあ一括で支払った方が手間が省けるかなと思い「じゃあそうします」と言ったのですが、その後名前も住所も聞かれませんでした。その時はなんとも思わなかったのですが、後々、確かに私はまた行くつもりだけど、もし行かなかったとしたらどうなるのだろう、と驚きました。人を信用している、と言うことでしょうか、それとも単に手間を省くためだったのでしょうか。
★国会図書館での出来事〜ここでも簡単に〜
次は国会図書館での出来事です。国会図書館には、国会で議論された議事の添付書類を見たくて行きました。ロスキレ大学の図書館では、議事録、法案等は手にはいるのですが、添付書類は国会図書館にしかないためです。
ロスキレ大学の図書館で国会図書館について聞くと、「念のために電話してから言った方がいいわよ」と言われました。ですので、前日に国会図書館に電話をし、名前とロスキレ大学の学生で、その議案についての添付資料を見たい、と言うことを伝えました。そして、行く時間を約束し、次の日に国会図書館に向かいました。
☆国会の中へ
「国会に入る際には、図書館に期待という旨を言うとゲストカードをもらえるからそれをもらって入ってきて下さい」と言われていたので、入ったところでそれを伝え、ゲストカードをもらいました。名前と所属などを書いたりしなければならないのかな、と思っていたのですが、そのようなことはなく、あっさりとカードをもらうことが出来ました。
図書館につき、職員の人に「昨日電話をした福島です」というと、資料が用意されていました。閲覧室に案内され、「ここでこの中から必要なのを探して下さい、コピーを取る場合は、1枚1クローネです。あのコピー機でコピーして、枚数は後で報告して下さい」とのこと。そして「資料を止めてあるホチキスは取らないようにして下さい。」とだけ注意されました。
さすがにここでは、どこをコピーしたか、私自身の名前など後で聞かれると思ったのですが、両方とも聞かれませんでした。
最後にコピーを取った枚数分を伝え、お金を払い、領収書を受け取り、図書館を後にしました。入るときはドキドキしながら入ったものの、あまりにもあっけなく欲しい資料が手に入り、拍子抜けしたような、ホッとしたような妙な気分でした。
★最後に
日本で国会図書館を利用したことはありません。だから何とも言えないのですが、私はきっと、資料をコピーするのはもう少しややこしいと思っていました。ですので、あまりにもあっけなく資料を手に入れることが出来たことに少々驚きました。
でもよく考えると、どの資料を使ったか、誰が使ったか、など聞いても仕方がないことだと思いました。オフィシャルなもので、市議会や国会で議論されたことの資料になったものです。見る権利は当然あるんだな、と改めて感じました(私はデンマーク国民ではないですが・・)。私がどの資料をコピーした、と言うことを記録して何になるんだろう、何にもならないな、それなら聞く必要はないのだな、と考えました。
★おまけ〜本の貸し出しは全世界から?〜
大学の図書館で本を借りようとしたときです。スウェーデンの本で、大学の図書館で検索しても出てきませんでしたので、図書館員の人に他の図書館からの貸し出しを予約してもらいました。何日か後にその本を図書館にとりに行ったのですが、なんとその本はスウェーデンのヨーテボリ大学から借りられたものでした。その為、その本は図書館内だけでの閲覧しかできませんでしたが、図書館を通じてスウェーデンからも本が借りられる(しかも手数料などなしで)のには驚きました。
デンマークは図書館のシステムが進んでいる、と聞いており、デンマーク内の他の図書館にある本を借りたことはこれまでもあったのですが、他の国の図書館にある本も同じように頼んで借りることができるのには驚きました。他の図書館では知りませんが、とりあえずロスキレ大学の図書館ではそうだとのことでした。
好奇心で、北欧内の図書館だけでなく、他の国からも借りることが出来るのか、と尋ねると、「もちろん、ドイツからでも、アメリカからでも」との返事。本当に驚きました。日本でももしかすると出来るのでしょうか、したことがないのでわかりませんが。出来るとしたらとても便利だな、と思います。
以上です。
お読み頂きありがとうございました。
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