医療事故から学ぶ部屋
※写真にマウスポインタをのせると説明が表示されます |
老院長に退職勧告―手術の“ミス”続く
名門中の名門といわれる産院で、現代医学では考えられないような手術の“失敗”が続いている。72歳になって、目のさだかでない院長がメスを執っているためといわれる。同院長の手術を受けたあと、経過の思わしくない人、死んだ人などは、昭和42年以後だけでもこんな具合だ。
卵巣の手術のあと大出血、さらに腹膜炎をおこし2ヶ月後に死んだ人(42年9月13日手術)。
このような例は現場の看護婦や付き添いの間でもよく知られており死の一歩手前でこれらの人々から「ここにいては命があぶない。こっそり総合病院に移った方がいいですよ」と耳打ちされ寝台車で転院した人もある。
43年5月の帝王切開のあとから、ことしの5月またウミがふき出して9月に再手術するBさんも「ひと月半の入院中、知りあった患者さんはほとんどうんでいました。たった一人、一度でキズ口がふさがった人がいたら、看護婦さんが、めったにないことね、と話しているのでびっくりしました」という。
これらの患者たちは、産院へ紹介した医師への義理や治療で精いっぱいのため訴訟は起こしていない。このような話が伝わったためか、同産院に患者を送るのを控える開業医がふえているという。
三谷茂院長は高齢の上、糖尿病で視力がひどく衰えている。ぼうこうや輸尿管に穴をあけた手術例はこの病気と無関係ではないといわれている。 「他人の失敗もかぶる」 三谷茂院長の話:すべてを覚えているわけではないが、そんなこともあったかもしれません。他の病院の産婦人科もこのくらいのものと思います。(名刺を出すと)結構です。めがねをかけても名刺の字は読めませんから。以前から糖尿病でね。しかし、手術はできる。ことしも特にたのまれてやりました。単純な手術のときにぼうこうなどに傷をつけるのは、ふつう、一人の産婦人科医で1万回に1回くらいのものでしょう。カルテの上で私がやったことになっている手術でも、医局の人がやって、名目上私がやったことになっているものもあるでしょう。妊娠子宮を子宮筋腫とまちがえてとったのは、あの人が妊娠を秘していたからで、まさかと思っていた。 新田葛飾赤十字産院長の話:あまりうわさが高いので調べてみたというのは本当です。院長には、これまでのご業績に傷をつけぬためにも、ご無理をなさらず、ご自分のからだのことを考えられてはいかがだろうかと、退職をお勧めしました。しかしご本人が大丈夫だとおっしゃれば…・。 北村勇日本赤十字社衛生部長の話:別に訴訟も起きていないし、そういう事実があるとは知らなかった。さっそく調べたい。 榊原仟(しげる)東京女子医大教授の話:熟練した方なら、血管をしばるくらいできるかもしれません。しかし、私なら、名刺が読めなくなったら、手術はやめます。 「誤った敬老精神」 医事評論家石垣純二氏の話:日赤本社は、この事実を知っていたにちがいない。社長も衛生部長も医者ですからね。医者の世界には、うちわのハジをさらけ出さない妙なギルド意識があり、誤った敬老精神がこのような被害を生んでしまったのでしょう。憎まれることは言わない、強きを助け、弱きをくじく、という多くの医者の思想の根は大学の医局制度から派生しています。 |
|