http://www.sanseido-publ.co.jp/publ/gan_kanjakai.html
1章 がんと言われたら… 情報を味方につけよう/各種の相談窓口を活用しよう
2章 仲間をみつけよう! 全国162のの患者会の活動を紹介/ターミナルやホスピスを考える市民グループの活動も紹介
3章 星の数ほどある患者コミュニティー・サイトの中から厳正し、約50サイトを紹介
4章 拡大するがん患者パワー/がんの患者会のネットワーク化と活動が、いかにがん医療改革を牽引してきたかの詳細リポート
5章 全国のがん拠点病院の連絡先・電話番号一覧
巻末 がんの書籍リスト
以下は、山本孝史さん(参議院議員、がん患者)の書評です
がんが見つかったとき、私も妻も、がんや相談窓口について何の知識もなかった。
妻は、「この本を手にしていたら、こんなに大勢の仲間がいると判って、精神的に楽になれたのでは」と言う。
編者「いいなステーション」の和田ちひろ代表の指摘通り、がん闘病は、まさに「情報戦」だ。しかも困ったことに、その量はあまりにも多く、さらには、どの情報が正しいのかの判断に迷う。そんな時には、「がん診療連携拠点病院」の相談支援センターで相談することや、「セカンド・オピニオン」を聞くことも必要だろう。
それと同時に、本書で紹介されている約160のがん患者会に問い合わせるのも一手である。残念ながら、すべてのがんについて患者会が組織されているわけではない。また、患者が求める情報を持ち合わせていない患者会もあるだろう。しかし、同じがんの先輩患者の体験談は、闘病を大きな力で支えてくれるはずだ。
私の余命宣告は妻が一人で受けた。細胞検査のための開胸手術を終えた医師から、「原発は胸腺。肺にも転移している。進行が最も早い小細胞がんの可能性が大きい。治療をしなければあと半年」と言われたそうだ。
胸水、壊死、癒着など、怖い言葉が続き、理解できず、茫然自失状態だったという妻は、知人の医師に病院に来てくれるよう電話し、彼の到着後、二人でもう一度説明を聞いたという。私がこの話を聞いたのは、11ヵ月後だ。その長い期間、誰にも言えずに「余命半年」の宣告を胸にしまっていた妻。彼女を支える手立ては周囲になかったのか。
私が最初に治療を受けた国立がんセンターでは、「患者・家族のための勉強会」が開かれていた。妻は一度、話を聞いてもらいたくて出かけたそうだ。
胸腺がんは症例が少なく、肺がんグループに入り話し合いをした。自己紹介で、手術ができる患者や家族ばかりだと判り、かえって落ち込み、途中退席したそうだ。この時点では、国立がんセンターにも「患者相談支援センター」はなかった。
先日、いいなステーション主催の「がん患者会のマネジメントセミナー」に出席した。竜崇正・千葉県がんセンター長も、吉田和彦・慈恵医大青戸病院副院長も、口を揃えて「医師は治療に集中したい」と語った。症状や治療法の補足説明以外にも、患者の人生観や医療に向き合う姿勢について、ゆっくり語り合う時間がほしい。だが、現状では許されない。
これまで、医師と患者との「空間」を埋める役割は、もっぱら看護師などの医療従事者に求められてきた。今後、がん患者数の急増を考えると、がん患者会への期待も大きくならざるを得ない。
今後5年間に国を挙げて取り組むがん対策の基本方針を定めた「がん対策推進基本計画」でも、患者団体の活動が重要な役割をもっていると明確に記載された。例えば、がん患者や家族への支援を行なっているボランティアを拠点病院で受け入れる、患者や家族等が提供している心の悩みや体験を語り合う場を拡充する方策を検討するなどだ。
本書は、医療従事者とがん患者会との架け橋として、大きな役割を果たすだろう。手元に一冊常置して欲しい。
〈「月刊ナーシング」(学研)8月号に掲載予定の校正前原稿を、
関係のみなさまのご好意により、アップさせていただきました〉