優しき挑戦者(海外篇)
■未来がみえますか?■ 未来が見えますか?
これは、毎日新聞の特集のみだしです。一人の女性が一生に産む赤ちゃんの数を表す合計特殊出生率が、1.29に落ち込んだ深刻な状況を訴える特集です。その後、この数字は、1.25にまで落ち込みました。
1.25という数字は、ふたつの意味で危険信号です。
そこで、出生率が着実に回復し、目下1.9のノルウェーに「未来」を見つけに出かけました。写真@は、ノルウェーのまちでよく見かける、子どもづれの男性の姿です。 ■「パッパ・クオータ」って?■
まずオスロにある国立男女平等センターを訪ねました。ノルウェーのこの種の国立機関は日本と違い、政府に厳しく注文をつけるのも使命です。
ペールさんは2つのホヤホヤ情報を話してくれました。
この国では1978年から父親の育児休業が可能になりました。ところが、現実にこれを取る人はほとんどなく、たとえば88年は、日本とほぼ同じ0・6%ていどでした。 ■ババだけに認められる「4カ月の有給育児休業」■
これをさらに進めて、「育児は父母でするもの」という文化を定着しようというのが、「パッパ・クオータ4カ月」提案です。とらなければ「権利」を放棄したものとみなされ、その赤ちゃんのための育児休業は大幅に減ることになります。
ノルウェーは、出生率回復のために、他にも数々の積極的な挑戦をしてきました。 ■閣僚の半数が女性■
効果抜群の子育て支援政策がとられた背景には、女性の社会進出がありました。
私がノルウェーに滞在していた2005年9月12日に行われた選挙でも、女性党首が大活躍でした。イギリス以外の西ヨーロッパでは、2大政党ではなく、いくつもの政党が競い、妥協……をみつけて連立内閣をつくる方式が主流です。ノルウェーのこの年の選挙でも、労働党・左派社会党・中央党の連立内閣が誕生したのですが、3人の党首のうち2人が女性でした。写真Aの新聞の見出しは、「だれがケーキをとるのだろう?」。「ケーキ」と(女性に)「囲まれる」の発音がよく似ているので、掛け言葉になっているそうです。 ■リスタという名の投票用紙に秘密が……■
なぜ、これほどまでに政界に女性が進出できたのでしょうか?
比例代表制の欠点として、「候補者を選べない」ことがあげられます。これが巧みに克服されているのが、この投票用紙の面白いところです。党の決めた順位を有権者の意向で変えることができる仕組みになっているのです。
■「子育ては楽しい!」■
唯一の治外法権だったのが民間企業。男社会の価値観を引きずっていました。ペールさんは、そこにも切り込んだ戦略を語りました。
ノルウェーで10日ほど過ごしてみて、肌で感じたのは、この国の子育て文化の変容でした。
まちの本屋さんでみつけた『のびのび出産』という本を開いたら、あらゆるページに未来のパパ、未来の小さな兄姉が妊娠や赤ちゃん誕生を喜んでいるシーン(写真FG)、育児を楽しんでいるシーン(写真HI)が載っていました。 (大阪ボランティア協会『Volo(ウォロ)』2005年11月号より) | ||||||||
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