「日本のいまの福祉と医療の現状をなんとかしなければ」という思いを抱いた人々の異文化交流が、5月11日東京のプレスセンターで繰り広げられました。集いのタイトルは、「ことしもまた、新たな縁(えにし)を結ぶ会」。

 「出席」の返事をくださった方の中から「異文化を出会わせる」をモットーに7人づつにお願いし、「濃縮シンポジウム・ほんとうの福祉改革」(写真1)と「濃縮シンポジウム・ほんとうの医療改革」(写真2)がとり行われました。そして、この2つに挟まれた「さまざまなえにしコーナー」と歌舞音曲??
 どんなに高名でも、九州、北海道から駆けつけても、交通費自分もち、出演料なし。それどころか、会場費+軽食代5000円を徴収されるのが「新たなえにしを結ぶ会」のしきたりです。

 司会者は、慣れぬ蝶ネクタイ姿で七五三かボーイさんに見えてしまう池田昌弘さんと北岡賢剛さん。池田さんは要介護のお年寄り、北岡さんは知的なハンディを負った人の地域での暮らしの仕掛け人として知る人ぞ知る存在です。

 「福祉改革」シンポでマイクが回ったのは、「カリスマ職員」の名付け親で、当時、厚生労働省老健局長(いま社会保険庁長官)の堤修三さん、滋賀県庁の異色のお役人で“仕掛け屋けんちゃん”こと北川憲司さん、高齢福祉で知られ、羽田澄子監督の映画の舞台となった秋田県鷹巣町長の岩川徹さん。
 いまでは、痴呆症の世界にも広がったグループホーム制度の生みの親でもある宮城県知事の浅野史郎さんは、知事になったとき,すでに決まっていた大規模施設計画の建設を取りやめさせるまでの逡巡と決意について語りました。ホームヘルパーを名乗って市議に当選し、お年寄りの街の中での暮らしを支えている西東京市議の安岡厚子さん。障害当事者から深い信頼を寄せられる数少ない研究者・桃山大教授の北野誠一さん、“福祉界の吉本”と異名をとる名調子で長野県の福祉改革の先頭に立つ福岡寿さん……。
 朝日新聞の川名論説委員が司会をつとめたこのシンポジウムでは、「施設から地域へ」の実践と戦略の数々が披露されました。
右から、堂本暁子さん、高原亮治さん、山崎章郎さん  「濃縮シンポジウム・ほんとうの医療改革」は、冒頭で、千葉県の堂本暁子知事が「死ぬまで自分の足で歩けて,死ぬまで自分の歯で食べられるような政策を実行したい」と語りました。新党さきがけ時代に医療改革論議の先頭に立った県政のトップから「死ぬまで自分の歯で」というキーワードが出たことに、歯科にゆかりのある人々は大拍手でした寿命が長いのに医療費が安いことで名高い長野県泰阜村村長の松島貞治さんは、「高齢化率36%でありながら自宅で死を迎える人が8割」である秘密について話しました。「病院で死ぬということ」というベストセラーで有名な山崎章郎さんは、施設としてのホスピスケアに限界を感じ、街の中にホスピスをつくりたいという夢を語りました。
 娘の星子ちゃんを病院で失い、やむにやまれず「医療情報の公開・開示を求める市民の会」をつくった高校の天文の先生・勝村久司さん、すべてのスタッフが「さん」で呼び合うなど、医療界の発想やしきたりに挑戦するリハビリテーション専門病院を始めた石川誠さん、精神病院を情報公開する実践で知られる伊藤哲寛さん、本音で話しては物議を醸す厚生労働省の異色障害保健福祉部長(いまは健康局長)の高原亮治さん……。
 高橋真理子、浜田秀夫両論説委員の司会で、「医療で何ができて、何ができないか」に議論が集中しました。

 2つのシンポジウムをつなぐ「さまざまなえにしコーナー」には、内閣官房副長官の古川貞二郎さんが瀋陽の亡命事件処理の合間をぬって駆けつけ、「志」の大切さを訴えました。続いて、知的なハンディを負った人々の組織、ピープルファースト東京代表の佐々木信行さんが、自前のホームページを背景に、「11月には熊本に800人が集まって第8回の全国大会を開きます」と宣言しました。知的なハンディを負った人といえば、これまでは親や職員が代弁するしかない、ホームページをつくるなんてありえない、と思われていた存在、その常識を心地よくこわしてくれました。

 サンドイッチとコーヒーが運ばれる中、内閣府男女共同参画局長の坂東真理子さんが、障害者、高齢者と女性の共通性を述べたあとには、崖から落ちて首から下が動かせない上村数洋さんが登壇。口にくわえたスティックだけで仲間を支援するバーチャルメディア工房での模様をパワーポイントを駆使して紹介しました。
 厚生省の局長時代に福祉基礎構造改革の先頭にたった炭谷茂さんの次は、交通バリアフリー法の生みの親、電動車いすで全国を駆け回る尾上浩二さん、そして、盲目の新潟市議青木学さん。住職ならぬ飛び職と呼ばれる行動派和尚、高橋卓志さんは、浅間温泉の旅館をそのまま使ってケアタウンにしようという壮大な構想をユーモラスに語りました。

 さらに、東松山市長の坂本裕之輔さんが、第一回のえにしを結ぶ会に続いてギターを抱えて登場して美声を披露……。

 どの発言にも、当事者の思いに沿った実践ができれば、制度は後からついてくる、いや、ついてこさせなければならないという確信があふれていました。
 参加した人たちは、「元気がでました」「『変える』、『変えたい』という思いを強くしました」「こうやって世の中も変わっていくのだという予感を感じました」と晴れやかに散っていきました。新たに縁を結んだ人と昔からの知り合いのように語り合いながら……。

 皆様もこんな異文化交流の集いをやってみてはどうでしょう。元気が出ること請け合いです。
 コツは、
1・くじ引きで見知らぬ人と隣り合わせにする
2・軽食で気持ちをおだやかにする
3・スポンサーをつくらない
4・「現場の人と、政策をつくる人」「障害をもつ人と、もたない人」「医療の人、福祉の人」「アカデミズムの人と、ジャーナリズムの人」「有名な人と、まだ無名な人」……、放っておくと溝ができやすい、出会うことがまれな人どうしを引き合わせること。引き合わせる気働きをいとわぬ「事務局ボランティア」と「つなぎボランティア」が存在すること、
でしょうか。

 昨年の「えにしを結ぶ会」で「新たなえにし結び」の最高記録をつくった方がいます。後藤芳一さん。経済産業省国際プラント推進室長で、日本福祉大学講師という不思議な肩書きの持ち主です。その秘訣後藤式「えにし」を結ぶ法を抜粋してみます。

☆面識のない人に「初めまして」と声をおかけするのは一瞬ためらわれます。そのままでいると、知っている人どうしでお話しして終わりになるのではないかと考えました。そこで、打開策をと考えました。
☆分野の重ならない人をと考えて、倉敷の小池さん(注・川崎医療福祉大教授・元厚生省・評判の高かった障害白書の著者)にお願いして「お互い、知っている人を紹介する、というのはどうですか」とおねがいしてみました。優しい小池さんは、すぐOKして下さいました。
☆小池さんのご紹介で、社会事業大学の京極学長+MS児玉桂子先生、高住研MS石田さん、難病のこども支援全国ネットワークの小林信秋さん、椋野美智子さん、宮内庁の羽毛田次長ほかとお話しさせていただきました。当方から小池さんには、24時間ホームヘルプのハイオニア榎本憲一さん、ユニバーサルデザインの古瀬敏さん、タウンモビリティの白石正明さん、オリエンタルランド望月庸光さんほかをご紹介させていただきました。
☆この方式は、会場で”ひらめいたもので、長年、バーティーで感じていた、「…??」に対処する方法になるかと思いました。(ふだん思いつかずに、昨日、そのような気になりましたのは、会のお名前が頭にあり、「縁を結ぶ」ことが主催者から課せられた課題、と考えたことによります。
☆会がどんどん発展して、「また1年振りにあえましたね、元気にしていますね」といいあえる場になるとすばらしいですね。

 海外にいたりして参加できなかった方たちから寄せられたメッセージをご紹介しておきますね(^_-)-☆

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遠い滋賀県と、近い神奈川県との不思議な巡り会い

 昨年の「えにしを結ぶ会」では、たくさんの出会いがありました。
 大津市役所高齢福祉介護の福井英夫さんからは、できたてほやほやの「介護サービス提供マニュアル」を譲っていただきました。これがきめ細かく素晴らしいので、介護員研修の教科書にさせていただきました。ご近所には在日韓国・朝鮮の方がたくさんおられます。日本語の読み書きが不自由な方も少なくないので、大津のマニュアルをハングル語にも翻訳させていただきました。それを学んで、この5月、40名の2級ヘルパーさんが巣立っていきました。ハングルでケアができるヘルパーの誕生です。
 帰りの電車では小児科医の山田美智子さんとご一緒になりました。電車の中での二人のおしゃべりの中から、医療が必要な重度障害をもつお子さんかちの訪問ケアが始まりました。同じ神奈川県にいながら、「えにしを結ぶ会」がなければ永遠に出会えなかったのだと思うと、不思議な縁に感動してしまいます。
 スウェーデンで痴呆のお年よりの介護研修を受けるために今回は出席できませんが、人と人の心を結べますようにと頑張っていますので、「えにしを紡ぐ会」として続けて下さい。

NPO法人「たすけあいゆい」:濱田靜江さんから

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ほんとうの医療福祉改革は、精神病院の痴呆病棟から、まず!!!!!!!

 痴呆の人がしばしば起こすと言われている問題行動や精神症状をコントロールできる場所は精神病院しかないという古い考え方(old culture)は、現在でも強く残っています。現在、全国で痴呆精神病床は17,000床余りあると言われています。
 けれど、痴呆のお年寄りに対して精神病院が本当に重要な役割をなして来たかどうか。私たちの18年間の経験からすると、甚だ不十分であると言わざるを得ません。従前の痴呆専門病棟では痴呆という病的状態のみに焦点を当て、それを評価し治療することが病院の専門性であると考えられておりました。しかし、いわゆる「問題行動」は従来からの精神科的方法によらなくても克服できることに気が付きました。ほとんど生活に対する配慮のない専門病棟は一番大切なものを見落として、誤った専門化に陥っているのではないかと思うのです。痴呆の人を痴呆という病的状態を持った特殊な人とみるのではなく、普通の人間としてどうしたら見ることができるのかを極めていくことこそ、本当の専門性なのかもしれません。
 痴呆の人にとっても人と人との間の「絆」や「縁」は一番のキーワードです。

スウェーデンにて:佐々木 健 ・篠崎 人理さん

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英国の「ユニークフェイス」と新たな縁を結んできます!

 顔にアザやキズのある人をサポートするNPO法人ユニークフェイスの石井政之と申します。顔の右側に大きな赤いアザ(単純性血管腫といいます)がある現実にこだわりつづけてきました。本職はフリーランス・ジャーナリストですが、最近は、取材されて書かれる機会が増えてしまいました。この会への参加を楽しみにしていたのですが、突然、英国行きが決定。本日は欠席させていただきます。残念です。
 渡英目的は、ロンドンを拠点に顔面にアザやキズのある人をサポートしているNPO、Changing Facesという団体の視察です。英国で新たな縁を結び、日本のみなさまにその成果を報告する準備も着々と進めています。

イギリス滞在中の、特定非営利活動法人ユニークフェイス会長:石井政之さんから

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「えにし」とモビリティーと元気で長生き

 「社会との接点が多い人ほど元気で長生き」というのは、いまや、世界標準。人間は孤独とともに老いてゆきますから、EUは“Inclusion”、社会から孤立させないことを社会政策の基本としています。接点を豊かにするために不可欠の一要素が「モビリティ」。とくに街中での自由な移動を実現する上で、公共交通機関ではカバーしきれないニーズがあります。たとえ、きめ細かく停車する100円バスでもドア・トゥー・ドアのスペシャルトランスポートでも。
 そこで、昨年11月、「ニッタネ協会」が発足しました。正式名称は「日本タウンモビリティ・ネットワーキング協会」。電動スクーターや車椅子を無料で貸し出す運動は、この5年間で約20箇所に広がりました。その狙いは単に外出支援でなく、「社会コストの節減」と「えにしづくり」にあります。配食サービス、まちづくり、生涯学習、観光促進など多彩な顔を持つ英国生まれのプログラムです。介護保険を大幅黒字とし未来の世代へ「えにし」をつなぐ、それをミッションとに掲げ「ほんとうの福祉改革」に参加させて頂きたいと願っています。

べルギー・ゲントで開催中のモビリティー・マネージメント国際会議で、結ぶ会に思いを馳せながら:白石正明さん

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糸へんバンザイ!!!!!!!

 1995年の大震災の教訓から、つねに備えておこうと「ゆめ・風・10億円基金」運動をはじめて7年。いろんな人々に支えてもらえて、思いもしなかった台湾、トルコ、インド、エルサルバドルの障害者たちとも縁ができました。
 「障害者・欠格条項をなくす会」運動でも、ホンモノの共生社会について考え合うことが多く、人と人の間の「絆」や「縁」に、ふしぎなパワーを感じています。
 やっぱり人間って、いろんな「糸ヘン」が「絡」み合い「紡」ぎ合って「編」まれているんですよね。ネット(網)とか、「繋」がるとか・・・(いやな「縛」る、なんてのもありますけど)。今回は、やり「繰」りできず伺えませんが、次回こそあらゆる「経緯」を乗り越えて参加したいと思っています。どうぞ、いつまでも「継続」していただけますように。「結」び・・・・な〜んちゃって

ゆめ・風・10億円基金、障害者・欠格条項をなくす会代表世話人:牧口一二

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