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さまざまな挑戦1
JTB/杉並区聴覚障害者協会 相良啓子さん
 山形県生まれ。幼稚園の先生を目指して勉強されていたのですが、19歳のときに耳が聞こえなくなって、諦められたそうです。その後、筑波技術短期大学で情報工学、コンピューターを勉強されました。そこで障害児教育という分野があることを知って、教育学士を取得され、その後、ダスキン障害者リーダー育成海外派遣事業で米国で勉強なさって、99年に株式会社JTBに入社。企画部情報管理チームから、今はJ−WEB事務グループで仕事をされています。
自分と立ち向かう

 皆さん初めまして。今、自分の耳は聞こえません。以前は聞こえていました。聞こえなくなってから初めてのチャレンジは、聞こえない自分と立ち向かうことでした。聞こえなくなって、どのように生きていったらいいのか、どのように他の人と関わりをもち続けていけるのか、非常に大きな壁にぶち当たりました。

 2番目のチャレンジは、病院を出て、聞こえる社会に入っていくことでした。病院の中では、自分のペースで会話があります。けれども、実際の社会の中ではそうはいきません。聞こえる社会の中でどのように自分を確立させながら生活できるのか、という大きなチャレンジがありました。

 三つ目のチャレンジは、ろうの社会に入ることです。筑波技術短期大学は、ろう者だけの大学です。私は聞こえなくなった自分自身が変わるために、入ることにチャレンジしたのです。昔自分は日本語を言葉としていましたが、今は、手話が自分の言葉だと思っています。

新しい出会いを提供

 今チャレンジしていることは、仕事。JTBという旅行会社で、4年働いています。ろうの学生のための旅行プランを作ったり、北欧の旅行のツアーの企画を担当しました。
 また、ろう者が海外旅行をするための海外での新しい出会いなどをサポートしています。日本では家族とスムーズにコミュニケーションが出来ない人もいますし、情報も少ないと聞きます。だから、離れた外国にも自分と同じ気持ちを持つ仲間がいる、そこに行って交流をするということは、とっても大切で楽しいことだと思います。そういう経験を提供したいと思っています。

北欧における手話

 今年の3月にフィンランドに行きました。日本と違うなと思ったことは、手話が言語として法律で認められている国であるということです。
 例えば、フィンランドの観光地にはろうのガイドがいました。日本ではろうのガイドなんて見たことない、と感じました。手話を言語として認めているので、ろう者のガイドを育てるプログラムというのがあるのです。

 また、ろう者としての通訳者もたくさんいました。通訳というと、聞こえない人が聞こえる人に通訳をしてもらう、というイメージがありましたが、そうではない。聞こえない人が聞こえない人に対して通訳をするという方法があるんですね。
 例えば、フィンランドの手話を、国際手話に変えていくための通訳。また、フィンランドの手話を盲ろう者のために手話、あるいは触手話などに変えていく通訳など、さまざまな手話通訳がありました。

 日本に帰ってきてから、いろいろな観光地に行きたいなぁと思っても、手話通訳のシステムが少ないですよね。公認のガイドの中には手話という言語はないんです。

生活の変化についての教育と指導

 私が突然聞こえなくなったとき、お医者様から、ろう者の生活がイメージができるような話は全くありませんでした。日本では、人工内耳をつけたら終わり、補聴器を与えたら終わりです。その後の生活に変わるための教育や指導がなされていないと聞きます。
 北欧には、例えば今、人工内耳で聞こえるようになった子どもが結構いるんです。そしてろう学校では、どういう社会に自分が一員として入り、育っていくのかということについても教えているそうです。日本ではネットワークがとれていないという状態です。

社会に理解を広めたい

 今、聞こえない自分が、旅行の添乗員になれるのかは、やはり壁があります。例えば、声だけで名前を呼ばれる、声だけで呼ばなきゃいけない。
 けれど、手話通訳も一緒に行くことで、聞こえる人と同じ仕事ができます。ろう者に対する理解をもう少し広めていただいて、社会を変えていけたらいいなと思っています。

スピーチもチャレンジの一つ

 今、すごく緊張しながら話をしているんですけれども、やっぱりこれ自体も大きなチャレンジの一つです。この場をお借りして、みなさまにお礼を申し上げたいと思います。

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