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さまざまな挑戦2
精神医療サバイバー/社会保障審議会障害者部会委員 広田和子さん
1988年に通院先の精神科病院で注射を打たれて、その副作用のため1日に22時間歩かずにいられなくなり、視力は0.1から0.01に下がり、ご飯を食べても味噌汁を飲んでも鉛の味がする幻覚も体験されました。「精神医療サバイバー」と名乗り、自宅での相談やショートステイを引き受け、横浜市や神奈川県に対して発言を続けてこられました。一昨年12月14日、精神医療体験者として、日本で初めて国の委員になり、多くの新聞の「ひと欄」に載り、テレビのニュースでも報道されました。
精神医療サバイバー

 精神医療サバイバーという言葉を公式に日本で名乗ったのは、私が最初です。
 この肩書きを名乗ることが、私の一つのチャレンジです。そういうふうな過激な肩書きだけれども、厚生労働省精神保健福祉課は、私を一昨年委員に入れました。

家族が代弁者である理由

 日本では、精神障害者の施策は、家族を代弁者としてきました。それは、「精神障害者には自己決定能力がない」という、医療関係者、福祉関係者、また行政関係者の遅れた認識が背景にあったと思っています。
 そしてもう一つには、審議会に誰を入れても「つぶされちゃう」ということで、当事者を思う関係者の多くもが国の委員に入れることに反対してきたと、去年関係者から伺いました。私も、ものすごい勢いで叩かれまして、今日は車いすで来ました。精神障害者の業界は、いわゆるセクトが存在して、それからいろんなことに反対することがとても好きな人たちが多いのです。

心神喪失法案

 私は反対するのは好きではないんですが、1つだけ反対しています。それは、もうすでに衆議院を通っている「心神喪失法案」です。重大な犯罪を犯した精神障害者が裁かれる権利を保障されることなく、また、医者が今後この人が、何ヵ月以内にまた犯罪を起こしてしまうのではないかということを裁判官と一緒に見るという、そういう法案です。
 平成12年に、厚生労働省のほうから、法務省との合同検討委員会に、参考人として出てほしいという依頼を受けました。
 日本には、1964年、ライシャワー駐日アメリカ大使が刺されたことがあって、この犯人がたまたま精神障害者だったことから、ベッドが増え、一層、隔離収容施策をとって、最高37万床までいってしまったという歴史があります。
 2001年の池田小学校の児童殺傷事件は、ライシャワー事件に匹敵するということで、この合同検討委員会に参考人として出る決意をしていました。しかし、患者や神奈川県の職員の反対などにあって、断念せざるを得なかったという状況です。
 そして法は衆議院を通過し、参議院に入ってしまった。じゃあ厚生労働省や法務省は本当に望んでいたのか、本音のところではいろんな意見があります。しかし世論に押されてできてしまう。そういう中に今私はいる。私はその法案のことについては、無力であると、何もできないっていう状態です。

自宅での相談活動

 もう1つのチャレンジは、自宅での相談活動です。人も泊めます。
 待ち合わせ場所は全部近所の交番です。
 私たちの業界の人は、「警察は精神障害者を治安の対象者と見ている」と信じてきました。しかし5年前に、神奈川県警の伊勢崎署に不登校の問題でお伺いしたら、人権という話をされて、びっくりしました。

精神科医療を変えていくというチャレンジ

 私の住んでいるワールドカップをやった横浜市には、精神病の人の救急医療がありません。救急車の行き先は警察、ほとんどの自治体がそうです。
 本来、ほかの病気と同じように、精神の病もまず自分が悪くなったときに安心してかかれる精神科医療が必要です。そのときにサバイバーなどと呼ばれるような、遅れている、被害を受ける医療であってはならない。それに対してチャレンジをしています。

精神障害者が安心して暮らせるために人手とお金を

 国及び地方自治体の精神障害者にかかわる所管に、人手とお金をつけるための世論を起こしたい。
 精神の病をもつ人は204万人います。このうち7万2千人の社会的入院を厚生労働省は出そうとしている。アメリカのように退院後のホームレスを生まないためには、人手とお金が必要だし、それを受け入れる環境が必要です。それを応援する国民の世論が必要です。
 誰もが1人の人間としてこの国で、最低でもいいから安心して精神の病になっても暮らせるような、医療や保健や福祉や環境が必要だということをお伝えして、お話を終わらせていただきます。

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