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さまざまな挑戦3
全国盲ろう者協会理事/東大先端研バリアフリー分野助教授 福島智さん
 9歳のときに目が見えなくなり、18歳で耳が聞こえなくおなりになりました。筑波大学の盲学校の高等部を出た後に、都立大、東京都立大を点字で受験して初めて合格なさいました。都立大の助手、金沢大学の助教授を経て、東大の先端研にいらした方です。
 肩書きは2つ以外にもたくさんお持ちでして、NPO東京盲ろう者友の会の顧問、世界盲ろう者連盟アジア地域代表、欠格条項をなくす会共同代表、厚生労働省社会保障審議会障害者部会専門委員、宇宙人と指点字でコミュニケーションするための国際連合特別委員会委員長…「(嘘)」と書いてあります。
 指点字は福島さんのお母様が開発なさった方法で、リアルタイムで私たちが話してることが福島さんに伝わるというすばらしいコミュニケーション手段です。
目と耳にハンディキャップ

 目と耳の両方に障害を持っていて、えーと、目は義眼なんです。プラスチックの目で、耳も全然聞こえない状態です。
 両方のハンデを持ってる人は、だいたい2万人ぐらいはいるだろうと言われてるんですが、あまり知られていないんですよね。まず医療のことについて申し上げます。

 例えば医療。体調を崩してめまいがしたとき、病院に行きますと、めまいなら目の動きを検査すると言われるんですよね。私は義眼なんだと言うと、それは困ったねと言われる。困ったねと言われても私も困るんですけど(笑)、義眼だと目の動きが調べられないから、次に聴力検査をしますと言われます。私聞こえませんからというと、耳鳴りがしますか?と言われる。そんなのずっと前からしています。私たちのめまいに対して、耳鼻科の先生もどうやって調べていいかわからないと言われます。

 申し上げたいのは、一口に障害者と言っても、いろんなケースがあるということです。先ほどの第一部の議論でもありましたが、多様なニーズがあるので、それぞれの当事者の生の声、生活実態、ニーズというものが大事だろうと思っています。

指点字でコミュニケーション

 私自身は、9歳の時見えなくなって、18歳の時に聞こえなくなって、最初に一番困ったのは人と話せないということですね。今こうして話しているじゃないかと思われそうですが、コミュニケーションというのは想像的なものであって、私が自分でしゃべろうと思っても、相手の反応がわからないとしゃべる気がしないんです。不思議なものですけども。
 たまたま母親が指点字という本を見つけて、私に点字を打ってみたら通じたんです。それ以来、指点字を使い始めました。いろいろなことがありましたけど、だいたい3つのステップを踏んでここまで来ています。

指点字による3つのステップ

 一つ目は、見えなくて聞こえない状態になって、本当にどうにもできなくなったときにコミュニケーション手段がみつかったということ。これは生きる上で基礎的な力ですよね。
 二つ目は、その手段を使って、家族とか学校の先生、友達あるいはボランティアなど、私をサポートしてくれる他者がいたということ。
 三つ目として、その後、国や地方自治体で制度的な支援がなされてきているということ。

 このような3つの階層があって、今に至ります。個人レベルでの生きる力、他者の支援は大切だと思っています。

目標は盲ろう者のためのセンターづくり

 有名なヘレン・ケラーさんは日本へ3度来られ、全国をフィーバーさせました。日本にも同じ障害を持っている方がたくさんいるのに注目されなかった。
 なぜ注目されなかったか。いくら新聞報道されても、ラジオで放送されても、盲ろう人自身が聞こえないからです。つまり自分の価値観を発信することができない、発信するための情報がない、さらにその情報を発信できる人がいないとうまく伝わらない。
 盲ろう者という存在がいるんだということをぜひ知っていただきたいと願っています。いずれヘレン・ケラーさんが願ってアメリカで作られたような盲ろう層のためのセンターも日本で作りたいなと思っています。

「保険」の概念、競争の概念

 第一部でエキサイティングなお話がありまして、興味深く聞きましたが、私は介護保険が全てじゃないと思います。なぜなら保険という概念があてはまらないからです。障害者になることは、「あってはならない、危険なのだ」という、抵抗感があるんです。
 基本的な人権として保障としていくこと。買い物や病院に行くことだけじゃなくて、例えば働く場での支援も必要であると思ってます。
 私たち、競争社会に生きているんですけど、個人レベルの競争でなくて、制度で競争する、自治体で権利を分散する、あるいは各大学に権利を分散する、制度で競争するということができたらと思います。

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