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さまざまな挑戦7
スワン店長(ヤマト福祉財団) 増田秀暁さん
スワンというのは特許庁のまん前にあるカフェです。 "クロネコヤマトの宅急便"の小倉理事長はかねがね障害者の雇用というのに熱心でして、「ヤマト福祉財団」をつくり、障害者の方々に10万円以上の給料の払える証を示してくれということで増田さんが抜擢されて、スワンというお店で障害者の方々を雇ってお給料を払うということを実現。依存型福祉から自立型福祉へ転換するために地域にバリューネットワークを構築する必要を提唱し、実践しているプロジェクトマネージャーです。
3Kからフロントヤードへ

 障害者の立場に立った町づくりをやっています。私はビジネスマンですが、ビジネスも顧客の視点に立ってやらなくてはどんな企業も生き残れないという時代になりました。
 私が一番チャレンジしなくてはいけないことは、国連が示している、企業就労を通じた障害者の社会参加です。30年ぐらい前のことですが、知的障害者や精神障害者が3Kと言われている清掃現場や、ひどい場合には火葬場などで働かされていることに、非常に怒りを感じました。そういうバックヤードから脱出させて、フロントヤードで働かさせてあげたいと思ったのです。それが町づくりの前に、企業人としてしなくてはいけないことだと思いました。

赤坂の一等地にスワン誕生

 フロントヤードの代表は、サービス業の中の対面販売、接客業です。たまたま小倉理事長から、赤坂の一等地でやれ、ということで、霞ヶ関の目の前にオープンしました。
 カフェとベーカリーのお店です。お客さんと接するところは、レジの仕事。それから、イタリアではかっこよく働いているエスプレッソの製造技術者として、美味しい香りのするエスプレッソをお出しすること。主にこの二つです。

 私どもの店は、統合失調症の人と知的障害者たちが、これにチャレンジしています。幸いにも霞ヶ関の目の前なので、精神障害者も知的障害者も華やかなフロントヤードで戦力になることをお示ししてですね、それから世間に広く伝わって雇用の創出につながればと思い、挑戦してきました。

目標は大きく、障害者300万人の就労に向けて

 厚生労働省が、9,000人の雇用の創出をしなくてはいけないとさかんに言っています。
 しかし私は、そういう小さなスケールではなく、300万人の雇用創出に挑戦したいと思っています。少し数字が違っているかもしれませんが、働きたくても働けない精神障害を伴う人が全国に約250万人、知的障害者が約50万人の、合計300万人。その雇用創出は、いかに企業が努力するかにかかっているわけですね。

 ヤマト運輸の宅急便を取り扱っている商店さん、公表しているだけで32万店あります。また、セブンイレブンをはじめ、コンビニが約4万店あります。ヤマト運輸の取り扱いをしているというのは商店の1%としても、少なくてもヤマト運輸の取り扱い店で一人ずつ雇ってくれたら、9,000人の雇用創出なんかあっという間ですよね。

ここまでの軌跡

 スワンでぶつかった壁はまず、「どういう接客をしているんだ」と、お客さんの怒りをかったことです。障害者ということを売り物にしませんでしたので、お客様はお話しなければ障害者ということはわかりません。あるダウン症の子は、パンを選んでいるOLを突き飛ばして、自分に与えられたパン並べの仕事をしたり、いろんなことをやっています。

 その次の大きな壁が、レジです。営利企業の責任者としては非常に困ったんですけども、毎日5千円から1万円くらい、いつも売上金が足りないんです。なんと二人ほど、5千円札と1万円札の見分けがつかなかった。5千円札の代わりに1万円札をあげていたとか。1日5千円から最大5万円違うと、一ヵ月で大変な額になります(笑)。でも、だからできないんだということで辞めさせてしまったら、彼らは一生、レジの仕事ができないですね。

 それから、ホットをオーダーしているのにアイスを作ったりとか。カプチーノにはウェットとドライがあるんですけども、間違えて出しちゃったりとかもありました。非常に高い豆を使っていて、それを使って練習をしなくてはいけなかったので、コストがかかったということも壁でした。

障害者が300万人も輝いて働くことになったら…日本を変える?!

 こういう壁を乗り越える秘訣は、同じ人間なのだから、個の尊重です。障害特性によって多少は期間は違いますが、必ずできるようになる。いまでは14人の障害者が全て健常者と同じ戦力をもち、2人ほどは、健常者以上の仕事が出来るようになりました。
 だいたい20人規模の通所施設では一人あたり月15万円〜16万円くらい費用がかかっていて、入所では50人規模で一人あたり50万円かかっています。企業就労すれば、ここにコストがかからず、逆に私どもで働いている障害者は税金を払っています。

 経済の専門家はなかなか景気をよくしてくれない、成長率もいまだに嘆かわしい。でも障害者がフロントヤードで300万人も輝いて働くことになったら、日本を変えることになるかもしれないと、毎日夢と期待とで胸を膨らませながら頑張っています。

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