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大石佳能子さん(メディヴァ代表取締役/用賀アーバンクリニック)
コーディネーター
― 大石佳能子さんの紹介 ―
迫田: 医療・福祉・民間企業の提供者の側から、「本当の利用者本位とはどういうことなのか」というお考えのもとに、前向きに考えていこうと思います。
― 出産をきっかけに医療の世界へ ―
大石:私どもは3年前に起業しました。もともと、私はマッキンゼーというコンサルタント会社で、ヘルスケアとは全然関係のない仕事をずっとしていました。小売業やアパレル、食品など、お客様の視点から喜ばれるものを作るために企業活動はどうあるべきか、そのための組織やビジネスプロセスを変えるという仕事です。
それが5年前、高齢出産をしまして、1〜2週間に1回病院に行くようになりました。その時に、医療事件や問題があったわけじゃないんですが、ざらっとした違和感があって、なんか、ここって変な世界だよねっていうのを感じたんです。
― ここが変だよ医療界 ―
大石:変な世界の一つは「患者さんの視点が活かされていない」ということ。
もう一つは、「他の産業界のノウハウが活かされていない」ということ。銀行のように決して進んでいるといえない業種ですら、ATMでお金を下ろしに来る人と、ローンを借りに来る人は別の列に並ばせます。時間がかかる人と時間がかからない人を同じ列に並ばせると必ず平均的な待ち時間が長くなるから分けるという、当たり前のことをやっているわけなんです。でも病院は、風邪の人も肺炎の人も肺がんの人も、みんな同じ列に並んでいる。
― 発見。医者も役所も「笛吹きゃ踊る」 ―
大石:初めに、いろんなお医者さんや役所の方とお話をさせていただきました。
役所の方は、「マクロ誘導はできるんだけど、現実的にそれができるかどうかはモデルがない、誰かモデル作ってくれないかな」みたいな感じのことをおっしゃる。
― 用賀アーバンクリニックの3つのコンセプト ―
大石:いきなり病院を作るというのもなんですし、お金もなかったので、クリニックを作ってみることにしました。2年半前に、世田谷の用賀駅から歩いて1分くらいのところに「用賀アーバンクリニック」を作りました。
― コンセプトその1「ファミリードクター」 ―
大石:「ファミリードクター」というは、日本の「かかりつけ医」とは違い、総合診療で、一家族全員がすべての病気について一人の医師に対して相談ができます。
ただ、日本の医療教育の中にファミリードクターを育てる仕組みはありませんので、非常に難しい。そこで、複数の先生が短期で研修をして、お互いをカバーしあえるかたちにすればできるんじゃないかと考えて、うちのクリニックは複数の医者がいる、いわゆるグループ診療という形態をとっています。でも複数の医者がいるだけでは大病院の外来と一緒なので、医者が変わったときに情報が切れないよう、情報を完全に共有化するための電子カルテを2年半前から入れました。
― コンセプトその2「患者様の参加」 ―
大石:電子カルテを入れると、患者様とも情報共有ができる。プリントアウトというところを押すと、ダーっとカルテが出てくる、これを患者さんにもお渡ししましょうとなりました。
― 電子カルテでつなぐ病院−診療所のネットワーク ―
大石:私どもはファミリードクターですから、高度な病気が見つかった時には中核病院にご紹介するんですが、その時に過去のカルテおよび検査データ・画像データが失われないように、全部それを病院さんにお送りするよう、病・診連携の情報システムを作ったり、というようなことをしています。
― コンセプトその3「サービス業」 ―
大石:クリニックはちょっとかわいくて豪華な雰囲気になっています。医療用の機材や家具・机は高価なので、バーゲンセールのイタリア家具などを使ってコストを下げているかたちです。 完全に保険適用のクリニックですが、どうやったら現行の保険制度の中でいろんな工夫を加えながら、より患者さんの求める医療が提供できるかと考えています。たとえば電子化は全然保険点数に反映されませんし、いい雰囲気を提供するためにはお金はかかるんですけど、それをどうやったら今の仕組みの中でできるかということを実験しています。 平成15年7月にはクリニックの形態に、病後児保育をつけた施設を田園調布にオープンします。最近は病院の経営などにも同じような思想で活動をしています。
― 浜田静江さんの紹介 ―
迫田:浜田静江さんは「NPO法人たすけあいゆい」の代表でいらっしゃいます。横浜市の南区で介護保険ほか、精神障害者の支援など様々なサポート活動をしていらっしゃいます。
― 「9人のおばさん」から300人のスタッフへ ―
浜田:横浜市の南区というところで活動しています。高齢化率が18%を越えていて、横浜市の中で一番少子化が進んでいる地域です。
― 支え合う理由は「同じ土地に住んでいる」ことだけ ―
浜田:私どもと関わっている世帯は南区だけではなくて、横浜市に1,000世帯くらいいます。それは私ども支える方も、支えられる方も横浜市に住んでいる、ただそれだけの関係なんですね。「地域で暮らし続けたい」という、一つの思いだけで関わっていくわけです。
― 義母のプライド ―
浜田:嫁にきて30年近くになりますが、一緒に住んでいる主人の母は90歳になります。
母に聞いたんです、「お母さん、90になってどういう介護をしてほしい? これからどう生きていきたい?」。そうしたらば、「ママだけに看てもらおうとは思ってないよ。要介護度4の通知を見て、私は情けない人間になった」と泣き崩れました。
― 義母の意思表示 ―
浜田:2週間、私も円形脱毛症を抱えながら、母を一生懸命介護しながら、仕事を続けていたのです。その時に母は言ったんですね、「余分なおせっかいはしてくれなくていい。要介護度4であっても私は私という人間に変わりがない」と。隣の奥さんが2日に一度来てくれればいい、あとは兄弟にお願いをしたり、自分の好きな人に囲まれてこれからを生きていきたいと、はっきりと意思表示をしてくれましたので、円形脱毛症は幸いにして治りました。
― 最優先すべきものは「本人の意思」 ―
浜田:本人がどの制度を使うのか。自分を大切にしてくれる人たちと、どの距離感をもって生活していこうとするのかは、本人が決めればいいことなんだと思うんですね。
ですから私たち「ゆい」の300人のスタッフは、一生懸命がんばっていますが、やりすぎてはいけない。声を大きく出しすぎてはいけない。決めたことをゆっくりと支えよう。究極の介護は、私たちが透明人間になることだというふうに、14年間でしみじみと思います。右手がご不自由の方にケアをするときに、そっとそばに静かに寄り添って、その方が右手で何かをしたいときに誰かが手を添えればそれで介護だと思っています。
― 地域の在宅を支えるものは、地域の力 ―
浜田:制度はたくさんあったほうがそれに越したことはありません。でも、地域の中で暮らし続けるためには、地域の人たちが、たまたまそこで生まれ育った人たちが、違った文化を持ちながら、いろんなシステムを生み出して、力も発揮してこそ、地域の在宅というものは続けていけるのだろうなと思っています。
― 病気を抱えながらも ―
浜田:私は6年前に膠原病という病気を発病しました。病気をもっている私が、このまま仕事を続けていっていいんだろうかと悩みました。その時に得たドクターからの「いいんだよ。君みたいに介護してる人の気持ちと、利用しようとしている患者さんの気持ちと両方わかる人って世の中にそんなにいないはずだよ。共感なんて最初からできてるじゃないか。そういう人が身近にいてくれる安心感って、これは誰にも与えられるものではないよ」という励ましによって、私はここまで来ています。
― 地域住民の思いやりをもっと信用して(笑) ―
浜田:長い人生いろんなことがあります。第1部での中西さんの「障害者はその人たちを見捨てないよ」という発言はとてもショックでした。うちのスタッフも、この方に一生関わりたいと思っても、自分が病気になってしまったり、家族が病に倒れたりしたときは現場を離れる時間もあります。ですけども、少なくともスタッフは一度お出会いした方たちと、自分の方からお別れしようということはありません。
― 望月庸光さんの紹介 −
迫田:医療・福祉と提供する側、けれど提供者だけでない、自分も利用する側だという、その両方の思いがあって利用者本位ではないかというお話だったと思います。
― オープン当時の東京ディズニーランド ―
望月:東京ディズニーランドは、1983年にオープンしました。カリフォルニア州のディズニーランドをコピーするかたちで日本に持ってきたので、車いすでご利用できるレストルームやスロープなど、その当時のアメリカのレベルでの配慮がそのまま持ち込まれたわけです。
― 「障害を持つ方にもディズニーを楽しんでもらおう」計画スタート ―
望月:その後、視覚に障害のある方が「もっとこうやったらディズニーランドを楽しめるんじゃないか」ということを言われているという話を聞きました。それだったら一度来ていただいて、より楽しんでもらうためにパークを体験してもらおう、というのを始めました。
― 切り口は「とにかく楽しんでもらうために」 ―
望月:その時の我々のやり方は、「障害をもたれた方の不便さを調査して、問題を見つける」という切り口ではなくて、アトラクションの人気ランキング。「楽しいアトラクションと楽しくないアトラクションはどれですか」という切り口です。
― パークの改良に素人集団大奮戦! ―
望月:やってみると、我々が気づかないところで、たくさんの不便があるのがよくわかりまして、素人集団ですが「こうやろう、ああやろう」と改善策を考え始めたのです。
最初の頃は、重装備のとんでもないレストルームのアイデアを考えたりしたものですが、実際に障害を持たれた方に相談すると、「各々の条件にあったレストルームを作って、そのレストルームがどこにあるかという情報を提供してくれればそこを利用しますから、それでいいんですよ」という返事がきて、「あ、そうなのか」っていうような。毎回そういうことの繰り返しでした。
― まずは、情報提供から ―
望月:パークを楽しむには何が必要なのか。まず来園する前に、情報を提供することが必要だと思いました。実際、ディズニーランドに来て楽しめるかどうかわからないで、いろんなことを心配しながら来園しても楽しくありません。事前に情報を提供すれば、既存の施設・設備を有効に使ってもらえるだろうし、精神的にも安心して楽しもうと思って来られます。
パークの情報をもっと知ってもらおうと、来園された時にも模型を作ったり、敷地図を作ったり。
― 「ディズニーランドに溶け込んだ」配慮を目指して ―
望月:もう一つは、レストルームを中心としたサービス施設の改善です。あとはアクセスをよくしようと。そして、アクセスがよくてそこに行けたとしても、それ自体が楽しいわけでは決してないわけですから、楽しんでもらうためには、どれだけ高品質のショーをやるのかだとか。
また、テーマパークという言い方をしますが、テーマの中でやっていますので、いかにそのテーマと矛盾しないかたちですべてのものを入れ込むかを考えています。実際に、障害を持たれたゲストのために配慮したものを、そういう配慮をしたものだと気づかずに一般のゲストが利用されています。我々としてはそれが一番いいかたちです。逆に気づかれてしまった場合は、あまりいい入れ込み方ではなかったと我々は評価してやっています。
― すべてのゲストがVIP★ ―
望月:これからやらなきゃいけないことはいっぱいあります。いろんな障害を持たれた方にいっぱい楽しんでもらえるようなショーの提供の仕方などは、まだまだ手付かずの部分がありますし、これから詰めていかなきゃいけないと思っています。
― 森功さんの紹介 ―
迫田:続いては森功さんです。医療事故調査会代表世話人でいらっしゃって、大阪の医真会八尾総合病院の理事長をされています。
― 結論。全面的な情報公開こそ肝要 ―
森:結論から申しますと、私どもが利用者本位、つまり患者あるいは患者の家族と名付けられた国民のためにできることは、全面的な情報公開です。
― 遊学で学んだこと「患者の願いは万国共通」 ―
森:私は1965年に大学を出て、51年にアメリカから帰ってくるまで、ケニアを渡り歩いたり、アメリカのいろんなところで心臓の専門の研修をさせていただいたり、いろんな経験をしました。
― 帰国、徳州会との決別 ―
森:帰ってきて、1978年から8年間ほど徳州会病院におりました。徳州会もはじめは志はよかったんです(会場笑い)。私は総合過程の研修制度なんぞを始めまして、今も研修制度はありますが、今をもって誇りに思っています。
― 医療・福祉の総合的な運動 ―
森:私のできることは、一つの普遍的な理念に基づいた医療・福祉の総合的な運動をやることによって、地域の住民のニーズにいろんな面で応えていくこと。
1995年、厚生労働省が第三者機関を作り、病院の評価を始めようと言われました。これを契機にして、私どもの職員に「目を開いて、本当に地域の住民のニーズに応えられるような質を持った医療を提供できるかどうか、そういうことを目指して考えてほしい」と申しました。「大阪府で最も給料の低い理事長・院長(笑)として、私は諸君に約束する。みんなと一緒にやりましょう」と。そして、取り組んできました。
― 調査会の旗揚げ ―
森:ちょうどその頃、患者さんの裁判のことで悩んでいる弁護士さんが私どものところに相談に来られました。裁判は公正・中立であって、しかも医学的鑑定は厳然と学術的でなきゃいかんというのが私どもの方針でしたが、そういうことを一緒にやっている人たちといろいろな調査会を作り上げ、現在もやっています。
― 日本の医療機関の実態は深刻だ ―
森:日本の医療機関は決してオープンではなく、情報は開示しないし、事故はできるだけ隠そうとします。事故を起こして裁判になると、何とかして被告、つまり医療側にミスがなかったという論点を強調するため、3割くらいの勝訴しかない。通常の裁判のおよそ8割は原告がお勝ちになることを考えますと、3割を切るなんてのはとんでもないことであり、大変深刻な現実です。
その中で、勝村久司さん(医療情報の公開・開示を求める市民の会)という方が、大阪で裁判を起こされました。娘の星子ちゃんがお生まれになってすぐお亡くなり、産科の医療過誤が原因ということで、その医療情報を公開すべきだという活動をずっと続けておられました。
― 利用者と一緒に進める医療・福祉 ―
森:私どもも、実は去年、死亡事故を起こしております。当初からとにかく謝罪に入り、何が起こったか監査機構内部にも話し、監査機構が最終的に調査したものを遺族側にも私どもにも渡して、共有化いたしました。
この一部始終をホームページに記載したいと申し上げましたが、残念ながら断られてしまいました。被害をうけた側が、それをオープンにされるということに対して非常に抵抗があるということを経験いたしました。こちらのお示しした賠償金を不服として裁判を起こされましたので、余計にそうなりました。
先日、原告側が事故についてオープンにされたのを契機に、ホームページに掲載することができました。裁判の結果は、こちらがご遺族に提示した額より低い額にで決着いたしました。そういうふうにして、自分たちはどういう立場にあるのかということを遂次ご了解いただいて、ご理解いただきながら一緒に医療・福祉をやっていく。
― とことんやります情報公開 ―
森:情報開示の方法としては、電子カルテは高額で公的な支援を受けないと病院での導入は難しいので、診療手帳を自己管理カルテ、アナログ的に手で書いて、情報の共有化ツールとして今やっています。
また、日常的な作業を突然、監査することで、どれだけマニュアルから逸脱して行われているかを自ら確認してもらい、再度監査をするまでの数ヵ月の間にどれだけ改善したかというような取り組みもしています。
だから、とことんやってますから、なんとか信用してちょうだいよ、というのが私どもの願望でございまして(笑)。 迫田:公立病院で全面情報公開をした病院は、枚方市民病院です。
― 中村秀一さんの紹介 ―
迫田:それでは最後になりましたが、厚生労働省老健局長、中村秀一さんにお話をしていただきます。
― 介護保険制度の3年間 ―
中村:私は介護保険制度を担当しております。介護保険のスタート時において、利用者本位というのは重要な課題でした。
― 在宅サービスを推進した介護保険 ―
中村:2000年4月に介護保険がスタートした時から今日までで、65歳以上の人口は10%増えました。要支援・要介護になった方は218万人から、3年経って340万人になりまして、こちらは56%増えました。
特に、在宅サービスの利用は、97万人から194万人へと倍増しています。
― 寝たきり老人へのホームヘルプサービスは大改善 ―
中村:私が高齢福祉課長だった1990年頃には「日本で在宅の寝たきり老人は24万人いる」と推定しておりました。その時に市町村からヘルパーの派遣を受けていた人は半数の10万人でした。また、受けている人のデータを見ると、年に48回のヘルパー派遣、1年52週ですから、週に一回しか来てもらっていなかった。
2002年3月のデータでは、99万人の方がホームヘルプの派遣を受けておられます。要介護5の人が1990年当時の「寝たきり」と呼んでいた人にあたると思いますが、その人には月に26回以上ヘルパーさんが来ています。10年前の水準と比べると7倍近くになります。
― 介護保険制度の問題点、費用は増えてゆく・・・ ―
中村:しかし、それを担うためにはお金がいります。2000年度に3.6兆円だった介護保険の費用は、2003年度には5.4兆円、33%増になっています。これをファイナンスしていかなくてはならない。
日本国民には、2003年4月の保険料の引き上げはあまり波乱なく飲み込んでいただけたかと思いますが、現在も給付費は年に10%ずつ増えています。この伸びが続くと、10%増が3年間で3割増になりますから、3年ごとに保険料を引き上げることになります。それを国民が受け入れてくれるかどうか。国民に納得していただけるようなシステムを作り、そういうサービスを届けられるかどうかが、これからの課題です。お金の問題だけではなくて、まさにサービスが大事です。
― 今こそ新たな課題を持って新たに進む時 ―
中村:そう考えてみますと、2003年度5兆4000億円使ってする介護サービスが、本当に要介護者の自立支援のために役に立っているのか。もっと同じお金で効率的なサービスができないのか。地域で暮らしつづけられるようなサービスができないのか。自宅で暮らせない、その後の選択肢として特別養護老人ホームという施設しかないということではいけないのではないか。
そこで、財政面では介護保険制度をどのように持続可能なものにしていくか、またどれだけ負担していただけるかについて議論を重ねていく。一方で、団塊世代が65歳になりきる2015年までに、中・長期の新しい介護のビジョンを作り、それに向けた新たな介護保険システムを模索する。
― これからの特別養護老人ホームは全室個室です―
中村:今から作られる特別養護老人ホームについては全室個室です。2002年度は新設で84ヵ所できましたし、2003年度は新たに作られる特別養護老人ホームの90数%、200以上が全室個室のユニットケアになります。こういうフレキシブルで地域に受け入れられやすい施設サービス作り、施設の在宅化を図ります。
この3月に、我が局の若手をヨーロッパ6ヵ国に派遣しましたが、オランダのナーシングホームで同じ議論を聞いたとか、イギリスでもパーソンセンタードケアという、いわば人間本位、利用者本位という考えが政府の口からさかんに出てきたという報告を受けて、嬉しく思いました。我々は世界のケアの最先端にいるし、我々の議論はグローバルスタンダートになってるんだなあと意を強くしているところです。手前味噌かもしれませんが、障害者行政だけではありませんので、頑張りたいと思いますのでご支援ください。
― 質問&会場の声 ―
迫田:提供者側におられる皆さんのお話を伺って、実際に利用者である私たちから、ご意見がありましたら会場から手をあげていただきたいと思います。
― 皆で一緒に良くしていくために… ―
中西:濱田さんのお話を聞いて、少しお伝えしなければと思って。
でも、当事者が一番ニーズを知っているということは濱田さんにもわかっていただきたい。そのために我々が主体をとるということも拒否なさらず、サポーターになっていただきたいというのが我々のお願いです。そして皆と一緒に地域をよくしていこう。
障害者だけがよければいいと思っているわけではなくて、高齢の皆さんにも社会参加するよい介護保険を、中村局長に作っていただきたい。そのために、障害者のサービスをまず完璧なよきものにして、それをモデルにして、高齢の介護保険をよいものを作っていただきたいと思っています。
迫田:どうもありがとうございます。ご意見として伺わせていただきました。
― 広い基盤で多くの知恵を ―
清家:福岡から来ました清家一雄と言います。2点あります。
もう1点は、64歳以下の障害者たちは働いてキャリアを積んでいかなくちゃいけない。キャリアを積むために必要な介護サービスは何かという視点が必要だと思います。競争社会の真っ只中で戦いながらキャリアを積んでいくわけですから、納税者がどこまでその人にハンディをあげるかということは非常に難しい問題になると思います。
迫田:ありがとうございました。ご意見として伺います。
― きちんとした理念そして根拠を ―
古瀬:3月まで建設研究所にいました、4月から大学に移った古瀬徹(こせさとし)と申します。第一部の話を聞いていて若干、苦痛でした。なぜかというと、一番本質的な理念がそこでは語られなかったからです。介護保険が導入された唯一の成果はこれを恵みではなくて権利であると宣言したことだと、それ以外はゴミだという風に私は思っております。 迫田:それは後ほどでよろしいですか。 古瀬:はい。 迫田:ほかに、利用者本位ということで利用者の側からの考えをどうぞ。
― 知能があっても社会適応できない。そんな問題にも「えにし」の手を ―
飯高:こんな企画を準備してくださいまして、関係者の皆様、本当にありがとうございます。上智大学におります飯高京子ともうします。日本聴能言語士協会の会長をしております。5年前、スピーチセラピストの資格は大卒にと首長して、厚生省や医療界の先生たちに大変、迷惑がられました。とにかく、医療福祉教育にまたがる国家資格を実現させていただきました。
今、お願いすることは、私の教え子で自閉症やADHDのことです。大学を卒業しても、うまく職場に適応できなくて非常に困っている青年がたくさんいます。
東京都国分寺市にはジョブコーチが3名いらっしゃるそうで、ニーズは非常に高いんです。ぜひぜひ日本にも、障害を持ったいろんな人たちのために橋渡しをするという職業の確立と援助をしていただきたいと思います。
迫田:ありがとうございます。ではもうひと方。
― 現実と理念の整合性 ―
益留:西東京市で障害者の自立支援をやっております、自立生活センターの益留俊樹と申します。中村老健局長がお話されたように、高齢福祉分野もす全室個室の特養が登場するということで、10年前からすると確かにレベルが上がってきたし、個人の人権というものは守られるようになってきたのであろうと思われます。 ただし、介護保険への組み込みについてはたとえば次のような疑問があります。家族が一緒にいることが前提の介護保険と、逆に家族と離れて暮らしていこうとしている障害者のニーズを、どのように整合性をとっていくのか。そして、家族が面倒をみることが前提である現実の福祉、いかに権利が保証されるといえようとも施設で生活せざるをえないこの現実に対して、在宅の理念をきちっと構築していくべきではないかなと思っています。以上です。
― 最後に ―
迫田:利用者本位という場合に、利用者の声をどうやって聞く、または捉えるチャンネルを提供側として持っているのか、あるいは利用者・提供者という分け方そのものが間違っているんだろうと、今のお話を伺って思います。皆様からのご意見、ご質問を踏まえて、最後にお一言ずつ伺いたいと思います。
中村:いろいろなご意見をいただきましたし、ご質問もご指摘もたくさんいただいたように思います。
― 全ての問題は高齢者問題へ…。高齢者問題が突破口と広げる! ―
中村:それで思ったことは、精神障害の話にしろ、知的障害の話にしろ、自立支援の話にしろ、出てくるコンセプトは全て高齢者の問題にも通じるということです。
残念ながら障害行政や精神障害の問題で、我々の力がまだ及ばない、率直に個人的に思うのは、やや遅れていると思います。
― これからの社会を考えると… ―
中村:先ほど、住宅改修の20万円のお話が出ました。介護保険の給付では上限額がありますが、実際のサービス利用は限度額の4割以内でして、これは制度スタートから3年経っても変わっていない。上限に達している方は1%くらいです。
これからの高齢化や社会の状況を考えますと、私などもきっと定年になると妻に捨てられると思いますので(笑)、単身高齢者になると思います。そういう時の老後を考えると、一人暮らしで弱った時にニーズが増えると思いますので、その時のケアモデルなり、対策は考えていかなくてはいけないと思います。自宅で住み続けるモデルなのか、無理しないで住み替えモデルでやるのか、それは政策の問題でもあると思いますし、利用者の方の選択の問題でもあると思います。 迫田:皆さん、今の発言をしっかり記憶にとどめておいてください。では続いて、森さん、お願いします。
―新しい文化をつくる気持ちで ―
森:現在でもまだ重度障害、あるいは精神障害の方が医療に関わる時は行く場所がなくて大変です。非常に偏見と差別があります。弟が精神病理者です。幸いグループホームで多くのケアを受けていますが、それはごく一部のことで、医療を含めて福祉にも関われない人がたくさんいることも現実です。
医療事故に関しましてはこの8年間、残念ながら、一向に減る気配がありません。患者さんが証拠保全したいなと思うほど医療結果に不安や不満を持たれた時には、その4分の3は医学的過誤であると結論づけて間違いありません。しかもその過誤のケースの60%強は死亡例です。ご注意ください。(一同笑い)
迫田:ありがとうございました。では望月さん、どうぞ。
― ゲストの来園が質をあげる一番の方法 ―
望月:我々にとっての利用者本位は、障害を持たれたゲストにパークへ来ていただくことです。
障害を持たれた方とどのような形で接したらいいのかを教えてくださるのは、マニュアルではなくて、来園されるゲストだと思っています。来ていただくとお金が儲かるっていうのもあるんですけれど、それが一番パークの質を上げることですし、ゲストのことを聞くことにもなるんではないかなと思います。
迫田:皆で東京ディズニーランドに行こうということのようです、はい。(笑)
― マネマネマネージャーは言う、「すべてはこれから!」 ―
濱田:私はケアマネジャーでもあります。マネマネマネージャーみたいな、巷で悪い評判ばかり聞いているので非常に残念ですが、介護保険の良さはケアマネジャーに保険料の中からきちんと人件費を出して、中立な立場に置くシステムにしたことだと思います。それを支援費に導入できなかったのは辛いところだと思っています。
― 制度は利用者の賢さを問う ―
濱田:先ほど、住宅改修の20万円のお話が出ましたが、私も20万円の中でこの人を自立させるためにどういうふうに手すりをつけたらいいのか、段差を解消したらいいのかというのは日々朝から晩まで悩んでいます。
横浜市は非常に頑張っていて、20万円で足りない場合はぼーんと130万円上乗せをして、それでも足りなければ障害者の150万という枠をぼーんとあげます。私もケアマネジャーではなくて、今度はコーディネーターの顔、あるいは地域の生活者の顔を持って、そこにおせっかいで介入して、あらゆる制度を使いまくって気持ちのいい住宅環境を作り出せているわけです。
制度というのは利用者が自分にどう便利に使えるかっていう、賢さを計っていることになっているんじゃないかな。
迫田:最後になりました、大石さんです。
― 医療現場での利用者本位 ―
大石:私は福祉や介護の分野が強くありませんので、あくまでも医療現場における利用者本位ということで限定してお聞きください。
― 医療界でもマーケットアウトとプロダクトイン ―
大石:これは医療界に限らず、産業界においても、よく「マーケットアウト」ということが言われます。マーケットアウトをして、それを提供する仕組み、私は「プロダクトイン」って呼んでるんですけど、マーケットアウトに即したプロダクトインを作ることが実はすごく難しい。
ご存じの通り、医療機関は、今潤沢に潤うような状況ではございませんので、多くの病院は赤字を抱えています。そういう中で、もっともっと患者さん本位に仕組みを作っていくというのは、非常に大きなチャレンジだと思うんですね。
― 本当の意味での「儲ける病院」を目指して ―
大石:一つ目に、病院の中では、例えば病院は営利であるべきではない、収益性を上げることは悪だと思われている部分があります。私どもは大原則だと思うんですが、病院は適正利潤を上げていかないと、人の教育などに再投資できませんので、きちんと利潤をあげていく仕組みにしていかなくてはならないと思います。儲けることに対するネガティブさをまず取らなくちゃいけない。
二つ目は、それをやるために、経営者の教育が非常に大事になります。病院のトップの方々とお話していると、「儲ける病院」にするのは簡単なんだ、と言います。例えば、「小児科が不採算だからこれ切っちゃえばいいんだ」とか、「もっと検査をすれば儲かるんだ」とおっしゃる場合もあるんですが、利用者本位の医療を提供しながら儲けていくというのは、そういうことではありません。
地域のニーズに合うことをどんどんやっていくことに、実は適正利潤をあげていく鍵があるわけですね。例えば救急車をきちんと受け入れたら、これは入院につながりますから、地域のニーズに合いながらきちんと収益性をあげていけます。経営者の方々の発想の転換およびそれが実務的に運営できるような仕掛け作りが今後求められるのではないかと思っています。
迫田:どうもありがとうございました。 ****縁****繋****縁****繰****縁****経****縁****緯****縁****継****縁****続****縁**** |