2006.5.13. 濃縮シンポU「本当の医療改革とは」 発表の補足 小さないのち 坂下 裕子
1.自己紹介と活動のきっかけ
いまから8年前(1998年)、1歳になったばかりの長女がカゼの症状から急変、意識を失いけいれんが止まらなくなる。救急車は到着するも、治療のできる病院到着まで4時間半かかり、死亡。この国の小児医療の現状と、小児救急医療の危機的状況を知る。
2.重症児と家族が必要とするもの
インフルエンザ脳症を経験した保護者100名を対象に子どもの急変前後の症状について尋ねた調査と、小児救急を経た遺族100名以上を対象に小児救急に求めたものについて尋ねた調査から、重症児とその家族が小児救急に必要とするのは、@整備された医療体制 A症状に合った治療技術 B医療スタッフの専門的援助と人間的配慮 であることが明らかになった。
3.医療改革に望むこと
小児救急医療体制を整えるために必要なアプローチは多岐にわたるが、短期的には、@既存の施設の集約化・重点化 A広域医療圏で開業医の参画 B地域救命救急センターなどを利用した救急医療提供 Cナースを中心としたコメディカルの専門性を高める C心理士・保育士などの関連職種の導入 D女性医師の就労条件を改善する。
4.患者・家族会の価値
患者家族会の人材(主として運営者)を何らかのかたちで医療政策に起用することが望ましい。患者家族会の運営者は、専門的知識をもって医療や行政に従事する専門職とはまた違う視点で当事者をよく知る者たちであり、貴重な社会資源である。
5.さいごに
小児救急が抱えるさまざまな問題の背景には、「病気する子は弱いからまた強い子を産みなおせばいい」という戦前の思想が今も残っているといわれています。今や少ない数の子どもの健全育成が最重要課題です。子どもをもっと大事にする社会を再構築できるような医療改革、そしてもっと子どもに優しい国づくりが必要です。 小児救急医療とは、いったい何?(解説 市川光太郎氏) 【保護者・家族の考えは?】
◎少子化で全て貴重児の時代
・子どもの専門家に診療してもらいたい
・子どもの病気は重症化しやすくて怖い! →我が子の病気は軽くて済ませたい(Over therapyが希望?)
◎救急医療だから特別なはず!?
・救急だから、待ちたくない/待たされないはず!
・できるだけ近くで、全ての検査と治療が行なえる完結医療が一番! ・救急医療とか関係なく、いつでもどこでも完璧な診断治療が一番!
◎専門家だから何でもできる・判る・してくれるはず!
・見落とし/看過/誤診/診断治療の遅れはどんな事情でも許せない
・夜間・休日だからは理由にならない ・小児科医が大変!?というのは良識のある保護者は理解している →でも、疲れた小児科医に診て貰いたくない! ⇔保護者の要望はわれわれ小児科医にとっては厳しい理想像! 【小児科医の考えは?】
◎小児救急医療は小児科医であれば誰でも行える!?
・小児救急疾患の知識は小児科医には常識で、基本!
・不要な受診が多すぎる(コンビニ化で良いのか?) ・開業医は時間的に対応が困難!(多くの地域で開業医の関わりは20数%) →小児救急医療を担うには体力が…、勤務医が、若い小児科医が担うべき?
◎初期救急医療は小児科医以外でも可能!
・小児科医は専門性を活かして二・三次救急医療を担えばよい!
→小児専門医の基本的技術・知識に小児救急疾患を含めたプライマリケアは不可欠のはず →小児救急疾患は重症化の予知が難しく、病勢の進行が早い
◎疾病治療にのみ、走り過ぎてきた小児科医?
・健全養育の指導者としての認識が小児科医に欠落?
・子どもの事故予防など、子どもの健全生活改善への窓口は小児救急医療のはず! ・事故外傷などに関わらない、関われない小児科医の増加 ・Bio-morbidityから、Co-morbidities/New-morbidityへの疾病構造変化 【他科医・一般救急医の考えは?】
◎小児救急は単なる時間外診療であって、救急医療ではない!
・軽症者が多すぎる
・不要な受診が多すぎる(コンビニ化で良いのか?) →小児科医診療への要望過多は小児科医が招いた結末?
◎小児科医でなくても診れるが、家族への対応が困難!?
・一般救急医でも診療可能、実際に事故外傷の子ども達の診療を行なっている!
→いったい、小児救急の専門性って、何? 大人とどこが違うの? →診てあげているのに、小児科専門医を呼べ、小児科医じゃないと嫌とは何事!
◎小児の総合診療としての小児救急医療実施の考えが欠落?
・傷病治療のみに専念しやすい
・成長・発達などへの影響などの考えが少ない ・日常生活、将来の生活への配慮が乏しい ・心身両面への配慮に欠ける 【小児救急医学の学問的意義は?】
◎軽症が多くてアカデミックではない!?
・いかに小児救急疾患の診断治療のスキルを体系化して、次世代の小児科医に継承していくかが、重要である!
・他科医に比べて、有視的な診療技術(ファイバー、エコー等)の少なさが一見して、魅力のない救急医療として、捉えられやすい ・小児科は、余り検査を必要としない、或いは医療面接などが重要視されるなどの地味な診療技能で済む医療分野には違いない
◎小児集中治療医学の普及と、小児科医によるその実践が不可欠!
・PICUを有している小児救急医療施設は、4-5%であり、大学病院での調査でもわが国でのPICUベッド総数は100床満たない。明らかにPICU不足であり、この充実は、小児救急医療の整備には不可欠な課題である。
・多くの施設で、PICUで治療されるべき患児が、成人のICUの片隅や、一般病棟の回復室など、しかるべき施設で治療されていない ◎新臨床研修医制度において、プライマリケアを学ぶべき、唯一の研修教育先が小児救急医療現場であり、この制度を利用して、学問的体系化を図るべき! 【我々医療者に足りない、欠けている意識は何?】
◎子どもの健全育成には何が必要か?
小児救急医療は重要な育児支援の一面を担っている!
子どもの総合診療(トータルケア)とは何か?
小児救急医療にはCo-morbiditiesの考えが求められている!
◎子どもの傷病を軽症で終わらせてあげるという意識がない?
病勢の進行が早い・重症化の予知が困難などの特徴から、当然の意識!
◎小児救急医療の大きな一面に、疾病予防の観点が必要!
成人救急医療の出発点とは大きく異なる一面である!
◎家族・親・子どもの相互関係形成を支援するのも救急医療の一面!
健全育成支援は小児医療の根底である!
◎Medical homeの考えを!⇔病診連携の継続・共有化
「子どもの健全な成長・発達を継続的に見守る」という意識が必要
◎小児救急医とPrimary pediatricianは表裏一体!?
最初に診る
継続的に診る 家族を重視する 疾病の予防・健康増進を目指す 当会の紹介
インフルエンザ・脳症の会/病児遺族わかちあいの会
・・・・・・・・・・・ 小さないのち事務局 ・・・・・・・・・・・・・・ 会のホームページ http://www.chiisanainochi.org
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