障害福祉政策・激動の部屋

 今日はお忙しいところ、お集まりいただいてありがとうございます。我々がこの集会を開くことになった経過について、私から説明させていただきます。
 2003年は、4月1日に新たな支援費制度ができるというので、障害者にとって希望に満ちた年になる予定でした。支援費制度は我々と厚労省との話し合いのなかで、日常生活支援という新しい類型を設けたり、ヘルパー資格についても、意見交換をし、新たな模索をされたりと、大きな前進を見た制度というように思いました。

 ところが、2003年4月を待たずに、1月8日にインターネットやメールで厚労省がホームヘルプの上限設定をしているといううわさが流れ、我々は混乱に陥りました。その中で障害者4団体が連合して、大きな集会を持つことになりました。
 1月16日、日身連、手をつなぐ育成会、日本障害者協議会、DPI日本会議、これら4団体が合同で講義行動を行いました。4団体が合同するのは日本の障害者運動史上初めてのことで、1,200名の大行動となりました。
 関係者、家族、マスコミ、大勢の皆さんの応援をいただき、また、反対表明を行う自治体もあるなかで上限問題に取り組みをはじめました。
 雪がふる中、毎日厚労省前に大勢の障害者が詰め掛け、寒い中で皆、死んでしまうのではないかと思うほどの行動が行われました。

 1月27日になって、ようやく、厚労省との話し合いが合意に達しました。
 個人の支給額の上限を決めるものではない、そして、全額を確保する、基準額が従前額を下回らないという合意をえることができました。
 そして、新たな地域生活を充実させるために一緒に検討会を作ることになりました。これにより、我々と厚労省の話し合いの場がもたれるようになり、さらに「障害者の地域生活支援のあり方に関する検討会」が、5月、生まれました。障害者8団体の委員会から代表がえらばれ、話し合いの場が始まりました。この「あり方検討会」では、支援費制度の今後の問題、重度身体障害者、聴覚・視覚障害者、知的障害者の地域支援について検討し、知的障害の当事者もオブザーバーもいれ、意見聴取が行われ、海外の先進例など様々な検討が行われました、

 ところが、11月の検討会で、2003年度のホームヘルプサービスの基準額が大幅に不足するという話があり、国庫補助に関する緊急要望書を提出しました。その結果、12月12日の検討会では、塩田部長から「省を挙げて最大限の努力をし予算を融通して、ほぼ全額が確保できる見通しができた」という話を聞きました。
 この日には、「16年度のホームヘルプサービスの運営見直し案」が提出されたのですが、この案はホームヘルプの単価を大幅に切り下げるもので、我々の反対運動がおこり、2月17日、これを白紙撤回するという事になりました。
 2004年の年があけ、介護制度の改革本部が厚生労働省に発足するということで厚生労働省の障害保健福祉部長である塩田さんから1月16日に、7団体に話があった。重要な問題と受け止め、我々と共有して話し合う場を作る、ということで、勉強会をきめることになりました。

 この会が1月29日から、月2回のペースで、急速に行われるようになりました。最初は学者を呼んでの勉強会から始め、ケアマネジメント、サービス対象者の問題、法律の仕組み等々について、検討を進めてきました。
 ところが、我々が一番聞きたい、一番必要としている問題、介護保険制度と支援費制度の違いについての問題点がなかなか明らかにならない。一方で、支援費の財源不足が起こり、障害者は混乱に巻き込まれることになりました。
 支援費は、国の予算の中でそれほど大きな割合を占めるのか。我々からみると、支援費は、障害費予算5000億の一部でしかない。ホームヘルパー問題では100〜200億が足りない。エンジンが駄目になったのではなく、ガソリン切れしている。支援費制度は小さな車であり、介護保険のように、車が何百台ものるような大型船ではないという認識でした。
 この補助金が満額確保できず、96%補助となり、全市町村からは、24億円不足することが3月23日に明らかにされました。
 これは1月の合意に反する事態ではないか。支援費の国庫補助基準は100%満たすべきとの、DPIをはじめ、抗議運動が始まりました。この問題は、未だに解決せぬまま、きょう、4月30日の厚労省との討論集会を迎えています。

 勉強会は4月1日までに8回まで行いましたが、厚労省から新しい中身が出てこない。特に我々の述べてきた「自立」の理念が、障害と高齢、支援費と介護保険とは違う。介護保険の社会参加と我々がいう社会参加とは違う。
 利用者負担も介護保険は応益負担、支援費制度の応能負担。この調整はどう考えるのか。
 アセスメント基準についても、8項目の勘案事項にもとづく支援費制度と79項目の判定による介護保険の要介護認定は違う。支給量の上限問題、ケアマネジメント、ホームヘルパーの資格問題。様々な問題について、未だに厚労省からは明らかになってこない。
 今日の開かれた場で、厚労省との開かれた場で、この点について深めていきたい。
 勉強会は一時中止されていますが、これは厚生労働省が、「中身が話せる段階にない」ということで、一時休戦状態になっているわけで、時期がきたら、改めて再開したいと考えています。中身についての議論はきょうの対話集会の終了後、考えていきたい、ということで厚労省とも合意ができています。決して中止ではありません。

 この討論集会は、我々はスタートだと思っています。障害団体と厚生労働省の勉強会という限られた場でなく、大きなこの場へ広げていきたい。もっと国民にわかる形で、我々の抱える問題を伝える集会を今後、政治家、研究者、当事者もいれ、様々な形で展開していきたいと思います。
 ちょうど、参院選も近づきます。我々としては、この問題を一般国民の皆さんに、政治的な問題として、争点として語り合えるようになりたい。

 重度の障害者も地域で暮らしていける、知的障害者、精神障害者、すべての障害者が地域のなかで、充実した人生を送れるように。我々自身も地域で支えとなる、障害者自身が地域の中で、サービスを提供し障害者をサポートしていきたい。
 自立生活センターは全国に数多くあります。視覚、聴覚団体もピアサポート体制をとり、今後の地域支援の体制を整えようとしています。私たちは厚労省とともに、この問題を解決していきたい。
 地域の中で、重度の人たち、すべての人が、十分な安心できるサービスを受けられる社会をつくっていきたい、という思いで対話集会を開きます。
 皆さんの、ご協力をお願いしたいと思います。

(ゆき作成、中西さんに確認して手直しをお願いしたものです)


『“介護保険”と“障害保健福祉施策”の関係を考える4.30公開対話集会』までの経過

2003.01.08インターネットやメールで、「厚生労働省がホームヘルプ上限設定を検討している。全身性障害者120時間、重度知的障害者50時間、軽度知的障害者30時間」という情報が流れる。
関係団体から厚労省に問い合わせが殺到する。厚労省の公式見解では「検討していない」。しかし、団体によっては検討していることを認める発言を行う。
2003.01.09DPI日本会議が障害保健福祉部企画課と面談。「補助金交付基準において障害種類、程度ごとの平均利用時間を用いることを検討。支援費の支給基準の上限ではない」と説明。
2003.01.10毎日新聞が「支援費制度 障害者のヘルパー利用時間に上限 厚労省が一転」として報道。全国に情報が広まる。
2003.01.14DPI、JIL、介護保障協議会、要求者組合などが厚労省との緊急交渉。不安を感じるホームヘルプ利用の障害者が全国より500名集まり、抗議活動を行う。厚労省は「市町村への補助金の交付基準において利用時間を決める、支給量には影響しない」という説明を繰り返す。
翌日、社会・援護局長と会談することで事態収集が図られる。
2003.01.15障害者側代表15名と社会・援護局長の会談。冒頭にマスコミ取材が行われる。
局長の話は前日の課長との話と概ね同じで、障害者団体側を失望させる。この日の会談で、著しく補助金が下がる自治体には激変緩和策を講じることを今後の検討事項として示される。
2003.01.16日本身体障害者団体連合会、全日本手をつなぐ育成会、日本障害者協議会、DPI日本会議の4団体が合同で抗議行動と交渉を行う。全国より1200名の障害者、家族、関係者が集まる。マスコミにも大きく取り上げられる。
東京都が反対表明を行う。それに続いて、政令指定都市会などの自治体に反対の動きが広がり始める。各政党もこの問題で動き始める。
2003.01.20
〜24
雪がふる中、約200名の障害者・関係者が集まり、厚労省前にて連日の抗議行動。
24日は自民党障害者問題特別委員会が開催され、当事者団体からヒアリング。
24日の夜には厚労省から事態の収集案が示されるものの、障害者団体の要望とはほど遠く、受入れられず。
2003.01.27社会・援護局長より28日の支援費担当課長会議における説明内容について提示される。障害者団体の主張を取り入れた内容であり、今回の補助金交付基準の問題について厚労省と妥結する。
[障害者団体と厚労省の合意事項]
今回の国庫補助基準に関する考え方
1.今回、新たに適応される障害者ホームヘルプ事業の国庫補助基準(注:一般の障害者25時間、視覚障害者等特有のニーズをもつ者50時間、全身性障害者125時間)は、市町村に対する補助金の交付基準であって、個々人の支給量の上限を定めるものではない。
2.今回の国庫補助基準は、現在の平均的な利用状況を踏まえて設定するものであり、今後、支援費制度施行後の利用状況等を踏まえ、見直すこととする。
3.国庫補助基準の設定に当たっては、現在提供されているサービス水準が確保されるよう、現状からの円滑な移行を図ることとし、従前の国庫補助金を下回る市町村については、移行時において、原則として、従前額を確保するものとする。
4.検討会をできるだけ早い時期に設置することとし、支援費制度下におけるホームヘルプサービスの利用や提供の実態を把握した上で、在宅サービスの望ましい地域ケアモデル、サービス向上のための取組等、障害者に対する地域生活支援の在り方について精力的な検討を行うこととする。
また、国庫補助基準については、支援費制度施行後のホームヘルプサービスの利用状況等を踏まえ、検討会において、その見直しの必要性について検討するものとする。
なお、検討会の運営等については、利用者の意向に配慮し、利用当事者の参加を求めるとともに、公正な運営が確保されるよう、適切な委員構成とする。
5.今後とも、ホームヘルプサービスについては充実を図るとともに、そのために必要な予算の確保につき、最大限努力する。
2003.01.28全国支援費担当課長会議開催。
障害者団体は日比谷公園にて報告集会を行う。
2003.05.26・坂口 厚生労働大臣と障害者団体との懇談会。
・「障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会」の第1回目が開催され、当事者団体の代表として障害者7団体(日身連、育成会、日盲連、聾唖連盟、全脊連、JD、DPI)から委員が選ばれる。
2003.11.12在り方検討会が始まって半年ほどたち、支援費制度及び検討会運営の課題について提起を行い、障害者7団体で厚労省に『「支援費制度」及び「障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会」についての要望書』を提出
2003.11.14第11回在り方検討会にて、2003年度のホームヘルプの国庫補助金が大幅に不足することが明らかになり、障害者7団体で厚労省に「ホームヘルプサービスの国庫補助に関する緊急要望書」を提出。
2003.12.12・ホームヘルプの国庫補助金不足については第13回在り方検討会にて厚労省より、「省内の関係予算の流用、あるいは節減など省を挙げて最大限の努力を行いました結果、所要額については、ほぼ全額を確保できる見通し」との報告。
・厚生労働省から障害者7団体に、ホームヘルプ単価の引き下げを中心とした「平成16年度に向けたホームヘルプサービスの事業運営の見直し(案)」が提案される。
2003.12.17障害者7団体は厚労省に対し、「平成16年度に向けたホームヘルプサービスの事業運営の見直し(案)」については白紙撤回し、在り方検討会で議論することを要望。厚労省はこれを受け入れる。
2004.01.16厚労省の障害保健福祉部長から障害者7団体に対して、介護制度改革本部発足の説明があり、障害者施策と介護保険について検討をすることの提案を受ける。
障害者7団体はこれを重要な問題と受け止め、互いの情報共有と意見交換を密にしながら検討をしていくことを確認し、週1回ペースで勉強会を行っていくこととする。
2004.01.22厚労省と障害者団体の話し合いの結果について伝える。今後、障害者7団体に全家連を加えた障害者8団体で、厚労省と週1回の勉強会を開催することが決まる。
○介護保険法改正の進行スケジュールと改正に議論が必要な事項について
○今後の勉強会のスケジュールと議題について
2004.01.29障害者8団体と厚労省の勉強会(1回目)
○これからの障害者福祉の基本的な方向性について
○今後の進め方について
・障害者団体側から「介護保険と支援費制度の比較」「介護保険を障害者施策に適用することの懸念」の資料を厚労省に提出。
2004.02.05障害者8団体と厚労省の勉強会(2回目)
○介護保険制度の現状と今後の方向性
・高橋紘士立教大教授の話
・介護保険制度の概要と現状、今後の課題
2004.02.12障害者8団体と厚労省の勉強会(3回目)
○介護保険制度の現状と今後の方向性
・池田省三龍谷大教授の話
・要介護認定、支給限度額、サブシステム(上乗せ・横出し)について
2004.02.19障害者8団体と厚労省の勉強会(4回目)
○支援費と介護保険との対比
・障害者保健福祉施策と高齢者保健福祉施策の対比(法律の仕組み、サービスの対象者、利用の決定、ケアマネジメント)
2004.02.24公明党厚生労働部会の障害者8団体に対するヒアリング
2004.02.27障害者8団体と厚労省の勉強会(5回目)
○支援費と介護保険との対比(計画、費用負担、利用者負担)
○介護保険に加え、税財源でサービスを上乗せすることについて
2004.03.04障害者8団体と厚労省の勉強会(6回目)
○支援費制度と介護保険制度の展望
・北野誠一氏の話
○これまでの議論に関する意見交換(「介護」「自立」の定義、要介護認定、ケアマネジメント、利用者負担)
2004.03.11障害者8団体と厚労省の勉強会(7回目)
・障害者8団体の統一質問書「介護保険と障害者施策の統合に関する質問」「今後の障害者施策の基本的な方向性に関する質問事項」を厚労省に提出し、これに基づいての意見交換。
2004.03.18障害者8団体と厚労省の勉強会(8回目)
・第8回に引き続き「介護保険と障害者施策の統合に関する質問」に基づいての意見交換。
・この間の勉強会の内容についてオープンにし、広く議論を高めていくために4月30日に障害者8団体で対話集会を開催し、厚労省にも参加を要請する。
2004.03.23障害者7団体に対して厚労省が「平成15年度支援費制度の在宅サービスの執行について」の説明をし、2003年度のホームヘルプの国庫補助については満額確保できず国庫補助基準の96%の補助となり、全市町村の事業費からは24億円不足することが明らかになる。DPIを中心にして、抗議行動を行う。
2004.04.01議論が出つくしため新しい検討の材料がでてくるまで、厚労省との勉強会をいったん終了しすることを障害者8団体から厚労省に申し入れる。時期を見て、勉強会を再開させることを確認するとともに、今後の介護保険見直しのスケジュールについて説明を受ける。
前回、提案した公開対話集会のについての厚労省と内容を調整する。
2004.04.30“介護保険”と“障害保健福祉施策”の関係を考える4.30公開対話集会の開催

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