障害者8団体と厚生労働省との勉強会の経過報告
2004年1月16日13:00〜15:00
○障害保健福祉部長より介護制度改革本部の設置についての説明を受ける
厚生労働省が2005年の介護保険法の改正を踏まえ、各部局をまたぐ横断的な組織として介護制度改革本部を発足させました。検討項目には、「介護保険と障害保健福祉施策の関係」もあがっており、これに対して、障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会の障害者7団体で、障害保健福祉部長に介護制度改革本部の設置についての説明を要望し、1月16日に厚労省から詳しい説明を受けました。
最初に塩田障害保健福祉部長より、「昨年は支援費制度がスタートしたという点で、障害者福祉行政の点で記念すべき年であり、課題はいろいろあったが、関係者の努力の結果、順調なスタートをきることができた。途中で財源が不足するという問題がおきたが、障害者団体とも協力して取り組み、政治家、地方自治体、財務省、厚労省他部局から障害者福祉の向上が非常に大事な課題だという共感を得ることができ、乗り切ることができた。今年は支援費制度の二年目に入り、支援費制度が目指した理念をこれからも末永く前進させていくために何をしたらよいかという年であり、そのための色々な方策を決めていかなければいけない。」
という支援費の一年目の評価と今後に向けた話がなされました。
そして介護制度改革本部について、「介護制度改革本部では、障害者の問題については幹事会を作って検討する。厚労省としては幹事会で議論して、6月ごろに方向性を決める。介護保険の改革案は9月に発表し、様々な意見を聞いて、来年の通常国会に法案を出すことになっている。」という説明がありました。
介護保険の議論については、「障害者のかたが時期尚早ということであるならば、今回の介護保険との話は見送りという結論にならざるをえない。私たちの立場からは障害者団体が反対することを持ち出せない。6月に向けて、それぞれの関係者で考えて欲しい。厚労省は支援費制度を否定しているのではなく、その理念をどう実現していくか、どう発展させていくかを考えている。高齢者の介護保険に入れてもらうのではなく、対等な気持ちで、自分たちが介護保険の仕組みを変えるという、もっと前向きな議論をしていきたい。結論ありきではなく、議論をして良い結果がでなければ、介護保険の話はやめれば良い。」との投げかけがありました。
この話を受けて、障害者7団体で場所を移して協議したところ、非常に重要な問題で各団体がこの場で結論をだせる問題ではないので、持ち帰って会員に対して説明をし、検討したいということになりました。また、この問題についてはしばらく重要な局面が続くので、お互いの情報共有と意見交換を密にしたいということで、1・2月は1週間に1回のペースで7団体が集まって話し合いの場を持つことになり、次回は検討会が行われる1月22日とすることを決めました。
その後、厚労省を再度訪れ、村木企画課長に対して、「部長も、課長も、障害者団体がノーといったらできないという部分を重く受けとめた」、「持ち帰って団体として検討するために、今後の検討のスケジュール、検討内容、項目などについて情報を頂きたい」、「支援費制度によって地域生活が一定進んできた。障害者の地域生活の拡充ということがさらに必要」「次回検討会の後に再度障害者7団体が集まるので、厚労省とも各団体が持ち帰って検討した内容について話をしたい」ということで申し入れをしました。これについては、企画課長が預かり、日程調整をして連絡をもらえることになっています。
2004年1月22日13:30〜14:30
○厚労省側に障害者団体の勉強会を開催したい意向を伝える。
・介護保険法改正の進行スケジュールと改正に議論が必要な事項について
・今後の勉強会のスケジュールと議題について
1月16日の障害者7団体への介護制度改革本部の説明の場において、塩田障害保健福祉部長から「支援費制度の理念の実現、発展のために、介護保険を活用する前向きな議論をしたい」との呼びかけを受けて、障害者7団体は連携を深めること目的に今後週1回ペースで集まることに合意し、その第1回目の話し合いを1月22日に行った。同時に村木企画課長をはじめとする厚生労働省との話し合い(情報共有と意見交換)を行った。今回から全家連の正式な参加により、3障害8団体としての話し合いを進めていくことになった。
厚労省に対して、各団体が16日の話を持ち帰って検討した結果、現在の情報で結論を出すことは難しく、介護保険への統合を前提とせずに8団体がまとまって厚生労働省と率直に意見交換をしながら、その是非を判断していきたい旨を伝えるとともに、現状のサービスが維持できる仕組みと、施設から地域生活に移行することが目標で、それをベースに現状よりも障害者施策が一歩でも進むような話をしたいという発言が出された。
続いて厚生労働省から配付資料に沿って介護保険法改正の審議の進行スケジュールと議論に要する事項について説明があり、質疑が行われた。
8団体側からは、「財政状況が困難であることは理解するが、支援費制度は未だ課題が多い。スタートして1年を経過したばかりで検証もしておらず、介護保険と一緒にしてもうまくいかないのではないか」「現状の支援費制度においても十分にサービスが受けられていないので、今後どうなるのか多くの障害者が不安に思っている」などの懸念が示された。
厚生労働省からは、当事者の考えが今後の政策決定に大きなウェイトを占めること、介護保険法の附則で5年後の見直しが法文上明記されていること、したがって介護保険と障害者施策の関係を検討する上では当事者団体の意見を聞き、地域生活を実現するためにはどの手段をとるのが有効なのかという観点から一緒に検討をしていきたい、ということが述べられた。
障害者団体側は厚労省に対して、今後障害者8団体と週1回ペースで話し合いを行い、実務レベルの情報も含めた具体的な情報提供を求めた。また、次回は厚労省と障害者団体がもつそれぞれの課題の共有化を図るために、介護保険制度及び介護保険法について検討しながら、互いの意見交換を行う集まりを持つことになった。
2004年1月29日15:00〜18:00
○厚労省との勉強会(第1回目)
・これからの障害者福祉の基本的な方向性について
・今後の進め方について
1月22日の障害者8団体の協議において、今後障害者8団体で週1回ペースで話し合いを行い、その際に厚労省に対して介護保険の見直しに関してなされている検討について実務レベルの情報も含めた具体的な情報提供を求めていくことを決定した。そのことを受け、第3回目の集まりを1月29日にもった。
当日は午後3時から会議を始め、まず8団体での協議を行った。介護保険と支援費の相違点や介護保険を障害者施策に適用することに対して懸念される事項について、また、介護保険のメリットをどう考えるかについて事務局で作成した資料をもとに意見交換を行った。
その中で、厚労省と協議をするのにあたって、各論から入るのではなく、まず、障害者福祉施策の抱える基本的な課題(扶養義務、障害認定、所得保障、総合福祉法の確立等)をきちんと押さえ、その上で地域生活支援に必要なサービスの介護保険と重なる部分と重ならない部分を仕分けた上で、重なる部分に介護保険を適用することが良いのかどうか判断するという議論の方向性がだされた。
そのように、基本論・総論・各論と整理して話を進める中で、障害者団体が指摘したことに厚労省が答えるにとどまるのではなく、介護保険に障害者の介護保障をどうリンクさせるのか厚労省が描く全体像についての情報を求めていくことになった。
続いて、午後4時から村木企画課長をはじめとする厚生労働省との話し合い(情報共有と意見交換)を行った。
最初に村木課長から、介護保険に吸収合併ではなく障害福祉施策としてどう打ち出していくのかについて協議したいとの言葉があり、当面2月までに協議を行うテーマとスケジュールが示された。
また、厚労省からこれからの障害者福祉の基本的な方向性について、資料をもとに説明が行われた。厚労省は、これからの障害者福祉は地域で暮らすことを前提に、
・障害者種別や年齢を超えた地域ケアをできるだけ身近なところで受けられること
・就労や住まいの問題も含めての支援の在り方を考えること
・地域のニーズを的確に把握するための仕組みが必要であり、また、今後、地域移行の中で新たなサービスを受ける人が増えるためにサービスの伸びのスピードに耐えられる仕組みが必要であること
・税と保険では財政弾力性に違いがあり、これからは財政の弾力性ある仕組みが求められること
・特区における取組みも含め、地域の実情に応じたサービスを生み出す仕組みが必要であること
などをあげた。
また、自治体から国への要望として「安定的な財源確保」「ケアマネジメントの制度化」「支給決定基準の策定」などがあり、一方で障害者福祉の補助金について廃止し地方に財源移譲を求める声が大きいということもあげられた。
障害者団体側からは、
・”障害者種別を越えたケア”という理念は重要だが、福祉法はそれぞれ身体・知的・精神と種別に分かれている。法律が別でサービスだけ統合ということではなく、障害者団体は従来から障害者総合サービス法を制定するよう提案してきている。
・平成7年に障害者プランができて7年間の計画が終わったが、知的障害者の入所施設は増えていて、精神障害者の社会的入院は横ばいである。市町村障害者計画は91%の市町村で策定されたが、現状が変わったという実感がもてない。
・扶養義務制度を変えない限り、いつまでも親が子供を見るということで、公的責任をあいまいにして最後は家族の責任としている。これは逆に本人の自立意欲を阻害している面があり、扶養義務問題について、政治も含めてどう提起していくのか考えなければならない。
・障害認定や等級問題についても、医療モデルで決まっていて、それがサービスに結びついている。知的障害者、精神障害者の認定の方法にも問題がある。
・総合的な障害者施策、所得保障など古くから指摘されてきた問題で、問題意識だけではだめで、それをどう施策にしていくかが重要である。
などの意見がだされた。
議論は当初の予定を大幅に越えて6時過ぎまで続いたが、これらの問題意識を障害者団体と厚労省の双方が共有し、次回以降の介護保険と支援費制度の具体的な問題について協議する中でも議論の念頭においていくことを確認して、今回の話し合いを終了した。
最後に障害者団体から介護保険と支援費制度を比較して懸念される点についてまとめた第一次資料を提出した。
次回も引き続き、厚労省と障害者団体がもつそれぞれの課題の共有化を図るために、介護保険制度及び介護保険法について互いの意見交換を行う集まりを持つ予定である。
2004年2月5日 15:00〜18:00
○厚労省との勉強会(第2回目)
・介護保険制度の現状と今後の方向性
高橋紘士立教大教授の話
介護保険制度の概要と現状、今後の課題
先週に引き続き、障害者8団体の話し合いを2月5日の午後3時より開催した。
前回に厚労省と行った「これからの障害者福祉の基本的な方向性」についての議論を踏まえて、今回の厚労省との話し合いは「介護保険の現状と今後の方向性」について、高橋紘士氏(立教大学教授)より話を伺い、質疑を行うことで進めていくことを確認した。
各団体の中で介護保険と障害者サービスについての検討がなされており、その中の論点として、介護保険と支援費制度のアセスメントの違い、給付の上限と上乗せ・横出しサービスの問題等の課題があがったことの報告がなされた。精神障害の立場からも、介護保険の”自立”の概念を障害者に適用することの問題点も提起された。それらを受けて、次回については、厚労省側から引き続き介護保険について学者から話を聞く場を設けたいという提案を受けていたが、厚労省の考えを聞き、障害者団体側がもつ問題点を議論する方向にしたいという意見がだされた。
また、早急にそれぞれの団体が課題を出し合い、今後の検討における共通の認識を作っていくことが確認された。
また、この間の動きとして、厚労省が1月末に各自治体に示した”ホームヘルプサービスの国庫補助配分予定額””居宅生活支援サービスの事業運営上の工夫について”と、それを受けての自治体の反応についての情報交換を行った。
午後4時からは、村木企画課長をはじめとする厚生労働省との話し合いを行った。
高橋紘士氏に加え、老健局から渡辺企画官(総務課)、宮崎課長補佐(介護保険課)が出席され、それぞれから介護保険制度についての説明が行われ、その後、質疑を含めた議論がなされた。
高橋氏は「介護保険と障害福祉」と題する資料に基づいて話をされた。概要は以下のとおりである。
・税方式か保険方式かではなく、必要とされる介護のニーズにどう機動的に対応するかという仕組みとして介護保険をとらえる。一般財源は政治的な仕組みとして配分が決まるが、介護保険は福祉にしか使われない特定財源である。
・介護保険導入によって、3年間で高齢者人口の増加分をはるかに越えてサービスが増加した。保険はニーズの増加に応じサービスを増やすのになじむ仕組みである。
・介護保険は赤字が発生すれば財政安定化基金から借りて運営し、次期のでどう見直すかを議論できる柔軟な仕組みをもっている。
・介護保険は市町村が必要なサービスを考え、保険料を決め、運営する地方分権の仕組みにのっとっている。
・従来の福祉は問題がおきた時に救済するという仕組みだったが、介護保険はあらかじめ必要なサービスを明らかにし、標準的なサービスを提供する仕組みである。
・介護保険の現在のケアモデルも転換が必要で、地域生活移行を痴呆性高齢者を中心にして考える。地域に小規模、多機能型のサービスを作り出していく。
・介護保険は標準的なニーズに対するサービスであり、介護保険では提供できない特別なサービスについても整備する必要があるが、中心部分として介護保険は機能する。
・国民が保険料を負担するということは重要なメッセージであり、サービスを自分のこととして考え、自分たちで仕組みを支えていくという価値の転換が行われることが、議論の大きなポイントである。
続いて宮崎課長補佐により、「介護保険制度の現状と今後の方向性」と題する資料に沿って介護保険制度の目指した理念と現状、そして今後の課題についての説明が行われた。概要は以下のとおりである。
・介護保険創設時の考えとして「社会連帯」「地方分権」「自立支援と在宅サービスの充実」「利用者本位」「公平な負担と給付」の5つの視点があった。
・介護保険制度の実施状況として、全体では利用者が150万人から300万人に増加し、特に在宅サービスの伸びが著しい。また、財政規模も3兆円でスタートして現在5兆円になっており、ニーズに合わせて費用をまかなっている。給付が増えるにしたがって負担も上昇している。
・介護保険制度に対する評価は、評価している人が発足時の4割だったが、現在は6割に増えた。
・今後の課題としては、「制度の持続可能性」「サービスの在り方」「サービスの質の確保」「予防・リハビリテーションの充実」があげられる。
これらを受けて
・現在の要介護認定の仕組みでは身体的な障害以外の多様な障害が評価されていない。これを今後どうするのか。
・介護保険は標準的なサービスを提供する仕組みという話があったが、個別ニーズにどう対応するのか。障害者サービスは個別ニーズの重要性が大きい。
・今後、介護保険の費用は高齢化の中で拡大していくと推計されているが、いずれ財源問題にぶつかるのではないか。障害者がその中に入っていくのは不安がある。
・介護は日常生活・社会参加・労働のそれぞれの場面で必要であり、介護保険でどこまで担い、それ以外をどうするのかを考える必要がある。
・今日の説明では、介護を受けながら地域で暮らすことを“自立”と言っていたが、介護保険の仕組みでは介護を必要としないことを“自立”と呼んでいる。“自立”をどちらの概念でとらえるのか。
などの意見が出され、現在の介護保険の仕組みを前提とせずに、現在の課題をどう介護保険の中で解決し、あるいはそれ以外の仕組みでどう対応するのかについての意見交換がなされた。
今回の議論を踏まえて、次回は12日に再度「介護保険制度の現状と今後の方向性」について、障害者団体の持つ課題も含めて議論することとなった。また翌13日には池田省三龍谷大教授から、市民活動として社会運動として介護保険をどうとらえるかをテーマに勉強会を開催する予定である。
2004年2月12日16:00〜19:00
○厚労省との勉強会(第3回目)
・介護保険制度の現状と今後の方向性
池田省三龍谷大教授の話
要介護認定、支給限度額、サブシステム(上乗せ・横出し)について
先週に引き続き、障害者8団体の話し合いを2月12日の午後4時より開催した。
前回の厚労省の話し合いでは、「介護保険の現状と今後の方向性」について高橋紘士氏(立教大学教授)から話を伺い、ディスカッションを行った。今回も、先に池田省三氏(龍谷大学教授)から介護保険の話を伺うとともに、障害者団体の持つ課題も含めて議論することとなった。
前回からの課題であった障害者団体側の今後の検討における共通の認識を作っていくための作業として、23日に勉強会を行うことを確認した。事前に各団体から課題をあげてもらい、障害者団体に共通する課題とそれぞれの団体の固有の課題について、事務局で論点整理をすることとなった。
午後5時からは、村木企画課長をはじめとする障害福祉部と、前回に引き続き老健局から渡辺企画官(総務課)、宮崎課長補佐(介護保険課)の出席のもと話し合いを行った。
まず、池田省三氏が「介護保険−その思想とシステム−」と題する資料に基づいて話をされた。概要は以下のとおりである。
・介護保険の思想と理念は理解されていない。介護保険は普遍主義、自立支援、共助の思想でできている。介護保険のニーズ判定は、個々の要介護度のみで行い、所得や家族の有無とは関係がない。利用者の選択と契約に基づき、行政処分ではない。普遍主義は費用負担ついても適用され、全ての人が1割を負担する。
・介護保険は、予算主義(あらかじめ決まった中での配分)から決算主義(出来高による財源確保)に転換した。普遍主義を担保するには決算主義にしなければならない。
・在宅サービスを利用している人の金額は支給限度額の約4割だが、それでもドイツより水準が高い。在宅サービスの支給限度額は特別養護老人ホームに入ったのと同じ金額に設定している。また、35万円は平均的な勤労世帯(年収600万円世帯)の可処分所得と同水準である。介護保険では現在の支給限度額ではあまり問題がおきていない。限度額を越える人は市町村が独自にやるか、自己負担でサービスを買っている。
・介護保険は全てのニーズをみたせるわけではなく、1割の自己負担できない人、痴呆で契約が難しい人などの問題がある。制度はメインシステムとサブシステムがあって、その補完関係である。介護保険のメインシステムは普遍主義でできていて、そこででてくる問題にはサブシステムが用意されている。
・特定ニードへの支援をどうするか。配食サービスは保険給付になじまない。しかし、配食サービスが必要な人がいるので自治体が実施している。軽い痴呆でお金の管理が必要な場合は地域福祉権利擁護事業がある。虐待がある場合、措置で対応することもできる。
・自立支援の考え方は、魂の自立が人間の尊厳であるということ、人間は何者にも支配されず、自らの意思で決定する。これを回復するのが介護保険である。これまでの福祉は、家族モデル(依存)と病院モデル(管理)しかなかった。サービスの利用料は無料・低廉ので、あくまでも与えられるサービスだった。介護保険は自己決定が先にあって、必要な社会的な支援が受けられる仕組みである。
・従来は、心身機能の低下によって自己決定できなくなり保護になっていた。自己決定を実現することが、介護保険が目指すケアである。自己決定を回復するとケアは上手くいく。良質な介護事業者はそれを考えている。痴呆性高齢者は自己決定がないがしろにされているために、それが問題行動として現れる。痴呆性のケアは自己決定の回復が重要なテーマになる。
・ケアの対等関係は、費用を自分で払うという事で担保される。有償ボランティアはお金を払うことで使いやすくなった。障害者の主張するダイレクトペイメントと共通する。
・障害者と介護保険が出会えば、支援型の介護ができるので、期待している。支援型介護は高齢と障害とで共通した理解ができる。
・自助、互助、共助、公助については、個人ができることを行政が行ってはけない、市町村ができることを都道府県が、都道府県ができることを国がやってはいけないということ。問題が起きたときにまず解決を迫られるのは本人(自助)で、次に家族・友人(互助)である。しかしこれには限界があり、全てが解決できるわけではないので、次に共助が必要となる。ヨーロッパでは教会が担っていて、日本ではかつては村落共同体が担い、都市化が進む中で企業、労働組合などの職域コミュニティが担ってきた。それでも解決できないことについては行政(公助)の支援で行う。
・日本は共助と互助の区別がついていない。措置制度が介護保険に替わったのではなく、介護保険は失われた共助システムを作った。家族は本来の役割に立ち戻る事ができた。介護保険が全てをやるわけではなく、介護保険でカバーできないものについては公助がカバーする。
・介護保険料は約3200円。訪問介護は4020円で、介護保険は40歳以上の人が月1回訪問介護をしていることと考えられ、その分を保険料として負担しているということになる。
・介護保険は、本来、保険者の規模が大きいほうが財政が安定する。諸外国では全て国が保険者である。しかし、本当の地域ケアシステムは市町村しかできない。北欧型の福祉は市町村が責任を持っており、日本も同じである。国家が責任を持つのでなく、地域がケアをする。考え方によっては、日本はドイツの介護保険を使いながら、北欧システムを実現できている。
続いて、老健局の宮崎課長補佐から前回、障害者団体側からでた質問について、資料をもとに説明がなされた。
・前回、自立の理念が2つあるという話があったが、介護保険法の自立の理念は、”その有する能力に応じ自立した日常生活を営む”という意味での自立である。要介護認定の自立は法の理念と意味が違っていて、本来は”非該当”が妥当な表現だと考える。
・介護保険制度は4年目を迎え、15年度から要介護認定を改定している。痴呆性の高齢者の認定が低く出ているという批判があったので、改めて痴呆の評価をより適切に出来るようにした。概ね7割のかたが納得してもらえている。また、推計されたケアと実際のケア時間が比例しており、要介護認定のシステムは改善されてきている。
・痴呆性高齢者のケアをどうしていくかが大きな問題であり、要介護認定を受ける人の半分は痴呆が見られる。高齢者の1割が痴呆をもつという調査結果もあり、ケアの転換も必要である。痴呆性高齢者のケアは尊厳の保障、生活をもとにケアを組み立てていくという指摘を受け、日ごろ、住み慣れた場を基本としてケアを組み立てていく。介護保険を変えていかないといけない部分である。
・支給限度基準額については、平均利用率は概ね35%〜50%であり、限度額を超えた部分については、各保険者で独自に行っている。上乗せを行っている保険者は27保険者であり、約1%である。実施している市町村の数が少ないのは第1号保険者の保険料を財源とするため、保険料にはねかえってくることの影響もある。また、身体障害者手帳をもっている場合は、支援費から給付を受けていることもある。
・横出しを実施している保険者は、介護保険の枠内については、市町村特別給付(寝具乾燥、移送サービス、配食サービス等)として115保険者、保健福祉事業(介護者相談、健康づくり事業等)として158保険者である。全体の4〜6%で取り組みとしては多くない。これ以外にサブシステムとして市町村が実施しているところは多い。
これらを受けて、参加者とのディスカッションがなされ、
・家族(互助)については、障害者運動は家族介護が得られなくても、重度であっても一人暮らしできるように進めてきた。介護保険のサービスメニューを検討していた時に、一人暮らしの重度の障害をもつ者のメニューは検討されていなかった。自助と互助がまだ分離されていない問題がある。
・障害者が求めるものは社会参加、生活支援であり、介護に限定されない。社会参加のサービスが保険制度になじむのか。
・介護保険は、その前に10年間のゴールドプランがあって基盤整備がされてできた。障害者のサービスも、まず基盤整備に取り組むべきではないか。
・介護保険もこれから改善されるものであり、支援費と統合してどこまで整理できるのか先が見えない。
・社会政策は法律・システム・財政の視点が必要で、障害者福祉は法律が弱い。福祉法が3障害にわかれている、障害認定制度や所得保障が不十分である。財源論だけでは崩れる要因になる。大事なのは扶養義務で、これが公的責任をあいまいにしている。国民的な議論になるが、せめて厚労省の中で自立を理念とするなら扶養義務の問題を考えて欲しい。
などの意見が出された。
質疑の中で池田氏から介護保険と障害の統合については三段階があるということで、「来年、介護保険法が提出されて、その翌年が介護保険の第3期になる。そこに障害者サービスをいれられるかというと無理である。時間的な経過で3つのステージがある。支援費は財政面の問題があり、まずこれを緊急的に財源で支える。次に、サービスの供給体制がおいついていないので、高齢者と障害者のサービス提供者を統合することのメリットがある。第三ステージは保険給付をどうするのかを考え、障害者の吸収合併でなく、対等合併を行う。要介護認定、支給限度額、介護保険でできないサービスをどうするかを考える。そういう意味の三段階の統合のステージがある。」との考えが説明された。
前回、今回と2回にわたって介護保険を中心とした議論がなされた。これを踏まえ、次回は19日に介護保険と支援費の関係について、具体的に障害者団体側と厚労省で議論していく予定である。
2004年2月19日16:00〜19:00
○厚労省との勉強会(第4回目)
・支援費と介護保険との対比
障害者保健福祉施策と高齢者保健福祉施策の対比(法律の仕組み、サービスの対象者、利用の決定、ケアマネジメント)
先週に引き続き、障害者8団体の話し合いを2月19日の午後4時より行った。
前回の厚労省との話し合いでは、池田省三氏(龍谷大学教授)から介護保険の話を伺うとともに、障害者団体の持つ課題も含めて議論した。これを受けて、今回の厚労省との話し合いは支援費と介護保険の関係についての議論に入っていくことが確認された。
また、公明党厚生労働部会より2月24日に障害者福祉施策に関する要望を障害者団体から聞きたいと言うことで案内があった件での対応を協議した。これについては、障害者8団体にピープルファースト、精神障害当事者も加えて参加することとなった。
さらに、8団体協議の状況について節目に合同集会や記者会見等で報告していくこと、23日に予定している8団体勉強会の予定確認等を話し合った。
午後5時からは、村木課長、間課長補佐をはじめとする障害福祉部と、前回同様に老健局から渡辺企画官、宮崎課長補佐の出席のもとで話し合いを行った。
まず間課長補佐が配付資料「意見交換のための資料(その4)」に沿って介護保険と障害者施策について対比的に説明された。
介護保険法は老人福祉法と老人保健法を基礎にその上部に位置づけられており、障害分野に対しても身体障害者福祉法・知的障害者福祉法・児童福祉法・精神保健福祉法の各法を基礎としてその上部に介護保険が入る組み立てが考えられること、施策はメインシステムとサブシステムによって成り立っていること等が説明された。
次に具体的にサービスの対象者と利用の決定について、措置制度・精神障害者施策・支援費制度・介護保険の各制度を比較しながら説明された。その中で、ケアマネジメントについては自治体からガイドライン策定の要望があること、ケアマネジメントの今後の課題として、エンパワメント・ソーシャルワーク機能の充実や制度としての位置づけがあげられた。また、障害のニーズは特に多様であり、特別なニーズについて、その状況と内容を明確にする必要があるとされた。
説明に続く参加者とのディスカッションでは主に次の事項について質問・意見が出された。
「障害者施策と介護保険の関係を考える際にはアセスメントの問題が重要で、理念的には類型化のサービスから個別化のサービスに変わっており、支給量を要介護度で段階的に決めるのはこの流れに反している。公平性の意味するところは等しく分けるということではなく、必要なところに必要なだけ使うことではないか。」
「必要なところに必要なサービスを提供するという点では同意するが、より妥当性の高いシステムとはどういうものか。現在ある地域格差の問題も十分に考慮しなければならない」
「知的障害者の場合は定義がなく、従って認定ができず、手帳制度もできなかった。介護保険ではそれができるのか。また、苦情解決システムの支援費と介護保険の利用実態をデータで示して欲しい。」
「知的障害者のニーズについても、他障害と同様に、生活の中でどんなケアが必要かという観点から捉えられると考えている。介護保険では痴呆性高齢者に対して“見守り”も含めたアセスメントを行うように変わってきている。苦情解決についてのデータは、支援費についてのデータは現在ないが、介護保険については国保連に寄せられたデータがあるので、次回資料を用意する。」
「介護保険の支給限度額を越えてサービスを必要とする人について、どのように対応するのか。現状の支援費制度で受けているサービス量を担保できるのか。」
「介護保険で全てまかなうのではなく、税によるサービスや医療保険も含め様々な方策がある。介護保険の話とは別に、どういう介助を必要としている人にどれくらい費用がかかっているのかという議論が重要になる。」
などのやりとりがなされ、これらの質疑を通じて、ケアマネジメントがもつ問題点、特別のニードをどのように具体化し財源確保をするのか等の議論がなされた。また、課題のある両制度を統合する議論よりも第三の方法を模索してはどうかという意見も出された。
次回は2月26日(木)17時から、今回議論できなかった利用者負担や保険料などの課題も含め、引き続き支援費と介護保険との関係について検討する予定である。
2004年2月27日16:00〜19:00
○厚労省との勉強会(第5回目)
・支援費と介護保険との対比(計画、費用負担、利用者負担)
・介護保険に加え、税財源でサービスを上乗せすることについて
先週に引き続き、障害者8団体の話し合いを2月27日の午後4時より行った。
前回の厚労省との話し合いでは、介護保険と支援費の関係について、支給限度額や要介護認定、ケアマネジメントに関する問題が話し合われたことを受けて、そのやりとりの中で疑問点があるのでさらに議論を深めたいという意見がだされた。
また、滋賀県で開催されたアメニティフォーラムや新聞報道などで厚労省が「全身性や強度行動障害など特別のニーズがある人に対しては、税財源で上乗せのサービスを行う」と発言していることが報告され、この点についても議論していくことになった。
午後5時からは、村木課長、間課長補佐をはじめとする障害福祉部と話し合いを行った。
最初に、特別のニーズに対する上乗せサービスについて意見が交わされた。障害者団体側からは、
・介護保険に税財源でサービスを上乗せする仕組みにした場合、生命維持に必要な基礎部分である介護保険を越えるサービスを市町村が行わない可能性が高い。
・介護保険が基礎部分になった時に支援費制度はどうなるのか。
・これまでの政策を転換して、基礎部分を市町村が担い、重度障害者などの基礎部分を超えるサービスは国が責任を持つという考え方はどうか。
・介護保険の導入の時に、介護保険以外のサービスはあまり増えなかった。障害者を統合して、介護保険で対応できないサービスを確保できるのか。
などの意見が出された。
これに対して厚労省からは以下のような考えが示された。
厚労省からは、
・財源は、税・介護保険・医療保険・自己負担しかないので、介護保険の上乗せを考えた場合、税で行うことが有力な考え方である。
・現在の65歳以上と40歳以上の特定疾病の障害者に行っているように介護保険を基礎にして支援費制度を上乗せで使う方法をとることもできるし、それ以外により良い方法があるかについても考えている。
・スウェーデンのように市町村が基本的な部分を行って、それを越えるものを国が行うという考え方はわかるが、国が全額負担する場合、極めて限定された人に限定された使い方になり、自由度は狭まるのではないか。
・介護保険の導入の時は、介護保険本体を大きくしてそれ以外のサービスを増やすという視点はなかった。障害者の場合は事情が違って、介護保険以外のサブシステムが重要だと考えている。
これらのやりとりを受けて、二階建てをとる場合の具体的な仕組みとその将来的な安全性が担保されないと、地域で重度な障害をもって生活している人の不安は拭えないので、もっと判断のための材料が欲しいということを伝えた。
続いて、厚労省よりニーズを顕在化させる仕組みとしての市町村障害者計画の必要性について資料をもとに説明がなされた。高齢者には、市町村に老人福祉計画、老人保健計画、介護保険事業計画が義務づけられており、市町村が計画策定を通じてニーズを把握するよう仕組まれている。市町村障害者計画は現在義務づけされておらず、計画を策定しても数値目標まで掲げているところは少ない。今後は市町村障害者計画を義務づけし、市町村障害者計画を積み上げて国の障害者基本計画を作っていくことなどの必要性について議論がなされた。
また、前回から議論されている特別のニーズへの対応としてどういう介助を必要としている人にどれくらい費用がかかっているのかという論点については、障害者は高齢者に比べて数が限られており、現在の障害者の統計や支給決定の内容から十分把握できるのではないかという意見もだされた。
知的障害者の分野からは、グループホームについて支援費では出身地の市町村が支援費を支給しており、介護保険ではグループホームのある居住地の市町村が被保険者になっていることの違いに対する懸念も示された。
次回は3月5日(木)17時から、引き続き介護保険と支援費との関係を考えるとともに、障害福祉施策の立場から研究者の北野誠一氏からの意見も伺う予定である。
2004年3月4日16:00〜19:00
○厚労省との勉強会(第6回目)
・支援費制度と介護保険制度の展望
北野誠一氏の話
・これまでの議論に関する意見交換(「介護」「自立」の定義、要介護認定、ケアマネジメント、利用者負担)
先週に引き続き、障害者8団体の話し合いを3月4日の午後4時より行った。
今回は研究者の北野誠一氏の話を伺うとともに、前回からの厚労省との話し合いの中での疑問点についてさらに議論を深めていくこととなった。
また、3月3日に開催された社会保障審議会障害者部会の中でも介護保険と障害者施策についての議論がなされており、その報告も行われた。
午後5時からは、村木課長、間課長補佐をはじめとする障害福祉部と、老健局から渡辺企画官、宮崎課長補佐の出席のもとで話し合いを行った。
最初に、北野誠一氏から「支援費制度と介護保険制度の展望」とした資料をもとに以下の話がなされた。
・支援費と介護保険を語るときに、ケア・介護・介助・支援・パーソナルアシスタントという言葉を用いるが、人によって言葉のイメージが違っている。それぞれの言葉の定義をした上で議論しないと内容が深まらない。
・介護保険法は“介護”の明確な定義がなく、サービスのメニューを列挙することにとどまっている。知的障害者福祉法が“知的障害者”を定義していないのと同様、介護を定義せずに法律が成立していることが様々な問題を生んでいる。
・世界障害者問題研究所ではパーソナルアシスタントの定義を「本人が選んだ生活において、通常は本人がする(はずの)ことを、障害があるために他者が直接援助すること」としており、この定義は全ての障害者・高齢者の持つニーズに対して普遍的な定義である。
・“自立”概念はさらに違っており、共通の定義を作る必要がある。「福祉自治体ユニット改革への提言」での自立概念は“残存能力の維持・向上”で医療・リハビリテーション的な定義である。一方、10年前に出された「高齢者介護・自立支援システム研究会報告書」の自立論は当時としては画期的であり、重度の障害を持つ高齢者も外出し、社会参加し、生活を楽しむことが介護の基本理念とされている。ただ、在宅での生活のイメージが中心で、障害者のように社会にでていって活動するというビジョンが弱かった。このビジョンをもたないと高齢と障害をあわせたサービス、地域生活支援保険には結びつかない。
・今、厚労省では様々な検討会をやっているが全体のビジョンを示すことが重要である。生活保護の検討会では、扶養義務規定、他人介護料、住宅扶助の単給、救護施設の問題がある。障害者者総合福祉法の制定も必要である。医療保険も見直されており、介護保険と統合して高齢者医療介護保険の構想もあり、この構想と高齢者と障害者の統合の構想はどのような関係になるのか。
また、権利擁護についても、消費者保護基本法の改正が検討されており、団体訴訟制度の導入が検討されている。この流れで、障害者差別禁止法も真剣に議論すべきである。知的障害者入所更生施設の指定基準にも地域移行計画の作成が義務付けられた。これの実効性を担保するためには差別禁止法が重要である。手話通訳などの情報保障にとっても差別禁止法は重要である。
費用負担で応益負担を求めていくなら、所得保障がセットであり、就労支援を進めていく必要がある。法定雇用率と差別禁止法は法的に両立できる。
・介護保険の問題については、要介護認定の仕組みと介護給付額の2点が決定的な問題である。要介護認定で、痴呆、知的障害者、コミュニケーションの支援をするとしたら、細かい設定が必要となる。また、要介護認定は施設での介護時間の調査であって、施設なら入浴介護は食事介護より時間が短くてすむが、在宅では入浴のほうが時間がかかる。
・支給限度額の中でのサービスの選択となると、痴呆専用デイサービスは単価が高くて利用時間がすくなるという質と量がトレードオフになる。
・要介護度5の認定に、一人暮らしの重度障害者を想定していたら、もっと支給限度額は高くなっていたはずである。介護保険の守備範囲を明確にして、一人暮らしの重度障害者をモデルとして想定しないなら、他にどういうシステムを想定するのか示すべきである。
・グループホームの単価を他の国の単価と比較した場合、アメリカではグループホームの単価は12通りあり、一番高い単価は100万近くになる。民間のサービスがグループホームをやっているので、単価が低いと契約をしてもらえない。低い単価だとサービスの質が落ちて、人権侵害がおこる。
しかし、アメリカ方式にすると、同じ単価(同じ障害)の人ばかりになって、ノーマライゼーションに反する。日本のように、個人ごとに支援費を出すのは世界的にすぐれた制度である。グループホームでも一人一人のニーズに応じて、ホームヘルプ、ガイドヘルプをつけられる日本方式のよさをいかして欲しい。
・ケアマネジメントの問題は、民間の事業所がケアマネジメントをやっており、公正中立を担保できていない。また、知的障害者、聴覚・視覚障害者、精神障害者、重度身心障害者の全部をケアマネできる人はいないので、様々なものがあって消費者に選択をまかせるのがいい。カナダのブリティッシュコロンビア州は幅広いコンサルティングの仕組みをもっており、サービスの自己管理モデルから一部自己決定・自己選択モデル、専門職への委任モデルまで、幅広い仕組みをもっている。日本の介護保険のケアマネジメントは多くある選択肢の一つであり、当事者主導の自立支援マネジメントの可能性も問われている。
続いて、間課長補佐より、資料に基づき費用負担について、措置制度・精神障害者・支援費制度・介護保険を比較しながらの説明があった。
措置制度、支援費制度はサービスにかかる費用の負担は援護の実施者である市町村であり、市町村に対して国及び都道府県が補助をする仕組みになっている。利用者負担の範囲は障害者本人と扶養義務者である。負担額は応能負担で費用徴収表によって決まっていて、限度額がある。
介護保険は保険給付については保険者である市町村であり、保険給付以外が利用者負担となる仕組み(保険給付が9割であるので、残りの1割が利用者負担)になっている。利用者負担の範囲は利用者のみである。負担額は応益負担であり、介護保険の利用者負担にも限度額がある。
応能負担の仕組みでは扶養義務者からの費用徴収の問題がでてくる。また、サービスを使っている人と使っていない人との差をどう考えるかも問題である。
高齢者サービスが措置制度であった時には応能負担であり、多くの人は利用者負担を払っていなかった。介護保険導入時には、それまで使っていた人で生計中心者が住民税非課税者の場合は、1割の利用者負担を3%、6%と段階的に引き上げる経過措置を行った。さらに生計中心者が住民税非課税者の場合に、社会福祉法人が市町村と相談して利用者負担を半分もしくはゼロにでき、その一部を国と都道府県が補填する仕組みも作った。また、生活保護の介護扶助のみ適用する単給の仕組みもある。ストック、フローはないが、生活保護を受けるまででもないという人をどうするかは課題で、所得保障との話とも絡んでいる。
その話を受けて、障害者団体側と厚労省とで以下の意見交換がなされた。
障害者団体からは
・北野さんが話された「介護」「自立」の定義や要介護認定、ケアマネジメントの指摘をどう考えるか。
・護保険の利用者負担は本人負担のみと言うが、利用者負担の減免では生計中心者が非課税という条件があり、扶養義務の考えがでてくる。支援費は扶養義務者の対象に親が外れたが、介護保険では親元で暮らす人は減額にならない。
・地域生活移行をどうするかが重要な政策課題であって、親元から、施設から地域へ具体的にどういう道筋がつくれるのか。
などの意見がだされ、これに対して厚労省からは以下の意見がだされた。
・「2015年の高齢者介護」の中では痴呆性高齢者のケアを考えて、これからの介護は生活全体を見ていくとしている。サービス体系、ケアのメニューについも考えていかなければならない。若い障害者と高齢者を比較すると社会に対するかかわり方は違うかもしれないが、高齢者も外出や社会的自立の観点は必要である。
・要介護認定の仕組みは客観的にニーズを図るものであり、介護保険の大きな成果である。その基準は障害者を考える際にはデータをもとに見直す。高齢者介護においても、緊急時の対応、医療ニーズへの対応などの課題があって試行錯誤している。
・ケアマネジメントの課題は認識として持っていて、一人のケアマネージャーがあらゆる障害のマネジメントを行うのは難しいのではないか。専門家がチームを組んで解決する体制が重要である。
・減免には税をあてているので、扶養関係が問われてくる。住民税非課税と生活保護世帯の間にもいろんなかたがいるので、障害者をいれる場合は低所得者をどう考えるかを議論しなければいけない。
・どの制度かを問わず、地域生活支援を進めていくことは重要である。現在、施設に入っている人が施設を出る時は、皆さん並々ならない決意をしている。そのきっかけは、地域での障害者の仲間と出会いであり、そういった機会をどう作り、また、出たいと思った時のサポートやシステムをどう作っていくか。施設の人が外にでて、地域の人と交流する仕組みをガイドヘルプやそれ以外の方法も含めて考えないといけない。
これまで厚労省との6回にわたる討議において双方の意見交換を行ってきたが、今後も引き続き、週1回のペースで話し合いを行うこととなった。次回は、障害者団体側で現時点での質問をとりまとめて、それをもとにさらなる議論を続けることとなった。次回は3月11日(木)を予定している。
2004年3月11日16:00〜19:00
○厚労省との勉強会(第7回目)
・障害者8団体の統一質問書「介護保険と障害者施策の統合に関する質問」「今後の障害者施策の基本的な方向性に関する質問事項」に基づいての意見交換。
先週に引き続き、障害者8団体の話し合いを3月11日の午後4時より行った。
前日の10日の午前中に障害者8団体の会合を持ち、各団体の検討の状況や厚労省との話し合いを今後どのように進めていくべきかを意見交換したところ、各団体とも判断するための必要な情報が不足しているという認識では共通し、それぞれの団体のもつ課題を集約して質問として厚労省に投げかけていくこととなった。この話し合いを受けて、事務局で「介護保険と障害者施策の統合に関する質問」「今後の障害者施策の基本的な方向性に関する質問事項」の2種類の質問書を作り、本日の話し合いで厚労省に提出することを確認した。
午後5時からは、村木課長、間課長補佐をはじめとする障害福祉部と、老健局から渡辺企画官の出席のもとで話し合いを行った。
最初に障害者団体側から、「これまで話し合いを続けてきたが、もう少し具体的な内容が見えてこないと判断をすることができない。障害者8団体の会員だけでなく、多くの障害者と関係者がこの議論に関心を持っている。8団体で現時点の課題について集約して質問書を作成したので、現段階での考えを示していただきたい。」と要望を述べるとともに、2つの質問書を提出した。
ついで、JDの太田氏より「今後の障害者施策の基本的な方向性に関する質問事項」、DPIの中西氏より「介護保険と障害者施策の統合に関する質問」についての内容の説明を行った。
これを受けて厚労省からは、障害者施策の基本的な方向性については、
・サービスの給付を世帯単位から個人単位に変えていくことについては、民法との関係があって障害者だけ個人単位にするということはすぐにはできないが、方向性としては日常的なサービスを利用する、負担することについては個人単位にじょじょにシフトしていくのではないか。個別法が変わる中で民法が変わるということもあるだろう。
・障害の定義については、個別の法律についてはその法の目的にあった形で障害を定義していくことが良いのではないか。これまでのように、障害者手帳にサービスが付随するのではなく、必要がある人にサービスを給付することが重要だと考える。
・所得保障については就労施策が重要であり、現在、厚生労働審議官をトップに省内で検討会を行っている。また、利用料負担についての低所得者対策はしっかりやるべきだと思う。無年金問題についても坂口大臣の私案もでて、現在検討している。
・住宅については所管の省庁と意見交換もしており、福祉のサポートについても明確にしながら、具体的に政策のイメージを固めていこうと動いている。
・総合福祉法については、三障害で同じ施策を進めていく中で、もっと具体的な法律が見えてくるのではないか。特に精神障害者の福祉が課題で、現実的な積み重ねをしていくことが必要ではないか。
介護保険と障害者施策の統合に関する質問については、
・社会保障審議会の介護保険部会では被保険者の問題は4月末に議論する予定である。委員から障害者部会での議論について聞きたいという意見もでている。介護保険も自治体、健康保険、事業者などの様々な関係者がいる。今の段階で個々のサービスをどうするかは決まっていない。現行の15種類のサービスに加えて、「2015年の高齢者介護」の報告書にもあった痴呆性高齢者へのサービス、小規模・多機能サービスなども検討する。介護報酬報酬と関係するところが決まるのは2006年になる。
・理念の問題も、介護保険は「自立支援」がキーワードで始まったが、これからはそれに加えて「尊厳」をキーワードとしていく。要介護状態から抜け出すことだけでなく、介護サービスを受けながら日々の生活を過ごすことを考え要介護の状態での尊厳を支える方向で介護保険を見直していく。高齢と障害の目指すところは共通している。
・要介護認定についても、客観的なニーズ判定のシステムは必要であるが、その基準が変わらないかというと、去年も痴呆性高齢者に対応できるように変えている。障害にあったシステムを実証データをもとに段階的に作っていく。
・授産については日中活動の場から就労の場まで多様な活動をしている。その中身を整理して、介護保険だけでなく就労支援施策とも絡めて検討していくことになる。
・ガイドヘルプは重要な制度であり、使いやすさも含めてどのような形が良いのか考えている。ガイドヘルプだから、社会参加だから介護保険に入らないということではない。
・手話通訳については、通訳者の人材がいないという声もいただいていて、養成の問題とも関係している。
・精神障害者の医療と福祉の範囲については、今の精神障害者施策は、本来は福祉で支えるところまで医療で支えており、現在の精神医療の一部が介護保険に移ることもあるかもしれない。精神障害者のサービスの在り方を考え、地域に戻るためのしかけ、サービス体系を含めて見直しを図る。
・補装具や日常生活用具については議論が十分ではないが、補装具はそのかた個人にあうもので、介護保険は標準的なものをレンタルしている。現状でも個々人にあわせたものが必要な場合は補装具をだしている。
・団塊の世代が高齢者になってくると、高齢者も障害者と同じように権利として主張するようになる。今の障害者サービスのノウハウも高齢者に必要となり、サポートのレベルも変えていかないといけない。障害者の現場の実践の中で磨かれてきたものが高齢者のケアにいきると思う。
などの意見がだされた。
今回議論できていない点も多くあり次回も質問書の事項について議論するとともに、さらに自立生活センターと高齢者生活協同組合とで行った共同調査の結果から障害者と高齢者のサービス利用の違いについても議論することとなった。
2004年3月18日16:00〜19:00
○厚労省との勉強会(第8回目)
・障害者8団体の統一質問書「介護保険と障害者施策の統合に関する質問」に基づいての意見交換。
先週に引き続き、障害者8団体の話し合いを3月18日の午後4時より行った。
先週の話し合いで、厚労省障害保健福祉部に対して、「介護保険と障害者施策の統合に関する質問」「今後の障害者施策の基本的な方向性に関する質問事項」の2種類の質問書を提出して意見交換を行ったが、先週の意見交換だけでは不十分であったので、今週もこれをもとに障害保健福祉部の考えを明らかにさせていくことになった。
また、各地域の障害者団体も今回の議論について見解や意見をとりまとめる動きが広がっており、その内容についても情報交換を行った。
午後5時からは、村木課長、間課長補佐をはじめとする障害福祉部と、老健局から渡辺企画官の出席のもとで話し合いを行った。
前回、提出した「介護保険と障害者施策の統合に関する質問」に基づき、障害者団体側と厚労省側とでやりとりをする形で進められた。
「障害者を統合する場合に保険料や利用者負担の低所得者に対する方策について、現行より新たなものを考えているのか。」
「介護保険の見直しの中で、利用者負担について、充実させるということは言われている。具体的な案にはなっていないが、課題として考えている。
現行の保険料設定は本人や世帯の所得の状況に応じて5段階になっている。中でも「住民税非課税世帯」を対象とした第2段階は層が広く、この中でより低所得の層に対して何か方策がとれないか検討している。しかし、住民税非課税というくくりの中で、所得の低い層を補足するのは事務的に難しいという課題もある。
介護保険の制度外にも、生活保護の単給や社会福祉法人が減免してそれに補助する仕組みを作っている。これをもっと活用できないか。」
「視覚障害者・聴覚障害者については、支援費においても手続き支援、コミュニケーション支援が不十分であり、申請や事業者との契約ができないためにサービスを利用しづらい状況がある。現行の介護保険には、手続き支援、コミュニケーション支援の点でさらに不安があり、これついてどのような対応を考えられているのか。」
「視覚・聴覚障害者の手続き支援、コミュニケーション支援は措置から移行した際の課題であり、支援費・介護保険の両制度とも十分とはいえない。相談支援の在り方、手話通訳の人材養成などやるべき課題が多い。」
「介護保険の79項目のアセスメントでは、全身性障害・知的障害・精神障害・視覚障害者・聴覚障害者・言語障害等、多様な障害のアセスメントを行う際に十分ではないと思われるが、これについてどう考えられているのか。また、障害者にとって重要な社会参加のニーズのアセスメントについてどう考えられているのか。」
「要介護認定のプロセスは必要だが、基準は見直しはしていく。社会参加のニーズは高齢者にとっても必要で、個別給付、事業仕立てなどどういう形で介護保険でやるかはまだ検討中である。それによってアセスメントの方法も変わってくる。」
「現行の障害者ケアマネジメントと介護保険の居宅介護支援では理念・手法・従業者の養成などに多くの違いがあるが、これをどのように考えられているのか。」
「ケアマネジメントは現行の介護保険でも全て上手くいっているわけでない。介護保険のサービス以外のソーシャル的なマネジメントも考えないといけない。障害者は介護だけでなく、住まい、雇用の問題も含めてマネジメントが必要である。高齢者も総合的に考えており、障害と同じである。ケアマネージャーの人材の養成も課題である。」
「サービスがケアプラン通りに行われる介護保険に比べ、支援費のサービス利用は比較的自由度が高くなっているが、これについてはどう考えられているのか。」
「ケアプランの問題は支援費は自由度が高いというが、介護保険のケアプランも事情によって変更できる。事業者やケアマネに連絡して、月の最初と終わりとではケアプランの変更が可能である。」
「介護保険の支給限度額ではサービスが不足する障害者がでてくるが、この対応として具体的にどのような方策が講じられるのか。税による二階建ての仕組みが検討されているという報道もあるが、税による二階建ての仕組みをとる場合、税部分の財政安定化を図るために具体的にどのような方策が講じられるか。また、要介護認定が仮に3ないしは4の場合であっても、税による二階建てサービスが展開し得るのかどうか」
「支給限度額の問題を障害者団体が懸念していることは十分理解している。どれだけのニーズがどのくらいあるのかを、データの積み上げと範囲の明確化の議論していかなければならない。必要なサービスを介護保険と他の財源との組み合わせでカバーすることになる。要介護認定3、4でさらにサービスが必要な場合は、まずアセスメントの仕組みが適切かどうかを考えないといけない。」
「介護保険ホームヘルプは本人への支援のみに限定されるため家事援助の不適正事例が定められているが、障害ホームヘルプでは障害者が自立して生活するための援助が目的のため子育て支援や家族も含めた家事援助も認められている。」
「介護保険の家事援助の適正化については誤解があって、生活援助は高齢者自身が生活する際にできないことを補うものであり、高齢者と一緒に食事を作るような行為は生活援助として必要である。問題になっているのは、高齢者と接触がなく単なる家事代行的なサービスになっていないかということである。」
「視覚障害者の透析利用者の身体介護を伴うガイドヘルプについて、介護保険の中でどう対応するのか。」
「視覚障害の身体介護の伴うガイドヘルプについて、現行の介護保険でも身体介護が必要であれば、乗降介助やホームヘルプの身体介護で通院時の介護を行っている。」
「現行では精神障害者のホームヘルプサービスの認定に医者がかかわっているが、介護保険ではどうなるのか。」
「現行では精神障害者のホームヘルプは医者の必要という判断がいる。介護保険はそういう手続きは無く、要介護認定の時に医者の意見書はあるが、個々のサービスを使うときに医者が意見をいうということにはならないだろう。」
「介護保険ではホームヘルパー資格3級以上を必要とするが、支援費では日常生活支援、ガイドヘルパー(視覚障害・全身性障害・知的障害)の障害独自の資格制度があり、これについてはどう考えられているのか。」
「障害独自の資格制度については、日常生活支援やガイドヘルプを介護保険の中でどう位置づけるのか。ホームヘルプにするのか別の事業にするのか、その位置づけによって変わってくる。」
「グループホームについて支援費では出身地の市町村が支援費を支給しており、介護保険ではグループホームのある居住地の市町村が被保険者になっていることの違いがある。
また、介護保険のグループホームは他の居宅サービスとの併給ができないが、支援費のグループホームはホームヘルプ、ガイドヘルプの併給ができている。これについてはどう考えられているのか。」
「支援費の際には、特定の地域でグループホームが集中すると自治体が大変になるということで居住地にした。知的障害者、精神障害者のグループホームは住まいの場であり、本来はそこの住民ということになるが、まだグループホームの整備が限られている状況もある。住所地特例をつくるかどうかは自治体の意見もよくきいて、グループホームの整備をしていく中で検討する。
高齢者のグループホームと知的障害者のグループホームは性格が違っていて、高齢者のグループホームは全てのサービスがセットになっている。知的障害者のグループホームは住まいであり、そこにヘルパーがきたり、外出のガイドヘルプがあったり、施策として違っている。今後のグループホームについて、今のような住まいとしての考え方でいくのか、もっとパッケージになったものが必要なのかは検討していきたい。」
「給付方法についてダイレクトペイメントの導入の意思があるか。」
「ダイレクトペイメントを直接現金を渡すこととするなら、その使途や透明性について議論していかないといけない。」
「支援費の支給決定の勘案事項には、本人がどういう生活をしたいかの意向が含まれている。今の介護保険のアセスメントは本人の生き方がどう反映されるのか。ひとりひとりの生き方がどう保障されているのか。」
「現在の勘案事項でも、自治体は苦しんでいる。本当にいいのかどうか自信がないのが現実で、数値化すればいいという乱暴な話ではないが、外出の部分は課題としてある。何でも要介護認定でがいいのかどうか、ガイドヘルプについては、使いやすさを含めて考えていく必要がある。」
また、障害者団体と厚労省の協議が始まって2ヶ月がたち、今後のスケジュールについては「社保審・障害者部会の議論が4月28日までに一巡する。介護保険部会でも被保険者の範囲が議題になる。審議会でなされた議論についても紹介したい。障害者部会では5月以降、障害者団体のヒアリングもして、どういう問題があるのか議論する。審議会を開催しながら、障害者団体の意見も聞いていきたい。」ということであった。
また、障害者8団体で4月30日に公開の場でシンポジウムを行い、厚労省からも出席いただいて、障害者施策と介護保険の統合について広く議論を行う場を設けることについても決定された。
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