地域の中にあって地域を変えていく、それが、グループホーム
◇現状は、人里離れた場所、病院、施設の敷地に建設
◇スプリンクラーより大切なものは
室津滋樹さん・日本グループホーム学会代表

 今年1月8日未明、長崎県大村市の高齢者グループホーム「やすらぎの里さくら館」で発生した火災は入居者7名が犠牲となる大惨事となった。犠牲になられた方々のご冥福をお祈りするとともに、このような大惨事を再び繰り返さないためにも様々な方向からの検証と徹底的な原因究明が必要だと考えている。

 日本グループホーム学会は1月13〜14日に現地調査を行った。短時間の調査だったが、いくつかの問題点が浮かび上がってきた。(1)地域との連携の問題(立地上の問題)(2)職員の勤務体制及び管理者の勤務体制の問題(3)建物の安全性の問題(4)建設業者主導で進められるグループホーム設立時の問題。

 とりわけ地域との連携の問題は重要だ。同館は「地域の中にあるグループホーム」という理念とはかけ離れた場所にあった。周辺に民家はなく、山林を造成してつくられた敷地に建てられていた。消火栓も500メートル以上先までなく、消火にあたってはホースを何本もつなぎ、途中にポンプ車が必要だったという。
 火災が起きたとき、救出、初期消火、通報などすべてをグループホームスタッフのみで行わなければならなかった。地域の支え合い、助け合いとは縁のない場所にグループホームが設置されたのはなぜだろう。なぜ長崎県は許可したのだろうか。

 火災後の報道ではスプリンクラー等の設備がなかったとの指摘が多くあった。消防庁が中心になって検討を進めているグループホームの防火対策でもスプリンクラーの設置が議論されていると聞く。しかし、グループホームは火災だけに対応すればすむわけではない。大きな地震や津波、洪水、がけ崩れ、犯罪などのリスクもある。どれだけ設備を強化し職員体制を手厚くしても、あらゆる事態に対応することは不可能と言わざるを得ない。

 地域で暮らす高齢者や障害者を守ることは、本人や職員だけでは不可能なのだ。地域の連携こそが極めて重要なのに、この視点がないままグループホームが建設され、認可されていることに大きな問題を感じる。この火災の責任を、同館を運営していた有限会社や管理者個人のみに負わせるわけにはいかない。日本グループホーム学会は研究者だけの集まりではなく、障害のある人、援助者、家族、研究者、弁護士、建築関係者など幅広い人が集まって活動している。今後も、今回の悲劇を自らの問題として、原因究明を続け、より安全で暮らしやすいグループホームのあり方を模索していくつもりだ。

 現状を見ると、人里離れた場所や、病院や施設内にもグループホームは設置されている。しかし、グループホームとは「スタッフの援助を受けながら小規模で暮らす」という「形」だけ整っていればいいのではない。
 地域の中にあって、地域の人たちと自然にかかわりながら、地域の人たちに支えられ、同時に地域を障害者や高齢者と共生する地域へと変えていく、これこそがグループホームである。

◇むろつ・しげきさん
 1951年生まれ。京都大文学部中退。1984年横浜市中区にグループホームを設置、職員となる。現在、横浜市グループホーム連絡会会長など。

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