国土交通省への要望書

2005年7月19日

国土交通省
北側 一雄 大臣 殿

DPI日本会議
交通行動東京実行委員会

要望書

 日頃よりわが国の施設・設備の開発・整備等の事業に御尽力下さり、心より敬意・感謝申し上げます。
 さて、「交通バリアフリ−法」も施行から5年が経過し、各交通事業者、自治体がリーダーシップを取り、駅舎を含む周辺施設などの設備、電車やバス等の車両のバリアフリー化が大幅に改善されました。このことにより、障害者や高齢者の社会参加が進みつつあります。しかしながら、この間に様々な問題点も多く出てきました。
 この「交通バリアフリー法」をより良いものにし、「誰もが安全で安心して、移動できる」様に、移動が保障され、どのような交通手段を使ってもどこへでも自由に行けるような社会を望んでいます。
 よって、「交通バリアフリー法」の改正に伴う諸々な事柄と、それに付随して出てくる問題点、現状の様々な問題などを伝えさせて頂き、貴省の関係部署の責任ある方々と協議したいと考えております。
 上記を踏まえ、今年度も別紙のとおり要望いたします。

《交通バリアフリー法の見直しへの要望》

●基本理念
  • 移動(モビリティー)の保障
    国内のどの地域に暮らしていても、どんなに障害が重くても、現代における平均的社会生活が十全に行えるように、移動の量を質を確保すること。公共交通機関における移動の障壁をバリアフリー化していくことで保障すること。
    特に、中小都市・山間地域におけるコミュニティーバスやSTS等の地域内移動の確保を保障すること。移動における接遇サービスは、移動制約者にとって、安全で円滑な移動を行う際の密接不可分な要素であることから、これを確実に行うこと。
  • すべての移動制約者を対象
    高齢者や各種障害者(※1)、妊産婦、けが等による一時的な人、外国人など、すべての移動制約者を対象に移動の障壁を無くすこと(バリアフリー化)。
    (※1)視覚、聴覚、身体、知的、精神、内部、学習障害など。
  • 公共交通機関の交通施設・システムのあらゆる検討段階からの各種障害者等当事者の参画の明確化
    交通バリアフリー法において障害者等当事者の果たす役割は大きく、すべてのプロセスにおける障害者等当事者の参画を明確(明文化)にすること。
  • 利用規模に応じた移動円滑化基準の設置
    鉄道駅舎およびバス、空港、客船等のターミナルなど、エレベーターの定員、多目的トイレの数等、利用規模に応じた基準を設け義務付けること。
●基本構想
  • 基本構想の義務づけ
    基本構想策定対象となる区市町村においては策定を義務づけ、2010年までに完全実施を図らせること。
  • 都道府県の関わりの明確化
    基本構想策定では区市町村が主体になるが、特定事業計画を実効性あるものにさせるには国、都道府県の関与は重要。特に、財政的な支援は不可欠であることから関わりを明確にすること。
  • 策定協議会の委員構成の在り方
    協議会においては多様な委員構成が求められ、特に協議会では交通機関を常時利用している障害者等当事者の果たす役割は大きい。策定協議会の開設にあたっては、障害者等当事者の委員比率及び当事者性を明確にすること。
●移動円滑化基準
(鉄道)
  • 既設の乗降客5千人以上/日、高低差5m以上の駅について、新設駅同様に事業者の果たすべき役割としてエレベーター設置を義務化すること。構造上やむを得ない場合であっても、「車いす対応エスカレーター」は、移動円滑化基準に含まないこと。暫定的設備の位置づけとして、階段斜行リフト(エスカルなど)を設置すること。
  • ホームと車両の隙間と段差解消について、限りなく段差を平らにし、隙間を小さくすることにより、車いす使用乗客が安全に円滑に単独自力乗降できる様にすること。なお、上記整備と平行し、ホームと車両との段差と隙間の暫定的なバリアフリー化方法として、ホーム渡り板の全駅配置を義務化すること。さらに、「ホーム渡り板」は、駅員または車掌が操作使用するものであることから、容易に利用しやすい位置(ホームの両端、車両内の車掌室並びに運転室)に収納すること。
  • 視覚障害者等のホーム転落防止のため、ホームドア及びホームゲートの設置を速やかに実施すること。また、局長通達による調査結果を明らかにすること。ホームドア及びホームゲート設置のための助成制度を設けること。
  • 車両のバリアフリー化整備に伴い、「車いすスペース」は、車いす使用乗客のプライオリティ(優先座席)として、位置づけ、編成中の全車両(新幹線、長距離特急鉄道の車両も含む)に、フリースペース方式の「車いすスペース」設置を義務付けること。さらに、最前部車両前寄りと最後部車両後ろ寄りには、フリースペース方式の「車いすスペース」を2箇所設置すること。
  • 新幹線、長距離特急鉄道の車両における「車いすスペース」設置の考え方として、原則「車いすスペース」の各車両化を義務化すること。そして、その内の半数は、フリースペース方式の「車いすスペース」とすること。
(バス)
  • バス車両の導入にあたっては、最大限ノンステップバスを導入するように、バス事業者に推奨すること。ワンステップバスを購入せざるを得ない場合は、例外的措置とし例外を容認する理由を列挙すること。
  • 地域での利便性の高いコミュニティーバス等においても、可能な限り障害者・高齢者等で利用しやすいノンステップバス導入を推奨すること。
  • バス停のバリアフリー化の進展度合いを毎年調査、公表すること。車いす使用乗客のみ乗降制限を行う様な不当なバス停を毎年調査、公表し、少なくすること。セミフラット型の道路におけるバス停部分の15pマウンドアップは、誘導基準でなく、ガイドラインから繰り上げて義務付けること。
  • 空港リムジンバス、長距離高速バス、シャトルバス、貸切バス等を交通バリアフリー法の交通バリアフリー化対象にすることとし、可能な限りノンステップバスにすること。
  • バス車両製造メーカーに対しても、製造段階からバリアフリー化の基準に沿った製造を義務付けること。また、ノンステップバスでなければリフト付きバスとし、車椅子使用者以外の段差の昇降が困難な高齢者や障害者などの利用も認めること。
(航空機)
  • 航空機のバリアフリー化整備
    航空機を車いす使用者が利用するに当たっては、機内の座席に乗り移ることが求められている。しかし、航空機内の座席は一部の障害者にとって安定した座位が取れないなど、不便なだけでなく危険を伴うこともある。現在も未だ航空機だけが車いすスペース座席を設定されていないのが実状である。これは、「車いすスペース」の必要性・重要性から鑑みて、不合理である。
    ワンルート・バリアフリー化確保の観点からも国が主体となり、航空会社及び航空機製造メーカー等と協力して「障害者が所有する車いすのまま」仕様座席の技術開発の整備を行うことが急務である。さらに、車いすトイレ設置航空機の少なさやバリアフリー化基準適合の座席等の機内整備の遅れが目立つ。早急に改善を進めること。航空機への車いす障害者等の単独搭乗を明確に認め、接遇サービスを全機種において行うこと。
    電動車いす使用乗客が、電動車いすを航空機のサイズによって、収納ボックスが小さいために、電動車いすが収納されないために、航空機による移動を断念せざるを得ないという問題が浮上している。電動車いす使用乗客の長距離移動の確保の観点から、上記問題についての検討委員会を設けること。その際、必ず、障害当事者を参画させること。
●情報保障
  • 音響・音声誘導
    視覚障害者の駅等旅客ターミナルにおける音響・音声誘導のルールの明確化と早期実施を行うこと。
  • 文字情報
    聴覚障害者への情報保障として、すべての音声情報に対応した文字情報を提供すること。また、すべての窓口に筆談用具を設置すること。
    光や音増幅、振動や文字などによる情報提供設備を設置することを基準に取り組むこと。特に、災害などから生命を守るためにも特に閃光(ストロボ)を併用した「緊急情報受信テレビ」や「緊急電光文字表示機」などの設置は緊要であり、早急に設置していくこと。
    すべての公共交通機関事業者は、いわゆるバリアフリー設備や接遇サービス等のすべての情報をホームページなどに掲示したり、駅舎や空港、港やバスターミナルに置いてある配布物等において、公表・周知すること。
●財源確保
  • 交通バリアフリー法に基づき、2010年までに数値目標を達成するにあたり整備を計画的・効果的に図る特定バリアフリー推進・促進のため財源を確実に確保すること。
  • エレベーター及びスロープ等の昇降設備の設置、ノンステップバス等の導入などは交通事業者に対して幾つかの助成制度が用意されているが、聴覚障害者などの為に配慮している「緊急情報受信テレビ」や「緊急電光文字表示機」を導入した交通事業者に対しても助成制度が活用できるようにしていくこと。
  • 今後、バリアフリー・ユニバーサルデザイン化が推進・躍進していくことが望まれてきている状況下では、それを推進していこうとする事業者に対して助成を行い、速やかに実現していけるようにすること。
▲上に戻る▲

障害福祉政策・激動の部屋・目次に戻る
トップページに戻る