金沢大学医学部附属病院産婦人科の講師兼医局員である公益通報者打出喜義(以下,通報者という。)が,今般,勤務先の上司である同病院産婦人科長兼教授P(被公益通報者)並びに同医局員兼講師Q(被公益通報者)について,通報の対象となる法令違反に関し,本日午前9時に,金沢地方検察庁にPにつき,刑法223条1項・同条3項(強要未遂罪)及び同法169条(偽証罪)で告訴並びに告発を,また,Qにつき,同法156条第1項(虚偽公文書作成罪・同行使罪)及び同法169条(偽証罪)で告発をいたしましたが,別紙犯罪事実は,医師法第4条4号にいう,「医事に関し犯罪または不正の行為のあった者」に該当し,同法第7条2項にいう「医師としての品位を損するような行為」に各該当することから,同法第7条第1項ないし第2項による処分ありたく,上申いたします。
また,通報者におきましては,以下に詳述するとおり,本件公益情報を貴庁に通報することに対して,同病院から解雇,降格,減給,訓告,自宅待機命令,給与上の差別,退職の強要さらにはもっぱら雑務に従事させるなどの不利益な取扱いを受けるおそれが強く,これらの不利益な処分ないしは扱いなきよう,公益通報者保護法の趣旨にのっとり,金沢大学附属病院に対して適切なご指導を賜りたく,併せて上申いたします。
@ 当事者並びに通報対象者の法令違反行為
通報者は,金沢大学医学部附属病院産婦人科の講師兼医局員でありますが,平成18年4月26日午前9時,金沢地方検察庁に対し,別添「告訴並びに告発状」及び「告発状」記載のとおり,通報者の勤務先病院における職場の上司である同病院産婦人科長兼教授Pにつき,刑法223条1項・同条3項(強要未遂罪)及び同法169条(偽証罪)で告訴並びに告発を,また,同医局員兼講師Qにつき,同法156条第1項(虚偽公文書作成罪・同行使罪)及び同法169条(偽証罪)で告発をいたしました。
この告訴並びに告発事実の内,Pに対する強要未遂被疑事実を除き,いずれも医師法第4条4号並びに同法第7条2項にいう「医事に関しての犯罪行為または不正の行為」に該当し,また,「医師としての品位を損するような行為」に該当することは明らかでありますので,本書をもって,貴庁に対し,同法7条第1項ないしは同2項の処分を上申いたすものであります。
A 通報対象事実
上記告訴並びに各告発事実の具体的内容につきましては,別添通報者の陳述書記載のとおりであり,また,その陳述書の内容につきましては,別添各書証からも明らかであり,まさに,通報対象事実の存在は明らかであります。
B 公益通報保護法にいう保護要件の存在
(1) 不正の目的の不存在
通報者の本件通報行為は,通報者勤務先である金沢大学附属病院の入院患者に対して行った,担当医局員Q並びに担当教授Pにおけるインフォームドコンセント違反行為を,通報者において発見した後速やかに,通報者は当該Pに報告して注意を喚起し,その後,当該患者に,そして当該患者の代理人である当職に,さらに,訴え提起後に,大学側から偽造の証拠が出されるに及んで,係争裁判所に,各通報し,その間,通報者は,職場において,Pに対する告訴事実(強要未遂)にあるとおり,いわゆるハラスメントを受け続けていたのであり,その後,第1審の患者側勝訴判決を受けて,勤務先である金沢大学病院に対して,大学側のコンプライアンス確立を要請し,かかるハラスメントの是正を求めても,きわめて不十分な対応しかなされず,一向に通報者に対するハラスメント状況が改善されなかったことから,本件告発並びに告訴に至ったものであって,通報目的には何ら不正な目的はありません。
(2) 通報内容の真実性については,上記2,A,のとおりであります。
(3) 以上のとおり,通報者が単に訴訟に関与し,また,患者側に立って,裁判所に対し,陳述書を提出し,また証人として証言したことだけでも,強要に当たるような退職勧奨を受けたり,職場で通報者を孤立させるなどのハラスメントを受け続けているのに,本件告訴・告発をしたことによって,さらにそのハラスメントの度合いが強まることはほぼ確実であります。
加えて,通報者が金沢大学病院ハラスメント委員会に対してなした申立てに対する同病院からの回答結果についても,別添のとおり,極めて不十分な対応であり,さらに,同病院において,インフォームドコンセント違反の患者が23名いたことを認めているにもかかわらず,何らその調査もせず,同大学が被告として提出したGOG登録票の偽造問題を調査せず,偽証問題をも不問に付そうとする態度である以上,P教授の同病院産婦人科における地位と権限からすれば,同病院自身が通報者に対して,解雇をはじめとする積極的なハラスメントをすることも十分に想定されるところであります。
さらに付言いたしますと,通報者は,本日金沢地方検察庁に対し,告訴告発状を提出いたしましたが,同検察庁におきましても,本日直ちに本件告訴告発を受理して直ちに捜査に着手するというわけではなく,同庁において,告訴告発事実を精査して後,受理して捜査に入るという過程をとる以上,この間における通報者に対する同病院並びに各被告訴・被告発人らからの不法な圧力は,相当激しくなることも必須であります。
本件民事事件並びに通報者のハラスメント案件に関しましては,従前から,報道各社において報じられ,また,テレビ報道もなされており,今回の告訴・告発につきましても,報道陣からの多数の取材がなされており,通報者に対する不利益な圧力が加えられる危険性はさらに増しております。
(4) 以上の次第でありますので,通報者が事業者内部に以上の公益通報をすれば当該通報対象事実に係る証拠が隠滅され,偽造され,又は変造されるおそれがあると信ずるに足りる相当の理由があります。
(5) 通報者は同病院から,別添ハラスメント委員会回答書のとおり,事業者内部又は行政機関に公益通報をしないことを正当な理由がなくて要求されております。
(6) 書面により同病院に公益通報をした日から二十日を経過しても,当該対象事実について,当該労務提供先等から調査を行う旨の通知はなく,また,同病院は,報道機関各社に対し,少なくとも,本件虚偽公文書作成並びに偽証は,訴訟において確定しているにもかかわらず,なんら正当な理由がないのに,調査を行わない旨を断言いたしております。(添付の新聞各紙の報道)。
以上の次第でありますので,失墜した金沢大学附属病院に対する医療と研究の信頼を回復し,同病院のコンプライアンスを正すべく,上申の趣旨記載のとおり,通報対象者らに対する医師法に基づく厳重な処分を要請いたすとともに,通報者において,同病院から解雇,降格,減給,訓告,自宅待機命令,給与上の差別,退職の強要さらにはもっぱら雑務に従事させるなどの不利益な取扱いを受けることなきよう,通報者の保護に関する対応につき,上申いたす次第であります。
以上
添付書類
1,委任状 1通
2,ハラスメント委員会への照会並びに回答文書 各1通
3,新聞各紙(写し) 6通
4,告訴・告発状添付の各書証各写し
・北陸GOG卵巣癌症例登録票 2通
・北陸GOG研究会会則 1通
・被告発人らの証人調書 2通
・日本産科婦人科学会雑誌 1通
・神谷晃教授の意見書 1通
・論座2006年4月号記事 1通
・クリニカルトライヤル卵巣癌T 1通
・フローチャートによる産婦人科診療指針 1通
・民事訴訟における通報者の陳述書 3通
・告訴・告発における通報者の陳述書 1通
・判決書(1,2審) 2通
被公益通報者P(以下,被通報者Pという。)は,金沢大学大学院医学系研究科教授兼金沢大学医学部附属病院産婦人科長の地位にあり,同大学並びに病院において,患者の診察・治療の業務を遂行するとともに,同業務を統括し,また研究者の立場で,患者に対して臨床試験ないしは調査等の業務を行ってきたものであり,公益通報者打出喜義は,被通報者Pの下で同大学の講師兼産婦人科医局員の地位にあるものであるが,被通報者Pは,同大学が被通報者Pの責任のもとに実施した卵巣がん患者を対象とした比較臨床試験に際し,患者の遺族から同意なくして同比較臨床試験を行ったとして金沢地方裁判所に提訴された損害賠償訴訟を有利にする等のため,平成16年8月25日午前9時30分ころ,金沢市丸の内7番2号所在の名古屋高等裁判所金沢支部1号法廷において,控訴人国申請の証人として宣誓の上,被控訴人代理人からの,前記比較臨床試験の被験者として当該患者が登録されているかという尋問に対し,「この人は卵巣癌じゃないので登録されていない」と自己の記憶に反した虚偽の陳述をなし,もって偽証したものである。
以上
被公益通報者Q(以下,被通報者Qという。)は,金沢大学大学院医学系研究科講師兼金沢大学医学部附属病院産婦人科医師の地位にあり,同大学並びに病院において,患者の診察・治療の業務を遂行するとともに,研究者の立場で,患者に対して臨床試験ないしは調査等の業務を行ってきたものであるが,被通報者Qは,同大学において被通報者Qが担当した比較臨床試験に際し,患者の遺族から,同意なくして比較臨床試験を行ったとして金沢地方裁判所に提訴された損害賠償訴訟を有利にするため,
第1 平成12年2月20日ころ,金沢市宝町13番1号所在の金沢大学医学部附属病院産婦人科医局において,行使の目的をもって,同大学が比較臨床試験実施のために同試験の対象とする卵巣癌患者を登録する被通報者Qの作成名義にかかる「北陸GOG卵巣癌症例登録票」に,真実は,同登録票8.パフォーマンスステイタス「3」の欄並びに,「当症例は選択条件を満たしています。」欄に各チェックがあり,症例番号欄には「B−220」とあったのに,同登録票8.パフォーマンスステイタス「2」欄並びに「当症例は,選択条件を満たしていません。」の欄に各チェックをし,さらに「(オリジン不明)ダブルカンサー」と書き込みをなし,症例番号欄にあった「B−220」を抹消した前記症例登録票を作成し,もって,国家公務員として,自己の職務に関し,虚偽の公文書を作成し,同年2月25日ころ,金沢地方裁判所民事部合議係に,書証として提出してこれを行使し,
第2 平成14年5月20日,金沢地方裁判所2号法廷において,前記被告国申請の証人として宣誓の上,原告代理人から尋問を受けた際,GOG登録票が真正なものである旨を,また,裁判官から前記パフォーマンスステイタス「2」欄にチェックした理由について,「わかりません。」と,各自己の記憶に反した虚偽の陳述をし,もって偽証した
ものである。
以上