高齢福祉政策激動の部屋
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2006年2月27日
1月8日未明、長崎県大村市の高齢者グループホーム「やすらぎの里さくら館」で発生した火災は入居者7名が犠牲となる大惨事となりました。犠牲になられた方々のご冥福をお祈りするとともに、このような大惨事を再び繰り返さないためにも様々な方向からの検証が必要であると考えます。
日本グループホーム学会では、1月13〜14日に現地調査を行いました。短時間の調査ではありましたが、その中でも、いくつかの問題点が浮かび上がってきています。
とりわけ、 地域との連携の問題(立地上の問題)は、大きな問題です。やすらぎの里さくら館は「地域の中にあるグループホーム」という理念とはかけ離れた環境にあります。周辺に民家はなく、山林を造成してつくられた敷地に建てられています。つまり近隣には住民がおらず、消火栓は500メートル先までなく、そのため消火にあたってはホースを何本もつなぎ、途中にポンプ車が必要だったときいています。
なぜ、このような地域とかけ離れた場所にグループホームが設置されたのでしょうか。なぜこの場所の設置を県は許可したのでしょうか、地域からかけ離れたグループホームは全国にどれくらいあるのでしょうか。グループホームの立地条件、地域の中にあることの意味について検証が必要です。
現在、グループホーム自体の設備の不備や職員体制の不備を指摘する声が多くあがっています。スプリンクラーや自動火災報知設備の設置、あるいは夜勤者を2名にすべきという議論です。 しかし、グループホームは火災だけに対応すればすむわけではありません。大きな地震や津波、洪水、崖崩れ、又は盗難等の犯罪、こうした様々な事態に対応できるようにグループホームの設備を強化し、職員体制を強化することは不可能と言わざるを得ません。
グループホームは、障害のある人や認知症高齢者の地域の中の居住の場として急増しています。認知症高齢者のグループホームは7,500カ所を超え、障害者のグループホームも6,000カ所を超えています。介護する家族の悲惨さは「介護地獄」と表現されてきました。障害者や認知症高齢者をその家族だけで支えなければならない過酷な時代は、いまも続いています。この「介護地獄」の中の障害者や認知症高齢者の生活は、家族以上の地獄であることは言うまでもありません。
しかし、全国各地にグループホームが増えることにより、身近な所にグループホームがあるのがごく自然な町の風景となってきました。グループホームに暮らす障害者や認知症高齢者も、地域の人たちと自然に関わりながら、地域の人たちに支えられ、同時に地域を障害者や高齢者と共生する地域へと変えてきたのです。
長崎県は全国的に見ても高齢者グループホームが急増している県であり、グループホームはここ5年で10倍に増えています。長崎県には334カ所(全国4位)のグループホームがあり、65歳以上の高齢者との比率によるグループホーム整備率は全国1位となっています。グループホームはまだまだ必要ではありますが、一方で、急激な増加にグループホーム制度が対応できるものになっていたのか、検証が必要だと思われます。
障害のある人と援助者でつくるグループホーム学会は、引き続きこの火災の検証を行い、現在浮かび上がっている問題について検討し、問題提起をしなければならないと考え、2月8日 に調査委員会を立ち上げました。この火災を、やすらぎの里さくら館を運営していた有限会社、あるいは管理者個人のみの責任とするのでは次に生かすことはできないと思います。本質的な原因を究明し、問題点を解明することによってこそ、この大惨事を教訓にできるものと考え、グループホーム学会として全力で取り組んで参ります。
障害のある人と援助者でつくる日本グループホーム学会 |
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