目からウロコのメッセージの部屋

ジョグジャカルタ地震・緊急援助で学んだこと
福岡和白病院救急センター 冨岡譲二さん

 今回の緊急援助で驚いたことは、インドネシアの災害医療の高いレベルと、復興の立ち上がりのすばやさでした。
 われわれが診療した患者のほとんどが、現地の医療スタッフによって適切な初期治療が施されていましたし、震災直後の、物資が不足している中で、倒壊した家屋の廃材やバナナの葉の芯をギプス代わりに使ったり、タオルを寄せ集めて八の字包帯で鎖骨骨折を固定してあったりなど、あり合わせの材料で最善の治療がしてあったのには感服しました。

 もし、日本で同じような災害が起こったとしても、こういう機転が利く医療関係者がどのくらいいるか・・・
 モノがあふれている日本では、「あれがない」「これがない」と言うだけになってしまうかもしれません。
 この点、僕自身も含め、今回参加したメンバーにはいい勉強になったと思います。

 また、現地医療機関の復活の早さには驚きました。
 われわれが現地に入った時点では、まだ、医療機関は廊下まで患者であふれ、病院前には大きなテントが林立しており、あふれた患者さんがどんどんわれわれのサイトに来ていましたが、この状態は数日で解消し、昨日、活動を終えて表敬に行ってみたら、まるで何事もなかったようにきれいに片付けられていました。
 巡回診療も、ほとんどの地域で、インドネシアのGO/NGOだけでできるようになっており、少なくとも急性期医療に関しては完全に国内でハンドリングできる時期になったと思われます。その意味で、この時期の引き上げはちょうどいいタイミングかもしれません。

 われわれが到着した当時、インドネシア当局が、「緊急医療援助は10日で終わりにしてください、その後は自分たちでできますから」と言っていたのを、(申し訳ないのですが)半信半疑で「そんなに早く立ち上がるものかなぁ」と思っていましたが、実際にそうなったのはほんとうにびっくりしました。
 これには、スマトラ沖地震・津波災害の教訓が生きていること、それにこの地域が昔からムラピ火山の噴火被害に遭っており、防災意識が高かったことが関係しているのではないかと思います。

 その反面で、手術を待っている患者や、創感染を起こした患者さんも多数診察しました。この点、初期診療後の専門的な医療の部分では、まだ改善の余地があると思いますし、この分野ではまだ援助の可能性があると思います。メンタルケアも、政府はすでに開始したと言っていましたが、まだまだ不足している感じでした。

 いずれにしても、みなさまのご支援のおかげで、隊員全員、大きく体調を崩すこともなく、活動を終えることができようとしています。ご支援に感謝するとともに、日本のみなさまの気持ちを、インドネシアで被災した方々に届けることができたことをお伝えし、心から御礼申し上げます。

 昨日、われわれがサイトを閉じると聞いて、わざわざ2時間かけてお礼に来てくれた患者さんがいらっしゃいました。サイトの近所の方々も、ある方は声をかけてくれ、ある方は心づくしのおみやげを持ってきてくれました。これらは、僕らがいただいた最高の勲章だと思っています。

 インドネシアジャワ島ににかかる震災JICA国際緊急援助隊医療チームは、こうして2006年6月8日無事診療を終了し、器材を現地に供与しました。9日はジャカルタに移動し、日本大使館およびJICAジャカルタ事務所に活動報告を行い、10日未明の便で帰国します。

 詳しくは帰国してからまたご報告します。
 それではまた。

 ジョグジャカルタにて 冨岡譲二

P.S.以上はあくまで冨岡個人の感想であり、JICAとして、あるいは日本国政府としての見解ではないことをご了解ください。

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