介護療養病床は全廃すべきです。
介護保険制度施行時に、いわば緊急避難的に介護保険施設に位置付けられたものであり、長年に渡って生活する施設として明らかに不適切な居住環境であり、かつ財政的にも特養と比べて高コストです。
社会的入院を放置してはなりません。
特養、グループホーム、特定施設、高優賃、高専賃等の高齢者住宅の整備を進めつつ、介護療養病床は全廃すべきであり、国は、削減凍結の方針を早急に撤回してください。
特養は最近まで4人部屋が主流でした。かつては6人部屋、8人部屋もありました。
2002年に全室個室、ユニット型の「新型特養」が制度化され、厚労省は昨年まで新型特養以外の新設は認めませんでした。
ところが、新政権は、この方針の見直しを考えており、今年からは多床室特養の建設を認めるという話が伝わってきました。
新型特養は、多額のホテルコストが発生するため、生活保護受給者、低所得者が入居できず、また、多数の待機者が入居待ちをしている状況を踏まえての判断だというのです。
これは時計を逆回しする天下の愚策としか言いようがあたません。
「低所得者が個室の特養に入れないから4人部屋の特養を作る」というのは、今から40数年前に時の総理大臣が「貧乏人は麦を食え」と言ったのと変わらない発想です。
私たちは、新型特養が制度化される2年前に、個室、ユニット型の「風の村」を造りました。決してお金持ち用に造ったわけではありません。自分たちが入居するとしたらどういう特養にしたいかを5年間かけて話し合いを重ねた結果であり、どんな人もこのレベルは最低限必要だと考えたのです。いわばシビルミニマムを提起したつもりです。
低所得者が入居できないというのは想定外のことでした。
風の村ができてちょうど10年、最初から入居している方が数人まだ元気でおられます。特養は、長ければ10数年暮らし続ける住まいなのです。その住まいが雑居部屋というのは、少なくとも私は耐えられません。
貧乏人は4人部屋と平然と言う人は、自分は4人部屋で本当に暮らせるのでしょうか。
ある特養関係者が、「日本や東アジアに個室という文化はなかった、雑居文化だ」と言いました。私は、反論しました。家族が一つの部屋で身を寄せ合って暮らすという文化はあったかもしれないけれど、赤の他人が何年も同じ部屋に雑居するという文化は、日本にもアジアにも存在しない」と。
個室、多床室のどちらを選ぶかは利用者本人の意思であり、多床室の雑居住まいが好きな人に個室を強制することはできません。
しかし、経済的な理由で多床室を選ばざるを得ないということはあってはなりません。
個室のホテルコストが高くて低所得の人が入れないなら、家賃補助を考えるのが常道でしょう。
今、必要なのは、「健康で文化的な最低限度の生活」という観点から、居室の最低基準はどうあるべきかという問題の立て方です。
現在、グループホームは7.43u、特養多床室は10.65u、新型特養、特定施設は13.2u、高専賃は18u、さらに無料低額宿泊所は3.3uなど、制度によって異なる最低基準が定められています。
居室面積の最低基準は、「人権」という観点から定めるべきです。どの制度によってつくる居室であろうが、その基準を下回ることは許されなくすべきです。
貧しい福祉に逆戻りするのは、何としても阻止しなければなりません。
数日で退院する病院ならいざ知らず、数年から10数年生活する生活施設に、大部屋はあり得ません。個室は絶対条件です。
その意味で、先日、長妻厚労相が新型特養の「個室面積基準を緩和」したというニュースに、私は、少し胸をなでおろしています。13.2uから10.65uに引き下げられたことは残念ではありますが、「個室面積基準の緩和」は多床室容認への道をとりあえず回避する政策だと考えるからです。
私は、「広い大部屋」と「狭い個室」なら、絶対に狭い個室を選択するからです。
現在、介護が必要な高齢者の住まいとしては、施設内包括ケアの特養、特定施設等と在宅サービスを利用する高優賃、高専賃等がありますが、これらの制度を統合し、「特定住居」という新しい制度に一元化すべきだと考えています。
私の法人では、特養のほかに高専賃も経営していますが、要介護5の方でも見守りと介護保険の在宅サービスを利用して、高専賃で暮らし続けています。その際の絶対条件が、在宅療養支援診療所と24時間体制の訪問看護ステーションです。
逆にいえば、それらがあれば多くの人が在宅で暮らし続けられるし、まして高専賃に24時間の見守り体制をつくれば、そしてさらに小規模多機能型居宅介護を併設すれば、特養同様のケア体制になります。
もともと、新型特養におけるホテルコストの導入は、「施設から住居へ」の第1歩でした。今後は、この流れを推し進め、住居契約とケア契約を分離すべきです。医療も外付けとし、医療保険による往診、訪問診療、訪問看護を可能とします
また、「特定住居」では、一定の集団的ケアを認めるものとします。現在の「在宅」と「施設」の中間的な制度になります。これによって、要介護4、5になっても、ほとんどの方が「住まい」で暮らし続けられることになります。
公益法人が原則課税に制度変更されましたが、社会福祉法人は対象になりませんでした。しかし、民間企業やさらには公益法人たるNPO法人と同じ業務を行ないながら、一方は課税され、もう一方が非課税である合理的理由はありません。社会福祉法人は原則課税としたうえで、相談事業など、個別に非課税事業を認めることにすべきです。
また、これと一体的に税制改革を行ない、社会福祉法人に限らず、法人が利益を利用者の負担減免や地域福祉のために使用した場合、税額を控除する仕組みを作ることが必要です。
私の法人では、昨年度の収支差額(民間企業での経常剰余)の3分の1を「地域福祉支援積立金」として今年度の予算に組み込みました。これまで採算性から取り組めなかった地域福祉資源開発に使用したいと考えています。
EUは、Social Economy(一般的には社会的経済と訳されますが、私は、「社会連帯経済」という言葉を使用しています)の振興のため、さまざまな施策を講じています。社会連帯経済は、市場の失敗、国家の失敗の反省から、公益法人、協同組合、共済組合、アソシエーション(NPO)など、公セクター(国、自治体)、私セクター(企業)をけん制する第3セクターとして、その重要性が注目されています。
しかし、我が国ではこの社会連帯経済セクターの育成がほとんど行なわれてきませんでした。(NPO法が制定されましたが、その後の振興策は極めて不充分で、NPO法人は、社会に影響を与える経済主体としての力量を蓄積できていません)
今回の政権交代の本質は、政党間の政権移行ということではなく、この国の歴史上初めて、国民がみずから政権を選択したことです。それは、「お任せ政治からの脱却」の出発点だということです。
私たちは、今こそ、法人格や活動領域を越えて、食、環境、福祉、人権、文化など、様々な分野で活躍する人たちが、「社会連帯経済」の担い手として連携、連帯し、市場万能主義と依存型政治が横行する社会の変革をめざしていくことが必要です。
福祉事業に取り組む企業、NPO,社会福祉法人等は、その先頭に立つべきだと思います。私たちは、社会福祉法人、NPO法人、株式会社、労働組合など法人格も分野も異なる人たちで、今月、「社会連帯経済推進センター」設立準備会を設置し、年内の設立をめざします。ご賛同いただき、仲間に加わってください。