資料翻訳の部屋

(国連総会決議48/96により1993年12月20日に採択)


序文

背景と現在のニーズ

1、障害を持つ人は世界の全ての地域、全ての社会の全ての階層にいる。世界の障害を持つ人の数は多く、増え続けている。
2、障害の原因と結果は世界中で異なっている。この違いは社会経済環境の違いの結果であり、国民への福利対策が国ごとに異なっている結果である。
3、現在の障害政策は過去200年間にわたる進展の帰結である。多くの点で各時代ごとの国民全般の生活状態、社会経済政策を反映している。しかし、障害分野では障害を持つ人の生活状況に特に影響を与える特別の環境もあった。無知、放置、迷信、恐怖が障害の歴史を通じて障害を持つ人の発展を遅らせ、障害を持つ人を孤立させてきた社会的要素である。
4、障害政策は施設での基本的ケアに始まり、障害を持つ子どもの教育と成人後に障害を持った人のリハビリテーションへと長い年月をかけて発展してきた。教育とリハビリテーションを通じて、障害を持つ人は障害政策のさらなる発展に一層積極的になり、その推進役となった。障害を持つ人・その家族・擁護者の組織が結成され、障害を持つ人の状況の改善を主張した。第2次世界大戦後に、統合とノーマライゼーションの概念が導入された。これは障害を持つ人の能力に関する意識向上を反映していた。
5、1960年代末にかけて、障害を持つ人の組織は数カ国で障害の新たな概念を形成し始めた。この新たな概念は障害を持つ個人が経験する制約と、障害を持つ人の環境の設計と構造並びに国民全般の態度とに密接な関係があることを示した。同時に途上国の問題が一層注目を浴びるようになった。途上国の一部では障害を持つ人のパーセンテージは非常に高いと推計され、障害を持つ人はほとんどの場合極端に貧しかった。


過去の国際的行動

6、障害を持つ人の権利は長期にわたり国際連合や他の国際機関の関心の的であった。国際障害者年(1981年)の最も重要な成果は、総会が決議37/52で採択した「障害者に関する世界行動計画」だった。国際障害者年と障害者に関する世界行動計画はこの分野での進歩に向けて強力な刺激となった。両者は障害を持つ人が他の市民と同様の機会と、経済・社会開発の成果としての生活状況の向上を等しく分かちあう権利を強調した。ここにおいて初めて、ハンディキャップは障害を持つ人とその環境の機能として定義づけられた。
7、「国連障害者の十年中間年での世界行動計画実施評価世界専門家会議」は1987年にストックホルムで開催された。会議では将来の行動の重点を示すために指導的な役割を果たす思想の確立が提案された。この思想の基礎は障害を持つ人の権利の認知であるべきである。
8、この結果、同会議は総会が、十年の終わりまでに加盟国により批准される、障害を持つ人への差別撤廃国際条約を起草するための特別会議を開催するよう勧告した。
9、条約大綱案がイタリアによって準備され、第42会期に提出された。条約案に関する説明がさらにスウェーデンによって総会の第44会期に行われた。しかし、どちらの場合にもこのような条約の適切さに関する合意形成は不可能だった。多くの代表の意見では、既存の人権文書が他の人間と同様の権利を障害を持つ人にも保障しているようだった。


基準規則に向けて

10、総会の審議に従って、1990年の第1会期において経済社会理事会はついに別の種類の国際的政策文書の策定に専念することで合意した。同理事会は決議1990/26により、障害児、障害青年、障害成人の機会均等化に関する基準規則を策定するための、国連専門機関や他の国際機関、非政府機関、特に障害を持つ人自身の組織と密接に協力する、任意拠出により資金がまかなわれ、政府専門家からなり、参加が自由な臨時作業部会の設置を、社会開発委員会がその32会期で検討する権限を与えた。同理事会は社会開発委員会が基準規則の文面を1993年には検討のために完成させ、第48会期総会に提出するよう要請した。
11、引き続いた第45会期総会第3委員会での議論は障害者の機会均等化に関する基準規則策定への新たな提案に広範な支持があることを示した。
12、第32会期社会開発委員会では基準規則の提案が多数の代表の支持を得て、議論は臨時作業部会の設置を決定する決議32/2の採択へと結び付いた。これは経済社会理事会決議1990/26に従うものである。


障害者の機会均等化に関する基準規則の目的と内容

13、本文書に含まれる障害者の機会均等化に関する基準規則は国連障害者の十年(1983年ー1992年)に得られた経験に基づいて策定されている。「世界人権規約」、「経済的、社会的、および文化的権利に関する国際規約」、「市民的および政治的権利に関する国際規約」、「児童の権利条約」、「女子差別撤廃条約」並びに「障害者に関する世界行動計画」からなる国際人権章典は本規則の政治的、精神的基盤である。
14、この規則には強制力はないが、国際法の規則を遵守する意図で多数の政府により適用されれば国際的慣習規則となり得る。規則は機会均等化実現に向けて行動を起こすという政府の精神的、政治的な決意を示す。責任、行動、協力の重要な原則が述べられている。生活の質並びに完全参加と平等の達成のために決定的に重要な分野が指摘されている。これらの規則は政策形成と行動のための手段を障害を持つ人とその組織に提供する。規則は各国、国連、他の国際機関の間での技術経済協力への基礎を提供する。
15、本規則の目的は障害を持つ少女・少年・女性・男性が、他の市民と同様に、自分の属する社会の市民としての権利と義務を果たすよう保障することにある。障害を持つ人がその権利と自由を行使するのを妨げ、障害を持つ人が各自の社会の活動に完全に参加するのを困難にしている障壁が世界の全ての社会に未だに存在している。政府の責任はこのような障壁を取り除くことである。障害を持つ人とその組織はこの過程において協力者として積極的な役割を果たすべきである。障害者の機会均等化は人的資源を動員しようとする多方面にわたる世界的な努力に対する貴重な貢献である。特別な関心が女性、児童、高齢者、貧困層、移民労働者、二重・重複の障害を持つ人、先住民、少数民族といった集団に向けられる必要があるかもしれない。これに加えて、注目を要する特別なニーズがある障害を持つ多数の難民がいる。


障害政策の基本的概念

16、以下の概念がこの文書を通じて現れる。これらは障害者に関する世界行動計画の概念に基本的に基づいて築かれている。国連障害者の十年期に起こった発展を反映している場合もある。


障害とハンディキャップ

17、「障害」(disability)は世界の全ての国の全ての人口で起きている数多くの異なる機能的制約を要約した言葉である。人は身体的・知的・感覚的な損傷(impairment)、医学的状態、精神病により障害を持つかもしれない。こういった損傷、状態、病気の性格は永続的な場合も一時的な場合もある。
18、ハンディキャップとは、他のメンバーと平等なレベルで地域社会の生活に参加する機会が欠如もしくは制約されていることである。ハンディキャップという言葉は障害を持つ人と環境の出会いを示す。環境並びに情報、コミュニケーション、教育など社会が組織している活動の欠点に焦点を当てるのが、この用語の目的である。こういった環境と活動が障害を持つ人の平等な条件での参加を妨げている。
19、障害とハンディキャップという二つの用語のこの使い方は近代障害史の視点から見られるべきである。1970年代には当時の用語法に対する強い反発が障害を持つ人の組織の代表と障害分野の専門職者からあった。障害とハンディキャップは不明確で、混乱をもたらす形でしばしば使われ、政策形成と政治的行動に不十分な役割しか果たさなかった。用語法は社会環境の不完全さと欠陥を無視した医学的・診断的手法を反映していた。
20、1980年に世界保健機構(WHO)が、一層正確であると同時に相対主義的アプローチを提案する損傷、障害、ハンディキャップ国際分類(ICIDH)を策定した。この分類は損傷、障害、ハンディキャップの明確な区別を行っている。ICIDHはリハビリテーション、教育、統計、政策、立法、人口学、社会学、経済学、文化人類学などの分野で幅広く利用されている。ICIDHにはそのハンディキャップの定義においてあまりに医学的で個人中心であり、社会の状況や期待と個人の能力との相互作用を適切に明らかにしていないという一部の利用者からの批判がある。こういった懸念やICIDH発表以来12年間に利用者から表明されてきた他の懸念はきたるICIDHの改訂で取り上げられる。
21、世界行動計画実施に関する経験と国連障害者の十年期間に起こった全般的議論に基づき、障害問題と用語法に関する知識の深まりと理解の広がりがあった。現在の用語法は、個人のニーズ(リハビリテーションや補助具等)と社会の欠点(参加への種々の障壁)両方に取り組む必要性を認識している。


予防

22、予防が意味するのは身体的・知的・精神医学的もしくは感覚的損傷の発生の予防(1次予防)もしくは永続的な機能制約や障害の予防(2次予防)である。予防にはプライマリーヘルスケア、産前産後の児童ケア、栄養教育、伝染病の予防接種運動、風土病対策、安全基準、労働による障害や疾病を防ぐための職場の調整、武力紛争や環境汚染から生じる障害の予防など多くの活動が含まれる。


リハビリテーション

23、リハビリテーションは障害を持つ人がその身体面・感覚面・知能面・精神医学面かつ、または社会機能面で最善のレベルに達し、そのレベルを維持できるようすることを目指す過程であり、障害を持つ人がその人生を一層自立させるための手段を提供する。リハビリテーションには機能を提供、かつ、または回復させるための措置や、失われたり欠如している機能や機能面の制約を補う措置も含まれる。リハビリテーションの過程には初期の医療は含まれない。リハビリテーションには基礎的で一般的なリハビリテーションから、例えば職業リハビリテーションのような目的指向型の活動までが含まれる。


機会均等化

24、機会均等化が意味するのは、社会の仕組みと、サービスや活動、情報、文書といった環境を、全員に、特に障害を持つ人に利用できるようにする過程である。
25、平等な権利の原則とは、各個人全員のニーズは等しく重要であり、そのニーズが社会の設計の基礎とされなければならず、全ての個人に参加への平等な機会を保障するように全資源は利用されなければならないことである。
26、障害を持つ人は社会の一員であり、各自の地域社会に留まる権利を持ち、教育、保健、就労、社会サービスの通常の体系内で必要な支援を受けねばならない。
27、障害を持つ人は平等な権利を獲得するに従い、平等な義務をも持たなければならない。こういった権利が達成されるに従い、社会は障害を持つ人への期待を高めねばならない。機会均等化の過程として社会の一員としての障害を持つ人が完全な責任を負うよう支援する措置が取られねばならない。


前文

 この機構(国連)と個別や共同の行動で協力し、一層高い生活水準、完全雇用並びに経済的及び社会的進歩及び発展の条件を促進するという加盟国が国連憲章のもとで行った誓約を心に留め、
 憲章に謳われている人権と基本的自由、社会正義と人間の尊厳及び価値の誓約を再確認し、
 「世界人権宣言」、「経済的・社会的及び文化的権利に関する国際規約」、「市民的および政治的権利に関する国際的規約」が定めた人権に関する国際的基準を特に思い起こし、
 これらの政策文書に含まれる権利は全ての個人に無差別平等に保障されるとをこれらの政策文書が宣言していることに留意し、
 障害に基づく差別を禁じ、障害を持つ児童の権利を保障する特別の措置を求める「児童の権利条約」と、障害に関する保護的措置を数点含む「すべての移住労働者とその家族の権利の保護に関する国際条約」の条項を思い起こし、
 障害を持つ少女と女性の権利を保障する「女子差別撤廃条約」の条項をも思い起こし、
 「障害者の権利宣言」、「精神薄弱者の権利宣言」、「社会の進歩と開発に関する宣言」、「精神病者の保護と精神保健ケアの改善の原則」や総会で採択された関連政策文書に関心を払い、
 国際労働機関によって採択された関連する条約や勧告、特に障害を持つ人に対する差別のない雇用への参加に関する条約や勧告にも関心を払い、
 国連教育科学文化機関(ユネスコ)、特にその「万人のための教育宣言」、世界保健機関、国連児童基金(ユニセフ)、他の関連する機関の勧告と成果を心に留め、
 環境を保護するという加盟国の決意に関心を払い、
 武力紛争が引き起こした荒廃を心に留め、武器の製造に貴重な資源を費やしているのを悲しみ、
 「障害者に関する世界行動計画」とその「機会均等化」の定義が示しているのは、現実的で具体的なこれらの国際的政策文書や勧告の内容を実現しようとする国際社会の真剣な願望であることを認識し、
 世界行動計画を実現するという国連障害者の十年(1983年ー1992年)の目的が現在も有効であり、継続的な活動の必要が緊急にあることを認め、
 世界行動計画が途上国でも工業国でも同様に重要な概念に基づいていることを思い起こし、
 障害を持つ人が人権と参加を完全かつ平等に享受するための努力が強化されねばならない必要を確信し、
 障害を持つ人、その親/保護者/擁護者/その組織が障害を持つ人の市民的・政治的・経済的・社会的・文化的権利に影響する全ての施策の立案と実施において政府の積極的な協力者でなければならないことを再び強調し、
 経済社会理事会の決議1990/26に従うとともに、世界行動計画が詳細に列挙している、障害を持つ人が他者と同じ平等を獲得するために必要な施策を加盟国自身の基礎として、

 加盟国は「障害者の機会均等化に関する基準規則」を以下の目的で採択した。
(a)障害分野での全ての行動は障害を持つ人の状態と特別なニーズに関する適切な知識と経験を前提とすることを強調する。
(b)社会組織の全ての側面が全員に開かれる過程こそが社会・経済開発の基本的な目標であることを強調する。
(c)障害分野の社会政策の重要な側面の大要を述べる。その中には技術・経済協力の奨励も適切な場合には含まれる。
(d)技術・経済レベルでの大幅な違い、平等な機会を実現する過程では文化的文脈の鋭敏な理解が反映されなければならない事実、 障害を持つ人のきわめて重要な役割を念頭に置き、平等な機会を実現するために必要な政治的意思決定過程へのモデルを提供する。
(e)政府、国連システム機関、他の政府間機関、障害を持つ人の組織間の緊密な協力のための国家的仕組みを提案する。
(f)障害を持つ人の機会均等化を政府が実現するために努力する過程をモニターする効果的な仕組みを提案する。


I.平等な参加への前提条件

規則1:意識向上

政府は障害を持つ人、その権利、潜在的能力・ニーズ・貢献に関して社会の意識を向上するための行動を取るべきである。
1、障害を持つ人、その家族、障害分野の専門職者が利用できるプログラムやサービスについての最新情報を担当官庁が提供するよう政府は保障するべきである。障害を持つ人への情報は誰もが利用できる形態で提示されるべきである。
2、政府は障害を持つ人ならびに障害政策に関する情報キャンペーンを開始するとともにこれを支援するべきである。キャンペーンは、障害を持つ人が他の人々と同じ権利と義務を持つ市民であることを伝え、完全参加への全ての障壁を取り除く施策が必要であることを説明する。
3、政府は障害を持つ人のマスメディアによる描写が肯定的であるよう奨励すべきである。障害を持つ人の組織はこの問題に関して協議を受けるものとする。
4、政府は広報活動計画が完全参加と平等の原則を完全に反映するよう保障すべきである。
5、政府は障害を持つ人、その家族、その組織が障害に関する広報活動に参加するよう求めるべきである。
6、政府は民間部門の企業がその活動全分野に障害問題を含めるよう奨励すべきである。
7、政府は障害を持つ人がその権利と潜在的可能性について意識を向上するための活動を提唱し、促進するべきである。自立とエンパワーメントの向上は障害を持つ人が機会を利用するのに助けとなる。
8、意識向上は障害を持つ児童の教育とリハビリテーションにおいて重要な部分であるべきである。障害を持つ人は各自の組織の活動を通じて、意識向上面で相互に助け合うことができる。
9、意識向上は全ての児童の教育の一部でなければならず、教員養成過程と全ての専門職員養成過程の構成要素であるべきである。

規則2:医療

政府は障害を持つ人に効果的医療の提供を保障すべきである。
1、政府は損傷の早期発見、早期評価、早期治療を行うために、複数の分野の専門職者からなるチームが運営する活動を提供できるよう努力するべきである。これにより、障害の影響を防いだり、減らしたり、もしくは取り除くことができる。こういった活動は障害を持つ人やその家族の個人レベルでの完全参加と、障害を持つ人の組織の計画・評価段階レベルでの完全参加を保障すべきである。
2、地域レベルでの従事者は損傷の早期発見、第1次的支援、適切なサービスへの照会等の活動に参加するための研修を受けるべきである。
3、政府は障害を持つ人、特に幼児と児童が社会の他の構成員と同じ体系の中で、同じ程度の医療が提供されるよう保障すべきである。
4、政府は全ての医療職員と準医療職員が障害を持つ人に医療を提供するための適切な研修を受け、装置を与えらえることを保障すべきである。また、政府は全ての医療職員と準医療職員が適切な治療方法と治療技術を利用できるよう保障すべきである。
5、政府は医療職員、準医療職員、関連職員が、不適切な助言を両親に与え子どもに関する選択肢を狭めることがことがないよう、適切な研修を受けるよう保障すべきである。この研修は継続的で入手可能な最新の情報に基づくべきである。
6、政府は障害を持つ人が機能のレベルを維持する、もしくは改善するためのに必要とするかもしれない全ての通常の治療法と医薬品が障害を持つ人に提供されるよう保障すべきである。

規則3、リハビリテーション*

政府は障害者が最大限の自立と機能のレベルに達し、そのレベルを維持するために、障害を持つ人へのリハビリテーションサービスの提供を保障すべきである。
(*リハビリテーションは障害政策の基本的概念であり、序文の第23段落で定義されている)
1、政府は全ての障害を持つ人の集団のために、国家的リハビリテーション計画を策定すべきである。この計画は障害を持つ人各個人の現実のニーズと完全参加と平等の原則に基づくべきである。
2、国家的リハビリテーション計画は影響を受けている機能を改善したり、補うための基礎的技能訓練、障害を持つ人とその家族のカウンセリング、自己信頼の発展、評価や指導という随時のサービスなど、多岐の活動を含むべきである。
3、重度の障害を持つ人・重複障害を持つ人を含む、リハビリテーションを必要とする全ての障害を持つ人はリハビリテーションを利用することが可能であるべきである。
4、障害を持つ人とその家族は自分たちに関係するリハビリテーションサービスの計画と構成に参加できるべきである。
5、全てのリハビリテーションサービスは障害を持つ人が住む地元の地域で利用できるべきである。しかし、特定の訓練の目的を達成するために、必要な場合には、特別な時間を限定したリハビリテーションコースが宿泊施設形式で行われる場合もありえる。
6、障害を持つ人と家族は、例えば研修を経た教員・指導者・カウンセラーなどの形でリハビリテーションに自ら参加するよう奨励されるべきである。
7、政府はリハビリテーション計画を策定、評価する際には障害を持つ人の組織の専門的知識を求めるべきである。

規則4、支援サービス

政府は障害を持つ人が、その日常生活面での自立のレベルを高め、その権利を行使するのを支援するために、障害を持つ人用の補助具を含む支援サービスの開発と提供を保障すべきである。
1、政府は障害を持つ人のニーズに応じて補助具・機器、介助、通訳サービスを、機会均等化を実現するための重要な施策として保障すべきである。
2、政府は補助具・機器の開発、生産、配布、維持・修繕とその知識の普及を支援すべきである。
3、これを実現するために、一般に行き渡っている技術的なノウハウが利用されるべきである。ハイテク産業が利用できる国では、補助具・機器の水準と有効性を向上させるためにハイテク産業が十分に利用されるべきである。可能な場合には地元の材料と地元の生産施設を利用した、単純で安価な装置の開発と生産を刺激するのが重要である。障害を持つ人自身がこういった装置の生産に携わることも可能である。
4、政府は補助具を必要とする障害を持つ全ての人が金銭面も含め、適切な補助具を入手できるようにすべきである。これは、補助具・機器が無料、もしくは障害を持つ人かその家族が購入できる安い価格で提供されるのを意味する場合もある。
5、補助具・機器の供給を目指すリハビリテーション計画で、政府は障害を持つ少女・少年用補助具、機器のデザイン、耐用性、年齢へのふさわしさに関する特別の必要を考慮すべきである。
6、政府は重度かつ、もしくは重複障害を持つ人を対象とした介助計画と通訳サービスの開発と提供を支援すべきである。こういった計画は障害を持つ人が日常生活、家庭、仕事、学校、余暇活動への参加の程度を高める。
7、介助計画は利用者が計画の運用に決定的な影響力を持つ形で立案されるべきである。


U. 平等な参加への目標分野

規則5、アクセシビリティ

政府は社会の全ての領域での機会均等化の過程でアクセシビリティの総合的な重要性を認識すべきである。どのような種別の障害を持つ人に対しても、政府は(a)物理的環境を障害を持つ人が利用できるようにする行動計画を開始すべきであり、(b)情報とコミュニケーションへのアクセスを提供するための方策を開始すべきである。
(a)物理的環境へのアクセス
1、政府は物理的環境面での参加への障壁を取り除く方策を開始すべきである。方策は基準と指針を策定するものであるべきであり、例えば住宅、建造物、公共輸送サービスや他の輸送手段、街と他の屋外の環境に関する社会の様々な分野へのアクセシビリティを保障する法律の施行を考慮すべきである。
2、政府は、物理的環境の設計と建築に職業的に携わる設計家・建築技師・その他の者が、アクセシビリティを達成するための障害政策と方策に関する適切な情報を入手できるよう保障すべきである。
3、設計段階当初からアクセシビリティの要件が物理的環境の設計と建設に含まれるべきである。
4、アクセシビリティの基準と標準を策定するに当たって障害を持つ人の組織は相談にあずかるべきである。
(b)情報とコミュニケーションへのアクセス
5、障害を持つ人と、適切な場合における、その家族と権利擁護者は、全ての段階における診断・権利・利用できるサービスと計画に関する十分な情報を入手できるべきである。このような情報は障害を持つ人が利用できる形態で提示されるべきである。
6、政府は障害を持つ人の多様なグループが情報サービスと文書を利用できるようにする戦略を策定するべきである。点字、テープ、拡大印刷、他の適当な技術が視覚損傷を持つ人用に墨字の情報・文書を提供するのに利用されるべきである。同様に、聴覚損傷もしくは認識の困難を持つ人向けに言語情報へのアクセスを提供するために適切な技術が利用されるべきである。
7、ろう児の教育、ろう児の家庭・地域社会での手話の使用が考慮されるべきである。手話通訳サービスがろう者とろう者以外の人間とのコミュニケーションを促進するためにも提供されるべきである。
8、これ以外のコミュニケーション障害を持つ人のニーズも考慮されるべきである。
9、政府はメディア、特にテレビ、ラジオ、新聞がそれぞれのサービスを障害者の利用が可能にするよう奨励すべきである。
10、公衆に提供されている新たにコンピューター化された情報・サービス体系は当初から、もしくは、変更を加えた後に、障害を持つ人が利用できるようにすべきである。
11、情報サービスを障害を持つ人が利用できるようにする方策を策定するにあたっては、障害を持つ人の組織が相談にあずかるべきである。

規則6:教育
政府は障害を持つ児童・青年・成人の統合された環境での初等・中等・高等教育機会均等の原則を認識すべきである。 政府は障害を持つ人の教育が教育体系の核心であることを保障すべきである。
1、教育全般を担当する当局が統合された環境での障害を持つ人の教育に責任を負うべきである。障害を持つ人の教育は 全国的教育計画、カリキュラム開発、学校運営の核心的部分であるべきである。
2、普通学校での教育は通訳者や他の適切な支援サービスを前提とする。多様な障害を持つ人のニーズを満たすための アクセシビリティと支援サービスが提供されるべきである。
3、親のグループと障害を持つ人の組織が全てのレベルでの教育過程に関与すべきである。
4、義務教育を実施している国では、最重度の障害を含め、あらゆる種類とあらゆる程度の障害を持つ女子・男子に教育が 提供されるべきである。
5、特別の関心が次の分野に与えられるべきである。
(a)障害を持つ幼い子ども
(b)学齢期以前の子ども
(c)障害を持つ人、特に女性
6、普通学校において障害を持つ人に教育的設備を提供するために、政府は
(a)学校の内外で理解され受け入れられる明確な方針を持たなければならない。
(b)カリキュラムの柔軟性・追加・変更を許容しなければならない。
(c)質の高い教材、継続的な教員研修、補助教員を提供しなければならない。
7、統合教育と地域に根ざした計画は障害を持つ人に対費用効果の高い教育と訓練を提供するお互いに補完するものと 見なされるべきである。全国的な地域に根ざした計画は、障害を持つ人に地元での教育を提供するために、地域社会がその資源を利用し、 開発するのを奨励すべきである。
8、普通学校体系が障害を持つ人全てのニーズを依然として適切に満たさない場合には、特殊教育の考慮も可能である。 その目的は学童を普通学校体系教育への準備することにあるべきである。特殊教育の質は普通教育と同じ基準と意欲を反映し、 普通教育と密接に関連づけられるべきである。少なくとも、障害を持つ学童は、障害を持たない生徒と同じだけの教育的資源を 割り当てられるべきである。政府は普通教育への特殊教育の段階的な全般的統合を目指すべきである。障害を持つ一部の学童には 現在のところ、特殊教育が最も適切な教育の形態であると見なされる場合もあることが認められる。
9、ろう者と盲ろう者はその特別なコミュニケーション・ニーズにより、ろう者と盲ろう者用の学校もしくは普通学校内の 特別学級・班での教育が一層適切であるかもしれない。特に当初の段階では、ろう者もしくは盲ろう者の効果的コミュニケーションと 最大限の自立をもたらす、文化に配慮した教育に特別の注意を寄せる必要がある。

規則7:就労

政府は障害を持つ人が、その人権を特に就労分野で行使するために力を与えられなければならないという原則を認識すべきである。農村部、都市部両方において、障害を持つ人は生産的で収入が得られる就労への均等な機会を労働市場で持たなければならない。
1、就労分野での法と規則は障害を持つ人を差別してはならず、その就労への障壁を築いてはならない。
2、政府は障害を持つ人の通常の就労への統合を積極的に支援すべきである。この積極的な支援は、職業訓練、奨励型の雇用割当計画、特定分野の優先就労、小規模事業への貸付または助成、独占的契約もしくは優先的生産権、税控除、障害を持つ労働者を雇用している企業への契約協力、もしくは他の技術・財政的支援という多様な方策で行なわれることが可能である。障害を持つ人を受け入れるために、妥当な配慮を行うよう政府は雇用者に奨励すべきでもある。
3、政府の行動計画には以下が含まれるべきである。
(a)職場と職場構内を多様な障害を持つ人が利用できるように設計し、適応させる方策
(b)新技術の利用と補助具・機器の開発と生産への支援。障害を持つ人の就労の獲得と維持を可能にするために、障害を持つ人が補助具・機器を入手しやすくする方策
(c)適切な訓練と配置、人的援助や通訳サービスのような継続的支援
4、政府は障害を持つ労働者に関する否定的な態度と偏見を克服するための啓発キャンペーンを提唱し、支援すべきである。
5、雇用者としての立場で、政府は公共部門での障害を持つ人の雇用に良好な環境を造るべきである。
6、政府、労働者組織、雇用者は、公平な雇用昇進政策・雇用条件・給与・けがと損傷を予防するための職場環境の改善方策・雇用に関して負傷した被雇用者のリハビリテーション方策を保障すべきである。
7、目的は障害を持つ人が通常の労働市場で就労することで常にあるべきである。通常の就労でそのニーズが満たされない障害を持つ人には、小規模の授産もしくは援護就労が選択肢として可能であるべきである。これらの選択肢は、障害を持つ人に通常の市場での就労を獲得するための機会提供を適切、十分に行えているかどうかという観点から、その質を評価されるのが重要である。
8、民間部門で研修・雇用計画に障害を持つ人を含むための方策がとられるべきである。
9、政府、労働者組織、雇用者は、フレックスタイム、パートタイム、職務分担、自営、障害を持つ人の介助を含む、研修・雇用機会の創出を障害を持つ人の組織と協力して行うべきである。

規則8: 所得保障と社会保障

政府は障害を持つ人への社会保障と所得保障の提供に責任を持つ。
1、政府は障害もしくは障害に関する要素によって一時的に所得を失った、もしくは減らした、または就労機会を否定された障害を持つ人に対し、適切な所得援助の提供を保障すべきである。障害の結果として障害を持つ人や家族にふりかかる費用も援助にあたっては考慮されるよう政府は保障すべきである。
2、社会保障、社会保険、他の社会福祉計画が国民を対象に存在するもしくは現在導入されている段階の国で、政府はそのような制度が障害を持つ人を排除、差別しないよう保障すべきである。
3、政府は障害を持つ人の世話をする人への所得保障と社会保障の保護をも保障すべきである。
4、社会保障体系は障害を持つ人の所得稼得能力を回復するための誘因を含むべきである。この体系は職業訓練の編成・発展・財政を提供する、もしくはこれらに貢献すべきである。この体系は就職斡旋をも援助すべきである。
5、社会保障計画は障害を持つ人が所得稼得能力を獲得、再獲得するために就労を求めるよう、誘因を提供すべきである。
6、所得援助は障害をもたらす状態が続く限り、障害を持つ人が就労を求めるのを思いとどまらせない形で、継続されるべきである。障害を持つ人が適切でしっかりとした収入を時にだけ、所得援助は減額もしくは打ち切りとなるべきである。
7、社会保障が相当程度まで民間部門により提供されている国で、政府は地域社会、福祉組織、家族が障害を持つ人のための就労、就労関連活動を進めるための自助方策と誘因を奨励すべきである。

規則9:家庭生活と人間としての尊厳

政府は障害を持つ人の家庭生活への完全参加を推進すべきである。政府は障害を持つ人の人間としての尊厳への権利を推進し、性的関係、結婚、親となることに関して、障害を持つ人を法律が差別しないよう保障すべきである。
1、障害を持つ人はその家族と共に住めるべきである。政府は障害とその家庭生活への影響に関する項目を家族カウンセリングに含めるよう奨励すべきである。レスパイト・ケアと介助サービスは障害を持つ人を含む家庭に提供されるべきである。政府は障害を持つ子どもや成人を養育しようとする、もしくは養子にしようとする人に対する不必要な障害を全て取り除くべきである。
2、障害を持つ人は自己の性的存在としての経験、性的関係を持つ、親を経験する機会を否定されてはならない。障害を持つ人が結婚と家庭づくりで困難に出会うかもしれないことを考慮し、政府は適切なカウンセリングの提供を奨励すべきである。障害を持つ人は他の人と同じように家族計画の方法を入手できるべきであり、自分の体の性的機能に関する情報を障害を持つ人にも利用できる形で入手できるべきである。
3、政府は社会に現在も存在する障害を持つ人、特に障害を持つ女子・女性が結婚する、性的存在である、親となることに対する否定的態度を変えるための方策を推進すべきである。メディアはこのような否定的態度を取り除くのに重要な態度を果たすよう奨励されるべきである。
4、障害を持つ人とその家族は性的もしくは他の形態の虐待に対して警戒するように十分な情報を与えられるべきである。障害を持つ人は特に家庭、地域社会、施設での虐待に弱い立場にあり、虐待行為の発生を防ぎ、虐待行為が発生した場合には認識し、通報するための訓練を受けるべきである。

規則10:文化


政府は障害を持つ人が平等な立場で文化活動に統合され、参加できるよう保障すべきである。
1、政府は都市部であれ農村部であれ、障害を持つ人自身のためのみならず、地域社会を豊かにするために、障害を持つ人がその創造的・芸術的・知的潜在可能性を利用する機会を持つよう保障すべきである。その活動例はダンス、音楽、文学、演劇、造形美術、絵画、彫刻である。特に途上国ではあやつり人形、朗唱、語りなどといった伝統的、現代的芸術様式が強調されるべきである。
2、政府は障害を持つ人に、劇場、美術館、映画館、図書館といった文化的催し・サービスを提供し、これを障害を持つ人が利用できるようにするよう促進すべきである。
3、政府は本、映画、演劇を障害を持つ人が利用できるようにするための特別な技術的取り決めの策定と利用を提唱すべきである。

規則11:レクリエーションとスポーツ


政府は障害を持つ人がレクリエーションとスポーツへの平等な機会を持つことを保障するための方策をとるべきである。
1、政府はホテル、海岸、スポーツ場、体育館等のレクリエーションやスポーツの場を障害を持つ人が利用できるようにすべきである。これらの方策は障害を持つ人の利用を可能にする方法の開発、参加、情報と研修計画のプロジェクトを含むレクリエーションとスポーツ事業の職員への支援を包含するべきである。
2、観光当局、旅行代理店、ホテル、自主的団体、レクリエーション活動もしくは旅行の機会に関係するその他の団体は障害を持つ人の特別なニーズを考慮に入れ、サービスを全員に提供すべきである。適切な研修がこの過程を支援するために行われるべきである。
3、スポーツ組織はスポーツ活動に障害を持つ人が参加できる機会をつくりだすよう奨励されるべきである。参加への機会を開放するにはアクセシビリティを整備するだけで十分な場合もある。特別な手筈や特別なゲームが必要になる場合もある。政府は障害を持つ人が全国的、国際的な行事に参加するよう支援するべきである。
4、スポーツに参加している障害を持つ人は他の参加者と同じ質の指導と研修を利用できるべきである。
5、障害を持つ人向けのサービスを作成する場合に、スポーツとレクリエーションを組織する者は障害を持つ人の組織と協議すべきである。

規則12:宗教

政府は障害を持つ人が自分が属する共同体の宗教生活に平等に参加するための方策を奨励する。
1、政府は宗教当局との協議のうえで差別を取り除き、宗教活動を障害を持つ人にも参加できるようにする方策を奨励すべきである。
2、政府は障害問題に関する情報の宗教機関・団体への提供を奨励すべきである。政府は宗教当局が職業的宗教従事者の訓練と宗教教育計画に、障害政策に関する情報を含むよう奨励すべきである。
3、政府は宗教文献を感覚損傷を持つ人が利用できるようにするのを奨励すべきである。
4、政府かつ、または宗教団体は宗教活動に平等な参加をするための方策を立てるに当たっては障害を持つ人の組織と協議すべきである。


V.実施方策

規則13.情報と研究

政府は障害を持つ人の生活状態に関する情報の収集と普及に最終的責任を持ち、障害を持つ人の生活に影響する障壁をはじめ全ての側面の総合的研究を促進する。
1、政府は障害を持つ人の生活状態に関する性別の統計や他の情報を定期的に収集すべきである。この情報収集は国勢調査や世帯調査と同時に行うことが可能であり、とりわけ大学、研究所、障害を持つ人の組織との緊密な協力のもとに行うことも可能である。情報収集には施策やサービスとそれらの利用に関する質問も含まれるべきである。
2、政府は、利用できるサービスや施策に関する統計と異なる障害種別グループに関する統計を含む、障害データバンクの設立を考慮すべきである。政府は個人のプライバシーと人間としての尊厳を守る必要を心に留めるべきである。
3、政府は障害を持つ人とその家族に影響する社会・経済・参加の問題に関する調査計画を提案し、支援すべきである。こういった調査は障害の原因・種類・頻度、既存の施策の有用性と効果、サービスと支援方策の開発と評価に関する研究を含むべきである。
4、政府は障害を持つ人の組織と協力して、全国的調査を実施するに当たっての用語と基準を開発し採用すべきである。
5、政府は障害を持つ人の資料収集と調査への参加を促進すべきである。調査の実施にあたって、政府はその業務に適性ある、障害を持つ人の雇用を特に奨励すべきである。
6、政府は調査結果と経験の交換を支援すべきである。
7、政府は全国・地方・地域の全政治・行政レベルで障害に関する情報と知識を普及させるための措置をとるべきである。

規則14.政策形成と計画立案

政府は全ての関連する政策形成と国家計画に障害に関する側面が含まれるよう保障する。
1、政府は国家レベルでの障害を持つ人に関する適切な政策を提唱、立案し、地方・地域レベルでの行動を働きかけ、支援すべきである。
2、政府は、障害を持つ人に関係する、もしくは障害を持つ人の経済・社会的地位に影響を与える計画の決定には障害を持つ人の組織を関与させるべきである。
3、障害を持つ人のニーズと問題は政府の開発計画に含まれるべきであり、別個に扱われてはならない。
4、障害を持つ人の状況に関し、政府が最終的な責任を持つことは他が責任から免れることではない。社会のサービス・活動・情報を担当する誰もが、それぞれを障害を持つ人が利用できるようにする責任を持つよう奨励されるべきである。
5、政府は障害を持つ人を対象にする計画とサービスを地方自治体が策定するのを促進すべきである。手引書もしくはチェックリストを作成し、自治体職員向けの研修を提供するのも一つの方法である。

規則15.立法

政府は障害を持つ人の完全参加と平等という目的を達成するための措置の法的根拠を作成する責任を持つ。
1、市民の権利と義務を具体的に表現している国内法は障害を持つ人の権利と義務を含むべきである。政府は障害を持つ人が、人権、市民的・政治的権利を含む権利を他の市民と同様に行使できるようにする義務を持っている。政府は障害を持つ人の組織が、障害を持つ人の権利に関する法律とその法律の継続的な評価に関与するのを保障すべきである。
2、いやがらせや迫害を含む、障害を持つ人の生活に否定的な影響を与える可能性がある状態を取り除くために法的行為が必要であるかもしれない。障害を持つ人に対する差別的規定は取り除かれなければならない。国内法は無差別の原則に違反した場合の制裁を規定すべきである。
3、障害を持つ人に関する国内法は2つの異なる形態をとることができる。権利と義務が一般的な法律に含まれるか特別の法律に含まれるかのどちらかである。障害を持つ人を対象にする特別の法律の作成にはいくつかの方法がありうる。
(a) 障害問題だけを扱う別個の法律を施行する。
(b) ある事項に関する法律の中に障害問題を含める。
(c) 既存の法律の解釈に役立つ文面で、特別に障害を持つ人に言及する。
 これらの異なるアプローチの組合せが望ましいかもしれない。積極的差別是正措置も考慮されるかもしれない。
4、政府は障害を持つ人の利益を守るために苦情を受け付けるための、法律に基づく機関設置を考慮することができる。

規則16.経済政策

 政府は障害を持つ人に均等な機会を創り出すための国家的政策と措置への財政的責任を持つ。
1、政府は全ての国家、地域、地方政府の通常予算に障害問題を含むべきである。
2、政府、非政府機関、他の関心ある機関は、障害を持つ人に関連するプロジェクトと方策を支援する最も効果的な方法を確定するために、お互いに影響を及ぼすべきである。
3、政府は、障害を持つ人が社会に平等に参加するのを鼓舞し、支援するために経済的措置(ローン、税控除、使途指定の補助金、特別基金等)を使うべきである。
4、多くの政府の場合、多方面の草の根レベルでのパイロットプロジェクトや自助計画を障害開発基金を支援することができる基金の設立が望ましいかもしれない。

規則17、業務の調整

政府は障害問題の国家的焦点として機能する国内調整委員会、もしくは同様の機構を設立、強化する責任を持つ。
1、国内調整委員会もしくは同様の機構は常設で、法的かつ適切な行政的規定に基づくべきである。
2、民間と公共団体の代表の組合せが横断的で学際的構成に結び付く可能性が高い。政府官庁、障害を持つ人の組織、非政府組織から代表を得ることができる。
3、障害を持つ人の組織はその関心事へのフィードバックを適切かつ確実に行うために、国内調整委員会で相当の影響力を持つべきである。
4、国内調整委員会は意思決定能力に関する責任を果たすための自主性と資源を十分に備えるべきである。国内調整委員会は、政府の最高レベルに報告すべきである。

規則18、障害を持つ人の組織

政府は障害を持つ人の組織が全国・地域・地方レベルで障害を持つ人を代表する権利を認識するべきである。政府は障害に関する事項の意思決定において障害を持つ人の組織の諮問的役割をも認識すべきである。
1、政府は障害を持つ人、家族、権利擁護者の組織の結成と強化を経済的ならびに他の方法で奨励し、支援すべきである。政府はこれらの組織が障害政策の発展に果たすべき役割があることを認識すべきである。
2、政府は障害を持つ人の組織との継続的なコミュニケーションを確立し、政府の政策の発展への障害を持つ人の組織の参加を保障すべきである。
3、障害を持つ人の組織の役割には、ニーズと優先順位の把握、障害を持つ人の生活に関するサービスと方策の計画・実施・評価、社会の意識向上、変化の提唱があるかもしれない。
4、障害を持つ人の組織は、自助の手段であり、多方面の分野での技術の向上・組織員の相互支援・情報共有の機会を提供し、促進する。
5、障害を持つ人の組織は、政府が資金を出している機関の常任委員となる、公的委員会の役職をつとめる、種々のプロジェクトに専門的知識を提供するなど多くの形態で、諮問的役割を果たすことができる。
6、政府と障害を持つ人の組織間の見解と情報交換を進め、深めるために、障害を持つ人の組織の諮問的役割は継続的であるべきである。
7、組織は国内調整委員会もしくは同様の機構に常任として代表されるべきである。
8、障害を持つ人の地元の組織が地域社会レベルでの決定に影響力を行使するのを保障するために、障害を持つ人の地域の組織は強化されるべきである。

規則19、職員研修

政府は障害を持つ人に関わるプログラムとサービスの計画立案と提供に携わる職員の適切な研修を全てのレベルで保障する責任を持つ。
1、政府は障害分野でサービスを提供している全ての機関が、その職員に適切な研修を与えることを保障すべきである。
2、障害分野の専門職員の研修ならびに一般的研修計画内での障害に関する情報提供において、完全参加と平等の原則が適切に反映されるべきである。
3、政府は障害を持つ人の組織と協議の上で研修計画を開発すべきであり、障害を持つ人は研修計画の教師、指導者、顧問として参加すべきである。
4、コニュニティワーカーの養成は特に途上国で戦略的な重要性を持つ。その養成には障害を持つ人が参加すべきであり、適切な価値観、能力、技術、障害を持つ人・親・家族・地域社会の構成員が実践できる技能の発展を含むべきである。

規則20、基準規則の実施における障害プログラムの国家的モニタリングと評価

政府は障害を持つ人の機会均等化に関する国家的計画とサービスの実施を継続的にモニターし、評価する責任を持つ。
1、政府は定期的、体系的に国家的障害計画を評価し、評価の根拠と結果を共に公表すべきである。
2、政府は障害関連の計画とサービスの評価のために、用語と基準を開発し、採用すべきである。
3、この基準と用語は、その最初の概念・計画段階から障害を持つ人の組織との密接な協力のもとで作成されるべきである。
4、政府は障害分野の国別評価の共通基準の開発のために国際協力に参加すべきである。政府は国内調整委員会も参加するよう奨励すべきである。
5、障害分野の多方面の計画の評価は、政策目標達成にあたっての全体的効率が評価できるよう、計画段階から組み込まれるべきである。

規則21、技術・経済協力

工業国、途上国、共に政府は途上国の障害を持つ人の生活状況を改善するために協力し、その方策を講じる責任を持つ。
1、障害を持つ難民を含め、障害を持つ人の機会均等化を達成するための方策は全般的開発計画に含まれるべきである。
2、このような方策は2国間、多国間、政府、非政府を問わず、全ての形態の技術・経済協力に含まれるべきである。政府は相手国との協力に関する協議の場で障害問題を取り上げるべきである。
3、技術・経済協力計画を立案、再評価する際には、その計画が障害を持つ人の状況にどのような影響を与えるのかという点に特別の関心が払われるべきである。障害を持つ人を対象として計画される全ての開発プロジェクトに関して、障害を持つ人とその組織が意見を求められるのは非常に重要である。障害を持つ人とその組織はそのようなプロジェクトの開発、実施、評価に直接、参加すべきである。
4、経済・技術協力の重点分野には以下が含まれる。
(a)障害を持つ人の技能・能力・潜在能力の開発による人材開発と、障害を持つ人自身による、もしくは障害を持つ人のための、就労創出活動の開始
(b)障害に関連する技術とノウハウの開発と普及
5、政府は障害を持つ人の組織の結成と強化を支援するよう奨励される。
6、政府は経済・技術協力計画の実務に当たる全てのレベルの職員の障害問題の知識を向上させる措置をとるべきである。

規則22、国際協力

政府は障害を持つ人の機会均等化政策に関する国際協力に積極的に参加する。
1、国際連合・その専門機関・他の政府間機関内で政府は障害政策の開発に参加すべきである。
2、適切である場合には常に、政府は障害に関する側面を基準、情報交換、開発計画等に関する全般的な交渉に導入すべきである。
3、政府が知識と経験の交換を奨励し、支援すべき対象は以下の通りである。
(a)障害問題に関する非政府組織
(b)障害問題に関する研究機関・個人の研究者
(c)障害分野の現場での計画の代表と専門職者集団
(d)障害を持つ人の組織
(e)国内調整委員会
4、政府は国際連合、その専門機関、政府間機関、議会間機関が、世界・地域レベルで、その業務に世界・地域の障害を持つ人の組織を含むことを保障保すべきである。


W.モニタリング機構

1.モニタリング機構の目的は基準規則の効果的な実施を進めることにある。モニタリング機構は各国が自国での基準規則の実施状況を査定し、その進歩を測定するのを支援する。モニタリングは障壁を把握し、規則の実施の成功に貢献する適切な措置を提案すべきである。モニタリング機構は各国に存在する経済・社会・文化的特徴を認識する。重要な要素としてはアドバイザリー・サービスの提供と、各国間の経験と情報の交換もあるべきである。
2、障害者の機会均等化に関する基準規則は社会開発委員会の会期の枠組みでモニターされる。障害問題と国際機関に関する必要かつ広範な経験を持つ特別報告者は、必要に応じて特別拠出資源により資金を得て、基準規則の実施をモニターするために3年間の任期で任命される。
3、経済社会理事会に協議資格を持つ障害を持つ人の国際組織並びに、自分自身の組織を結成するに至っていない障害を持つ人を代表する組織が、その組織間で、専門家パネルを結成するように求められるべきである。このパネルの過半数は障害を持つ人の組織とし、異なる障害の種別と必要な地理的均衡を考慮するものする。このパネルは特別報告者と協議するものとし、必要に応じて事務局とも協議するものとする。
4、専門家パネルは特別報告者により基準規則の促進・実施・モニタリングに関して見直し、助言を与え、フィードバックと提案を与えるよう奨励されるものとする。
5、特別報告者は政府、国連システム内の機関、政府間機関、障害を持つ人の組織をはじめとする非政府組織に一連の質問を送付する。一連の質問は各国での基準規則の実施計画を取り上げるべきである。質問は選択的な性格とし、掘り下げた評価のために限られた規則だけを対象とすべきである。質問の作成に当たって、特別報告者は専門家パネルと事務局と協議すべきである。
6、特別報告者は政府のみならず、地元の非政府組織とも直接の対話を確立し、報告書に含まれる予定の情報いずれに関しても見解とコメントを求めるものとする。特別報告者は基準規則の実施とモニタリング、並びに一連の質問への回答の準備について、アドバイザリーサービスを提供するものとする。
7、国連内の障害問題に関する焦点としての政策調整・持続的発展局、国連開発計画、地域委員会・特別機関・機関間会議等の他の国連機関は、基準規則の国家レベルでの実施とモニタリングに関して特別報告者と協力するものとする。
8、特別報告者は事務局の支援を得て、社会開発委員会の第34会期、第35会期に報告書を提出するものとする。報告書の作成に当たって、特別報告者は専門家パネルと協議するべきである。
9、政府は国内調整委員会もしくは同様の機構が実施とモニタリングに参加するよう奨励すべきである。国家レベルでの障害問題に関する焦点として、これらの機関は基準規則のモニタリングを調整する手続きを確立するよう奨励されるべきである。障害を持つ人の組織は全てのレベルでのモニタリングの過程に積極的に関与するよう奨励されるべきである。
10、特別予算が確保された場合には、政府に対して直接にサービスを提供するための、基準規則に関する地域間アドバイザーの地位が1名、もしくはそれ以上設けられるべきである。そのサービスには以下が含まれる。
(a)基準規則の内容に関する国家・地域レベルでの研修セミナーの実施
(b)基準規則実施に向けての戦略づくりを支援するガイドラインの策定
(c)基準規則の実施に関する模範例に関する情報の普及
11、第34回会期において社会開発委員会は参加自由な作業部会を設置し、特別報告者の報告を吟味し、基準規則の実施を改善する方法に関する勧告を作成する。特別報告者の報告を吟味するに当たって社会開発委員会は参加自由な作業部会を通じて、障害を持つ人の組織と特別機関と協議を行う。これは経済社会理事会の機能委員会の手続きに関する第71規則から第76規則に基づくものである。
12、特別報告者の任期が終了した後の会期で、社会開発委員会は任期延長、新特別報告者の任命、新たなモニタリング機構の考慮それぞれの可能性を考慮し、経済社会理事会に適切な勧告を行うべきである。
13、政府は基準規則の実施促進のために国連障害任意基金への拠出を奨励されるべきである。

「障害者の機会均等化に関する基準規則」は
国連総会決議48/96により1993年12月20日に採択された。

訳語は原則として以下を用いた。
IMPAIRMENT:損傷
DISABILITY:障害
HANDICAP:ハンディキャップ

翻訳者:長瀬修さんのご好意でアップさせていただきました

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