医療福祉と財源の部屋

デンマークから、尾辻さんにエールを
バンク-ミケルセン記念財団理事長 千葉忠夫さん

 連日、日本からの社会福祉研修生との生活で明け暮れしている今日、尾辻さんの論旨を読み、久々に同じような考えを持った方に会えた喜びを感じています。

 日本を住みよい国にしたいと自分勝手に思い込みデンマークに来て今年で40年たちました。
 世界で一番住みよいデンマーク国に在って、この国が何故世界で一番住みよい国になったのかを模索していると、「国の歴史が違う、文化が違う」と言ってデンマークの福祉政策を学ぼうとしない日本の政治家や行政官があまりにも多いことを残念に思います。

 昨年、65歳になる1ヶ月前!、私が住んでいる自治体から、何の申請もしていないのにご丁寧に「国民年金を来月から給付します」という書類がきました。
 私はまだ現役で仕事が山積しているので「国民年金は不要です」と回答しました。
 今年66歳の誕生日の1ヶ月前!、自治体から「まだ、年金の給付は必要ありませんか?」という通知がありました。「もし70歳まで年金給付を延期した場合には、月額にして3000kr増額して年金を給付します」という添え書きが付いておりました。

 現在65歳以上のデンマーク人が受給する国民年金は月額10000kr(約20万円)。病気になっても介護が必要になっても、安心で、自己負担の心配もありませんから、この年金で、ゆったり暮らせます。
 私はデンマーク滞在40年(の納税者)ですので外国国籍でも満額給付されます。あと3年ちょっと働くと月額約6万円増額して給付されることになります。

自分自身が高齢化してきたせいもあって、「早く日本も!」と焦燥感にかられていた矢先、尾辻さんの稿に目が留まり、国民運動までに盛り上げなければ!と、青年のように胸騒ぎを覚えたのでした。
 デンマーク人も日本人も同じ「人間」でありながらデンマーク人が築いている弱者にやさしい国に何故日本はならないのか、私は口惜しくて仕方がありません。
 社会的に弱い立場にある人たちが「自分はこの国に生まれて良かった」と思える国が、住みよい国なのです。私も尾辻さんと同じように日本が弱者にやさしい国になることを切に願っています。

 デンマークも農業国、農業協同組合をいち早く生み出した国です。日本の農村に存在した「ゆい」を組織化したようなものが協同組合で、この合言葉となるものは「連帯」と言えるでしょう。相互に助け合っていく連帯感は「民主主義」を代表する言葉であり、民主主義、主権在民があってこそ安心して生活できる社会が存在します。
 社会福祉国家デンマークは民主国家であり、国民が納めている高税は連帯感の表れと言っても過言ではないでしょう。全国民が平均すると約40〜50%の所得税を払い、消費税は25%です。
 「高福祉高負担」という人がいますが、これは誤りで、「高福祉高連帯」であると思います。

 なぜなら国民から集めた税金で、教育、医療、障害、高齢者等、それぞれの分野でその支援を必要とする人に所得は再配分されるからです。納税は単なる負担で終る事はありません。
 教育、医療、福祉全てお金がかかります。かかる費用を消費税をそれぞれの目的税として上げて国民の生活を保障する政策に私は大賛成するものです。
 ちなみに所得税は上げずに現行の消費税を5%から10%に上げただけでも、全障害者が自己負担などをしなくてすみ、寝かせたきり老人が一人もいない弱者にやさしい「健康で文化的な最低生活をいとなめる国」が出来ると確信します。
 尾辻さんには、人間性を尊重する意識改革、国民運動(民主主義は国民が「連帯して」闘って勝ち取り、主権在民とするものですので)を起こしていただきたいと思います。

 「日本とデンマークとどちらが住みよいか?」と研修生から聞かれると、「デンマーク」と答えます。
 「日本とデンマークとどちらが好きか?」と聞かれると「日本」と私は何時も研修生に即答します。
 私も尾辻さんに負けない大の愛国者です。そして日本国民が住む社会が誰にとっても住みよい社会になればと願っているのです。

千葉忠夫さん(バンク-ミケルセン記念財団理事長)

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