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國松善次さん(滋賀県知事)
コーディネーター
― テーマは、"介護保険に障害福祉を統合するか否か" ―
川名: 介護保険に、障害者の福祉を統合していくのかどうか、というのがこ濃縮シンポジウムのテーマです。
― 7人の熱き知事が集まったアメニティーフォーラム ―
國松: 「アメニティーフォーラムINしが」が毎年、滋賀県で開催されています。第6回目の今年のフォーラムでは、「障害者福祉は介護保険で」というテーマに賛成する7人の知事が寄って、シンポジウムが行われました。
障害者福祉サービスを充実させようとすると、多様な選択肢を用意しなければいけませんが、一方で国も地方も財源に大変悩む時期に入っています。
― 障害者福祉は道半ば ―
國松: そうは言いましても、そもそも必要なサービスというのは税できちっと行われるのが公的サービスの原点、原理です。
障害者福祉の充実ということについて言えば、明らかに道半ばです。施設中心で来たという過去の歴史もありますし、また、地域で福祉をというときに、それを支えるだけの仕組みがまだ十分揃っていません。そして24時間きちっと支えられるサービスがそれぞれの地域で準備されてこそ、福祉は一定の水準にあるということになると思いますが、それも十分ではありません。
一方、介護保険の方は、サービスを必要とする高齢者が間違いなく急激に増える、そして、それは家庭で十分支えられないというときに、保険という仕組みを通して、一気に充実しようということで進めたわけです。
― 介護保険の仕組みを障害福祉に活用できないか? ―
私は高齢者福祉を考えるとき、滋賀県の場合は、ありがたいことに障害者福祉が進んでいたこともあり、それをいかに普遍化するかというふうに考えることがあります。今度は逆に介護保険という仕組みを障害者福祉にうまく活用できないのかと思うのです。介護保険の見直しを考えるときに、ぜひ、国の制度として考えてもらえないかと思うわけです。
今、国と地方の間で、三位一体の改革をするということで、財源を一緒にするのかしないのかについて大議論になっています。地方に権限と財源を移して、初めて地方分権が成り立ちます。
― ニーズの違いを理解しながら地域で設定していく福祉 ―
國松: なので、障害者福祉をみんなで支えあうという仕組みを着実に積み上げていくには、介護保険の仕組みというのは大変面白い仕組みだと思います。
ただし、当然、高齢者福祉と障害者福祉ではニーズが違います。違う部分と全く同じ部分があるということをお互いに徹底的に整理しながら、仕組みを設定していくことではないかなと感じています。
― 市長会「介護保険検討委員会」の認識は? ―
熊坂: 前職は内科の開業医でありまして、死亡診断書約500書きました。いまも病院の院長でありますし、現場をわかっているつもりでいます。
現在、全国市長会で、守口市の喜多市長さんが委員長で介護保険制度検討委員会を進めています。
私は國松知事さんがおっしゃられたように、これは一本化すべきだと思っています。4月から支援費制度が始まり、サービスを受ける方と提供者が対等の立場で、自己選択するという、介護保険と同じ仕組みが一歩進んで、非常によかったと思います。
― 問題は財政〜市町村は火の車〜 ―
熊坂: 支援費の一番の欠点は、税財源だということです。今、三位一体の改革が行われていますが、補助金の削減、超国税の削減、様々なことで今市町村財政が火の車です。税財源になっている以上は私ども、これからサービスの基盤を整備するにしても、全く先が見えないと思っています。
支援費と介護保険では、サービスの様々な種類が違うのもわかりますし、高齢者福祉は自立支援で、障害者の場合は社会復帰ということはよくわかります。いろいろな議論をすればいいと私は思っています。
― 障害者福祉も介護保険との一本化で ―
熊坂: 障害者の福祉を向上させていく場合に、市町村としてはどうしても財源がほしい。市町村にとって介護保険はある意味で特定財源だと思うんですね。特定財源という考え方を入れて、保険で一本化すべきだと思います。
また、市町村というのは、対住民直接ですから、福祉が縦割りになっているのは、全然よくないと思います。介護保険によって市町村の力が改めて、見直されたと思うんですが、障害者福祉も市町村に財源と権限を与えれば、介護保険と同じように十分にできると思います。
例えば、39歳で脳卒中の方がいたとします。支援費を使っていて、40歳になったら今度は介護保険で要介護度5。39歳まではサービスが無制限に使えたのが40歳なったら今度は要介護度5で、どうやって上乗せなどをしていくかという話になります。これはやっぱりどう考えてもおかしいと思いますね。
― 必要なのは「保険」という概念 ―
熊坂: そういうこと考えますと、市町村はまずがんばるというのが前提ですね。それにプラスして、私はアメニティーフォーラムで出された「障害者福祉に関する7県共同アピール」のように、一本化をしていただいて、保険という概念をここで入れるべきだと思っています。そして市町村にそれを下ろしていただければ、市町村は介護保険と同じようにしっかりとやれると思っています。
― 障害者自身がサービスの担い手に〜自立生活センター〜 ―
中西: 自立生活センターは1986年にスタートして、今、全国に120ヵ所あります。代表や事務局長は障害者で、運営委員の50%が障害者という運営規約をもって、サービスを提供しています。
介助サービス、自立生活プログラム、ピアカウンセリング、住宅サービスなどを提供しながら、地域で障害者が暮らせる状況を我々障害者自身がサービスの担い手になって提供するというシステムを作り上げてきました。
障害者運動は今や全国に津々浦々広がり、北海道から沖縄までどこにいても、我々のサービスを訴えるような状況が今、全都道府県で実施されています。
― 当事者の意見を聞くことを先決に ―
中西: 障害者が今、介護保険をどう考えているか。今、県と市の方からは賛成の意向が出ましたが、私は反対です。
介護保険に組み込むことによって、我々の生活はどうなるかということを、まず当事者に聞いていただかなければ、納得はいきません。
我々はまず地域で生きていることを目的としてます。地域の中で、サービスを1時間、2時間と交渉しながら増やし、そして必要なサービスを必要な人に提供できるような社会を築きあげてきました。
― 自立と社会参加の理念が異なっている! ―
中西: 介護保険の問題点は、自立と社会参加の理念が全く異なるということです。
我々に人生を味わわせてほしい。我々にも社会参加の機会を与えてほしい。これが障害者の切なる願いであり、それが支援費制度で理念的には実現されました。
― まずは支援費制度を根付かせよ ―
中西: 4、5年はこの支援費制度をきっちりと根付かせたい。
実際、知的のホームヘルプサービスはまだ2〜3%しか実施されていません。ですから、サービスが全く根付いていないところで、介護保険で地域に広めようと思っても、2%しかサービスの受け皿がないわけです。しかも、その他の在宅支援のサービスも不足しています。
― 求められるは、本当の意味で生活術を支える支援 ―
中西: 今、地域の中で、グループホームが優先されてます。けれども、自立生活プログラムやピアカウンセリングなど精神的な、生活技術を支えるような支援をやらなければ、彼らは生きていけません。
彼らに必要なのはグループホームではなく、自立生活体験室です。1週間から1ヵ月、親元から離れて暮らす経験を経る場所が必要です。そういうものを今作っていかなければ地域では、障害者は暮らしていけない。基盤整備に4、5年かけて、サービスメニューを用意していく。
― 障害と高齢を一緒くたにしてはいけない ―
中西: 支援費は自立の理念を高々に掲げた理念の高いサービスです。
みなさんのご協力をいただいて、知的、精神、聴覚、視覚、肢体不自由、すべての当事者が地域で支えあう組織を作っていきたいと思います。
― 常なる疑問は「親がいなくなったときどうするんだ?」 ―
松友: 全日本育成会は、知的障害の子どもの親の会で、約30万人の会員がいます。
― 結局家族の中に作られてきた受け皿 ―
松友: 育成会としては、地域の中に移していくんだと、ぜひ戻っておいでということを、全国でアピールしたいと思っています。
しかしながら、戻るべきところに支援があるのかと言ったときに愕然とする。結局、「親だからみるのが当然だ」という扶養義務制度というシステム、あるいは文化的な考えの中で親たちに受け皿を作らせて、そこで面倒見させてきたじゃないかと。
― 支援費と介護保険の合流は議論するに値するテーマ ―
松友: 私個人としては、介護保険制度が提案されたスケルトンというものが出されたときから、この問題を急速に取り込もうとしたんですが、流れはそういかなかった。
― スペシャルニーズに対するスペシャルサポートはいかに? ―
松友: 私は2つほど心配をしています。一つは、一割負担という応益負担を障害者ができるのか。所得を保証するシステムがなく、資産もない中で、それにどう対応し、サポートができるのかです。
二つ目は、ニーズの多様性です。発達期・青年期と言われている知的障害、発達障害の青年・成人達が、生き生きと社会の中で生きようとするとき、高齢者を中心としてなされてきた介護制度はシステムとしてはどうなんだろうか。
私達にも責任がいっぱいありますが、障害、特性などのスペシャルニーズに対するスペシャルサポートが介護保険システムの中で、用意されるのか。「用意しようじゃないか」とたぶん田島さんはおっしゃられると思いますので、そういう期待と不安を発言させて頂きました。
川名: 高齢者の介護にせよ、障害児の介護にせよ、長らく家族に負担を強いてきた、そういう歴史の上に立って、この問題を考えていかなければと思います。
― 地域での受け皿作りでぶちあたった三つの壁 ―
田島: 私は、1985年頃に、知的な障害を持った子ども達と施設のなかで一緒に生活をしました。そこから、「ふるさとへ帰りたい〔とか、あるいは「お母さんに会いたい」とか、「施設から外に出て生活をしたい」という彼らの願いを叶えるために、地域の中の受け皿作りをどんどんしていったんです。
そのときに、ぶつかった壁が3つありました。
一番頭が痛かったのが、お金がない問題です。我が国の福祉は、税金に頼っていて先行き、行き詰まるんじゃないかと当時思いました。
― 公助と共助と自助を一緒に ―
田島: ならば、国民がみんなで支えあう仕組みと、自ら生み出すお金。公助と共助と自助を一緒にまとめて支えていく仕組みを作らなければならないのではないかということを、1985年ごろに盛んに議論をしました。
そして、今、官房長になっておられる辻さんが介護保険みたいな共助の仕組みみたいなものを1987年くらいに出されたような気がします。そういうものに障害福祉の世界も乗っけてもらいたいと働きかけたのですが、そのときも結局、社会資源がないなかでは到底無理だから、あと10年くらいがんばって、受け皿を作るべきではないかというご意見が圧倒的でした。育成会、親の会もみんなそうでした。
そこで、我々コロニー雲仙は待っていられなくて、親達だけで共助の仕組みを作りました。
― 財源と市町村の役割を考えて ―
田島: みんなでしっかり考えることによって、将来に育てていけるかたちの財源が、ある程度確保できる、責任と義務だけが行ってしまった市町村に、肝心の財源を移すことができると思っています。
― 受け皿がないという不幸 ―
田島: コロニー雲仙では、800人の人が地域に出て行って、ごく普通の場所で普通の生活を生き生きとしています。ぜひ、それを全国に広げたい。
― 支援費制度 ―
河村: 私が障害者福祉問題にかかわりだしたのは、この1月のあの大行動が起きて以降で、まだ非常に日が浅い状況です。
特に、一番遅れていた知的障害者のホームヘルプ事業者も相当参入が広がっています。全国的な底上げは、できていくのではないかなと思います。
障害者福祉と介護保険の問題は、省としても、個人としても、まだ判断をする状況ではありません。特に私などは、この支援費の円滑な施行に頭がいっぱいで、考える余裕もなかったわけですが、今月末に始まるこの検討会で、将来の財源の問題も十分議論していただければいいなと思っています。
― いいとこ取りの支援費制度 ―
河村: あえてこの段階で私見を申し上げさせていただきますと、支援費そのものが介護保険のいいとこどりになっていると思うわけです。
― 財源確保と2つの選択肢 ―
河村: そこで選択肢は2つあります。いつの時点かは別として、介護保険に合流して、社会連帯による支えあいの仕組みで、公的サービスのさらなる拡充を図っていくのか、あるいはこの支援制度を中心にして、自助あるいは共助を組み合わせて、全体として障害者福祉の推進を図ろうか。
どちらにしても長期的に見れば、サービスの拡充に伴って、ほとんどただ同然でサービスが受けられる今の現状は、改められていくであろうと。負担能力に応じるということは当然ですが、自己負担は出てくるであろうと思っています。
― 高齢障害者との整合 ―
河村: また、高齢障害者との整合という問題があります。65歳以上の障害者は現に、介護保険の給付を受けていますが、若年障害者との整合というのはどうするのかという問題は、あるんだろうと思っています。
― 精神障害者の合流 ―
河村: それから介護保険との合流で、一番変化が起きるのは、むしろ遅れている知的障害者あるいは精神障害者。精神障害者については、省内に対策本部を設けて、一層充実を図るということで一生懸命やっていますが、介護保険に合流するかしないかで、状況はがらっと変わってくると思います。
― 被保険者の問題 ―
河村: 介護保険の被保険者が「40歳以上」というのは、やや中途半端な感じがしています。20歳以上に広げていったほうがいいのではないかなと思うわけです。その場合、誰でも障害者になる可能性がある。年金と同じように障害者のサービスを取り込むことが、課題になると思います。
― タイミングはいつか ―
河村: 問題は、それがいつの時点になるかということが一つ。2年後の介護保険の見直しの時期がいいのか、あるいはさらに、あるかどうかわかりませんが7年後の見直しの時期にするのがいいのか。
もう一つは、それぞれの障害の特性に本当に十分配慮できるのかということ。これは検討会でも十分議論していかなきゃいかんと思いますが、おそらく今の65歳以上の障害者がそうであるように、上乗せなり横出しという2階建ての仕組みになっていくのではないかと思います。
― 議論してみる価値 ―
川名: 議論はしてみる価値があるのではないかというのが、多くの方から出た意見ではないかしらと思います。けれども、当事者の考えは、とても大切にしないといけないと思います。
― 当事者主体の地域整備を ―
中西: ありがとうございます。
― 当事者は決して見放さない ―
中西: 地域で本当に我々が満足できるサービスは、自立生活センターという自分たちが利用者であり、サービス提供者であるところでしか受けられない。
また、我々は知的の当事者、精神の当事者、それぞれの人たちを決して見放すことはしません。ピアカウンセリングや自立生活への支援を精神的な意味で支えるとき、我々は地域で一生障害者ですから、一生見捨てません。
― ゆっくりと当事者を育てていく ―
中西: 我々は、お金のかかることを言ってるわけじゃないんですよね。自立生活センターは5千万円で運営してきました。支援費制度になって財源的には豊かになり、当事者を育てることができるようになってきました。地域は今、育ちつつあります。知的障害者は市の中で1人、2人、3人と、ようやく自立生活を始めたところです。その人たちのノウハウが積み重なって、そして彼らがリーダーとなって、他の人たちを支援できるように、ぜひさせてやってください。
― 議論のきっかけに ―
川名: それぞれの立場から、切実でかつ現実的な意見が出たと思います。どうか皆さん、それぞれお一人お一人の考えを持ち帰って、あるいはメールなどを通じて、議論を深めていくきっかけにしていただければと思います。 ****縁****繋****縁****繰****縁****経****縁****緯****縁****継****縁****続****縁**** |