優しき挑戦者(阪大・ゲスト篇)
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大阪府障害者施策推進協議会(2002年6月7日)
第1章.はじめに・・・ 新計画策定の必要性と当事者参画
大阪府における障害者施策は、「国連・障害者の十年」の成果を受け継ぐ形で平成6(1994)年3月策定された「新大阪府障害者計画」(ふれあいおおさか障害者計画)に基づき、福祉、保健、教育、労働、住宅、まちづくりなど幅広い分野でその推進が図られてきた。
この計画は、その終期を平成14(2002)年度末として、障害者の「完全参加と平等」を実現するため、すべてのライフステージにおいて障害の程度に即した適切な支援を行い、全人的な可能性の追求をめざす「リハビリテーション」の理念と、障害者が社会の一員として障害のない者と同等に生活し、活動する社会をめざす「ノーマライゼーション」の理念のもと、「人権尊重に根ざした障害者の主体性・自立性の確立」「すべての人が平等に、安心して暮らせる社会づくり」「府民の全員参加によるノーマライゼーションの実現」を基本目標として事業の推進を図ることとしていた。
この計画は、それ以前の施設中心の福祉から在宅福祉への大きな転換及びその具体的行動計画をわが国で初めて体系的に数値目標で表すなどその先駆性は高く評価できるものであった。
その後、国における「障害者プラン」の策定や障害保健福祉圏域の設定や介護保険制度の創設など新たな動きに対応するため、新大阪府障害者計画の見直しを行い、平成11(1999)年5月、「障害者の人権の尊重」「利用者主権の尊重を基本とした『利用する福祉』の推進」「地域における自立生活の促進」「事業の普遍化にむけて」の4つの基本理念を新たに定めた同計画後期行動計画が策定された。後期行動計画の策定後、地方分権一括法の施行による障害者雇用に係る事務の一部国への移管、「新ふれあいおおさか高齢者計画」との整合性を図る必要性が生じたこと、また、平成12(2000)年度の組織改正で、全国で初めて福祉部門に障害者の就労を支援する課を設置し、今後の障害者施策の大きな柱として「就労支援」を位置づけたことなどの状況の変化を踏まえ、平成12(2000)年6月に再改定を行い、今日に至っている。
こうした2度にわたる見直し・改定を経た現行計画もその計画期間満了まで後1年となった今、障害者福祉の大きな変革の流れが押し寄せている。 【社会福祉基礎構造改革への対応】
平成12(2000)年6月、50年ぶりに大改正された社会福祉法は、「福祉サービスの利用者の利益の保護」と「地域における社会福祉の推進」を目的とし、その基本的理念に「個人の尊厳の保持を旨とした、自立した日常生活への支援」を掲げて、戦後社会福祉の基礎構造を、福祉サービスの利用制度化などによる「利用者の立場に立った」「サービスの質の向上」「社会福祉事業の充実・活性化」「地域福祉の推進」などを柱に改革をめざすものであった。この基礎構造改革を受け、精神保健福祉法等を除く障害福祉関係法においても、措置制度から利用者と事業者の対等な関係に基づく「契約による福祉サービスの利用制度化」が図られ、各種の利用者支援制度とともに、自己決定の尊重を趣旨とする新しい時代の障害者福祉施策が平成15(2003)年度施行に向けて進められつつある。
昨年3月、本協議会は、新大阪府障害者計画及び同後期行動計画の成果の検証と評価の上に立って、こうした改革の動きに留意を払いながら、これらの計画を引き継ぎ発展させる新しい障害者に関わる行政計画づくりに資するための意見具申の策定を決定し、それ以降、推進協議会分科会として検討委員会を設け鋭意検討作業を重ねてきた。
検討に際しての基本的視点は、先に述べた基礎構造改革への対応とあわせて、市町村における今後の障害福祉施策のガイドラインの性格を付与することであった。 【市町村の障害福祉施策のガイドライン】
改正社会福祉法の規定を引用するまでもなく、市町村を軸とした地域福祉の展開が今後の社会福祉全般の大きな課題である。障害福祉分野においても平成14(2002)年度からの精神保健福祉業務の一部市町村移管や平成15(2003)年度からの知的障害福祉業務の市町村委譲が予定されている。
利用制度としての支援費支給決定の仕組みにも大幅に市町村の主体的判断に委ねられる側面が増えている。障害者福祉サービスは、その多くを市町村が直接的・間接的に提供することとなる。こうした中で、府の障害福祉行政に期待される部分もまた変化し、広域的な調整や人材の養成、専門的な支援などが柱となりつつある。今回、策定を予定する府の障害者計画も従来の府域全域を一つの範囲としたサービス水準の向上から、市町村を中心とした地域の中でのサービス提供体制のガイドラインとしての性格付けが重要である。こうした点から、この意見具申の考え方も随所にそれを反映した内容となっている。 【当事者と共に】
大阪府の障害者施策は、総体として全国の障害者施策をリードしてきたものと自負をしている。わけても誇りうるのは、現在の新大阪府障害者計画策定以降の障害のある当事者参画への実践である。計画策定段階をはじめその後の大阪府の障害者施策の企画・立案段階からの当事者参画は、着実にこの大阪においては根付いてきている。本意見具申の策定のための検討委員会委員の内、当事者など直接関係者は過半数を占める。
こうした委員により集中的に審議したが、障害者施策は福祉サービス提供体制のみならず、保健・医療・教育・まちづくりまで幅の広い施策の総合的体系であるため、検討の対象を絞り、重点的な課題について審議・議論したため、すべてを網羅する意見具申の内容とはならなかった。
しかし、ここに盛られた数々の提言は、障害のある当事者委員などの生活実感から発せられた意見も多く、そうした意味から「障害者とともに」「障害者の立場に立って」策定した意見具申であると自負している。
最後に、ここに盛り込まれた数々の意見について議論を進めている際、委員全員に現在の大阪府の財政状況が意識の片隅を占めていたことは事実である。
障害のある当事者自身の発言にも、施策の再編成を検討すべきであるとか、ヒヤリングをした市町村職員からも、一番の課題は財源の確保であるとの意見も発せられた。
障害のある当事者委員をはじめ審議に当たった全員が、現在の大阪府の現状を憂慮しつつも、すべての障害者が地域で暮らすにはまだまだ困難な状況が存在するのも事実であり、ここではさまざまな意見を提言している。ここでの意見を、今後公的な財源と仕組みのみで構築することには、困難が伴うであろう。障害者団体をはじめとする当事者組織やNPO、ボランティア、市民などと行政の協働による解決の道を目指さなければならないと考える。
障害者の「完全参加と平等」は、目指すべき山の頂であるかもしれないが、着実に目指さなければならない頂であり、ここでの意見はそれへの道筋である。したがって、大阪府にはその着実な実施を強く望みながら、あわせて府民・関係者には障害のある府民の願いを理解していただくこととともに、障害者自身の今後の社会参加への意欲的取り組みに対しても支援をお願いするものである。 |
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