優しき挑戦者(阪大・ゲスト篇)

第3次大阪府障害計画策定にむけて意見具申―人が人間(ひと)として普通に暮らせる支援社会づくり―
大阪府障害者施策推進協議会(2002年6月7日)

第7章.国の障害者施策に対しての提言

1.「障害者基本計画」策定にあたって

 社会経済の状況が不安定な今、高齢化や離職によって収入の道が閉ざされた障害者が、グループホームをはじめ在宅福祉サービスを受けながら、「障害者プラン」がめざす地域での暮らしを確立していくためには、所得保障としての年金あるいは改正の動きが出始めている生活保護制度の改善と支援施策を提供する地方自治体の財源の確保が基本的な課題である。

 その前提に立って地域での暮らしの充実という現「障害者プラン」のさらなる発展をめざした新しい「障害者基本計画」を見据えて、今後の障害者の地域支援の実現に向けて以下のように提言する。

 まず、今後の国の「障害者基本計画」は、本意見具申でも述べているように国全体として各種の制度を○○ヶ所、○○人分整備するといった考え方ではなく、障害保健福祉圏域またはもっと小さな地域を設定の上で障害者施策に関する地域福祉のデザインを示すことが重要であると考える。

 このデザインは、全国どこでも同じ顔を求めるのではなく、地域特性に見合ったサービスの内容と組み合わせが可能な設計が望ましい。こうした「地域を念頭に置いた」計画の性格付けは、利用者にとって身近で利便性の高い資源配備にもつながるものと考えられる。「障害者プラン」にある「地域で共に生活するために」の基本視点をさらに発展させるためにも、こうした考え方が重要であると考える。

 支援費制度の創設を契機に、国は旧来型の入所施設の建設を抑制する方向にある。これは、府県全域からみた待機者の解消を第一目的とするのではなく、地元市町村の意向に沿った地域バランスを考慮した整備に重点を置く動きであると考える。これらの動きは、家族や友人のいる出身地域から離れた施設へ措置することの是正でもあり、ノーマライゼーション理念の真髄である「社会関係の維持・強化」の観点から、今後とも重要な意味を持っており、さらなる地元市町村の主体性の確立を求める必要がある。

 以上の点を踏まえて、今後の入所施設の建設や地域での居住の場の整備については、次の点を考慮すべきではないかと考える。

@一元的なサービス提供型の施設形態ではなく、居住部門としての福祉ホーム、日中活動やトレーニングの場としての通所型施設、地域と施設の接点となる支援センター部門を配備するといった、複合的な機能を持つ施設のあり方について検討すべきである。
A協議に際しては、地元市町村または障害保健福祉圏域内市町村のその立地と機能に対する基本姿勢を、現在にも増して重視する必要がある。
B優先協議事項として、大規模型施設の小規模化、地域分散化の視点を踏まえることが必要である。
C福祉ホームとグループホームは、ともに障害者の暮らしの場であるにも関わらず、現行制度上、福祉ホームは建設補助があり、グループホームは利用者負担が原則となっている。新たな制度を創設するのではなく、福祉ホームの定員のさらなる小規模化や複数分散化などの規制緩和策を検討し、福祉ホームとグループホームの位置づけを相互に近づけるなどの検討が必要である。
D都市部での住宅事情から、最低定員4名のグループホームについても3名に引き下げる、あるいは近隣での2名ホームの複合型などの規制緩和の検討が必要である。

 このような具体的改善をはじめ、先に述べた新しい「障害者基本計画」の性格付けにより、地域の中での生活と活動の場の展開が望まれ、逆にこうした展開が図られなければ支援費制度における「地域移行の重視」は、掛け声のみに終始する可能性があると考える。

2.障害者差別禁止法の制定について

 昨年8月、国連・経済的、社会的、及び文化的権利に関する委員会から「障害者に関連するあらゆる種類の差別を禁止する法律の制定」勧告を含む日本政府に対しての最終見解がなされた。

 この見解には、障害者のみならずさまざまな事案に対して勧告がなされているが、本意見具申の随所で触れているように障害者を取り巻く日常的な蔑視から地域をあげての施設建設の反対運動まで、その偏見・差別の状況には、憂慮すべきものがあると考えている。

 差別意識は、心の問題であり法律で規制は出来ないという意見もあるが、悪質な扇動や行為に対しては、法的な規制が必要であり、事後的な救済としての人権擁護法とともに、最終見解の趣旨を尊重した障害者への差別を禁止する国内法の整備について、積極的な対応を期待したい。

おわりに・へ

▲上に戻る▲

ゲストの部屋・目次に戻る

トップページに戻る