優しき挑戦者(阪大・ゲスト篇)

「薬害を防いだ研究労働者〜この薬は誰にものまされへん」 2002.11.6 午前
大鵬薬品工業生体防御研究所主任研究員:北野静雄さん

(記録と編集:ボランティア人間科学講座・井原真由子さん、山本雅子さん)

−本日のゲスト:研究一筋から、自浄のホイッスルへ―

ゆき:  今朝の朝日新聞一面に、「自浄のホイッスル 内部告発者保護」という解説つきで「公益通報者保護制度」を新設する話が報じられています。このような制度があって実効をあげていたなら、サリドマイドによる障害も薬害エイズも被害を最小限度にとどめることができたことでしょう。では、製薬企業の現場の人たちは、これまで、どうしてきたのでしょうか。きょうは、製薬会社の内部から発ガン性のある薬が世にでることを食い止めた方をお招きしました。ユーザーの身になって勇気を出す人たちを保護しようという法律ができようとしている日に、北野さんをお招きできたことをとてもうれしく思っています。
 研究一筋だった方が、どういうわけで労働組合の委員長になったか。『内部告発』という、その言葉だけで裏切り者といわれていた時代をどう乗り越えてこられてきたか。質問時間を20分くらい残して、お話をしていただこうと思います。もともとが研究者なので、スライドをたくさん使う癖がおありだとのことです。スライドやOHPをたくさん交えながら話していただこうと思います。難しい科学用語はできるだけ使わないようにお願いしてあります。「世直しの人間科学」的な側面に点に絞ってご経験をお話いただけると幸いです。

―北野さんの意外な!?大学生時代―
北野静雄さん

北野:  みなさん、おはようございます。今53歳になるんですが、今から25年位前に阪大の蛋白研究所のほうに会社から内地留学していたこともありまので、懐かしい思いもしております。まず、私の紹介をしたいと思います。中年もどっぷり中年で、1974年に大阪市立大学の理学部修士を卒業しました。生物学専攻で、本当に何も考えずに製薬会社にはいることをなんともおかしいことと思わずに、ただ試験管を毎日ふれて、自分の好きなことがやれてご飯が食べられる。もしできれば論文がだせる。そういう風に何も簡単な気持ちで製薬会社に入りました。

 1974年というのはどういうころかといいますと、大学紛争が終結に向かっていた後でありましたけど、阪大もそうでしたし、大阪市大も、京大もいたるところで大学紛争をしていた時代に、私は大学生活を送っていたわけですが、お恥ずかしいながら、全く大学生運動はせず、パチンコと麻雀にふけっていた四年間でありまして、これではいかんということで一念奮起して、大学院の二年間だけは一生懸命勉強したつもりですが、ほとんど勉強せずに学生時代が終わりました。製薬企業に入りながら、当時問題になっていましたスモンやクロロキンとか薬害の問題は対岸の火事というような気持ちでして、自分自身が薬害に関わるなんてさらさら考えたことがありませんでした。そういうこと私の紹介とさせていただきまして、本論に入りたいと思います。

―不況に強い製薬会社 日本国民は薬好き!?―

北野:  「製薬企業」というのはどういう企業かといいますと、日本国民は薬好き、そういうことが背景にありまして、そして国民総健康保健制度が充実していますので非常に医薬品産業は他の企業とくらべて不況がない。ずっと戦後から今に今にいたるまで伸びてきた企業であります。そういう企業に入りまして特に日本は薬好きで、1975年に2兆円が薬の総売上でありましたけども、10年後の1985年には4兆円、二倍になっております。そして1998年、ちょっと古いですけど4.7兆円、すこし落ち込んできましたけどもやはり順調に伸びてきている産業と考えられます。

 そのなかで私は大塚グループの大鵬薬品に入ったわけですけども、大塚グループといいますと、オロナミンCとかねポカリスエットとかねそういうのは皆さんご存知でしょうが、主力は医薬品、お医者さんが使ってくれる薬を作る大塚製薬。それから他にもありまして、大塚化学、殺虫剤を作っているアース製薬、そして大鵬薬品。それからワインを造っているところもありまして、いわゆるたくさん会社があるのですが、主要25社という風に言われています。

―知られざる優良企業の実態―

北野:  その大塚グループの一つとして大鵬薬品があるのですが、そこに今から27年前に入社したわけです。後で労働組合の話が出てきますので労働組合の話もしますが、大塚グループ25社には労働組合は全く存在しませんでした。で、大鵬薬品は資本金2億円。2億円といいますと、大阪市内の町工場くらいの資本金ですね。そのたった2億の資本金の大鵬薬品が年間総売上が1000億、純利益が200億、これをずっと維持しつづけています。これもみてみると、誰がみても超優良業。さすがに大塚グループ大鵬薬品に勤めている人は労働条件もいいんだろうな、たくさん給料をもらっているんだろうなと皆さんも想像されると思いますが、従業員が2100名前後、製薬企業のランキングからいけば17位から20位あたりをうろついてまして、いわゆる中堅企業、超優良企業の中堅企業と言えると思います。

 入社してからしばらく経つんですが、労働組合の結成前後の話にまず入りたいと思います。今から21年前になります。その頃は今紹介したように大鵬薬品が優良企業だったのに関わらず、2296時間労働。これは皆さん分からないと思いますが、当時の製薬企業の平均時間が200時間をわってましたから、約300時間近い、年間労働時間が長かった。だいたい8でわると、一ヵ月半以上働いている結果になるわけですが、長時間労働。それから労働組合がありませんから、サービス残業の強制、始業時間前の草抜き、体操、そして後につきますけど自由にもののいえない労働環境にありました。スライドをお願いします。

 これは大鵬薬品の本社ビルです。非常にきれいなビルで非常にいい会社だなと思われるかもしれません。次のスライドをお願いします。残業してもタダ働き。これは組合を作ってからの記事ですけども当時のことをよくあらわしています。3時間以上働いて、やっと残業手当てをつける。見た目には素晴らしい会社ですけども、内部で働いているものにはやはりこんなことが行われています。次のスライドをお願いします。

 大鵬薬品というのは徳島にあるんですけども、非常に大きい敷地を手に入れてまして、その敷地の中に化学薬品、もう医薬品を作った有機溶媒などをですね、垂れ流しにしていた。後でわれわれも改善要求するわけですけども。オロナミンCやポカリスエットなどは吉野川のきれいな水で作ってるわけですが、横でわれわれ会社が廃液を垂れ流しにしている。次のスライドをお願いします。

 これをみていただいたら一番を分かっていただけると思うんですうが、これは御殿ですね。これは鳴門にあります『大塚潮騒壮』。これは実は従業員の厚生福利施設なんです。すなわち、仕事が終わって疲れたらですね、みんなで麻雀いこうよ、今日宴会しようよという風にですね使う従業員の厚生福利施設です。総工費33億円、年間維持費10億円。そう聞くと大塚グループの社員はこんな御殿で会社の豪勢な厚生福利を受けてるんだろうなと思われますが、実はこの御殿はお医者さんとか大学教授、それから問屋さん、外国からのお客さんなど接待場所として使われていまして、私たち従業員が使えるのはこの横にありますプールと駐車場だけでありました。次のスライドをお願いします。

―労働組合存続の難しさ―

北野:  これは若き日の私ですが、御殿の前ですが、この門が1億円。となりにいるのは幼かった次男です。なぜ門の外にいるかというと、中に入れてくれないからなんですが。そういうような対外的に見れば、非常に素晴らしい会社のように見えますけども、実はサービス残業が強制されていたり、中で自由にものが言えない環境がずっと続いてきました。大塚グループには労働組合がないといいましたが、労働組合ができてもつぶす会社でして、さきほどでてきましたグループの中にアース製薬という会社があるんですけども、アース製薬の中には労働組合がありました。科学一般の強い組合があったんですけども、会社が左前になったときに大塚製薬が資本参加を名乗りでます。その時の条件が組合を解散することだったんですね。

 「労働組合を解散しなさい、解散したら資本を出して助けてあげますよ」という条件でした。労働者は反発するわけですけども大塚製薬はですね、汚い手を使いまして、労働組合幹部に金を握らせます。一部の幹部に渡すわけですけども、その幹部ももらったかもらってないか分からない時分にあくる日に会社は発表するわけですね。「幹部が会社から金を受け取った」すると組合はですね団結権がどんどん阻害されて、幹部不信になる。労働組合が弱体化する。最後には労働組合がつぶれる。それで、アース製薬をのっとったわけです。

―とことん嫌い『労』とは―

北野:  それでアース製薬にニチバンというセロテープの会社がありますがこれも大塚グループが資本参加をしたんですが、今から22年前に資本参加するんですが、労働組合を解散することが資本参加の条件。そこは一生懸命頑張りまして、アース製薬のことを知っていましたので組合はつぶさないと頑張ったんですが御用組合がつくられ分裂させられます。その争議自体は勝ったんですけどもここでみても大塚製薬の労働組合嫌いが分かる。もっと言えば、われわれから見れば労働組合の『労』だけではなく、労働者の『労』も嫌い。労働金庫の『労』も嫌い。全労災の『労』も嫌い。とにかく『労』が嫌い。われわれのことは何かというと『従業員』であります。

 社主のことは『おやじさん』とよぶ。そういう風なとことん『労』が嫌いというのが象徴されていますように労働組合が全く嫌い。できたら潰す、あるところは潰していく。そういうような中でした。そういう中で大鵬薬品でですね、何も知らない私たちが経験することになるんですけども。もちろん大鵬薬品の労働環境というのは劣悪でありました。そういうとこにダニロン事件が起こって来ます。次のスライドお願いします。

―ダニロン事件!今明かされる恐怖の事実―

北野:  研究開発ですよね、このダニロンっていう薬はどういう薬かというと、スペインから導入されましたリュウマチの薬、痛み止めの薬ですね。だからおじいちゃん、おばあちゃんが長期間ずっと飲み続ける薬だといえます。次のスライドをお願いします。

 ちょっと見にくいかも知れませんが、この薬のパンフレットです。いいことが書いてあります。ものすごく効きますよって書いてあって、タイヤク性が高く安全で、長期服用が可能な薬です。つまり、安全です、長期使ってもいいですよっというパンフレットをつくってお医者さんに使ってもらおうとそういうようなパンフレットを会社は作りました。それで、次のスライドお願いします。

 これは化学構造式で、あまりみなさんに興味ないかもしれませんが、フェニルブタゾンという母核にホルムアルデヒドが発生する基がつけてあるんですよね。ホルムアルデヒドとはそんな書いてありませんよ。ホルムアルデヒドは発がん性がありますから、そういうことは書いてませんが。ここについているんです。これは誰も厚生省も見抜けなかったんですが、こういう化学構造をしています。次のスライドをお願いします。

 いいこと尽くめですね。これもパンフレットですね。いろんなデーターがあるんですが、これは特殊毒性のパンフレットの構造式なんですが、抗原性ありません、ヘイ原性ありません、がん原性ありません。ヘイ原性というのは、遺伝子を傷つけるかどうか。遺伝子を傷つけるというのはがん原性がある確率が高い。癌原性がたかいというのはがんが発ガン物質ということですけども両方ともそういうことはありませんよということを書いてですね、お医者さんに使ってくださいと説明しました。しかしながらこのダニロン錠に関しては、隠された三つのデータがありました。次のスライドをお願いします。

 これは、闇に葬られたデータですが。これは遺伝子を傷つけるかどうかというヘイ原性試験ですが、サクシスゾンこれはダニロンですが、ダニロンの量をあげると、例えばこれどっちからみてもいいですが、120分を見ましょうか。そうしますと、何もいれないと119.7のやつが、サクシスゾンつまりダニロンをいれますと二倍以上に上がってきています。これらになると3倍を超えています。遺伝子を傷つける確率が3倍もある。つまり遺伝子を傷つける薬であるということがいえるんですが、都合が悪いので会社はこれを隠します。先ほどホルムアルデヒドを見つけたといいましたからあれですけども、ダニロンを飲むと腸の中でホルムアルデヒド、ホルムアルデヒドというのは水に溶けますとホルマリンですね。ホルマリンというのはお医者さんがよく死体解剖のときにホルマリン漬けといいますが、もうまるっきりの毒ですね。発ガン物質といってもいいと思います。そういうものが腸の中で発生し、肝臓の中で門脈という血管中にホルムアルデヒドが検出される。このようなデータも隠しました。次に決定的なスライドが出ます。次のスライドをお願いします。

―マウス実験にみるダニロンの恐怖―

北野:  これはマウスの発がん性実験です。さきほどパンフレットの中には発がん性はないと言う風にかかれてましたが、本当のデータはどうだったんでしょうか。これは、雄のネズミで好けどもダニロンを餌にまぜてすわけですが、これはダニロンを交ぜなかった分、すなわち対照群、自然発生的にこのような前がん病変がぽつぽつ出てきます。だけどこの中で自然発生的に現れるのはこのくらいと思っていてください。はい、次のスライドをお願いします。ダニロンを0.1パーセントまぜると、なんかちょっとこう増えてきたなという気がします。これはですね、結節性増殖層とかいてますが、肝臓の病変です。結節性増殖層とうのはがんにいたる前がん病変。だからこのままほってたら、がんになるんですね。なんかすこし増えていました。はい、次のスライドをお願いします。

 これ、0.5パーセントダニロンをまぜました。もう確実に増えてまいりました。もう、肝臓の前がん病変が多発してきております。はい、次のスライドをお願いします。これ、1パーセントです。もう、全例が前がん病変を発生させていきました。これは、会社にとったら都合の悪いデータですよね。もう、こんなデータだせば絶対許可されないのが当然です。なんぼ厚生省が抜け穴にしてもこれだけのデータを見せられると、この薬を長期で安全とはいえませんよと。一回くらいならまだしも、リュウマチの薬として長期にこんなのだめですよ。誰でもいうと思います。私もいうと思いますが、こういう都合がわるいデータなんです。当時、厚生省に届ける医薬品の正常許可のために様々なデータが必要でしたけども、発ガン実験は不必要でした。やれば、あればいいですよというのが薬事情勢でしたので、この都合の悪いデータをどうしようかということで大きな議論になります。次のスライドをお願いします。

 それで、この発がん性実験をやった研究者がまとめた報告書です。当時からワープロがありましたのでワープロで報告書をつくるのですが、これは手書きですよね。SB、ダニロンは肝腫瘍、肝臓の腫瘍ですね、肝腫瘍を発生させる物質が明らかに示唆された。当時の研究者、我々の同僚がこれは危ない薬だと当時の報告書に書いてあるんですね。これは手書きのまま闇に葬られるわけですけども。次のスライドをお願いします。

 あまりに心配になって会社は徳島大学の病理学の先生、この先生大塚先生とたまたまいって大塚グループとは関係ないんですが、大塚教授がこのダニロンの発がん性実験を調査します。そしてですね、治療薬としては難しいよと会社にいったそうです。内部でも危ない、外部の専門家も危ないと言った薬がなぜこうして世の中に出てくるのかという問題になってくると思うんですが、当然私たちは、反対をしました。こんなダニロンを世の中にだされへんという風に100人聞けば100人の外部の研究者たちが叫びました。

 しかしながら、会議が進む中でダニロンが危ないといっている人たちはどんどん会議から追い出されていくんですね。どんどん不利益を受けていく。それで、そういうことをいってると君には将来はないよと脅しをかけていく。重大なこの薬を販売するかどうかというトップの会議が開かれました。副社長を含めたトップの会議ですね、この薬を厚生省に申請する。この販売を申請する。この都合のデータは、提出義務がないから隠すとはいいませんが出さずに申請するということを決定します。そうなってくると、我々研究者としてこんな薬はわるいとみんな思っていますから納得できない。反対しようとするのですが、トップの会議で販売することを決定するのです。ところが、トップは副社長だったのです。だから、そういう研究者たちがいろいろ話をしていく中でダニロン研究会というこういう薬を考える会というのを地下組織としてつくるわけですが。

―ダニロン販売反対を呼びかける三つのグループの誕生―

 そこでですね、社長はこのことを知らないはずだ。社長ならこの薬を止めてくれるだろう、ということで社長に直訴しようとする直訴グループが現れます。で、もう一つのグループは、このダニロンとかのデータを厚生省や新聞社に投稿したらいいのではないかという投稿グループが現れます。そしてもう一つのグループが私たちであったんですが、研究者が自由にものを言えない労働環境が問題だと。悪いデータを悪いといえない労働環境こそが問題であってここを直さない限り、こういう問題はなんでもでてくると判断した労働組合結成グループ、私はそういうふうにあまりかたくは思っていなかったのですが、そこら辺だけは感情的にわかっていたのでしょうか?

 このあと、社長に直訴しようという直訴グループが動きます。社長が東京の本社から徳島の研究所までくることがたびたびありましたので、直訴状を書いて直訴しようという日の前日にこのダニロン研究会の1人から電話がかかってきます。「社長も知ってるよ。販売をいいよっていったよ。」という情報がはいった途端に直訴グループは解散します。このデータを厚生省にわたした、あるいは新聞社に投稿したという事実は21年間、ありませんでしたので、投書グループも結局は何もしなかった。

 残ったのは、私たちですが、まず厚生省に任せよう、ホルムアルデヒドが発生する薬は厚生省薬事審議会の偉い先生がいっぱいこの薬を審査するわけですから、厚生省では見抜くだろと。ホルムアルデヒドが発生するということは発ガン性物質がでるということだから、発がん性があるということだから発ガン実験をやりなさいというふうに言うのではないかと研究者たちは期待しました。

 しかしながら厚生省は素通りしました。販売してもいいよとそれだけでした。厚生省も見るだけでした。そうなってくると残るのは内部の研究者たちだけ。直訴グループも投書グループも何もしない中で労働組合結成グループだけが残りました。私たちも非常に悩みました。一年この問題で悩みました。どうしようかと。もちろんこんなことをすれば自分たちの研究生命も生活もなくなるかもしれない。家族も子どももいましたから将来はないかもしれない。でもこんな薬世の中にだされへんやろという長い議論の中で「労働組合でよろう、労働組合だったら法的支援も受けられる。」という中でこのまだ当時労働組合が元気だった時代でいたので他の労働組合の支援も受けられるかもしれないというのも一つの理由でした。で、加盟をよびかけました。当時研究者たちが120名ほどいたのですが、80名ほどの研究者たちが組合に加盟を名乗ってきました。そこでこのダニロン事件に対して我々は行動するのですが、次のスライドをお願いします。

―労働組合の要求書:北野さんたち立ち上がる!!―

北野:  この私たちが労働組合を結成してもちろん労働条件の改善を要求書の中にかきましたが、その中に二つとしてダニロンの販売を中止せよ。もう一つはダニロンの隠されたデータを公表せよ、この二つを要求書の中にいれて組合を結成いたします。で、このときにでた新聞記事ですけども、これは本当に私もびっくりするほどの記事で当時大きく報道されました。次のスライドをお願いします。

 この3面ですが、ここまで書いてくれるかと思ったんですけども『良心が許さなかった。企業の倫理を乗り越え、黙殺に抵抗にでる、ついに立ち上がる』と月光仮面がでてきそうな感じで、当時われわれは…(聞き取り不能)…でしたけども、国民世論に訴えるつもりでこう書いてくださったんだと信じています。内部の我々の…(聞き取り不能)…さとは裏腹にですね、大変大きな問題として世論に訴えてくれました。多くの励ましもありましたが、多くの誹謗・中傷もありました。そのダニロンはそれからどうなったか。このダニロンは今から21年前なんですが・・・次のスライドをお願いします。
 ダニロンの前全面収を厚生省が命じます。薬自審は今まで再審査なんてしたことないんですね、薬の。それで薬自身ができて初めて再審査して駄目であれば許可も取り下げますよと結論を出します。その結果ですが次のスライドをお願いします。
 これは厚生省の結論です。ダニロンを中止せよというんじゃなくて、ダニロンの製造を凍結しときなさい。その間に発がん性試験を第3者機関でやりなさいという命令を大鵬薬品に出します。一応発売されて20日くらいでしたので、1人も飲まずに回収されたんです。発ガン実験を命じられるわけです。一応ダニロンはこの時点で発ガン実験が第3者機関で5年に及んで行なわれます。しかしながら第3者機関じゃなくて、内部のダニロンの研究に関わってきた人間が第3の機関で発がん性実験をしているということが分かりました。ぞうしたらですね、まずこの実験はシロとだされる、というふうに我々は考えました。OHPお願いします。

―内部告発の恐怖―

北野:  そのときですね、ちょっと見にくいので申し訳ないですが、大塚製薬、大塚グループの社主の大塚正仁がもう亡くなりましたが、シロとでたら全責任をとってもらう。すなわち開発費が30億円かかっていますし、まあ僕らのくびだけではすまさへんぞと。とにかくお前らから開発費全部とったんねんということを新聞紙上で発表します。おまけに発がん性試験が開始されてシロとだそうと、その責任を組合にとらせようと。こういう意図がありありと報道されて、これは国民の命に対する挑戦だと私は思いました。私たちはこれに対して、発がん性試験をやろうということで様々な大学の研究者の方にお願いにあがりました。すみません、スライドをお願いします。

 これ、5年後なんですがいろんな市民の方のカンパとか、それからダニロンがありませんからダニロンを合成してくれた研究者たちもいますし、実際実験をやってくれたのは奈良県立医大の柳先生です。私は柳先生に一度も会ったことがないんですが、私はこれを科学としてダニロンをよりたいとおっしゃってくださいました。発がん性試験ではなく、発ガン促進試験、発ガンを促進する働きがあるかどうかいう研究を行なってくれました。その結果、発がん性の疑いだけではなく、発がん促進作用もあるという結果が出てきました。これが癌学会で発表されました。それで薬事法ではですね、こういう発表が出されてこういう事実が出ましたら30日以内に厚生省に届けなくちゃいけないんです。ところが大鵬薬品はもちろんこのことを知って柳先生のところまでいっているわけですが、このことを厚生省に報告しませんでした。結局データ隠しを再びする結果となりました。次のスライドをお願いします。

 ついにダニロンの製造販売の断念。一応凍結していましたからダニロン自身は誰にも飲まれてないのですが、もう販売も製造もこれからもしませんということを会社がとうとう5年ぶりに1987年、6年ぶりですね、決断しました。この裏にはですね、先ほど簡単に話しましたが市民の人たちのカンパとか、良心的な研究者たちが様々に動いてくれた結果だと思います。それで、大鵬薬品はこのダニロン事件というデータ隠し事件を起こすわけですけども、こうやっていうと非常に質の悪い会社である大鵬薬品がとびきり悪い会社だからそういうことをするのだというふうに思われるかもしれません。しかし、大鵬薬品のデータ隠し事件が起こってからどんどんデータ隠し事件が起こってきます。次のスライドをお願いします。

―次々に発覚!データ改ざん事件―

北野:  これはミドリ十字、あの今までのHIVの事件ではないですよ、これは人工血液の実験ですけども1982年一年経たないうちにデータ改ざんを行ないます。人工血液をおばあさんに投与するんです。おばあさん亡くなるんですけども、大丈夫でしたというデータを作って厚生省に報告します。これ82年、一ヶ月も経たないうちに日本ケミファのデータねつ造事件です。ノルベダンという新薬を日本ケミファはどんどん販売したんです。我々から見ても異常に早い新薬申請でした。で、そう見てみると、日本大学の講師、日大の先生の名前で臨床試験を行なわず、データをねつ造して厚生省に許可されていたんです。今やったら、手作りというのは好まれますけども、データの手作りというのはどうしても許されないと思うんですが。ここで関与してきたのが大学ですね。ここでは日大の講師の人が臨床試験を行なわずにやった。もちろん日本ケミファの人は知ってるのですが・・・。次のスライドをお願いします。

 これは明治製菓で、お菓子の会社ですけども、先ほども言いましたけども製薬産業はおいしい産業ですから明治製菓も抗生物質、これは整腸剤ですけどエスクラーゼという薬を販売するのですが、昭和大の教授に頼んで改ざんするんです。これは犬がばたばた死んだんですけど、みんな生きたと言うデータを作って厚生省に許可申請されます。はい、次のスライドお願いします。

 これ、今までは大学でしたけども今度から行政が関与した事件です。国立衛生予防研究所、国立予研、産業スパイ。これ何のことかといいますとある薬が新薬として厚生省に申請されれば、その資料の写しが国立衛生予防研究所に行くんですね、一つ。そこからですね、藤沢がですね資料を盗んでおったという事件です。何でこんな他の会社の資料を盗むかというと、先ほどデータの手作りといいましたけども新薬のデータが入れば、後は15と書いているのを14と直せばいいわけです。 あと13とかいてたら12と書いたらいいんです。ちょっと違うデータを書けば実験をせずに新薬のデータができてしまう。すなわちこの新薬の資料がいくらで売られていたか知りませんが、当時コピー100枚程度で1000万くらいと言われていましたが、それでも買う。それはもうデータねつ造できるから。何十億という開発費が要りませんからこういうことが行なわれてきたことが発覚します。これはもう、行政も関与しています。次お願いします。

 これはまた後に説明しようと思うんですけども、ブーメラン現象でまた大鵬薬品に戻ってきます。避妊薬、マイルーラで後で言いますけども市販の避妊薬に催奇性、体質毒性ですね、それから発がん性の疑いがありました。これはですね、アメリカで非常に危ないという論文がぞくぞくでてたにも関わらず、それを知らんというふうに知らんぷりしてですね、マイルーラを販売します。私は簡単にデータ知らんぷり事件といっているんですけども。次のスライドをお願いします。

 これは扶桑薬品のビタミンK2事件です。注射薬ね。試験せずに許可申請。で、これ注射薬なんですけれども、注射するとですね、中で血が溶血するという反応が、で、筋障害が出る恐れがあるということが後で分かるわけですが、全然何の試験もしていない。それで試験はしていないけど、データはあるはずですから、データを捏造しているという事件。すみません、OHPを…。

 これはチバガイギーのデータ隠し事件ですけども、この副作用でですね、いっぱい死んでいるという報告が入っているのにも関わらず、厚生省に報告せずに、売り続けていた事件です。この薬もまあ止まってしまうわけですが。次のスライドをお願いします。すみません、OHPです。

 これはあの、大鵬の親会社の大塚製薬の今度はデータ捏造事件が飛び火しますが、お医者さんの名前を勝手に使って、判子をどこかで買ったらしいのですが、お医者さんの判子を。で、データを捏造して厚生省に届けていたということで、データ捏造事件です。

 はい、次もOHPです。これが、ちょっと皆さん記憶にあるかもしれませんけども、ソリブジン事件。これは94年です。試験中に副作用確認。ねずみがですね、抗がん剤とこのソリブジンを一緒に飲ませたらですね、ねずみが全て死んだ。そういうデータがあったんですけども、そういう動物実験をですね、全然知らせずにお医者さんが使ってたと。で、これは抗生物質ですけども、当然がん患者にも抗生物質使いますけども、がん患者の方は抗生物質を投与されているわけですね。あ、すみません、制がん剤が投与されているわけですね。で、それに感染症にかかったがん患者の方はソリブジンを飲むとばったり死んでしまう。ばたばたと死んでしまう。そういう事件でしたが、それはもう動物実験ですでに分かっていたわけですね。それを知らせずに隠していってたという事件でした。

 で、こうして見ますとですね、大鵬薬品が日本で最初のデータ隠し事件として発覚いたしましたが、このたった10年ちょっとの事件ですけれども、まだまだずっと続いているんですけれども、これを見てみますと、製薬企業が持っている、何か体質ではないのか、と。それはですね、製薬企業だけではなくて、それを許している薬事行政、そしてそれに大学も関わっているんではないか、ということがおぼろげながら浮かんでくる。構造としては製薬企業、大学、行政という癒着構造がある。そういうことが、これだけ事件が出てくると想像ではなくて、確定として言ってもいいくらいではないかと思います。

―薬の開発はどのように行なわれるのか―

北野:  今までそういう事件を見ていただきましたが資料の中にですね、OHPの中にもありますが、ちょっとデータをまとめてみますと、今の事件をまとめてみますと資料の中にもありますけれども、薬の開発について少しだけ簡単に。企業では、薬の安定性試験という前臨床試験というのをやります。よく効くか、そして安全かというねずみを使ったりして「前臨床試験」をやります。そして動物実験でOKが出ますと、「臨床試験」。これは大学とか病院でやります。で、それでもOKと、良く効くと、人でも良く効くということが分かれば厚生省に販売許可を下さい、と申請し、薬事審議会に答申をして厚生省が認可して、そして販売ということになります。

 次に販売した後も安全かどうか、売ってからも調査しなさいということで「市販後調査」、これも臨床試験のひとつで「フェーズW」といいます。こういう一連の開発の流れがあって、もし市販後調査で、効かないとか危険だということがあれば再審査して、駄目な薬はここで省きますよと、こういう薬事行政になってまして、いくつもにバリアがあって監視する法律も人もいるわけですが、先ほどの事件をまとめて、そこにいれてみました。これだけですね、事件が至るところで起こっている。販売後も起こっている。すなわち、この薬事行政がどれほど抜け穴であるか、ということがこの表で分かっていただけるだろうと思います。このまとめは今から10年前くらいのまとめですが、今はもちろんだいぶ変わってるんです。だいぶ良くなってきてるんですが、やはり全部が改善されたとは今でも言い難いんではないかという風に思います。

―告発者の行方〜労働組合VS会社を守る会〜―

北野:そして、次に、じゃあダニロンは止まった、製薬企業の不正事件も世の中が知って行政もだんだん変わりつつなりましたけれども、告発した内部の私たちは一体どうなったのかということの問題に移っていきたいと思うんですが。まず企業が、大鵬薬品がやったことは何か。データを隠したことを詫びるんではなくて、まずこのデータを漏らしたやつは誰や、ということで秘密漏洩調査委員会というのをですね、会社が設置します。で、仕事もさせずに、誰がこのデータを漏らしたんやということを一人づつごぼう抜きに引っ張ってですね、自白させるんですね。で、そのうちに私の名前が出てきてるわけですが、まあそれは置いておいて。そういう秘密を漏らしたのは誰だということに集中をします。そして処分をしようとするのですが、それからこの告発をした組合を徹底的につぶす、そういうことが行なわれます。レッテル貼り。赤、過激派、暴力集団、新左翼ということがいっぱい言われました。次のスライドを…。

 80名いた組合員を脱退させようということで、会社を用意した脱退届けを見本に書かせてですね、組合に送り届けてきます。次のスライドをお願いします。これは小さくて分かりにくいんですけれども、組合の対抗組織としてですね、組合が会社をつぶしよる、だから会社を守らなあかん、ということで「大鵬薬品を守る会」というのを会社が作ります。で、そこには恐ろしいことが書かれています。どんなことであれ、私たちの生活を守らないことには生活の基盤がなりたちません。つまり薬害を起こしても何をしてもいいけど、自分たちの生活を守ることのほうがまず大事やと、会社を守らなあかんと。そういうことを第一項に出す組織でした。もちろん組合を辞めて、この中に入れ、と。

 我々は80名を集めるのに一年程かかりましたけど、1週間で95パーセントの従業員がこの「大鵬薬品を守る会」に組合を辞めて入らされてしまいます。脱退工作です。次のスライドをお願いします。で、これはビラを配るとですね、ビラ配りは違反やということで警告書がでます。これ100枚くらい出まして、1枚くらいならあんまり不安にも思わないんですども、100枚くらいもらうとね、やっぱりなんかこれ処分しよるな、と首になるな、と。もちろん首は覚悟してたんですけども、100枚くらいもらいました。ビラ配りの警告書です。

 次。で、実際ビラを配っているんですが、これは食堂です。これはビラが宙に舞ってますけれども、これは宙に舞っているところがシャッターチャンスでたまたま撮れたんですけれども、この組合員が配ったんですね、配った途端ばっと取られてこの手がぱっとこう跳ね上げられてですね、空中に舞ってる絵です。一所懸命、歯を食いしばって配っているところが印象的です。次のスライドを。で、こういう風なビラは読まれずに床に落とされると。一枚も読まれないビラを配りつづける。はい、次のスライドを。ビラを配ろうとすると鍵をかけて中に配らせない。次のスライドをお願いします。ビラを配っている副委員長なんですけれども、後ろに人事の尾行がつきます。で、ビラを受け取る人間をチェックして、受け取るなとゴミ箱に捨てろということを平気でやっていました。次のスライドを。でも組合をつぶすためなら何でもやると。当時私たち組合には私を含めて5名、係長がいたんですけれども、組合員だけをですね、係長から平に降格をさせるんです。もちろん、これも地労委に申し立てをして事件にはしたんですが、昇格差別事件を起こしました。次のスライドをお願いします。

 昇給も差別されます。日干し作戦です。昇給を差別する。11年間で7人、総額で3200万の差別をいたしました。次のスライドを。ダニロンという発がん性の試験の問題が出た安全性試験という研究所があるんですけれども、そこから組合員だけをですね、排除をして、全然違う職種にさせます。次のスライド。で、副委員長、もう一人いるんですが、副委員長を隔離勤務。隔離勤務がどういうものかというと、この人も動物実験の人なんですけれども、動物の住んでいるところに机を運んだ。ですから、1年くらいこの人はねずみと一緒に生活をしていた人で、まあ良く頑張ったなと思いますが、これはもう人権侵害です。人権侵害ということで、人権委員会に申し立てしました。これはまあ、一応1年で解決したんですが、こういう嫌がらせ、隔離勤務がありました。仕事の干し上げ、人間的差別、情報を与えない。これはもう当然行なわれました。

 次のスライドをお願いします。実はまあこれは暴力事件です。これは私です。ビラ配布中にですね、押し倒されまして、しこたま腰を頭を打って救急車を呼んだものですから新聞に載ったんですけども。暴力事件が2件。次のスライドをお願いします。そういう風に、この組合は脱退をさせる、徹底的につぶす。そういうような労組政策が行なわれました。まあ、会社の利益にならない組合はつぶしてやるんだと。そういう政策でありました。で、そういう凄まじい組合攻撃の中で80名おった組合員が、とうとう8名までになります。で、当時は1200名でしたので、8名というのがいかに少数かということが分かります。

―苦しい闘い、そしてマイルーラ事件―

北野:  そういう風に組合はやられっぱなしの中でしたが、その時にマイルーラ事件という、それは先ほどスライドで新聞を見せましたが、マイルーラというのもがどういうものかというと、合成洗剤を主成分とした膣用避妊薬です。女性の膣に挿入をして入ってきた精子を溶かして殺す。で、精子だけ殺してくれたらいいんですが、女性の膣をめちゃくちゃにするだけでなく、あとで出てくる毒性があるんですが、このことについて次のスライドを見せます。これは由紀子さんの出身の新聞社、朝日新聞がこの問題を大々的に取り上げたんですが、マイルーラに催奇性、発がん性があると。で、これは監視する会と消費者団体が販売を中止しろ、ということで会社に申し入れて、販売中止の訴えを行ないます。そのことが新聞記事に載りました。我々もこのことを知って、次のスライドをお願いします。これは刺激性も炎症性もある。こういう毒性が朝日新聞がすごく押しまして、私たちもそれを知りました。そしてこの告発団体から大鵬薬品労働組合に調査をお願いしたいということで依頼状がきました。そこで私たちは労働組合として会社にマイルーラの開発の経緯を明らかにするように要求しました。しかし会社は全く無視した。そこで労働組合が社内のデータをなんとか独自調査に入ります。そうしますと…。次のスライドをお願いします。

 これはアメリカのデータですけれども、これは兎の膣のデータです。兎の膣の顕微鏡写真をこういう風に、がたがたしてるんですがマイルーラの主成分であるノノキシノールを入れるとちょっとここが禿げ上がってます。これの2倍にすると全くここからべろっと禿げ上がってるんですね、膣が。すなわちこういう膣のひだひだがなければならないところを、全くそのバリアをなくしてしまう。すなわち、感染しやすくなるし、もちろん他の異物も入ってきやすくなる。そういう刺激性もあるというデータがありました。次のスライドをお願いします。で、マイルーラは自然に女性のおりものと一緒に排泄されます、という風に書いてあったんですが実は吸収されていたんですね。これは膣に投与して一時間でですね、血液中に最大の濃度、30分ですか、で最大の濃度になってゆっくりしかなくならない。そういう排泄されるんではなくて吸収されるというデータが見つかりました。

 次のスライドをお願いします。これは試験管内発がん性実験です。形質転換、いわゆる正常な細胞が、物質の影響、薬物の影響によって悪い細胞に、悪い細胞というのはがん細胞ですけれど、それになるかどうかということを調べているんですが、主成分のNQ、ノノキシノールというマイルーラの主成分をいれてやると、それの量に応じて悪い細胞に形質が転換された。すなわち、発がん性の疑いも非常に濃いということもデータとして存在しています。こういうデータを全て知りながら、知らんぷりをしてマイルーラを販売しておりました。次のスライドをお願いします。

 これは胎児毒性ですが、これは疫学調査でアメリカのデータでありましたが、これは2.2という数字だけ見ていただいたらいいのですが、胎児、いわゆる手足の不自由な子どもさんのできる先天異常の子ども達が全然そういうのを使わないときに比べて、2.2倍増えるという、これは疫学調査すらあります。これは人の疫学調査です。それも隠していました。次のスライドをお願いします。こういう独自の社内での調査を行なったところ、雑誌記者からインタビューがありました。で、このマイルーラの問題を、こういう毒性があるということを、私はこの雑誌記者のインタビューの中で全部言いました。そうすると…。次のスライドをお願いします。懲戒処分を受けまして、自社製品を誹謗中傷したということで出勤停止の懲戒処分を、出勤停止6日でしたからあまりたいしたことはないんですが、出勤停止を受けました。これも裁判で出勤停止無効の争いをしたんですが、労働組合の社内での戦いは、本当に状況としては苦しい状況でした。一人一人、組合を辞めていくし、組合を辞めなくても、「もうこんな会社愛想つきたわ」ということで組合を辞めずに、会社辞めていくという人もかなり出てきました。労働条件改善と薬害を出さないということが旗頭でしたけれども、ビラも配れない、配っても読まれない、どんどん落とされる、ものも言ってくれない、そういう中で本当にただ社内で追いつづけることだけが戦いだった時期が5年も6年も続きました。暴力も受けたし、やられましたけれども、でもやはり負けてられませんので我々も反撃に出る。やられっぱなしにはならない、必ず反撃をする。いやがらせ、差別があったら必ずメモをする、メモをして抗議をする。団体交渉を常にやっていく。もちろん改善はなかなかしないんですけれども、団体交渉の中でもあほとかばかとかいうことが2時間くらい続くんですけれども、それでもやり続ける。小さな不当労働も許さない。そういう闘いをやってきました。

―会社が変わっていくとき―

北野:  そのようなことでですね、社内の労働条件も7年も8年もやってると、会社もだんだん不思議と組合の言うことを聞き始めるようになったんですね。それまで長い時間かかってましたから、そこまでいってるのかというのが分からなかったんですが、休日が増加したんですね。就業規則すらなかった会社が、就業規則が設置されて自分たちの労働条件をいつでも見れる、そういうようになってきました。そして次のスライドをお願いします。これは快挙ですよね。残業料1億円を支払わせたんですね、会社に。先ほど、ただ働きさせられていたと言いましたね。1億円を8人の組合員がもらったんではなくて、150人ですからたかが知れてるんですが、1億円を会社に未払いの残業賃金として支払わせました。その中には、100万200万もらったやつでも中にはいました。

 150人のうち「会社絶対払わへんよ」「払ったら組合にやるよ」と言ったのがぎょうさんいるんです。でも、150人のうち、一人だけが1万円。1万円、僕の下駄箱にいれてくれました。それ以外は、全員全額もらいました(笑い)。これはまあ人間ってこんなものかなっていうのもありますが。それでも、それでもこれは解決です。たった8人ですけれども、労働条件の問題でこういうことをやって、これ以降ですね、残業したら必ず残業手当がつくようになった訳ですから、非常に大きいことだと思っております。強制労働が廃止されたり、となってきました。社内でもちょっとづつですけれども、少しづつですけれども、組合の主張が正しいということになれば、聞かざるをえないように改善をしていけます。

 この組合は中8人しかいませんから、8名このままおったらつぶされてしまうのは決まってますので、私たちは積極的に外へ出て闘いました。次のスライドをお願いします。で、この組合を助けたらなあかんということで、これは徳島なんですが、大鵬労争を支援する市民集会ということで徳島の市民がですね、まだ8名以上おって、まだ脱退してない人がおったんですが、がんばれということで市民集会をしてくれます。次のスライドをお願いします。で、内部告発者を守れということで、この我々の闘いが日本消費者連盟を通じて国連の諮問機関であります国際消費者機構まで運動が知られるようになります。そこで徳島の中で内部告発者を守れという集会を開いてくれました。その代表者が…。次のスライドをお願いします。えー、消費者機構の代表ファザールさん。ファザール会長はですね、各国代表団とともに大鵬薬品に告発した研究者たちに不利益を受けさすな、というふうに申し入れに行くんですが、これは大鵬薬品の門ですが、門の前で追い返されてしまう。大鵬薬品はこんな失礼なことも当時はやっていました。でも確実に我々の運動は市民の中からも支援される運動としてなってきました。次のスライドをお願いします。

―市民キャンペーンで薬事行政が変わる!?―

北野:  これはあの、中之島祭り。大阪の中之島ね。中之島でですね、マイルーラの販売は止まってませんから、マイルーラの販売を中止させようということでですね、関西の我々を支援する会も含めて、我々がこのマイルーラの危険性を訴えてきました。で、いたるところで祭りがあるたびにこういう催しを全国で訴えてきました。はい、次のスライドをお願いします。…何をやってるかというとね、これはコーヒーの1リットルの瓶、ネスカフェの瓶に合成洗剤をいっぱい並べましてね、合成洗剤の100ppmの濃度、で、マイルーラを一枚いれるんですね。で、そこに金魚をいれるんです。金魚には大変かわいそうなことをしましたけれども、合成洗剤に比べても、もっとも強い毒性を金魚が示しました。マイルーラで金魚が一番最初に死んでしまうと。このことを見てカップル達がどんどんどんどん、このマイルーラを使うのをやめていかれたと思います。はい、次のスライドをお願いします。

 こういう市民キャンペーン運動もやってきました。そんな中で薬事行政もどんどん変わらざるをえなくなってきまして、ダニロンで問題になりました発がん性試験ですけども、これも義務化します。必ず薬には発がん性試験をつけなさい。ただ色々抜け穴があって、確かにざんなんですけども、でも少なくとも発がん性試験をやりなさいという薬事方針が、薬事行政の方針が84年。ダニロン問題が起こってから3年目ですね。次のスライドお願いします。今まで問題になった暗闇の中で新薬承認審査が行なわれてますけれども、審査データを公開します。で、これはちょっと小さすぎて分かりませんが、サマリーベイシスというものをこれから作ります、と審査過程でそもそもどういう審議がなされた、どういうデータをもとにどういう審議をしたかということを明らかにします。そして国民の誰もがそのものを入手することができます。そういう公開の方針。このときはまだ方針だけだったんですが、今ではサマリーベイシス、も公開されるようになってきました。

 で、次にここにはちょっとないんですが私たちのダニロン事件を契機にして、新たな法律改正がありました。薬事法施工規則の18条の3の3ですが、これはちょっと皆さんの資料にはないんですが、これは我々は勝ち取った大きなことなのでちょっと読ませていただきたいと思いますが。「医薬品の品質、有効性または安全性を有することを疑わせる資料は厚生大臣、または都道府県知事に提出しなければならない」。こういう条項が新たに追加されたんですね。ダニロン事件を契機に。すなわち、不都合なデータ、効かないよとか危ないよとかいうデータも出たら必ず提出しなさい、提出義務が課せられたんですね。そして直接的にはこのダニロンが製造凍結のまま、日本から87年に消えました。当然、日本から消えるということは世界から消えるということでして、このダニロンがもう、最終確認はしていないんですけれども、全く使われない薬になっています。世界で。

―残る宿題は法廷闘争〜解決の糸口へ〜―

北野:  ちょっと残っている宿題ですが、法廷闘争ですね。いっぱい裁判を抱えて我々、やられっ放しでしたから、法廷闘争、地労委とか地裁、高裁、それから中労委ですね。そういう裁判闘争を全部あわせて20数件の事件を会社と争いました。組合つぶし事件、不当配転事件、担務変更事件、昇格差別事件、賃金差別事件、懲戒処分事件など争いました。次のスライドをお願いします。これは地労委の一番最初の勝利命令でして、組合さん正しいですよ、組合活動が正しいですよ、ということを認めていただきまして、会社がまちがっているということを初めて命令を出してくれたやつです。本当に8人の組合員が20数件の裁判を争うというのは大変でして、金も、弁護士費用も払わないといけないので、我々は街で祭りがあれば輪投げ、ヨーヨーをやってテキ屋をやりながら裁判費用を稼いでおりました。もちろん和布などを売ったりの物販もやっておりましたが、色んな活動をしていました。81年に地労委でまた勝ち、86年に地裁で勝ち、91年にまた地労委で勝つという連戦連勝になってきまして、連戦連勝になってきますと、ただ会社におるだけの我慢の子だけでなくて、だんだんだんだん気が明るくなってくるんですね。明るくなってくるとまた闘える。で、闘うとまた明るくなる、また勝つ。そういういいサイクルがまわり始めて、とうとう…。次のスライドをお願いします。

 もちろん抗議行動、これは東京本社の抗議行動です。はい、次のスライドをお願いします。これは私が演説をしているところです。はい、次をお願いします。これは大阪の支店の前でも抗議行動です。次、お願いします。これは徳島駅前ですが、毎月ですね、市民に訴えのビラを配っています。次のスライドをお願いします。これは徳島工場ですけども、これは雨の日でしたけれども、抗議の集会を開きました。こういう色んな方の支援をいただきながら、運動でも責め、そして裁判でもやり、そして市民にも訴えていくという活動を11年間続けてまいります。そうなってくると、会社もですね、もうこの8名はつぶされへんと。で、運動はどんどん広がっていく。そうなると会社もおそらく、その時は分からなかったんですが、解決を考え出したんだと思います。

 今から10年前のことですが、大鵬薬品が創立30周年の会社をあげてのお祭りをやりますと言ったんですね。品川プリンスホテルで、大々的にやると。僕はこれが解決の糸口やと思いましたね。この30周年の記念行事をつぶしてやる、解決せえへんかったらつぶしたると。で、1000人でその会場になだれこむということを1年前に宣言をしました。8名しかいませんからね、1000人なだれこむことはできないんですけれども、色んな人に、「この日に30周年行なわれますので、もし解決しなかったらなだれこみに来て下さい」という訴えを3ヶ月かかってやりました。とうとう会社はそこで根をあげまして…。次のスライドをお願いします。中労委で会社は「参った」の和解交渉が成立しました。

 和解交渉の和解の中身ですが、労働組合の人を認めますよ、労働組合としての活動も認めますよ、差別も全部戻します。ですから昇格差別も、私も元に戻ったわけですね。今は私は労働組合ですが、課長をやってるんですが、課長も入ってる営業の組合ですよね、で、差別賃金、総額3200万円とりました。それから会社も謝れ、と。会社も謝る、組合に。組合活動の保障。それから懲戒処分の撤回。それにここで一番我々がですね、市民の方の期待に添えるような条項がひとつ入りました。労働組合との協議という項目です。労働条件に直接関わる問題については団体交渉において話が解決し、いわゆる労働条件の問題は団体交渉で話をしますよ、そこで解決しますと。で、他の問題、すなわちダニロン、マイルーラなど自社製品にまつわる問題についての両氏の話し合いの場を設ける。だから自社製品について組合が、「ちょっとそれおかしいんじゃないの」とか「どんなデータがあるの?」と言ったときには会社と組合が話し合いの場を設ける。そういう条項がこの和解条項の中にはいりました。実際にこれについては何回か会社と交渉しました。で、危険なデータが出てるやつもありました。それはもう止めました。そういうことの中で、労働組合が自社製品について会社と話しあいを持つことができる。それだけに逆にいえば労働組合も責任重大と。会社が最近宣伝してるらしいんですけど、大鵬薬品の組合もOKしてるで、と。だから安全です、とか言ってるという話も聞きますが。

―運動はやめない〜マイルーラを製造中止に〜―

北野:  次にマイルーラの問題も。まあ、一応これでですね、労働組合は認められて一応差別は受けたけれどもクビにはならずに全て戻ったということになるんですが、ここで万万歳かというとそうでもなくて、マイルーラの問題だけは残りました。マイルーラは販売されて、確かに運動で売上は3分の1にはなりましたが、約18年間ほど売られつづけてきました。しかし、このマイルーラも1昨年、販売中止になりました。そのきっかけというのは私は組合と和解したからってね、悪いことしたら悪いって言いつづけますから、このマイルーラの問題も各地で講演で訴えつづけてきたんです。訴えてきました、労働組合が。マイルーラは悪い、これは非常に毒性があると訴えてきた講演を知った新聞に載ったんですね。東京の新聞に。で、その東京本社のある人が大鵬薬品の労働組合はマイルーラは悪い、悪いとまだ言っていると、会社が知りましてですね、労働組合の委員長である私を会社に呼びつけました。

 今度こそ処分かな、と思ったんです。和解してからの話ですから処分かな、と思ったんですが、すると全然違ってまして、「君、マイルーラがそんなにも危険やと思うんやったら毒性の研究を仕事としてやれ」。私はマイルーラの毒性の研究を、会社の仕事としてやることになります。色んな文献調査、実際の実験も含めて行なった中で、会社は最終的に結論を出しました。昨年ですね、2001年の3月に会社発表。「安全性に問題があるわけではないが」、ここが苦しいところですが、「問題があるわけではないが、販売量が最盛期の3分の1に落ち込み、設備投資に合わないので製造を中止する」と。まあこういう理由が本当ではないのはわかりきってるんですが、結局このマイルーラの20年に及ぶ闘いの中で製造の断念をします。

 今、大鵬薬品がどうなっているか、ということを少しお知らせをします。もう本当に先ほども申しましたように、薬の問題に関しては組合に意見を聞く。組合だけではなくて社員全員に「こういう薬を販売します」、「こういうデータがあります」ということを公表するようになってきました。組合もだんだん徐々に増えてきました。で、今、労働組合って言ったら皆さんにとっては非常に古めかしい言葉に聞こえるかもわかりません。私も今ナウくないなあとは思うんですが。

―闘う組合、闘わない組合―

北野:  労働組合の社会的意義ということで少し話をして終わりたいと思います。私がまだ闘いの時に、今から15年前なんですけれども、これはまだ闘いの真っ最中の時なんですけれども、京都で薬害医療被害の方の前で講演をしたことがあります。その時に言ったことがあります。その時はもうミドリ十字の人工血液のデータ捏造事件が明るみに出てたので、大鵬薬品だけではなくミドリ十字には労働組合がないからこんなデータ捏造事件を起こすんやということを言ってしまったんですね。で、一応講演が終わって質問の時間があったんです。僕はミドリ十字に労働組合はないと思ってたんです。で、「質問!」って中年のネクタイを締めた人が後ろの方から手を挙げて、「ミドリ十字には全員参加の労働組合があります」と言われてがくっときましてね、これは困ったなと。どう答えようかなあと思って、「うーん、闘う組合がないということです」って言いましたけれども。それが今から15年前です。もちろんミドリ十字には全員参加の組合があるかもしれません。しかし、この図らずしも苦肉の策で言った「闘う組合」ということを言わせていただきましたけれども、その後ミドリ十字は薬害エイズ事件を起こします。本当に組合があって、もし中できちっと闘っていれば、ああいう薬害の被害を出すことはなかったのではないというように思って、今から15年前に苦肉の策で言ったことが図らずしも当たったんではないかと思います。で、OHPで締めくくりたいと思います。「今、労働組合は役に立ってるか」というこれは朝日新聞の社説ですが…。

ゆき:  解説記事です(笑い)。

北野:  あ、解説記事ですか。もう全くその通りですね。労働組合は役に立ってるのか、と。国民に。で、相次ぐ不祥事、チェック不足。これは雪印の事件のことについて書かれてあって、そこにこんな小さい意見記事があります。それを大きくしたやつを次に見ていただきたいと思います。これがまさにそのことを表わしているんじゃないかと思うんですけれども。これ僕もびっくりしたんですが、我々の闘いを覚えてくれていてですね、「かつて医薬品メーカーの労働組合委員長は自分の母親にこんな危ない薬は飲ませられないと内部告発した例がある」と。これを覚えてくれていて、これを引用して「今、両氏協調もいいけれど、会社を守ろうという行為が逆に会社を危うくすることもある。労働者は経営者とは違うということを忘れたら労組はだめになる。すなわち、労働組合がきちっとものが言えて批判できることこそ、会社が発展するという風に今は言えるんではないか、と。そういうことを国民の方が期待をしてるんではないか、とそういう風に思います。まだまだ、我々医薬品を製造している研究労働者が多いんですが本当にまだまだ充分にはできていませんけれども、今こういう問題をやりつづけていくということを皆さんの前でお伝えさせていただきまして、私の話を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。

(拍手)

―質問時間―

ゆき:  準備をたくさんして今日に備えて下さいまして、本当にありがとうございました。時間がすぎていますので、おなかがとってもすいている人や次の授業の準備がある方はそーっと教室から抜けていただくとして、質問をやっぱり受けたいと思いますので、どうぞ。

小南:  あの、今日はお話ありがとうございました。すごく面白かったです。シンプルな質問になってしまうんですけれども、たった8名で、ものすごく厳しい状況の中で闘われた、それは正義というか、そういう気持ちを、どこからそういう気持ちをずっと保っておられたかというのがすごく気になるんですけれど、教えていただけますか。

北野:  そういう質問は本当によくあるんです。あの、いっぱい色んなやり方があると思うんですが、まずやっぱり人との出会いですね。こういうことをやると色んな人と出会います。薬害被害、医療被害の方とも出会うし、そしてその人達に逆に勇気付けられるのです。クロロキンの事件が和解で解決したとき、今から10何年前の我々が闘っているときのことですけれども、もう目も不自由、足も不自由、そしてもう涙ながらに解決した中からですね、5万円のカンパをいただいたんです。初めてらしいですね。労働組合に、しかも製薬企業の労働組合にカンパするのなんて初めてやと思います。そういうね、本当に皆が苦しい中で闘ってはる。その中で組合頑張れよ、と言われる。やっぱりそれがひとつ。

 もうひとつは、人に話したらどこかやはり責任持たなあきませんよね。あの天に吐いた唾はかえってくる。「頑張ります!」って言ったらやっぱり頑張らなあかんしね。やっぱりそういうことと、もうひとつは酒ですね。なんぼでもごまかして、もうつらい時は酒でごまかして。ま、それは余談です。うん、楽しかったです。色んな人と出会えて。

竹端:  あの、よく疑問に思うんですけど、日本って本当に御用組合ばかりだっていうのはよく聞くんですが、これは日本の風土だからそうなるのか。よその国と例えば比較して、よその国でもやはりこんな御用組合が多いのか、あるいは日本的な経営者がこんな問題を起こすのかっていうところはどんな風にお考えでしょうか。

北野:  非常に難しいので、全てをよう答えられんのですけど。例えば今回のね、ミドリ十字でも雪印でも大鵬の事件でもこんな事件が他で起こるか、ということだけ考えてみたらね。他ではおこりにくいらしい。それはね、企業内組合じゃないからです。労働組合が企業を越えてひとつの労働組合を作ってますから、だから自分のところだけでやるんじゃない。だから自分のところだけやったら、そういう告発した組合を会社がつぶしにくる。他は助けるだけになるんだけども、この自分のところの中の問題だけにせずに、横のつながりのある横断的な組合ですから、そういうことが可能なんですね。内部告発者保護法がね、後で由紀子先生がお話されると思うんですけど、こういう法律を日本でも作ろうという動きがあります。ところが、「そういう法律はいりません」と言う国があるらしいんです。なんでいらんのかというとね、そういう内部告発は労働組合がやります、とはっきりそういうことを言ってるらしいです。だから僕らがやったのはかなり特殊に見えるけれども、他ではこんな事件になる前にきちっと告発してやってるから、こんな不正事件がおそらく少ないんじゃないかと。それがひとつ。それだけ。後はよう答えません。

中村:  お話ありがとうございました。授業の中で沢山の新聞記事をお使いになったんですけれども、徳島新聞がかなり多かったと思うんですが、地方新聞で取り上げることで会社がばつが悪いというか、そういうきっかけになることはあったのでしょうか。

北野:  新聞社があそこまでよく書いたと思う。オロナミンCの宣伝、チオビタドリンクの宣伝でも新聞にとっては大変な…。それはもう由紀子先生が一番よくご存じと思うけど。その記事を、要するに広告を出さなかってもその記事を書いてくれたんですね。徳島新聞はね。だからそういう意味では、徳島新聞はちっさい地方新聞だけれども、貫いてくれたことに感謝してます。新聞記者にもいい友達が今でもいっぱいいますし、会社が困ったというよりも会社が圧力、新聞社に。宣伝を出さないぞとね。むしろそういうことですね。

―終わりの言葉「がまんでけへんボラ」と「ほっとかれへんボラ」と―

ゆき:  我々のコース「ボランティア人間科学」と今日のお話は非常につながっています。客員助教授早瀬昇先生の授業を聞かれた人は「ほっとかれへん、がまんでけへん」というほとばしる気持ちが本来のボランティアだ、と聞かれたと思います。
 「がまんでけへん」という気持ちから出発したボランティア運動がハンセン病の森元美代治さんやサリドマイド被害の増山ゆかりさんです。自分の問題から発してこの状況をなんとか変えようといううちに世の中を変えることができた。
 北野さんの場合はご自身が薬害の受けるわけではないから、むしろプロとして「ほっとかれへん」ということだったのではないでしょうか。
 授業が始まる前に「プロの使命感に発するボランティアだったのでしょうか?」と伺いましたら、「いや、放っておいたら自分も加害者という当事者になってしまうところだったんですよ」というお答えでした。自分事でもあったというお話でした。

 皆さんがこれから企業につとめたり、研究者になった時に、今日のお話がよみがえってくるように、と北野さんのお話を皆さんにプレゼントしました。徳島から、早起きて来て下さいました。来週は、「薬害の構造−薬害はなぜなくならないか」という本をかかれた浜六郎さんにきていただきます。大阪大学の医学部のご出身で医薬ビジランスセンター。ビジランスっていうのは「夜通しの見張り番」という意味。これまでの話を全体としてまとめるような構造的なお話をしてくださると思います。そういう予習ができたところで、このキャンパスにあるコンベンションセンターで「薬害根絶フォーラム」が開かれます。きっと勉強になると思います。
 では、もう一度拍手でお礼を。

―拍手―


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