卒論・修論の部屋

「ダスキン障害者リーダー育成海外研修派遣事業」と自立生活運動
大塚健志さん

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1-1 問題意識

 1981年の国連「国際障害者年」決議以降、日本でも福祉先進国の当事者運動の流れが注目されるようになった。「障害をもたない人から障害をもつ人」へ、というパターナリスティックな障害者福祉から、障害をもつ当事者がその運動の中心を担うという道への転換である。
 私は「当事者による自立生活運動」に関心を抱き、それをキーワードとした様々な文献にあたっていく中で、それらの文献の著者を含め、近年の障害当事者よる運動、特に自立生海外研修派遣事業が、日本の障害当事者運動、特に自立生活運動の発達と強い関わりがあることが推測できた。
 海外研修の経験が、事業名通り、帰国後の研修生が福祉の分野のリーダーとして活躍する力や、障害をもちながらも様々な分野で活躍するバイタリティ活運動を推し進め、その中心を担ってきた、「障害者リーダー」の多くに共通点があることに気がついた。
 それは「ダスキン障害者リーダー育成海外研修派遣事業」による海外での研修経験があるということである。そこで、過去のダスキンの研修生の経歴を調べていくと、障害者福祉の分野だけでなく、音楽やスポーツ、文芸のなど、帰国後ユニークな分野で活動している人が多いことがわかった。過去の研修生の名簿をみるだけでも、海外研修派遣事業が、日本の障害当事者運動、特に自立生活運動の発達と強い関わりがあることが推測できた。
 海外研修の経験が、事業名通り、帰国後の研修生が福祉の分野のリーダーとして活躍する力や、障害をもちながらも様々な分野で活躍するバイタリティに大きく影響をもたらしているようなのである。
 なぜ、そのようなことが可能になったのだろうか。

1-2 本研究の目的

 日本の障害者福祉は、アメリカやスウェーデンなどの影響を受けて変化してきたことは疑いようがない事実である。しかしアメリカやスウェーデンなどの障害者福祉の歴史が、それぞれの国の文化や国民性などのバックグラウンドを反映した独自性を持っているのと同様に、日本の障害者福祉の歴史も単なる諸外国の模倣ではない。
 そこで本論文では、まず日本とアメリカの自立生活運動の歴史的な流れを大まかにとらえながら、その二つの歴史の関わりをおさえる。次に実際に日本の自立生活運動に関わる人を多く生み出したといえるダスキンの事業を通じて海外で研修した人たちが、どのような経験によって、どのように自己変化をとげたのかをアンケート調査によって捉える。そこから研修生が海外研修の中で得てきたものはどのようなものだったのか、研修生は海外研修からどのような影響を受けたのか、なぜ結果として多くの研修生が帰国後に障害者福祉の分野やその他の分野で活躍するようになったのか、この事業のもつユニークさやその意味とはなんだったのかを考察する。
 そしてこの事業が日本の障害当事者運動、特に自立生活運動の歴史の中でどのような意味をもっているのか、今後はどうなるのかを考察する。これが本論文の目的である。

1-3 本論文の構成と方法

 本論文の構成と方法としては、日本の障害をもつ人の当事者運動、特に自立生活運動の歴史の中での「ダスキン障害者リーダー育成海外研修派遣事業」の意味をはかるために、まず第2章では文献調査により日本とアメリカの自立生活運動の歴史的な流れとその関係についてまとめる。
 次に第3章では、この事業の概要を説明し、上に述べた目的にそって、実際に研修を経験した人達へのアンケートおよびインタビューをし、調査の結果をまとめる。
 そして第4章では、第2章、第3章の結果をもとにして、上に述べた目的にそって、考察を進めていくことにする。

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