日本では1995年の阪神淡路大震災以降、ボランティアに関する関心が高まってきた。しかし一方、日本の大学生のボランティア参加率は諸外国に比べて低いということも指摘されるようになった。その周辺に潜むテーマとして、本論では、大学ボランティア・センターとそこでのボランティア・コーディネーションについて取り上げる。具体的には、日米の大学ボランティア・センターとその活動事例の紹介を軸に、大学がボランティア・センターを持つことの意義、大学ボランティア・センターでのコーディネーションのあり方に関する考察、そしてそれらの現状と今後の課題を示す。
調査はアメリカと日本の4つの大学で行った。それぞれに設立の背景、活動内容や広報手段などをボランティア・コーディネーターのインタビューを中心にまとめた。アメリカはイリノイ大学Office of Volunteer Programs(OVP)の事例を紹介する。日本は、先駆的な取り組みとして注目されている明治学院大学ボランティア・センターと龍谷大学ボランティア・NPOセンターを取り上げる。また、ボランティア研究の事例として、大阪大学ボランティア人間科学研究科を紹介する。
ボランティア・センターのコーディネーションとして、「ボランティア送り出し型」、「中間支援組織型」、「ボランティア受け入れ型」の3つのタイプがあるが、大学ボランティア・センターで行われているのは前者2つである。それらに付随する役割として考えられるのが、「学生育成」と「コミュニティ形成」である。「学生育成」とは学生の自発性に基づいた活動を支援することで社会に対する関心や責任を高めるということを指し、「コミュニティ形成」とは、ボランティア・グループや個人のボランティアがばらばらと活動するのではなく、それぞれの活動を行いながら、互いに協調しあえる関係をコミュニティの中で形成(再生)することを指す。
このように捉えると、大学ボランティア・センターは「ボランティア送り出し・学生育成型」と「中間支援組織・コミュニティ形成型」の2つに大別できる。日本では前者のタイプが多く見られ、アメリカでは後者が見られるが、実はそのどちらの要素も重要である。しかし今、大学はその教育と研究を社会に対して開かれたものにしていく必要があるという社会の要望に面しており、それに応えるひとつの通路として大学ボランティア・センターがあるのではないかと考えることもできるだろう。その際、ボランティア・センターの2つの要素を残しつつも前者から後者へのコーディネーションタイプの広がりが見られるのも自然な結果である。つまり大学ボランティア・センターがコミュニティ形成にもかかわることで、結果として、大学が社会に開かれることになる、ということを意味すると考る。
また大学内でボランティアを研究するということに関しては、ボランティアの実践と別のカテゴリで考える必要がある。両者はともにボランティアの促進という意味では同じ役割を担っているが、混合するのではなく、研究には研究の、実践には実践の、それぞれの目的と役割を担うことが求められている。