卒論・修論の部屋

市民・患者が医療情報を得ることの必要性とその方法としての医療情報室の役割と展望
池上英隆さん

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2.2. 医療情報室の現状レポート

 ここでは筆者が見学した情報室・図書室のなどの5つの施設を、筆者が担当の方とした話や筆者の感想を交えてレポートする。5つの施設の紹介順は施設の出来た(公開された)順番とする。各施設の一覧表を付録として巻末に添付する。

2.2.1. 京都南病院図書室(1)

i) 概要

 京都南病院は京都市下京区にある医療法人が運営する病院で、ベッド数は306床である。診療科は内科をはじめとして多種ある。また、地域とのつながりを重視し、在宅ケアのための施設やグループホームなども運営している。
 図書室は1970年に「一般図書コーナー」を設け患者へのサービスがスタートした。その後、患者のニーズに合わせてやや専門的な医療関連図書も一般図書コーナーに揃えるようになった。しかし、患者の専門的図書を利用したいという声の高まり、「知る権利」という観点から専門的医学情報も開放すべきであるとの意見が担当司書から強く出た。そして図書委員会で論議が重ねられて、1997年1月に患者への医学専門書の開放が始まった。
 場所は病院西館5Fにあり、広さは約100平方メートルである。元々は医療者用の図書室として作られたためアクセス面では良いとは言えない。しかし、場所さえ知っておれば病院の中を通らずに直接図書室へ足を運べるので、市民への開放という点では良い場所と言えるかもしれない。広さについては決して狭くはないが、本が所狭しと並んでいるため身体障害がある場合などは不便を感じるかもしれない。車椅子に関してはテーブルの低い専用カウンターを作って対処している。
 蔵書数は一般書約2万冊、医学書が1000冊余り、医学・看護雑誌関係約200冊である。一般図書は小説をはじめ、ベストセラーものなど利用者のニーズに合わせて司書が選定している。一般雑誌も何種類かある。図書は貸し出し可能で、図書以外にもビデオテープ、カセットテープの貸し出し(カセットテープの視聴用ウォークマンの貸し出しも)も行っている。特にカセットテープは入院中の患者には、本を読む動作が出来ない場合、消灯後の楽しみ、として重宝されている。医学図書は医学・看護用のテキストを中心に最新のものを司書が選んで揃えている。コピーは無料で利用可能である。
 開館時間は平日・土曜の9時〜18時(17時)である。毎月1回日曜日に子ども向けの「子どもとしょしつ」を開催している。
 利用者数は1日約20人。患者、家族が多い。医療者用図書室も同じ部屋にあるので、医療者の利用もある。ここの利用者の特色は学生が多いということである。付近の大学には医学部のない大学が多く、医学図書館がない。そのため、医療関係の研究をする文系の学生がここの図書室をよく訪れるという。このように学生でさえ医学情報が手に入れる手段が少ないことは、医学情報へのアクセスが一般市民へあまり開かれていないことを示唆するものだと筆者は考えている。
 スタッフは司書のみが常駐している(司書の役割については後に詳しく述べる)。ボランティアは病院としては居るものの、図書室運営には関与していない。
 病院との連携は、病院に図書委員会があり、図書委員の医師が相談に応じられる体制を整えている。
 京都南病院の大きな特徴は、専任司書が居ることと、「統合型」図書室であること、である。次項以降でこの2点について更に詳しく述べる。

ii) 特徴1:専任司書の役割

 京都南病院の特徴はスタッフが専任司書だということである。専任司書の役割として重要なことは情報検索のプロフェッショナルということである。日本では図書館と言うと書籍の情報のみに限定されるイメージがあり、図書館司書の仕事は図書の整理・貸し出し係程度にしか考えてられていない場合も多い。
 しかし、実際の司書の仕事はそれだけではなく、図書に限らず幅広い情報の中から利用者のニーズに合った情報を検索すること=レファレンス・サービス(資料調査)を含む(2)。医療情報の提供に当たってはこのレファレンス・サービスが重要である。
 というのは、市民・患者は医療情報という点においては持っている情報量が少ない。また、その情報の質に関しても医療者と市民・患者では大きな差がある。そのため、自分自身の欲する医療情報を独自に確実に入手するのは困難である。その入手の手助けとなるのが司書であり、司書の行うレファレンス・サービスである。
 また、医療は目まぐるしく新しい情報が飛び交う現場でもある。これらの情報を吟味し、適切な情報を市民・患者・医療者へ提供することは医学図書室の専門司書でないと難しい仕事である。特にこれからの時代はIT化が進み、図書だけでなく、電子ジャーナルを始めとするインターネットの大量の情報も吟味しなければならず、医学図書室司書の専門性が重要視されると考えられる(3)
 ただし、「病院附属」の図書室としての司書という立場であると不利な点もある。セカンド・オピニオンに関する情報など、自分の病院に不利益になる可能性がある情報は言い辛くなってしまうかもしれない(セカンド・オピニオンが必ずしも自分の病院に不利益になるとは限らず、むしろ好意的に受け取られ、結果として良い方向につながる場合も多い)。従って、第三者的立場として情報のアドバイスができる人材、司書の病院での地位を高めること、が必要である。また、別の解決策として病院附属の図書室ではなく、NPOなどの第三者が図書室・情報室の運営をするという方法も考えられる(NPOが運営する場合のメリット・デメリットについては後述)。

iii) 特徴2:「統合型」図書室

 京都南病院のもう一つの特徴は、医療者用図書室と患者用図書室が併設された「統合型」図書室であるということである。統合型図書室の利点は物理的なスペースを節約できることである。医療者用図書室に加えて、患者用図書室を設置することは部屋が二つ必要で、その分物理的なスペースが必要である。また、その設置費用、運営費用も必要である。図書室が2つあるとスタッフも2つ分必要となる。患者用はボランティアに丸投げになってしまうと、患者サービスの向上へはつながらず、市民・患者への情報提供は不十分なものになってしまう可能性も高いだろう。
 統合型図書室のもう一つの利点は、医療者と患者が同じ場所を使うことである。京都南病院の例では、普段診察室や病室では忙しそうにしている医師に質問はしにくいが、図書室では気軽に医師に質問をすることができ医師もじっくり答えることができる、ということもあるようだ。
 山室氏は、そもそも医療者用と患者用と情報を二つに分けることが「知る権利」の観点からナンセンスなことであり、図書館司書のプライドとして統合することは当然のことである、と述べていた。
 しかし、後述の国立長野、国立大阪の例では、病院の管理棟にある医療者用図書室を患者用として開放することは規定の問題などからできなかった。国公立病院ではこのような規制があるため統合型の実現は現在のところ難しい。国立病院の独立行政法人化による規制緩和、などにより国立病院にも統合型が実現されることが期待される。

【注】
(1)2003/12/17 に見学させて頂き、司書の山室眞知子氏にお話を伺った。
戸津崎茂雄 2000 「医学専門書の患者への開放―病院図書室の役割について―」 京都南病院医学雑誌 18号 京都南病院 23-28頁
山室眞知子 2000 「医学情報の患者へのバリアフリー」 情報の科学と技術 50巻3号 情報科学技術協会 137-142頁
も参考にした。
(2)図書館司書のレファレンス・サービスについては、
辻由美 1999 図書館であそぼう 知的発見のすすめ 講談社、129-164頁
を参考にした。
(3)山室眞知子 2003 IT化時代の司書とは―図書室でのマン・パワーを探る― 日赤図書館雑誌 10巻1号 2-4頁


2.2.2. ホッと・らいぶらり長野(国立長野病院)(1)

i) 概要

 国立長野病院は長野県上田市にある420床の病院である。診療科は23あり、がん診療やへき地医療の中核病院としても認定されている。
 図書室は2001年11月にオープンし、患者向け図書室としては国立病院初の試みであった。楽患ねっと(現在はNPO法人)が主体となってオープンに携わった。楽患ねっとは「病気の体験を辛く、悲しいものとしてのみ捉えるのではなく、貴重な経験として人生にプラスに生かしていけるように患者さんとその周囲をつなぎ、新しい何かを生み出していこうとする力を応援する団体(2)」である。当時は楽患らいぶらり・長野と名付けられた。「らいぶらり」とは「ぶらり」と気軽に来られるような「ライブラリー」という意味である。
 2003年7月には運営主体が楽患ねっとから離れ、「ホッとらいぶらり・長野」と改名した。現在はいいなステーション代表の和田ちひろ氏が代表を務めている。
 場所は正面入り口横の階段を上がった喫茶店前のオープンスペースを利用している。前述したように、国立病院では管理棟に患者を入れられないという規定のために、部屋を確保することができなかったためである。
 アクセス面はさほど悪い場所ではないが、案内図に記載されていないので(院外の団体が運営しているという理由での規制と思われる)、場所を事前に知らないと分かりにくい場所であるかもしれない。階段で来られない場合もエレベーターで遠回りをしなければならない。
 蔵書数は2000冊を超え、医学書は約200冊、闘病記は約100冊である。ほとんどが寄贈によるものである。貸し出しサービス、コピーサービスを行っている。実際の利用は一般図書が多いとのことである。インターネットの接続はプロバイダ契約の問題等が病院との間で存在するため、現在行っておらずこれからの課題とのことである。患者会の資料も長野県のものを中心に置いてある。
 開館時間は月・水・金の10時から15時までである。病棟への巡回サービスも行っている。巡回サービスについては小説等の一般図書が中心である。
 利用者数(貸し出し人数)は1日に約20人である。患者・家族がほとんどである。
 スタッフは現場の運営はボランティア10人弱で行っており、常駐は巡回を含めて5人前後である。ボランティアの役割については次節で述べる。代表の和田ちひろ氏は現場の運営には携わっていないが、毎日ファックスで報告を受け取ることになっている。
 病院との連携は相談窓口との連携は特に行っていない。主に副院長の武藤正樹氏が図書室の病院側窓口となっている。
 国立長野の特徴は、ボランティアでの運営であることと、NPOが運営の母体となっていることである。次項以降では、ボランティアのメリット・デメリット、NPOが運営することのメリット・デメリットを国立長野の場合を中心に述べる。

ii) 特徴1:ボランティアの活躍

 国立長野の特徴はボランティアが現場の運営に携わっているということである。国立長野の場合は携わっているというよりは全面的にボランティアが業務を行っている。後述の東京女子医大や国立大阪の場合はボランティア+職員という形なのだが、国立長野の場合は現場の業務全てがボランティアに一任されている。
 ボランティアが参加することの利点は、利用者に近い目線であることだ。同じ患者・市民の立場として話を聞くことができる。特に患者経験者がボランティアとして参加している場合はピア・サポート、セルフヘルプ的な立場で助言や情報を与えることが出来る。筆者のボランティア体験から言っても、助言を与えることが出来ないまでも、ボランティアとして参加している市民が利用者の話をじっくり聞くだけでも利用者は安心できる場合がある。
 逆に言えばこのことがデメリットとなる場合もある。なぜなら、相談業務はボランティアでは受け付けられない場合があるからだ。筆者がボランティアとして参加している国立大阪の例では、ボランティアは相談は基本的には受け付けないことになっている。ボランティアは相談業務の専門的訓練を受けていないこと、相談を受け付けてしまうと情報室ではなく相談室としての業務になってしまう懸念があること、がその理由である。これらの問題を解決するためには、ボランティアに相談業務の訓練をすること、相談業務を受け付ける専門スタッフを配置すること(国立大阪ではNPOの職員が1人配置されている)、病院側の相談室と連携すること(静岡がんセンターでは相談室と連携が取られている)、などの対策が考えられる。
 もう一つのデメリットはボランティアの質、あるいは専門性という問題である。先に述べたように医療図書室・情報室には情報検索のプロフェッショナル=司書が居ることが望ましい。ボランティアでは情報検索についてはプロフェッショナルではない。司書が居れば、利用者のニーズに合わせて情報のアドバイスを与えることが出来るが、情報検索のスキルが十分でないボランティアだけだと、ボランティアが利用者と一緒になって検索することになり、慌しい状態になってしまう。ボランティアが利用者の視点に立てることが良いことではあるが、一緒になって検索することで利用者は申し訳なく感じてしまい、遠慮してしまうという状況になってしまうこともある。この対策としては、相談業務に関する対策と同じく(相談業務に関しても「専門性」と根本的には同じ問題であるとも言えるだろう)ボランティアの訓練、専門スタッフの配置、が考えられる。
 ボランティア参加の更にもう一つの問題点は、図書室・情報室ボランティアとその他の病院ボランティアとの連携である。国立長野、国立大阪共に図書室・情報室ボランティア以外のボランティアが存在する。受付時の手伝い、案内係などである。国立大阪ではボランティアコーディネーター役がおり二つのボランティアを統括しているが、国立長野にはコーディネーターは存在せずまったくバラバラの活動を行っている。国立大阪も活動においては接点はない。これらのボランティアの連携が行われれば、サービスの拡大、充実が図られるようになるだろう。連携が実現するためには優秀なボランティアコーディネーターの人材育成・配置が必要である。
 ボランティアとしての利用者側の目線、専門スタッフの専門性との連携、ボランティアの拡大とボランティアコーディネーターの育成、がこれからの情報室の課題となってくるであろう。

iii) 特徴2:NPO主体による運営

 国立長野の特徴としてもう一つ挙げられるのは、NPO主体(楽患ねっとは立ち上げ時はNPO法人ではなく、現在運営主体であるいいなステーションもNPO法人ではないが、法人格を取っていない市民団体もNPOと表記することにする)の運営であるということである。現場の運営はボランティアが行っているが、立ち上げや資金面のバックアップなどはいいなステーション(立ち上げ時は楽患ねっと)が行っている。後述の国立大阪でもNPO法人ささえあい医療人権センターCOML(以降COMLと表記)が運営を行っている。ここでは国立長野の場合を中心にしてNPOの運営によるメリット・デメリットを考察する。
 これらのNPOが病院から運営を行っている理由は資金面による理由が大きい。共に病院側は図書室・情報室の導入には積極的だったのだが、様々な規制のために資金を病院側から出すことができなかった。国立大阪の場合では寄付による資金で情報室を設立したのだが、その寄付金を病院側が受け取ることが出来なかったためCOMLがその寄付を基金として受け取る形で、病院と連携して情報室の設立に携わった。
 NPOが情報室の運営を請け負う利点としては、このように病院側の資金の負担を軽くできるということである。逆に言えば、病院側の資金援助が受けにくいというデメリットがあるということである。しかし、病院側の資金を受けないということは、情報室が病院側に縛られない運営ができるというメリットでもある。病院での情報室の運営には資金面以外にも、場所の確保、先に述べた相談窓口との連携など、病院の協力が不可欠である。病院側とも協力をしつつ、運営に関しては病院側の利益ではなく、利用者側の利益を常に考えたNPOの経営のやり方が必要であろう。
 国立長野では先に述べたように図書室に関しては副院長が病院側のリーダー的存在で、図書室への援護も行っているが、他の病院スタッフの支援・理解があまり得られないのがこれからの課題であるとのことである。つまり、NPOと病院全体の連携が必要なのだが、病院の一部の職員にしか理解されておらず、病院全体へどう理解を広めていくかという努力が必要である。その理解を広めるための一環として、ホッとらいぶらりの広報誌を2003年の秋に初めて発行した。同時に図書室への寄付を募り、資金面での改善にも取り組んでいる。
 NPOが運営を請け負うメリットとしては、NPOの運営の自由度が挙げられる。病院、特に公的病院ではさまざまな規制が存在する。広告を例に取ってみても規制緩和はされてきたとはいえ、厳しい規制が存在する。そのため、情報室があってもその存在を知らせることができにくい。NPOが情報室の運営を請け負うことで、NPOが情報室に関しては広報を行うことが出来るので、多くの人に情報室を利用してもらうことが出来たり、本や資金の寄付を受けることも出来たりするだろう。NPOが広報を行うことの効果については、後の国立大阪の例で詳しく説明する。
 まとめると、NPOが運営することにより、病院の経営方針に縛られない図書室・情報室の運営ができるが、資金面や病院との連携という面では問題が残る。特に病院との連携は相談業務との兼ね合いで重要である。この課題が解決できるならば、NPOが運営を請け負うことのメリットは大きいと言えるだろう。

【注】
(1)2003/11/28に見学させていただき、ボランティアの釼持ミヨ子氏(副代表)、平井昭夫氏(会計)、森澄隆夫氏、にお話を伺った。
(2)楽患ねっと 概要
available from http://www.rakkan.net/index.php?dialogue=html&main_part=gaiyou.html accessed 2003-12-31


2.2.3. あすなろ図書館(静岡県立静岡がんセンター)(1)

i) 概要(2)

 静岡県立静岡がんセンターは静岡県駿東郡長泉町にある病院で、ベッド数は615床である。診療科はがんを中心とした様々な専門外来がある。この病院はファルマバレー計画に基づいてつくられた。ファルマバレー計画とは世界トップレベルの医療を目標に、民・産・学・官の対話と協働により、すべてにわたって第一人者が携わって出来た病院である。
 あすなろ図書館もファルマバレー計画の一環として患者図書館研究の第一人者である菊池佑氏が主に計画に携わった(3)。場所は1階の近くには売店、ホールがある交通量の多い立地条件の良い所である。2階の正面玄関からもアクセスは良い。広さは120uである。中身も国際基準(4)を満たすように作られており、例えば、車椅子利用者に対しては書架を低くする、通路の幅を十分に取るなど工夫されている。
 書籍は文学書、実用書、漫画などの一般図書約2000冊(うち大活字本約120冊)、寄贈本約1400冊、医学図書約850冊ある。書籍以外にも一般誌、がんを始めとした医学関係誌などの雑誌、一般紙、スポーツ紙などの新聞、ビデオ、CD、DVDなどを取り揃えている。ビデオ視聴用には専用の部屋が2つ用意されている。インターネットも2台のパソコンで使用可能である。コピーサービスは1枚10円である。貸し出しサービスも行っている。病棟への巡回サービスは一般図書を中心に行っている。資料に関しては、種類の豊富さ、閲覧のしやすさ、など工夫点が多く、次項節で詳しく説明する。
 開館時間は平日の9時〜17時である。開館時間帯外の貸し出し本の返却については返却BOXが用意されている。
 利用者数は1日約180人。外来患者、患者家族が多い。パンフレットには一般市民に向けても開放していると記載されているが、一般市民は病院に入る際に受付でバッジを着けなければならず(筆者も見学時にバッジを着けなければならなかった)、一般市民にとっては気軽な利用はしにくくなっている。
 スタッフは司書1人が常駐している。専任司書以外にも看護師が連絡に応じてすぐに対応できる体制を取っている。看護師の役割については後述の相談業務との連携についての項で説明する。また、ボランティアは図書室運営には関与していないが病棟巡回サービスはボランティアが行っている。
 病院との連携は、院内の「よろず相談」と連携を行っている。相談との連携の重要性は後述する。
 静岡がんセンターの特徴は、一つは充実した資料とその利用のしやすさである。もう一つは「よろず相談」との連携である。この2点について詳しく述べる。

ii) 特徴1:充実した資料

 静岡がんセンターの第一の特徴は資料が非常に充実しているということである。ファルマバレー計画による世界一の病院を作るという目標に恥じないだけの図書館である。施設=外側のハコも非常に素晴らしいものだが、情報・資料という中身もそれに見合った充実したものである。菊池氏によれば、図書館の条件は「担当者」「図書館資料」「図書館施設設備」である(5)。「担当者」については専任司書がおり、「設備」についても国際基準に則って作られている。ここでは「資料」についてを主に報告する。
 まずは医療に関する書籍だが、がんセンターだけあってがんのものが中心だが、他にも辞典類、看護テキスト類などを一通り揃えている。雑誌類もがん関連のものを揃えてある。書籍類に関して、利用者の使いやすさを意識した工夫がいくつか見られる。書籍に関しては病気や本の種類ごとに棚に色の付いたシールを貼り、本にも同色のシールを貼り付けて、視覚的にも検索しやすくなっている。がん関連の書籍・雑誌は利用される回数が多いので、書籍の目次や雑誌の表紙をファイリングしてまとめ、内容が本を手に取らずとも一覧できるようになっている。
 書籍以外の資料も独自のものが揃っている。インターネットが接続されているのはさほど珍しくはないが、お気に入り(ブックマーク)ががんの情報、患者会などを中心に非常に充実していた。更に、主なホームページ(がん関連が中心)を印刷し、ファイリングして一覧できるようにしていた。パソコンが得意でない利用者にとっては使いやすい資料である。
 それ以外にも患者会の資料、新聞のスクラップなどもファイリングして置いてあった。
 他にはさまざまなパンフレットも置いてあった。このようなパンフレット類については東京女子医大の紹介で詳しく述べる。ここは県立という性格もあってかパンフレット類は製薬会社などのものは置いておらず、県のものやがん関連のものが中心であった。
 掲示板には月ごとに特集を組み、新聞記事などからピックアップして閲覧できるようにしたものがあった。筆者が見学に訪れた時はセカンド・オピニオンについて特集していた。
 見学では実際に見ることは出来なかったが、病室のベッドサイドからも図書室の情報が検索できるシステムがあるようだ。
 このように多様な医療情報をいかに分かりやすく利用者が得られるようにするか、というのはこれからの情報室の課題であろう。本を置いてボランティアに運営を丸投げというような図書室も多いが、図書以外の情報を含めた「医療情報センター」とも言うべき情報室にしなければならない。情報の量・質はもちろん、それを利用者がいかにわかりやすく得られるかというところまで気を使ってサービスを行っていくべきである。

iii) 特徴2:相談窓口との連携

 先に述べたように病院との相談窓口との連携はこれからの情報室には不可欠になってくると考えられる。情報を与えるだけではなく、情報室へ患者・市民を導く窓口や情報を得た後のアフターケアとしても相談窓口と情報室の連携は必要である。
 静岡がんセンターには「よろず相談」があり、そこと図書室とが連携している。医療相談の中で図書室の情報で対処できるものについては図書室へとアドバイスするようである。このように病院の相談窓口としっかりとした連携がなされているのは見学した中では静岡がんセンターのみであった。
 あすなろ図書館には看護師も完全な図書室勤務ではないが、ほぼ常駐の形を取っている。看護師は情報室にとっては貴重な人材である。後述の東京女子医大でもボランティアの看護師が居るが、現場の医療を知っている看護師は情報を与える上でも非常に活躍している。特に医療相談的な対応をしなければならない時は看護師の役割は大きい。司書は情報のプロフェッショナルではあるが、医療のプロフェッショナルではない。一般のボランティアでももちろん医療の相談に関してはほとんどが素人である。医師は医療のプロフェッショナルではあるが、患者に対するアドバイスという意味では能力に欠けている場合が多いし、情報室で勤務することは時間的にもほぼ不可能である。医療のプロフェッショナルであり、また患者の立場に立ってアドバイスができるのは看護師が適任であろう。李啓充も患者アドボカシーは看護師が適任と言っており(6)(7)、看護師は医療のプロフェッショナルというよりは、患者サービスのプロフェッショナルとも言えるかもしれない。
 これからは病院の苦情受付的な相談窓口だけではなく、患者アドボカシーが必要になってくるだろう。情報室との連携という意味では医療相談を受けた時に情報室の存在をアドバイスする役割、情報をどのように生かせばいいかというアフターケア的なアドバイスをする役割としてのアドボカシーが必要だと考える。患者アドボカシーの必要性に関しては4章にて詳しく考察する。

【注】
(1)2003/11/27 に見学させていただき、看護師の廣瀬弥生氏にお話を伺った。
(2)静岡がんセンター available from http://www.scchr.jp/ accessed 2003-12-31 を参考にした。
(3)菊池佑氏にはメールで助言を頂き、それを参考にした。
(4)国際図書館連盟ディスアドバンティジド・パーソンズ図書館分科会作業部会 編 ; 日本図書館協会障害者サービス委員会 訳 2001 IFLA病院患者図書館ガイドライン2000、日本図書館協会 が現在世界の患者図書館で広く使われている国際基準である。
(5)菊池佑 2001 病院患者図書館 患者・市民に教育・文化・医療情報を提供、出版ニュース社、308頁
(6)李啓充 2003 「日本医療界の『カルチャー』を打破する患者アドボカシー」、看護学雑誌67巻6号、医学書院、517-521頁
(7)患者アドボカシーとは本論では患者・家族(の権利)を守る人という意味で使っている。患者の権利を守るために、インフォームド・コンセントが必要であり、そのためのコミュニケーションに情報が必要なのである。


2.2.4. からだ情報館(東京女子医科大学病院)(1)

i) 概要

 東京女子医科大学病院は東京都新宿区にある東京女子医科大学が運営する病院で、ベッド数は1423床である。診療科は多くあるが、糖尿病センターなどセンターごとに特化された専門分野があるのが特徴的である。
 からだ情報館は2003年6月にオープンした。総合外来センターのオープンに伴って、患者サービス向上の一環として作られた。電子カルテを導入した外来診療、医療サービス相談窓口なども同センターに導入されている。
 場所は総合外来センターの1階にあり、広さは152平方メートルである。外来センターの一角にあるため、外からのアクセス面では非常に良い。しかし、入院患者にとってはアクセスはしにくい場所である。
 中は書架を低くしたり、通路を広くするなど車椅子への対応もなされている。また、木を中心としたインテリアで温かみのある造りとなっている。ガラス張りなので外からも中の様子が見える。司書が設計段階から参加したとのことで、図書室としての工夫が様々な所になされている。司書が提案したものとしては、ポスターを吊るすためのレール(ピクチャーレール)、入り口の盗難防止装置(Book Ditection System)、先の車椅子への対応やインテリアなどがある。司書の役割については先に述べたが、このように準備段階から司書が参加することも重要であろう。
 蔵書数(2003/9/30)は医学関連書が550冊、闘病記等の一般図書が110冊である。そのうち医学関連書440冊、一般図書60冊が購入したものである。雑誌は購入しているものが9誌、医師からの寄贈が6誌である。よく使われる資料は、薬、検査、食事療法の図書、看護関係の講座類である。図書の貸し出しは行っていない。ビデオは190本あり、視聴用ビデオデッキは2台ある。
 利用者用パソコンは4台あり、インターネットに接続している。専用のポータルサイトが用意してあり、便利なサイトへのリンクがなされている。利用者用のインターネットは院内LANとは別回線である。司書用のパソコンは院内LANにつないであり、こちらを使えば大学の医学図書館の蔵書検索もできるようになってあるため、からだ情報館の資料以外のニーズがあった場合は大学の図書館から資料を持ち出す場合もある。
 資料は他にパンフレット類が多いのが特徴的である。パンフレット類については後に詳しく説明する。コピーは1枚10円で可能である。掲示板には新聞記事の切り抜きや、講演会の案内等の情報の掲示がなされている。
 開館時間は平日の10時〜16時である。
 利用者数は1日150-200人。外来センター内にあるため外来患者の利用が多い。駐車場が近いため、見舞に来た家族の利用も多い。
 スタッフは司書1人が常駐である。司書は大学の医学図書館との兼任である。医学図書館司書の役割については後に説明する。ボランティアは退職した看護師が1人、一般ボランティアが勤務している。
 病院との連携は、外来センターの相談窓口との連携体制を整えてあるとのことである。
 東京女子医大の特徴は、医学図書館との兼任司書が居ること、資料のパンフレット類の利用が多いことである。司書の役割については既に述べたが、医学専門司書という観点から改めて述べる。パンフレット類についてもその利点・問題点を考察する。

ii) 特徴1:医学図書館司書

 司書が情報室で勤務することのメリット・デメリットは既に述べたが、ここでは、専門的な医学図書館司書が情報室で勤務することについて考察する。
 司書は情報検索のプロフェッショナルであるが、医学のプロフェッショナルではない。しかし、医学図書館司書は医学の情報に関してのプロフェッショナルであり、一般の司書より医学の知識に関して長けている。情報室に勤務する司書としては、このような医学図書館勤務の経験がある司書が望ましいだろう。経験がある司書でなくとも、最低限の医学図書館司書としての技能・知識を身につけた人材が望ましい。しかし、現在は専門的な司書の育成は行われていない。専門的な知識を身につけた司書の育成、情報室の人材としては医学図書館の専門司書の育成制度の確立が必要である。
 司書は情報検索のプロフェッショナルであると同時に図書館のプロフェッショナルでもある。東京女子医大、静岡がんセンターのように図書館の知識を持った司書が設計段階から関わることで、身体障害に対するバリアフリー、本の管理方法等、図書館をより利用しやすい環境を作ることが出来る。概要の項でも述べたが、このように司書は完成してからの現場だけでなく、設計段階から関わることでよりよい図書館環境を作ることができる。
 からだ情報館の場合は医学図書館との兼任の司書が勤務しているが、これはよりよい専門図書を利用者が欲しい場合に、医学図書館の資料も利用できるというメリットがある。このように情報室と医学図書館との連携、あるいは一般図書館、情報室同士といった情報のネットワーク作りにも司書の役割は大きいであろう。特に医学図書館との連携では医学図書館司書の専門性が期待される。

iii) 特徴2:お持ち帰り用パンフレット

 東京女子医大に置いてある特徴的な資料として、パンフレットがある。種類は製薬会社のもの、学会のもの、医師会のもの、保険関連のもの、検査の案内、など約200種類である。これらのパンフレットは利用者が自由に持ち帰ることが出来る。資料の中でも特に利用が多く、補充作業が大変だとのことである。
 このようなパンフレットは製薬会社などが独自に製作していてとても分かりやすいものが多い。医師が説明時に使用したり、患者に渡して自己学習を促すような場合にもよく使われている。治療だけでなく、予防のためや一般的な医学知識を身につける場合にも役立つ。しかし、このようなパンフレット類が一ヶ所に集まっていて閲覧できるという場所がない。そのため、医師以外からの入手経路がないので、市民・患者が閲覧できる機会は限られている。市民・患者がこのようなパンフレットを入手する場所として情報室は役立つだろう。
 問題は、このようなパンフレットをいかに情報室に集めるかである。からだ情報館の場合は製薬会社側が送ってきたもの、医師からのもの、病院のソーシャルワーカーが作った保険関連のもの、など様々な場所から集められている。しかし、全ての医師・病院スタッフが協力している訳ではない。このような情報は医師が一番持っていると考えられるので、まずは医師に情報室に協力してもらうことが必要である。一般的には内科の医師は糖尿病など治療に患者側の参加が必要と考えている場合が多く協力的だが、外科の医師は手術のリスクなど情報を与えることはデメリットと考える場合が多く非協力的な場合が多いようだ。いかに、情報室に情報を集めて情報センターの役割を果たすことができるか、というのがこれからの情報室の課題であろう。一つの対策は情報室の広報を広く行うことであろう。これについては次節で説明する。

【注】
(1)2003/10/31 に見学させていただき、司書の桑原文子氏にお話を伺った。


2.2.5. 患者情報室(国立病院大阪医療センター)(1)

i) 概要

 国立病院大阪医療センターは大阪市中央区にある病院で、ベッド数は698床である。国立長野病院と同じく、がん、エイズなどの中核病院としても機能している。
 患者情報室は2003年10月にオープンした。緊急災害医療棟の1階の階段下のスペースを利用して作られている。外来患者や入院患者の居る棟とは別の棟のため、アクセス面ではあまり良くはない。
 情報室設立の経緯は、元朝日新聞記者の故井上平三氏の提案であった。平三氏は大腸がんでこの病院に通って治療を続けていた。平三氏の死後、妻の井上由紀子氏が平三氏の本を出版する際に資料を整理するうち、平三氏の情報室設立の思いを知り、国立大阪病院に情報室の設立のための資金寄付を願い出たのである。しかし、国立病院であるため、病院側は寄付を直接受け取ることが出来ず、平三氏が生前から交流していたCOMLに情報室の設立を依頼し、COMLと病院の二人三脚の形で情報室の設立が実現したのである。COMLと病院と情報室の関係については後述する。
 蔵書数は医学関連書、闘病記が中心で約1000冊である。現在のところ全て寄贈によるものである。病院の医師からの寄贈も多いが、中には古いものや一般向けには理解しづらい専門向けのものもある。このような本の選書はこれからの課題である。図書以外の資料はビデオが20-30程度、パンフレット類も配布用は10種類程度ある。患者会の資料も案内のパンフレットや広報誌などを取り揃えてある。
 独自の試みとして、患者・家族の体験談を集めている。このような体験談の役割については後述する。体験談は30程度で、更に数を増やして充実させることが課題である。インターネットは病院とは別の回線を繋いでおり、1台のパソコンが使用可能である。ネット用パソコンとは別にもう1台パソコンがあり、これは病気の解説ソフトが使えるようになっている。病気の解説用ソフトはいくつかCD-ROMが用意してあり、職員に言えば使用可能である。コピー及びパソコンからのプリントアウトは1枚10円で受け付けている。
 講習会、映画鑑賞などのイベントを定期的に行っている。講習会は病気に関する正しい知識を身に着けるための講習会などを2ヶ月に1回程度開いている。映画鑑賞は1ヶ月に1回程度、医療や福祉に関係したものを上映している。このようなイベントは情報室を広めるための広報活動の一環としても重要である。広報活動の重要性については後述する。
 開館時間は平日の10時〜16時である。 利用者数は1日20-30人。利用者は患者や家族が多い。別の病院の患者や家族も多い。病院の患者以外の「市民」の利用が多いことは特筆すべき点であろう。これもCOMLの広報活動による効果が大きいと考えられる。
 スタッフはCOMLの職員1人が常駐である。ボランティアは20人程度居り、2-3人が常駐している。情報室とは別に病院ボランティアも居るが、全く別組織である。これらの統括については病院のコーディネーターが行っているが、お互いの交流は特にない。これらのボランティアの連携はこれからの課題であろう。
 病院との連携は、病院側に相談窓口はあるもの連携体制は特にない。ただし、病院に対する苦情があった時は病院側に伝えることにしている。
 国立大阪の特徴は、患者の体験談を資料として収集・公開していることと、NPOであるCOMLが運営していることである。体験談の有効性や問題点、COMLの運営の利点・問題点を述べる

ii) 特徴1:患者の体験談

 国立大阪の患者情報室の独自の試みは患者や家族の体験談を集めてそれを資料として公開していることである。これは情報室開設のきっかけとなった井上平三氏が生前から望んでいたことであった(2)。このような体験談が役立つ理由の一つは、同じ病気の苦しみは同じ体験をした者にしか分からないということである。同じ体験をした者の話を知ることで共感を得ることができ、疎外感から逃れることができる。「癒し」としての効果と言えるだろう。
 もう一つの体験談が役立つ理由は「情報」としての側面である。既に述べたように、現在は病気そのものの性質が変化し、病気を持ったまま生活をするという場合が多い。生活には個別性があるが、医療や看護のテキストの治療法だけでは個別性には対処できない。例えば、「運動を制限してください」と言われても、どのくらい制限をすればいいのかというのはある程度のテキスト的な基準はあっても、個人によって病状は異なるため完全な線引きはできない。しかし、体験談を読むことでその目安は知ることができる。特に「事務程度の仕事は可能」とか「走るのは控えたほうがよい」とか具体例を体験談を読むことで知ることができる。このような具体例までは医師やテキストからの情報ではなかか得辛いものである。
 このような体験談の情報の入手源としては、闘病記がある(3)。しかし、闘病記というのは書店、図書館などで冷遇されているジャンルでなかなか手に入り辛い。パラメディカ(3)は闘病記を集めたインターネット古書店であり、闘病記の入手手段として重宝されている。
 国立大阪のように実際の患者から体験談を集めるという試みはほとんどなされていないので、新たな試みとして特筆に値する。これからの課題は体験談をいかに集めるかである。現在のところ情報室オープン2ヶ月ほど(準備期間の数ヶ月期間も募集はしていた)で30件ほどの体験談の数である。「情報」として機能させるためにはより多くの数が必要である。数だけでなく、質も十分に吟味していかねばならないだろう。これらの体験談を情報室でいかに集めるか、という課題については4章の考察で詳しく述べることにする。

iii) 特徴2:COMLと広報

 国立大阪のもう一つの特徴はNPOであるCOMLが運営していることである。先に説明した国立長野もNPOが運営している。NPOが運営することの一般的なメリット・デメリットは述べたので、ここではNPOというよりはCOMLが運営しているというメリット・デメリットについて説明することにする。
 COMLは患者側の団体でありながら、良くも悪くも医師や病院側と比較的うまくやっている医療NPOである(4)。医師や病院側との関係が良好であることは、情報室と病院側の連携もとりやすい。実際国立大阪でも情報室に協力的な医師は多く、図書などの資料の多くは病院の医師からの寄贈である。しかし、医師・病院側との関係があまりに良好であるために他の患者団体からはよく思われていない節もある。現在のところ、表立ったトラブルや苦情はないが、情報室の患者会ネットワークを築き上げていく上で障害にならないかどうかが懸念される。
 COMLの特徴として挙げられるのがその広報能力である。情報室を話題にしたフォーラムを開いたり、代表の辻本好子氏が各地で講演活動を行うなど、情報室開設の前から広く広報活動を行っている。そのため、オープン時にはボランティアも数多く集まり、マスコミ報道も大きくなされた。情報室の存在を広めるためにはこのような広報活動は欠かせない。特に患者だけでなく市民に広く使われるような情報室になるためには必要であろう。また、講演会、映画上映などのイベントも定期的に行っている。このようなイベントは外に向けての広報活動としての意味だけではなく、病院の内に向けての広報活動としての意味も持つだろう。
 まとめるとCOMLの特徴は様々な方向への関係作りにあると言えるだろう。情報というものはネットワークが大事だが、そのネットワーク作りについてはCOMLの広報能力は強力なものがある。しかし、一方の関係を強くしすぎて、他方からの信用を無くすようなことに陥らないような注意が必要であろう。

【注】
(1)2003/9より筆者自身がボランティアとして参加した経験を参考にした。COML代表の辻本好子氏、事務局長の山口育子氏、情報室担当の山本ゆかり氏、ボランティアの皆さんとのお話、も参考にしている。
(2)井上平三 2001 「患者からの提言:医療情報室と医療情報提供を望む」 病院患者図書館 日本病院患者図書館協会、16-19頁
(3)闘病記に関しては
パラメディカ available from http://member.nifty.ne.jp/PARAMEDICA/ accessed 2004-1-4
星野史雄 2003 「闘病記を必要な人に届ける」 みんなの図書館 教育史料研究会 3-12頁
を参考にした。
また、2003/11/28にパラメディカ事務所へ伺い、店主の星野史雄氏にお話を聞かせて頂いたので、そのお話も参考にした。
(4)近藤誠 1999 「医療消費者組織はどうあるべきか」 いのちジャーナル 通巻58号 さいろ社 44-51頁、でCOMLと医師の関係が批判されている。


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