ことしもまた、縁を結ぶ会

 この「濃縮シンポジウム」のそもそもの始まりは、参議院自民党の総元締、しかも元厚生労働大臣の★尾辻秀久さん★の「えにし」の方々の心を揺さぶるメッセージでした。
 以下は「えにし」のHP「医療福祉と財源の部屋」の尾辻さんのことばの抜粋です。
「経済財政諮問会議は、『医療費が上がるのは一向にかまわない。公費さえ上がらなければいい』と言いました。要するに本人負担分を上げろと言ったのです。絶対に許せません。小泉内閣のときは、財界関係者と学者が主導していました。厚生労働大臣のとき、経済財政諮問会議に社会保障費を総額抑制すべきと注文をつけられました。私は、社会保障費は必要な額を積み上げていくべきだと主張しました。」
「経済財政諮問会議は、国民負担が高まると経済の活力が失われると言いましたが、それでは国民負担率70%のスウェーデンはどうなのでしょう。経済的にも極めて活力ある国です。当時、経済財政諮問会議に反対することは非国民と呼ばれることでした。私ひとりが被告席に座らされているようなものでした。
 今ですから正直に言いますと、いつもポケットに辞表を入れておりました

 鳥取県南部町町長の★坂本昭文さん★は、志の縁結び係にメールをくださいました。
「感激し、共感し思わずメールしました。国民から直接選ばれた訳でもない諮問会議のメンバーに、年金や医療、介護、福祉といった社会保障制度の根幹を揺るがすような大切な課題について、政策を左右する権限は無いと思います。党内基盤が弱かった前小泉総理の知恵だと思いますが、市場原理主義、新自由主義などいずれも弱者に犠牲を強いるもので、行財政基盤が弱く高齢化の進む地方は今大変な困難に直面しているのです

 精神分裂病と呼ばれていた人びとが、1987年、日本で初めて顔と名前をカメラに晒して思いを語りました。タイトルは、「人間らしく生きたい」。テレビ史に残るこの番組のディレクターが、若き日の千葉県知事の★堂本暁子さん★でした。堂本さんの熱い思いと、当事者たちの堂本さんへの深い信頼があって、初めて実現した映像でした。
 その延長線上に、日本初の、障害者差別をなくすための「条例」、縦割りを排した政策を、白紙段階から市民とともにつくりあげる「健康福祉千葉方式」が生まれました(くわしくは『ブレーメンの挑戦』(ぎょうせい)をお読みください)。
 その堂本さんが、参議院議員として国政に参加した経験も踏まえ、経済財政諮問会議が目指す社会保障「改革」の問題点について語りました。

 コーディネーターをかねてのご登場は、NPO法人・高齢社会をよくする女性の会理事長の★樋口恵子さん★です。配布資料でご覧のように、昨年、「介護従事者の賃金に1人月額3万円を上乗せする『3万円法』の制定」を含む「介護人材確保のための緊急提言」を舛添厚生労働大臣に提出しました。「介護保険の猛母」の面目躍如です。
「介護職を"社会のヨメ"にしてはなりません」「介護労働者が幸せでなければ、介護される人は幸せになりません」という樋口恵子さんたちの呼びかけは全国に伝わり、「緊急提言」への署名は、あっと言う間に15万人を突破しました。
「介護保険は、介護人材から崩壊する」と心配する樋口さん。ユーモアと独創性にあふれる名調子の独演とは一味違った異色のコーディネーターぶりが会場を酔わせました。

「医療崩壊」という言葉が、メディアやインターネットの世界を賑わせています。
 日本の医療は崩壊しているのでしょうか? しているとしたら、どのように?
 第1部で語られた経済財政諮問会議の「社会保障費を総額抑制政策」は、医療にどのような陰を落としているのでしょうか?

 産婦人科医の立場から分析してくださったのは ★金沢大学医学部 打出喜義さん★
「恋するようにボランティア〜優しき挑戦者たち」(ぶどう社)の第2章に、「過激な長老・日野原重明さん」とともに、「身に危険が降りかかることをいとわぬ、究極のボランティア・内部告発者」として登場しておられます。「内部告発者」というイメージとはほど遠い、愉快で優しいお医者さん。後輩たちに頼りにされ、患者さんに慕われています。

 ナースの立場から発言してくださったのは ★日本看護協会長 久常節子さん★
 厚生省の看護課長をつとめた6年間を綴った『にわか役人奮闘記』(学研)には、「こんなことまで書いて大丈夫?」という、勇ましいエピソードが散りばめられています。
 日本の医療供給体制の3悪は、「多い(薬剤)」「少ない(ベッドあたりの看護職員数)」「長い(入院日数)」が持論です。
 慶応大学看護学部教授をへて、2005年から日本看護協会長。

 ★岩田喜美枝さん★は、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長時代に母子保健課をバックアップして産婦人科・小児科医師の労働問題の改善に力をつくしました。その経験を話していただこうとしたら、「小児科医の母でもあるのよ」とのこと。
 「当直明けの普通勤務など、医師の働き方は労働基準法に照らして問題が多すぎること」「仕事と子育ての両立の仕組みがなければ、女性医師は出産退職することになり、大幅な医師不足になること」「いま行われている対策は妥当か」などについて、丁寧に話してくださいました。
 岩田さんの退職金のおかげで、日本憲法に男女平等を盛り込んだベアテ・シロタ・ゴードンさんを描いた映画「ベアテの贈り物」が完成したことは、知る人ぞ知る話です。

 患者の立場から論じてくださったのは★読売新聞社会保障部記者 本田麻由美さん★
 1991年、読売新聞入社。社会保障部で医療・介護保険を担当していた2002年5月、乳がんが見つかりました。03年4月から闘病体験に基づく医療コラムを読売新聞朝刊でスタート。欧州NPOの「Cancer Enlightenment 2004 Special Award」などを受賞。「がんと私」というタイトルで、患者の視点でがん対策への提言を続けておられます。

 法律家の立場から発言してくださったは★弁護士 石川寛俊さん★
 「勝てそうかどうか」ではなく、「放っておくわけにはいかない」と思う相談を引き受けてしまうので、他の弁護士さんが断った被害や、敗訴判決を受けた事件までも引き受けてしまいます。それなのに、勝訴率が高く、医療裁判のあり方そのものを変えるような最高裁判決をいくつも勝ち取ったりして、弁護士さんたちに一目おかれています。
 石川さんに寄り添われて裁判をした被害者たちは、自分の裁判が終った後も、医療を良くするための市民運動などに長く関わることが多いのは偶然ではないのでしょう。
 国内外の数字をあげながらの説得力あるお話を展開してくださいました

 コーディネーターには、「生活ホットモーニング」のキャスターとして、この3月まで主婦たちの心をわしづかみにておられた★NHKチーフアナウンサー 内多勝康さん★
 ディレクター志望だったのに、声が抜群によかったのでアナウンサーに引っぱられたという噂。医療や福祉の課題に深く、長くかかわる姿勢にファンは増える一方です。
 流石の名コーディネーターぶりをはっきしてくださいました。

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