優しき挑戦者(国内篇)
(50)優しき挑戦者大集合

写真@

 「優しき挑戦者の部屋」の登場人物と「ファン」たちが、2008年4月26日夜、東京のど真ん中、日比谷公園のレストランに集合しました。
 『恋するようにボランティアを〜優しき挑戦者たち』(ぶどう社)の出版を祝ってくださる夕べです。
 思いがけないほど集まりそう、というので、事務局ボランティアたちが智恵を絞りました。レストランの許しをえて、備えつけのテーブルとイスを運び出し、その代わりにレンタルの丸イスをもちこむことを思いつきました。並べるのも、運びだすのも、参加者のみなさんのボランティア精神だのみです。
 写真@は、レストランを埋めつくしたみなさん、手前の金髪の青年は、「アルビノ、2万人に1人の若者たちが出会ったネットワーク 」の主人公たちで、『恋するように……』の本の冒頭に登場します。
 本には30組の「優しき挑戦者たち」が登場なさるのですが、その中から、写真Aの面々が登壇しました。

写真A

◆「ほっとかれへんと、飛び込んだ」◆

 ご自身はボランティアとは夢にも思っていない「真のボランティア」のみなさんが思いを語りました。
 ・自閉症や重複障害のある人が商売繁盛して町で暮らす「ふわり」の黒幕、戸枝陽基さん
 ・精神病の人たちがまちで暮らし、日本一精神病棟が少ない帯広の仕掛け人、門屋充郎さん
 ・知的なハンディのある人が愛する人と故郷で暮らせるように施設を解体したコロニー雲仙の田島良昭さん
 ・十人十色のさりげないケアでお年寄りを支える西東京市にあるNPO法人「年輪」の安岡厚子さん

 話が進むにつれて、4人の意外な共通点が明らかになりました。
 4人とも、抑えきれないおもいにつき動かされ、周囲がとめるのも振り切り、「ほっとかれへん」と未知の世界に飛び込んだのでした。
 周囲はその無謀さにあきれました。
 法律とも、ぶつかりました。
 けれど、そのうちに、社会や制度の方が変わっていったのでした。

◆「自分ごと」から、始まった◆

 続いて、自分自身の経験を公開することでいつのまにかボランティアになっていたみなさんが話しました。
 アルビノの若者たちはこもごも語りました。
 「白い子が生まれたのは母のせいという濡れ衣を晴らしたい、というのが始まりでした。いまは、僕たちが成人した姿をみて、うちの子も、そこそこ立派な大人になると安心していただけるのが生きがい」(石井更幸さん
「自分のためにやったことが、他の当事者やご家族に役立つとした、それは副産物」(矢吹康夫さん)
「自己紹介することで人の心のバリアをなくす活動をしています」(相羽大輔さん)

 父の自死の第一発見者になってしまった山口和浩さんは、「ひとりぼっちだ、自分が世界一不幸なんだ、まずそれしか感じられませんでした。それが大きく変わったのは、あしなが育英会から奨学金を借り、同じ体験をした、同じ世代に出会って、自分が一人じゃないと感じたことでした」
 「この1年たくさんの遺族に会ってきましたが、一番よく聴く言葉が『まさか自分の身に起こるとは……』でした」

◆「手話はボランティアでなく」◆

写真B

 会場でひときわ参加者を酔わせたのは、手話通訳の山口千春さん(写真Bの左端の女性)の表現力豊かな通訳のワザでした。
 写真右端の植野慶也さんは、千葉県の聴覚障害のある人々のリーダーでで、「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」の成立を支えた立役者の一人です。
 その植野さんは、ボランティアを「ただ働きの親切な人」と誤解して期待する日本の社会を嘆きました。
 「ぴしっと正確に手話通訳することは非常に難しいんです。社会福祉士、言語聴覚士、介護福祉士があるのに、手話通訳士という法律がない」
「行政は、『ボランティアでよろしくお願いします』といいます。これは困ります。医師、弁護士には資格制度があります。その専門性を踏まえた上でボランティア精神を発揮するかどうかは自分の気持ち次第です。それを無視して、いきなりボランティアを頼んでくださいということになりますと、聴覚障害のある私たちは差別を受けているのではないかと非常に心配しています」

◆ボランティアと恋の共通点は?◆

写真C

 この会場には、だれに頼まれたわけでもないのに、一言も喋らない独創的なボランティアがいました。
 元宮城県知事で、いまは慶応義塾大学教授の浅野史郎さん(写真Cの左端)です。
 発言が5分を超過するとスックと立ち上がり、発言者の目をじっと見つめるのです。ふだんは特別講演やコーディネーターをつとめる浅野さんにとって、ひとことも喋らないなんて、難行苦行のボランティアだったに違いありません。
 おかげで、コーディネーターをつとめた大阪ボランティア協会の早瀬昇さんは大助かりでした。

 ところで、本のタイトル『恋するように……』は、この早瀬さんに教えていただいたキーワードです。
「恋もボランティアも偶然の出会いから始まる」
「恋もボランティアも修羅場になることがある」
「恋もボランティアも想像力がないと相手を不幸にする」etc.etc.
もっと知りたい方は、本をどうぞ。

撮影は、映像記録ボランティア、同志社大学准教授で浄土宗應典院僧侶の山口洋典さん

大阪ボランティア協会の機関誌『Volo(ウォロ)』2008年7・8月合併号より)

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